再処理施設運転訓練シミュレータの開発
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カテゴリ: 第2回
1.緒言
された後に、精製建屋(以降AC建屋と述べる)にて 精製され、ウラン脱硝建屋(以降BA建屋と述べる) - 青森県六ヶ所村にある日本原燃(株)の再処理施設およびウラン・プルトニウム混合脱硝建屋(以降CA は原子力発電所の使用済燃料からウランとプルトニウ 建屋と述べる)で脱硝してウラン酸化物とウラン・プ ムを取り出すための国内初の商業用施設である。現在ルトニウム混合酸化物の2種類の製品が作られる。製 2007年の操業開始を目指して試運転中である。 品はウラン酸化物貯蔵建屋(以降BB建屋と述べる) - 東芝は、世界初となる再処理施設用運転訓練シミュ_およびウラン・プルトニウム混合酸化物貯蔵建屋(以 レータを開発し、日本原燃(株)に納入した。運転員 降CB建屋と述べる)に貯蔵される。 の訓練ではこの運転訓練シミュレータを使って、放射再処理施設には、上記の他に、各工程で発生した放 性物質の漏洩が発生した場合などの異常事象に対する 射性廃棄物を処理・貯蔵するための低レベル廃液処理 訓練が行われている[1]。建屋、低レベル廃棄物処理建屋、高レベル廃液ガラス -- 以下に、そのシステムの概要と特徴について紹介す 固化建屋(以降KA建屋と述べる)や各施設の運転・ る。監視を統括的に行う制御建屋 (以降AG建屋と述べる) などがある。
2.再処理施設概要AA建屋AB建屋AC建屋BA/BB 建屋 脱硝せん断ウランウラン 分離溶解プルト ニウム 分離ブルト ニウム 精製CA/CB建屋核分裂 生成物 分離貯蔵* 再処理施設は使用済燃料からウランとプルトニウム を取り出すために、複数の施設から構成されている。 再処理施設での使用済燃料受入から製品貯蔵までの処 理の概要を Fig.1 に示す。原子力発電所から輸送されて きた使用済燃料は使用済燃料受入れ・貯蔵建屋に受入 れられ貯蔵プールにて冷却・貯蔵される。使用済燃料 が、決められた冷却期間貯蔵され放射能が十分に弱ま った後に、前処理建屋(以降AA建屋と述べる)にて、 使用済燃料はせん断され硝酸で溶かされる。使用済燃 料の硝酸溶液は、分離建屋(以降AB建屋と述べる) にて、ウラン、プルトニウム、核分裂生成物とに分離再処理施設は使用済燃料からウランとプルトニウム を取り出すために、複数の施設から構成されている。 再処理施設での使用済燃料受入から製品貯蔵までの処 理の概要を Fig.1 に示す。原子力発電所から輸送されて れられ貯蔵プールにて冷却・貯蔵される。使用済燃料 が、決められた冷却期間貯蔵され放射能が十分に弱ま った後に、前処理建屋 (以降AA建屋と述べる)にて、 使用済燃料はせん断され硝酸で溶かされる。使用済燃Fig. 1Outline of reprocessing plant process連絡先:高橋秀樹、〒235-8523 横浜市磯子区新杉田町8、 (株)東芝 磯子エンジニアリングセンター電気計装設計部 保全計画担当、電話:045-770-2197、 e-mail:hideki7.takahashi@toshiba.co.jp屋と述べる)で脱硝してウラン酸化物とウラン トニウム混合酸化物の2種類の製品が作られる。 はウラン酸化物貯蔵建屋(以降BB建屋と述べる よびウラン・プルトニウム混合酸化物貯蔵建屋再処理施設には、上記の他に、各工程で発生した放 射性廃棄物を処理・貯蔵するための低レベル廃液処理 建屋、低レベル廃棄物処理建屋、高レベル廃液ガラス 固化建屋(以降KA建屋と述べる)や各施設の運転・ 監視を統括的に行う制御建屋(以降AG建屋と述べる) などがある。AA建屋AB建屋AC建屋BA/BB 建屋 脱硝せん断ウランウラン 分離溶解ブルト ニウム 分離ブルト ニウムСАГС В建屋核分裂 生成物戰敲Fig. 1Outline of reprocessing plant process-423. 再処理施設制御系構成再処理施設では、AG建屋の中央制御室に集中設置 された監視制御盤で運転・監視が行われる。中央制御 室では、ブロックと呼ばれる馬蹄形をした各施設の監 視制御盤が6つ配置されている。各ブロックには、各 施設のデータを収集・管理する工程管理用計算機が設 置され、工場全体を統括管理する当直長業務支援の盤 に連結されている。 再処理施設のプロセス制御系は、プロセスデータの 収集及び運転インターロックを制御する制御装置、安 全系監視制御盤、現場機器等から構成されている。4.模擬範囲ウラン試験以後の運転に向けた効果的な訓練のため には、訓練事象の選定と選定事象のプロセスを模擬す る範囲を確定することが重要である[2]。訓練事象の選 定に際しては安全性確保評価の見地から、ウラン試験 前に訓練が必要な異常事象を以下の基準により、AA 建屋、AB建屋、AC建屋、CA建屋、KA建屋での 5事象、17シナリオを選定している。 (1) 運転時の異常な過渡変化事象の内、最大許容限度 1日までの時間余裕が1日以内で運転員対応が期待されるもの。 (2) 運転時の異常な過渡変化を超える事象については設計基準事象の中から選定し、評価シナリオ上運転員対応が期待されるもの。 (3) 設計基準外事象については、結果の重大性を考慮し、ヒューマンエラーの観点から訓練すべきもの。また、AA建屋、AB建屋、AC建屋については再 処理施設の主工程となるので、工程の起動/停止操作 や異常に関する短期停止操作等も実施可能とする。5. 運転訓練シミュレータ構成* 本シミュレータでは、運転の臨場感を損なわないよ うに実機同等のマンマシンインターフェースが採用さ れている[3]。プロセスの動特性やインターロックロジ ックについては、シミュレータ計算機で模擬されてい る。プロセスの動特性モデルは、実機の設計データから製作されており、インターロックロジックは、実機 ロジックをシミュレータ用に自動変換して製作されて いる。現場機器については模擬操作補助装置にて操作 可能となっている。 - Table 1に運転訓練シミュレータの主な構成機器の 機能と実機との比較を示す。ータの主な構成機器のTable1 Comparison of simulator and real plant functions役割機器機能実機との比較再処理施設の各施設の 監視制御盤美機同等 運転・監視を行う安全上重要な操作、計実機同等。但し、安全 安全系監視 運転・監視器の表示及び警報を動「評価上必要な計器及び |制御盤 作させるスイッチを模擬模擬操作補|現場操作を模擬する」「なし 助装置プラント運転のイン インターロックロジッ シミュレー ターロックロジック、「クについては制御装置 夕計算機 |動特性モデル等を模擬」が実現。動特性につい するては実プロセス。 プラント制御統合コント 監視制御盤とシミュローラ レータ計算機間のゲーなし (ゲート | |トウェイ機能を有する インストラ Tシミュレーション状態なし クタ計算機の制御を行う。 工程管理用 各施設のデータを収集雲機同等 計算機 し、監視する プラントデー タ収集当直長業務 各工程管理用計算機で 支援用計算「収集したデータを統括 実機同等して管理する6 運転訓練シミュレータの特徴 6.1 複数施設の訓練 * 本シミュレータでは、再処理施設のAA、AB、A C、CA、KA建屋の5施設分の訓練が、模擬施設を 切替えることで実施可能である。施設切替えの対象と なる機器は、1シミュレータ計算機、2監視制御盤、 3工程管理用計算機である。インストラクタがインストラクタコンソールにて施 設切替え要求対話プログラムを起動し、訓練する施設 を選択することで、訓練対象の施設コードがシミュレ ータ計算機に通知される。その後、シミュレータ計算 機では、インターロックロジック及び動特性モデルが 保存されているデータベースへのアクセスを切替える と共に監視制御盤と工程管理用計算機へ訓練対象の施 設コードを通知する。この切替え方法は、データベースへのアクセスを切 替えて訓練施設を切替えているので、将来、模擬施設 を追加する場合でも、対象施設のデータベースを追加 するだけで、容易に実現可能である。~43訓練対象の施設選択信号を受信した監視制御盤では、 メモリにロードする施設ソフトが切り替わり、再起動 することで訓練対象の施設が起動する。訓練対象の施設選択信号を受信した工程管理用計算 機では、訓練対象の施設用データベースが切り替わる ことで対象施設の訓練が可能となる。6.2 異なる施設間の連携模擬 - 本シミュレータは機能の同じシミュレータ2台(A 系、B系)で構成されており、どちらも5施設分の訓練 が可能である。A系とB系を異なる施設に設定するこ とで、A系とB系間でインターロック信号とプロセス 値を送受信し、施設間の連携訓練が実施できる。連携 対象とした組合せはDA系でAA建屋、B系でKA建 屋、2A系でAB建屋、B系でKA建屋である。Fig.2 に連携模擬の例を挙げる。A系シミュレータのV11からB系シミュレータの V12に溶液を移送する場合、B系から移送許可のイ ンターロック信号をA系に送信する。A系では移送許 可信号を受信しポンプを起動操作し、B系にポンプ運 転中信号と移送している溶液のプロセス値を送信する。 B系では、受信した溶液のプロセス値により、V12 内のプロセス値の変動を模擬する。A系シミュレータB系シミュレーターフーシ プロセス値運中V111V12許可Fig. 2 Example of cooperation simulation6.3 訓練速度の変更 - 運転訓練の中には、プロセスの過渡状態が長く、実 時間では10時間を越える場合がある。1回の運転訓 練の時間は約1時間程度に限られていることから、1 倍から30倍までの間で訓練速度を変更することで、 このように処理の長い運転訓練も可能となっている。訓練速度はインストラクタコンソールで設定される。 プラント動特性モデルでは、1回の処理周期内に、設 定された訓練速度分の演算処理を行うことで訓練速度が変更される。また、インターロックロジックについ ては、タイマーのカウント時間を設定された訓練速度 に合わせて1回の処理時間を増加することで、訓練速 度が変更される。7. プラント動特性モデルプラント動特性モデルは、プラント状態に合わせて 物質収支、熱収支等の演算を行い、物理法則を大きく 損ねずにプラント模擬を実現している。プラント動特性モデルにおいても各5施設の異常事 象を模擬するよう構成されている。各建屋における漏 洩事象、外部電源喪失などを模擬することから溶液移 送の物理化学特性、電気系もモデル化している。これ らモデルは、施設切替えに伴って切替えられることに なる。 * モデル作成においては、例えばタンク、移送機、漏 洩液受け皿など模擬する機器についてモデルの共通部 品を作成し、これらの共通部品のサブプログラムと清 澄機などの他工程にない部品とを組み合わせることで 工程全体のモデルを実現している。また、機器のモデ ルの実プロセスと一致させるレベルは模擬する内容に よって決められている。8.プラント動特性モデル開発・保守ツール- 再処理施設の今後の運転データの反映と模擬範囲の 拡張のため、プラント動特性モデルの開発・保守が容 易となるようオブジェクト指向のモデル生成ツールで あるMDS(model description system)を試験的に導入して いる[4]。Fig.3 に、MDS でのプラント動特性モデルプ ログラムの作成例を示す。タンク、ポンプ及び弁等のプロセス挙動について定 義しモジュール化する。オブジェクトモジュールを MDS ウィンドウ上に配置結線し、各オブジェクトの初 期値や定数を設定することでプログラムのソースコー ドが作成される。このように、視覚的にプラント動特 性モデルのプログラムが記述されので、容易にプログ ラミングが可能である。 - Fig.3 は、左上のタンクの初期値と定数を設定してい る様子を示している。なお、MDS 上でパラメータを変 更することで、プラント動特性の調整も容易に可能で ある。44モジュールの定義配置・結線初期値・定数設定コンパイル単体実行 インストールがUDS Var 3 アフィリスのおいしい3KmTAKTANKモリコール名: プロックス入だード入力プロセッサmantonFig. 3 Example picture of MDS9.あとがき東芝が開発した世界初の再処理施設用運転訓練シミ ュレータが納入先の日本原燃(株)により運用開始さ れている。このシミュレータは好評を得ており、ここ にその概要と特徴を紹介した。今後は、このシミュレータを継承発展させた再処理 施設総合訓練シミュレータの開発を目指し、今回得た 知見を元にさらに充実したシステムを開発していきた い。今後とも関係各位の一層のご指導、ご鞭撻をお願 いする次第である。 参考文献[1] 青柳ほか、六ヶ所再処理施設運転訓練シミュレータの開発(I)-開発と訓練一日本原子力学会 2004 1年春の年会予稿 B26 [2] 小澤ほか、六ヶ所再処理施設運転訓練シミュレータの開発(II) -訓練事象及びモデル化範囲一日本原 子力学会 2004 年春の年会予稿 B27 [3] 瀧澤ほか、六ヶ所再処理施設運転訓練シミュレー トータの開発 (II)-基本仕様とシステム構成一日本原 - 子力学会 2004 年春の年会予稿 B28 [4] 荒川ほか、六ヶ所再処理施設運転訓練シミュレータの開発(IV) - モデル開発・保守ツールの試験導 - 入一日本原子力学会 2004 年春の年会予稿 B2945“ “再処理施設運転訓練シミュレータの開発“ “高橋 秀樹,Hideki TAKAHASHI,中村 健二,Kenji NAKAMURA,荒川 秋雄,Akio ARAKAWA
された後に、精製建屋(以降AC建屋と述べる)にて 精製され、ウラン脱硝建屋(以降BA建屋と述べる) - 青森県六ヶ所村にある日本原燃(株)の再処理施設およびウラン・プルトニウム混合脱硝建屋(以降CA は原子力発電所の使用済燃料からウランとプルトニウ 建屋と述べる)で脱硝してウラン酸化物とウラン・プ ムを取り出すための国内初の商業用施設である。現在ルトニウム混合酸化物の2種類の製品が作られる。製 2007年の操業開始を目指して試運転中である。 品はウラン酸化物貯蔵建屋(以降BB建屋と述べる) - 東芝は、世界初となる再処理施設用運転訓練シミュ_およびウラン・プルトニウム混合酸化物貯蔵建屋(以 レータを開発し、日本原燃(株)に納入した。運転員 降CB建屋と述べる)に貯蔵される。 の訓練ではこの運転訓練シミュレータを使って、放射再処理施設には、上記の他に、各工程で発生した放 性物質の漏洩が発生した場合などの異常事象に対する 射性廃棄物を処理・貯蔵するための低レベル廃液処理 訓練が行われている[1]。建屋、低レベル廃棄物処理建屋、高レベル廃液ガラス -- 以下に、そのシステムの概要と特徴について紹介す 固化建屋(以降KA建屋と述べる)や各施設の運転・ る。監視を統括的に行う制御建屋 (以降AG建屋と述べる) などがある。
2.再処理施設概要AA建屋AB建屋AC建屋BA/BB 建屋 脱硝せん断ウランウラン 分離溶解プルト ニウム 分離ブルト ニウム 精製CA/CB建屋核分裂 生成物 分離貯蔵* 再処理施設は使用済燃料からウランとプルトニウム を取り出すために、複数の施設から構成されている。 再処理施設での使用済燃料受入から製品貯蔵までの処 理の概要を Fig.1 に示す。原子力発電所から輸送されて きた使用済燃料は使用済燃料受入れ・貯蔵建屋に受入 れられ貯蔵プールにて冷却・貯蔵される。使用済燃料 が、決められた冷却期間貯蔵され放射能が十分に弱ま った後に、前処理建屋(以降AA建屋と述べる)にて、 使用済燃料はせん断され硝酸で溶かされる。使用済燃 料の硝酸溶液は、分離建屋(以降AB建屋と述べる) にて、ウラン、プルトニウム、核分裂生成物とに分離再処理施設は使用済燃料からウランとプルトニウム を取り出すために、複数の施設から構成されている。 再処理施設での使用済燃料受入から製品貯蔵までの処 理の概要を Fig.1 に示す。原子力発電所から輸送されて れられ貯蔵プールにて冷却・貯蔵される。使用済燃料 が、決められた冷却期間貯蔵され放射能が十分に弱ま った後に、前処理建屋 (以降AA建屋と述べる)にて、 使用済燃料はせん断され硝酸で溶かされる。使用済燃Fig. 1Outline of reprocessing plant process連絡先:高橋秀樹、〒235-8523 横浜市磯子区新杉田町8、 (株)東芝 磯子エンジニアリングセンター電気計装設計部 保全計画担当、電話:045-770-2197、 e-mail:hideki7.takahashi@toshiba.co.jp屋と述べる)で脱硝してウラン酸化物とウラン トニウム混合酸化物の2種類の製品が作られる。 はウラン酸化物貯蔵建屋(以降BB建屋と述べる よびウラン・プルトニウム混合酸化物貯蔵建屋再処理施設には、上記の他に、各工程で発生した放 射性廃棄物を処理・貯蔵するための低レベル廃液処理 建屋、低レベル廃棄物処理建屋、高レベル廃液ガラス 固化建屋(以降KA建屋と述べる)や各施設の運転・ 監視を統括的に行う制御建屋(以降AG建屋と述べる) などがある。AA建屋AB建屋AC建屋BA/BB 建屋 脱硝せん断ウランウラン 分離溶解ブルト ニウム 分離ブルト ニウムСАГС В建屋核分裂 生成物戰敲Fig. 1Outline of reprocessing plant process-423. 再処理施設制御系構成再処理施設では、AG建屋の中央制御室に集中設置 された監視制御盤で運転・監視が行われる。中央制御 室では、ブロックと呼ばれる馬蹄形をした各施設の監 視制御盤が6つ配置されている。各ブロックには、各 施設のデータを収集・管理する工程管理用計算機が設 置され、工場全体を統括管理する当直長業務支援の盤 に連結されている。 再処理施設のプロセス制御系は、プロセスデータの 収集及び運転インターロックを制御する制御装置、安 全系監視制御盤、現場機器等から構成されている。4.模擬範囲ウラン試験以後の運転に向けた効果的な訓練のため には、訓練事象の選定と選定事象のプロセスを模擬す る範囲を確定することが重要である[2]。訓練事象の選 定に際しては安全性確保評価の見地から、ウラン試験 前に訓練が必要な異常事象を以下の基準により、AA 建屋、AB建屋、AC建屋、CA建屋、KA建屋での 5事象、17シナリオを選定している。 (1) 運転時の異常な過渡変化事象の内、最大許容限度 1日までの時間余裕が1日以内で運転員対応が期待されるもの。 (2) 運転時の異常な過渡変化を超える事象については設計基準事象の中から選定し、評価シナリオ上運転員対応が期待されるもの。 (3) 設計基準外事象については、結果の重大性を考慮し、ヒューマンエラーの観点から訓練すべきもの。また、AA建屋、AB建屋、AC建屋については再 処理施設の主工程となるので、工程の起動/停止操作 や異常に関する短期停止操作等も実施可能とする。5. 運転訓練シミュレータ構成* 本シミュレータでは、運転の臨場感を損なわないよ うに実機同等のマンマシンインターフェースが採用さ れている[3]。プロセスの動特性やインターロックロジ ックについては、シミュレータ計算機で模擬されてい る。プロセスの動特性モデルは、実機の設計データから製作されており、インターロックロジックは、実機 ロジックをシミュレータ用に自動変換して製作されて いる。現場機器については模擬操作補助装置にて操作 可能となっている。 - Table 1に運転訓練シミュレータの主な構成機器の 機能と実機との比較を示す。ータの主な構成機器のTable1 Comparison of simulator and real plant functions役割機器機能実機との比較再処理施設の各施設の 監視制御盤美機同等 運転・監視を行う安全上重要な操作、計実機同等。但し、安全 安全系監視 運転・監視器の表示及び警報を動「評価上必要な計器及び |制御盤 作させるスイッチを模擬模擬操作補|現場操作を模擬する」「なし 助装置プラント運転のイン インターロックロジッ シミュレー ターロックロジック、「クについては制御装置 夕計算機 |動特性モデル等を模擬」が実現。動特性につい するては実プロセス。 プラント制御統合コント 監視制御盤とシミュローラ レータ計算機間のゲーなし (ゲート | |トウェイ機能を有する インストラ Tシミュレーション状態なし クタ計算機の制御を行う。 工程管理用 各施設のデータを収集雲機同等 計算機 し、監視する プラントデー タ収集当直長業務 各工程管理用計算機で 支援用計算「収集したデータを統括 実機同等して管理する6 運転訓練シミュレータの特徴 6.1 複数施設の訓練 * 本シミュレータでは、再処理施設のAA、AB、A C、CA、KA建屋の5施設分の訓練が、模擬施設を 切替えることで実施可能である。施設切替えの対象と なる機器は、1シミュレータ計算機、2監視制御盤、 3工程管理用計算機である。インストラクタがインストラクタコンソールにて施 設切替え要求対話プログラムを起動し、訓練する施設 を選択することで、訓練対象の施設コードがシミュレ ータ計算機に通知される。その後、シミュレータ計算 機では、インターロックロジック及び動特性モデルが 保存されているデータベースへのアクセスを切替える と共に監視制御盤と工程管理用計算機へ訓練対象の施 設コードを通知する。この切替え方法は、データベースへのアクセスを切 替えて訓練施設を切替えているので、将来、模擬施設 を追加する場合でも、対象施設のデータベースを追加 するだけで、容易に実現可能である。~43訓練対象の施設選択信号を受信した監視制御盤では、 メモリにロードする施設ソフトが切り替わり、再起動 することで訓練対象の施設が起動する。訓練対象の施設選択信号を受信した工程管理用計算 機では、訓練対象の施設用データベースが切り替わる ことで対象施設の訓練が可能となる。6.2 異なる施設間の連携模擬 - 本シミュレータは機能の同じシミュレータ2台(A 系、B系)で構成されており、どちらも5施設分の訓練 が可能である。A系とB系を異なる施設に設定するこ とで、A系とB系間でインターロック信号とプロセス 値を送受信し、施設間の連携訓練が実施できる。連携 対象とした組合せはDA系でAA建屋、B系でKA建 屋、2A系でAB建屋、B系でKA建屋である。Fig.2 に連携模擬の例を挙げる。A系シミュレータのV11からB系シミュレータの V12に溶液を移送する場合、B系から移送許可のイ ンターロック信号をA系に送信する。A系では移送許 可信号を受信しポンプを起動操作し、B系にポンプ運 転中信号と移送している溶液のプロセス値を送信する。 B系では、受信した溶液のプロセス値により、V12 内のプロセス値の変動を模擬する。A系シミュレータB系シミュレーターフーシ プロセス値運中V111V12許可Fig. 2 Example of cooperation simulation6.3 訓練速度の変更 - 運転訓練の中には、プロセスの過渡状態が長く、実 時間では10時間を越える場合がある。1回の運転訓 練の時間は約1時間程度に限られていることから、1 倍から30倍までの間で訓練速度を変更することで、 このように処理の長い運転訓練も可能となっている。訓練速度はインストラクタコンソールで設定される。 プラント動特性モデルでは、1回の処理周期内に、設 定された訓練速度分の演算処理を行うことで訓練速度が変更される。また、インターロックロジックについ ては、タイマーのカウント時間を設定された訓練速度 に合わせて1回の処理時間を増加することで、訓練速 度が変更される。7. プラント動特性モデルプラント動特性モデルは、プラント状態に合わせて 物質収支、熱収支等の演算を行い、物理法則を大きく 損ねずにプラント模擬を実現している。プラント動特性モデルにおいても各5施設の異常事 象を模擬するよう構成されている。各建屋における漏 洩事象、外部電源喪失などを模擬することから溶液移 送の物理化学特性、電気系もモデル化している。これ らモデルは、施設切替えに伴って切替えられることに なる。 * モデル作成においては、例えばタンク、移送機、漏 洩液受け皿など模擬する機器についてモデルの共通部 品を作成し、これらの共通部品のサブプログラムと清 澄機などの他工程にない部品とを組み合わせることで 工程全体のモデルを実現している。また、機器のモデ ルの実プロセスと一致させるレベルは模擬する内容に よって決められている。8.プラント動特性モデル開発・保守ツール- 再処理施設の今後の運転データの反映と模擬範囲の 拡張のため、プラント動特性モデルの開発・保守が容 易となるようオブジェクト指向のモデル生成ツールで あるMDS(model description system)を試験的に導入して いる[4]。Fig.3 に、MDS でのプラント動特性モデルプ ログラムの作成例を示す。タンク、ポンプ及び弁等のプロセス挙動について定 義しモジュール化する。オブジェクトモジュールを MDS ウィンドウ上に配置結線し、各オブジェクトの初 期値や定数を設定することでプログラムのソースコー ドが作成される。このように、視覚的にプラント動特 性モデルのプログラムが記述されので、容易にプログ ラミングが可能である。 - Fig.3 は、左上のタンクの初期値と定数を設定してい る様子を示している。なお、MDS 上でパラメータを変 更することで、プラント動特性の調整も容易に可能で ある。44モジュールの定義配置・結線初期値・定数設定コンパイル単体実行 インストールがUDS Var 3 アフィリスのおいしい3KmTAKTANKモリコール名: プロックス入だード入力プロセッサmantonFig. 3 Example picture of MDS9.あとがき東芝が開発した世界初の再処理施設用運転訓練シミ ュレータが納入先の日本原燃(株)により運用開始さ れている。このシミュレータは好評を得ており、ここ にその概要と特徴を紹介した。今後は、このシミュレータを継承発展させた再処理 施設総合訓練シミュレータの開発を目指し、今回得た 知見を元にさらに充実したシステムを開発していきた い。今後とも関係各位の一層のご指導、ご鞭撻をお願 いする次第である。 参考文献[1] 青柳ほか、六ヶ所再処理施設運転訓練シミュレータの開発(I)-開発と訓練一日本原子力学会 2004 1年春の年会予稿 B26 [2] 小澤ほか、六ヶ所再処理施設運転訓練シミュレータの開発(II) -訓練事象及びモデル化範囲一日本原 子力学会 2004 年春の年会予稿 B27 [3] 瀧澤ほか、六ヶ所再処理施設運転訓練シミュレー トータの開発 (II)-基本仕様とシステム構成一日本原 - 子力学会 2004 年春の年会予稿 B28 [4] 荒川ほか、六ヶ所再処理施設運転訓練シミュレータの開発(IV) - モデル開発・保守ツールの試験導 - 入一日本原子力学会 2004 年春の年会予稿 B2945“ “再処理施設運転訓練シミュレータの開発“ “高橋 秀樹,Hideki TAKAHASHI,中村 健二,Kenji NAKAMURA,荒川 秋雄,Akio ARAKAWA