原子炉容器上蓋管台検査技術のサイジング性評価

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カテゴリ: 第2回
1. 緒言
PWR の原子炉容器上蓋は、制御棒駆動装置を取り付 けるための管台が低合金鋼の上蓋に溶接された構造を 有し、近年、海外プラントにおいて、Alloy 600 を使用 した上蓋管台母材部に応力腐食割れ(SCC)の発生が 報告されている。 - 上蓋管台母材部に、SCC き裂が発生した場合には、 SCC き裂のサイジング後、必要に応じて環境遮断クラ ッド溶接が施工される。SCC 発生の対策として、超音 波探傷試験 (UT) 及び渦流探傷試験 (ECT) による SCC き裂のサイジング性、及び、継続監視のために環境遮 断クラッド溶接施工後における残存SCCき裂の検出性 を確認しておくことは重要である。 本報告では、管台内面からの検査による管台母材 SCC き裂に対するサイジング性、及び、環境遮断クラッド 溶接下の SCC き裂の検出性、さらに、管台内面からJ 溶接金属部内への超音波の透過性について、WesDyne International 社製検査システムによる試験結果を報告する。
2. 試験手順* Fig.1 には、試験手順を示す。SCC については、探傷 後、破壊試験を実施し、判定結果と破壊結果を比較す ることにより、サイジング性を評価した。Fabrication of specimenーーーーーーーーン!Repaired by weldingFlat bottom hole (FBH), SCC (w/o repair)Inspection and AnalysisSCC (with repair)FBHSCCDestructive testEvaluationFig.1 Experimental Procedure493. 試験体3.1 管台母材部 SCC き裂試験体SCC き裂に対するサイジング性試験を目的として、 Alloy 600 母材(半割り状態。内径約 70mm、厚さ約 16mm)に対し、腐食液に浸漬することにより SCC き 裂を付与した。 - Fig.2 に示すように半割れの管台模擬試験体に対し、 長さ、深さをパラメータとした内面軸方向 SCC(12体)、 外面軸方向 SCC(2体)を製作した。(1) ID SCC(2) OD SCC Fig.2 Schematic drawing of specimens with SCC- SCCJ-weldDistance between nozzle ODand bottom Flat bottom hole(1.3, 2.2, 3.2, 5.4, 8.5mm) (3mm diameter) .... (2) OD SCC wing of specimens with SCCFig.4 Schematic drawing of specimens with flatbottom hole in J weld ■ド溶接下 SCT I烈討論点 3.2 環境遮断クラッド溶接下 SCC き裂試験体環境遮断クラッド溶接下のSCCき裂の検出性試験を 目的として、環境遮断クラッド溶接下に SCC を有する 試験体を製作した。 - 前項と同じように製作した内面軸方向 SCC き裂 (測 定深さ 5mm 以上、3体)に対し、軸方向 75mm、周方 向 50mm、内面から深さ 5mm の領域を除去した後、 Alloy 690 溶加材による3層の環境遮断クラッド溶接を 実施し、試験体(3体)を製作した。Fig.3 には試験体 の概念図を示す。SCC*Repair welding (75mm x 50mm x 5mm)SCCA-A'Fig.3 Schematic drawing of specimens with SCCUnder repair weldingFig.33.3 J溶接部付きモックアップ 管台内面から J溶接金属内への超音波の透過性を確 認することを目的とし、J溶接部付モックアップに対し て、Fig.4 に示す平底穴を付与した。J溶接部は、Alloy 600 系溶接棒による被覆アーク溶接により、Alloy 600 製管台を低合金鋼の原子炉容器上蓋に多層溶接したも のである。 周方向き裂を模擬するため、き裂形状は反射面(底 面)が管台中心方向としている。平底穴は管台外面か らの距離をパラメータとした5種類を加工した。4. 探傷 4.1 探傷装置」探傷には WesDyne International 製検査装置のギャッ プスキャナ及びオープンハウジングを使用した[1]。 - ギャップスキャナはサーマルスリーブのある管台に 適用され、ECT または TOFD-UT 機能を有するプロー ブを管台とサーマルスリーブの隙間に挿入し探傷を行」 う装置である。オープンハウジングはサーマルスリーブのない管台 に適用され、ECT、垂直 UT 及び TOFD-UT 機能を有す るプローブを管台内へ挿入し探傷を行う装置である。ECT は管台内面の欠陥検出及び長さサイジングに使 用され、TOFD-UT は欠陥検出及び深さサイジングに使 用される。4.2 探傷方法試験時の探傷方法を Fig.5に示す。オープンハウジン グでは、スタンドに固定された試験体にプローブを挿 入することにより自動探傷を実施した。ギャップスキ ャナの場合には、ダミーサーマルスリーブを取り付け ることにより隙間を構成し、自動探傷を実施した。Dummy thermal sleeve SpecimenSpecimenStandStandInsertion of probe Insertion of probe Fig.5 Schematic drawing of experimental setupECT の場合、表面き裂を対象としているため、内面 き裂に対して適用した。 * UT の場合、ギャップスキャナには、内面からの距離 に応じて、3 種類のプローブがある。内面き裂に対し ては、すべての種類のプローブを使用し、外面の信号 源(外面のき裂 SCC 及びJ溶接部の平底穴)に対して は、外面側に感度を有するプローブを用いた。また、環境遮断クラッド溶接の試験体に対しては、 サーマルスリーブを取り外した状態で補修溶接が実施 されることから、オープンハウジングのみを試験対象とした。5. 試験結果 5.1 管台母材部のき裂サイジング性Fig.6には、一例として、オープンハウジングによる ECT、UT 信号、及び、試験体の破壊観察結果を示す。 ECT によるき裂長さ、UT によるき裂深さの判定後、 試験体を破壊し、き裂の長さ及び最大深さを測定した。 * Fig.7 には、ECT によるき裂長さ評価結果を示す。横 軸に破壊試験による実測値、縦軸に判定値を示し、誤 差評価を実施したものである。き裂長さの判定では、 信号の最大値に対する半価値をき裂長さと評価した。 RMS 誤差は約 4.4mm であり、十分な精度を有する結 果であった。Fig.8 には、UT によるき裂深さ評価結果を示す。ギ ャップスキャナの場合には、3 種類の判定結果のうち 最大き裂深さを採用した。なお、外面き裂については、 管内面一き裂先端距離を評価対象としている。RMS 誤差は 0.75mm であり、UT によるき裂深さは 精度良く評価できており、また、過小評価となるよう な傾向は認められなかった。Destructive results Length: 74mm Maximum depth: 7.6mmAxial ID SCC(1) Picture of specimen(2) Destructive test(cross section)Evaluation Length: 68mmMaximum depth: 7.3mm150311 1015.05(Cinc(3) ECT result(4) UT resultFig.6Example of results for ID SCC specimenby Open housingNumber of data18Average error-3.4 mmStandard deviation2.79mmRMS error4.38mm75? Open housing A Gap scanner? Open housing A Gap scannerEevaluated length by ECT (mm)25150Actual length (mm) Fig.7 Result of crack length sizing by ECTNumber of dataAverage error Standard deviationRMS error28 0.14 mm 0.75 mm 0.75mm? Open housing A Gap scanner下の残 これに 溶接下 対し、 き裂の 確認が管台 径約3 プンバ ャナでEvaluated depth by UT (mm)謝辞本試力株式 0 5 _ 10 15日本原 Actual depth (mm)ある。 Fig.8 Result of crack depth sizing by UT Fig.8 5.2 環境遮断クラッド溶接下のき裂確認性オープンハウジングの UT による環境遮断クラッド」 溶接下のき裂確認性試験として、3 体の試験体に対し て各4回測定した結果、いずれもき裂先端位置の確認 が可能であった。5.3 J溶接部内部への超音波透過性 J溶接内への超音波は、直径約 3mm の EDM 平底穴 を用いて確認した結果、オープンハウジングでは管台 外面から 8mm、ギャップスキャナでは 3mm まで透過 することを確認できた。 6.6.結論管台母材部の SCC き裂に対して、ECT によるき裂長 さサイジングの有効性(RMS 誤差約 4.4mm)及びき裂 深さサイジングの有効性(RMS 誤差 0.75mm)が確認 できた。また、外面き裂についても内面き裂と同等の 深さサイジング性であった。 * 実機において管台母材にき裂が発生した場合に、き 裂のサイジングは、保守的に評価しても十分な精度を 有すると評価できるものである。オープンハウジングにより、環境遮断クラッド溶接 下の残存 SCC き裂先端部の位置が確認できた。 これにより、UT(TOFD 法)により環境遮断クラッド 溶接下の残存 SCC き裂確認が可能と評価でき、き裂に 対し、環境遮断クラッド溶接工法を適用した場合に、 き裂の初期位置が取得可能であり、供用期間中の継続」 確認が可能であると評価できるものである。管台母材内面からのJ溶接金属内への超音波は、直 径約3mm の EDM 平底穴を用いて確認した結果、オー プンハウジングでは管台外面から 8mm、ギャップスキ ャナでは 3mm まで透過することが確認できた。* 本試験は PWRS 電力(関西電力株式会社、北海道電 力株式会社、四国電力株式会社、九州電力株式会社、 日本原子力発電株式会社)の協力を得て行ったもので ある。 参考文献[1] Donald C. Adamonis et al., “Advanced NondestructiveExamination Technologies for Alloy 600 Components”, 2004 ASME/JSME Pressure Vessel and Piping Conference, July 25-29, 2004, San Diego, California“ “原子炉容器上蓋管台検査技術のサイジング性評価“ “松本 博,Yoshihiro MATSUMOTO,勝又 俊介,Ryosuke KATSUMATA,田中 昌幸,Masayuki TANAKA,泉田 博幸,Hiroyuki IZUMIDA,原田 豊,Yutaka HARADA,村上 龍兒,Ryuji MURAKAMI
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