複合材中のはく離欠陥の検出に対する受動型電気ポテンシャルCT法の適用

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カテゴリ: 第2回
1.緒言
CFRP に代表される積層複合材料は、優れた比強度 と比弾性等優れた特性を持ち,次世代の構造材料とし て期待されているが,面外からの衝撃等により,層間 はく離を生じやすいことが知られている.層間はく離 を生じた積層複合材は圧縮強度が著しく低下するた め,構造材料としての信頼性を確保するには,層間は く離の検出・同定技術が不可欠である.さらに,オン ラインではく離欠陥のモニタリングが可能になれば, 構造材料としての信頼性は飛躍的に向上する オンラ インでの欠陥モニタリングを可能とする手法として, 圧電材料(1)を用いた受動型電気ポテンシャル CT 法 が提案されている[2-51. 受動型電気ポテンシャル CT 法は, 構造部材に荷重が加わるとき, 部材表面に生じ るひずみ分布に内部欠陥の影響が反映することを利 用した手法である.ひずみに応じて電圧を発生する高 分子フィルム(ピエゾフィルム) を部材表面に貼り付 け,負荷時に現れるピエゾフィルム表面の電気ポテン シャル分布をもとに逆解析手法を用いて部材中の欠 陥の位置,形状および寸法を推定する.本研究では,複合材料中のはく離欠陥の検出・同定に対して, 受動 型電気ポテンシャル CT 法の適用を試みた.まず,帯 状の貫通はく離を有する CFRP 積層板に, 三点曲げに よって負荷を加え, ピエゾフィルム表面に表れる電気 ポテンシャル分布を、有限要素法による数値解析およ び測定実験により調べた. 次に,測定された電気ポテ ンシャル分布に逆問題解析を適用し,はく離の同定を 試みた. 2.電気ポテンシャルの有限要素解析 2.1 解析モデルCFRP 積層板中のはく離欠陥がピエゾフィルム表 面の電気ポテンシャル分布に与える影響を,有限要素 法による数値解析により調べた.解析モデルは, Fig. 1に示すように,板幅方向に貫通した帯状はく離を有 する CFRP 積層板の表面に PVDF フィルムを貼り付 けたもので,次節で述べる実験における試験片をモデ ル化したものである. 積層板は 160 mm, 幅 60 mm, 厚さ 0.19 mm の一方向強化単層板を配向角[(-45° 10°/45°/90)1, の 40 層構成で積層した擬似等方性板 であり, ピエゾフィルムは厚さ 52 km の PVDF フィ
E (GPa)
138_Ez(GPa) 19. 1Table 1 : Material properties of lamina Ez(GPa) viz V2 V3 G (GPa) 9 .1 0 .32 0.32 0.02 4.8G2(GPa)3.4Gz(GPa)4.8Table 2 : Material properties of PVDF(a)Elastic properties (GPa) CIM_C_C_C_C_ C_CsCG | 3.61 1.61_ 1.42 3.13 1.60 5.50 0.590 0.690 |(b) Piezoelectric coefficient properties (mC/m2)1124103-15.9|.19 -16.2 -12.7 (c) dielectric properties(nC/Vm)1. g1143322 0.10630.0010640.1063Piezoelectic film (PVDF)9.L0.052 mmPiezoelectric film リーラ1st layer 2nd layer0.19 mmDelaminationi-th layer (i+1)-th layerDelamination160Delaminationp(a) Overall figure(b) Z-X cross-section Fig. 1: Composite laminate for numerical analyses.ルムである. 簡単のため,帯状はく離の前縁は直線状 ぞれ 10 mm と 45 mm に固定し,はく離深さが d= で,かつ板長手方向に対して垂直であると仮定する.. [10|11], [2021]および [30|31]の三通りの欠陥材,およ このような場合,はく離は,はく離の長さ,はく離の びはく離が存在しない健全材について三点曲げ負荷 長手方向の位置およびはく離の層間深さを定めれば, 時にピエゾフィルム表面に生じる電気ポテンシャル 一意に表される.そこで,はく離を表すはく離パラメ を計算した.三点曲げの中心支点に加えた荷重は合計 ータ (a, X, d) を Fig. 1(b)に示すように定義する.す 980 N の等分布荷重とし,電気的境界条件としてピエ なわち,はく離半長を a (mm),はく離左縁の長手方 ゾフィルムと積層板との界面の電位を 0 とした.解 向の位置を X (mm),はく離の深さをdとする.は 析に用いた CFRP 単層板および PVDF フィルムの物 く離深さに関しては, ピエゾフィルムを貼付した面か 性値はそれぞれ, Table 1, Table 2 に示す通りであり, ら数えて第i層と第(i+1)層の間にはく離が存在す 次の節で述べる実験における値に準じている. る場合を d = [ili+1]のように表記するものとする. 2.2 ポテンシャル分布の計算結果 本研究では,はく離半長 a とはく離の位置 Xをそれ 数値解析によって得られたX軸上の電気ポテンシTTTTTTTNo delamination-- d = [10|11] ----- d = [20|21]- d = [30|31]Normalized electric potential, o(0)Delamination area 140 50 60 70 80 90 100 110 120Location, X(mm) Fig. 2 : Calculated distribution of electric potential, o C)ヤル分布を荷重点直下(X = 80 mm )におけるポテン シャル値で除することにより,無次元化したものを, Fig. 2 に示す.無次元化された電気ポテンシャル値を 基準化ポテンシャルと呼び,ゆで表すものとする. ま た,数値計算による量には上付き添え字(C)をつけて 表すものとする. Fig. 2 より,はく離が存在する場合 のポテンシャル分布では, 健全材におけるポテンシャ ル分布に比較して,はく離端付近で特徴的な変化が現 れており,はく離の影響がポテンシャル分布に現れて いることがわかる.はく離が電気ポテンシャル分布に与える影響を評 価する量として,次式で定義される基準化ポテンシャ ル分布差ap()を導入した.ap(X) = (X) - D(X)-1ここで,Q(1) ははく離が存在する場合の基準化ポ テンシャル分布,中。(1) ははく離が存在しない健全 材における基準化ポテンシャル分布である.数値解析 によって得られた基準化ポテンシャル分布差AQ(1) を Fig. 3 に示す.Fig.3 より,電気ポテンシャル分布 は、はく離の両端付近においてはく離の深さdに応じ た特徴的変化を示すことがわかる.例えば,d = [10 |---- d = [10|11] ----- d = [20/21] ------- d = [30|31]Difference in normalized electric potential AQ (C)-0.14 Delamination area 40 50 60 70 80 90 100 110 120Location, X(mm) Fig. 3 : Difference in distribution of calculated electric potential, A (C)11]の場合に得られるの分布では、はく離の左縁およ び右縁付近のいずれにおいても,はく離縁を挟むよう に極大値と極小値が表れている.一方, d = [20 | 21] および[30|31]の場合に得られるAの分布は,はく離縁 で極大値, 右縁に極小値を取り,現れる極値の数は合 計二つである。3.電気ポテンシャルの測定実験 13.1 実験方法帯状のはく離を導入した CFRP 試験片の表面に, ピ エゾフィルムを貼り付け,三点曲げによって生じるピ エゾフィルム表面上の電気ポテンシャル分布を測定 した.使用した CFRP 試験片は, 一方向強化プリプレグを [(-45°/0°/45°/9005] の 40 層構成で積層した擬似等 方性板である. 試験片には,層間にフッ素樹脂フィル ム(厚さ 50 m)を層間に挟み込んで成型することに より,板幅方向に貫通した帯状のはく離を人工的に導 入した. 試験片の表面には、 厚さ 52 m の PVDF フィ ルムを貼り付けた. PVDF フィルムの試験片に接着す る側の面は、同電位に保つために Ni-Cu スパッタリン グによって電極加工されている.試験片寸法とピエゾ フィルムの貼り付け位置を Fig. 4 に示す. 人工はく離1000.052Sputterd with Ni-CuPVDF filmDelaminationFig. 4: Configuration of specimen.160|X = 45 |カDelaminationPiezoelectric filmR8.9/30LoadFig. 5 : Experimental set-upの半長 a は 10 mm とし,はく離深さ d については,d = [10|11], [20|21]および [30|31]の三通りの欠陥材につ いて測定を行なった.上記の試験片に三点曲げによって平均荷重 980N, 応力振幅 490N, 周波数 3Hzの正弦波変動荷重を与え, ピエゾフィルム表面に生じる電気ポテンシャル分布 を,試験片の中心線 X 軸に沿って非接触電位計によ って測定した.試験片は,Fig. 5 に示すように,三点 曲げジグに対してはく離の左端位置が X = 45 mm と なるように設置してある. 3.2 測定結果 ? 測定されたポテンシャル分布を Fig.6に示す. 解析d = [10|11] -- d = [2021]d = [30[31]Normalized electric potential, omDelamination area 40 50 60 70 80 90 100 110 120Location, \(mm) Fig. 6 : Measured distribution of electric potential, o (m)0.15............dd = [10|11] -- d = [20|21] -- d = [30|31]Difference in normalized electric potential AQ (m)TTTと-0.1Delamination area 40 50 60 70 80 90 100 110 120Location, X(mm) Fig. 7 : Difference in distribution of measured electric potential, A? (m)値同様,荷重点直下 ( X = 80 mm )における値で無 次元化した基準化ポテンシャル分布ので示した.また, 測定量に関しては,上付き添え字(m)をつけて表すも のとする. Fig. 6 より,荷重点に対して左側のはく離 が存在する部分と,右側の健全部ではポテンシャル分 布に明らかな相違がみられ,はく離の影響がポテンシ ャルの測定値に現れていることがわかる.ここで, 式 (1)で定義された基準化ポテンシャル分布差AQ(1を測定値に対しても求め,Fig.7に示す.ただし,無欠4. はく離の同定 角材に対する基準化ポテンシャル分布差込口。(X) は, - 4.1 はく離の同定手法 負荷の対称性を利用し,はく離の影響を強く受けてい 基準化ポテンシャル分布△ゆに逆問題解析手法とし ないと考えられる中心支点直下より右側のポテンシ て残差最小化法を適用し,はく離の同定を試みた. 残 ャル分布に 4 次関数をフィッテングすることにより 差最小化法では、測定で得られたポテンシャル分布と 求めた. Fig.7 より,測定されたポテンシャル分布に はく離パラメータをある値の組み合わせに仮定した おいても,解析同様に,はく離の両端付近においては ときに数値計算で得られるポテンシャル分布の違い く離の深さ d に応じた特徴的な変化を示すことがわ を次式に示す残差平方和 R.で評価する. かる.例えば, d=[10|11]の場合に得られるA0分布 では、はく離の左縁および右縁付近のいずれにおいて 2(ao, m) - ao, (a,x,d)) も,はく離縁を挟むように極大値と極小値が表れてお り,解析と同様の傾向を示す.一方, d = [20|21]およ ここで,iは測定点番号を表し,すべての測定点につ ド[30|31]の場合に得られるAの分布においても,はく いて和を取ることを示している. 測定で得られたポテ 離縁で極大値, 右縁に極小値を取り,解析と同様の傾 ンシャル分布差が...(Y)に対して,R, が最小となるは 向を示すことがわかる.く離パラメータの組み合わせ(a, X, のを修正パウエ 定値に対しても求め,Fig.7 に示す.ただし,無欠 4. はく離の同定 材に対する基準化ポテンシャル分布差込中。() は, 4.1 はく離の同定手法 負荷の対称性を利用し,はく離の影響を強く受けてい 基準化ポテンシャル分布△印に逆問題解析手法としいと考えられる中心支点直下より右側のポテンシ て残差最小化法を適用し,はく離の同定を試みた.残 ・ル分布に 4 次関数をフィッテングすることにより 差最小化法では,測定で得られたポテンシャル分布と 定めた. Fig.7 より,測定されたポテンシャル分布に はく離パラメータをある値の組み合わせに仮定した おいても,解析同様に,はく離の両端付近においては ときに数値計算で得られるポテンシャル分布の違い - 離の深さ d に応じた特徴的な変化を示すことがわ を次式に示す残差平方和 R, で評価する. いる.例えば, d= [10 | 11]の場合に得られるAの分布 では、はく離の左縁および右縁付近のいずれにおいてR = 2 (40, 0) - am (a,c,d)) ,はく離縁を挟むように極大値と極小値が表れてお , 解析と同様の傾向を示す.一方, d = [20|21]およ ここで,iは測定点番号を表し,すべての測定点につ [30|31]の場合に得られる公平分布においても,はく いて和を取ることを示している. 測定で得られたポテ 誰縁で極大値, 右縁に極小値を取り,解析と同様の傾 ンシャル分布差ムのCM(V)に対して,R, が最小となるは 司を示すことがわかる.く離パラメータの組み合わせ(a, X, のを修正パウエ 以上のことから,実験および数値解析から得られる ル法[6]で探索し,これをはく離パラメータの推定値 準化ポテンシャル差込口を比較することにより,はとした. こ離パラメータ(a, X, d)を推定し,はく離を同定でき * 4.2 はく離の同定結果 う可能性が示された.実験で用いた CFRP 中の人工はく離欠陥を上記の 手法で同定した結果を示す.試験片における実際のはDelamination parametersTable 3: Estimated parameters of delaminations.(a) Delamination 1 a(mm) X. (mm) X. + a(mm) d 10.0 45.0 55.0[10|11] 11.2 43.344.5[89]Residual (R)ActualEstimatedError10.12-1.7 mm+0.5 mm2/40 layer2.78×10elamination 2Delamination parametersActualdResidual (R.) [2021] [3031] 。 10/40 layer1.47×10-EstimatedErrora (mm) X. (mm) X6 + a(mm) 10.0 45.0 55.0 8.7 47.3 56.0 -13% +2.3 mm +0.5 mm(c) Delamination 3 a(mm) Xc (mm) Xc + a(mm) 10.0 45.0 55.0. 146.655.7 -9% +1.6mm +0.7 mmDelamination parametersdResidual (R)ActualEstimated19[30|31] [25|26] 5/40 layer1.43 × 102ErrorDelamination parametersResidual (RG)Actuala (mm) 10.0 11. 2 +12%d [10|11] [89] /40 layerEstimatedError22.78×10Delamination parameters Actual Estimated Errora (mm) 10.0 8.7 -13%(a) Delamination 1 X. (mm) X. + a(mm) 45.0 55.0 43. 344.5 -1.7 mm +0.5 mm(b) Delamination 2 Xc (mm) X. + a(mm) 45.0 55.0 47.3 56.0 +2.3 mm +0.5 mm_(c) Delamination 3 Xc (mm) Xc + a(mm) 45.0 55.0 46.6 55.7dResidual (Rs) [20121] [3031] 10/40 layer1.47× 10Delamination parametersa(mm) 10.0ActualdResidual (R) [3031] [25|26] 5/40 layer1.43 ×1029.1Estimated Error-9%+1.6mm+0.7mm57 -_離パラメータは以下の通りである. relamination 1 : (a, X, d) = (10, 45, [10|11) Melamination 2 :(a, X, d)=(10, 45, [20[21]) elamination 3 :(a, X, d) = (10, 45, [30/3 1]) これぞれのはく離について,推定されたはく離パラメ ータを Table 3 に示す.いずれの場合についても,は離の大きさ a については, 10%前後の誤差で推定さ している.また,はく離の位置に関しては,はく離の ■心の位置 (X + a)を基準に考え,実験の位置合わせ 旨度等を考えると,実質的な誤差はほとんど無いことわかる.はく離の深さに関しては,最もはく離が浅 ・位置にある d = [10|11]の場合において,残差平方和 - が最も大きくなっているにもかかわらず,良い精で推定されていることがわかる.これは、浅い位置 こはく離がある場合,はく離深さの推定精度は測定誤 や外乱に鈍感であることを意味する.一方,はく離 中立面にある d = [20/21]である場合と,深い位置に っる d = [30/31]である場合においては,推定されたは 離深さと実際のはく離深さが逆転してしまってお ,はく離深さの区別ができていない.以上のことか , はく離の寸法や位置に関しては、はく離深さによ ず正確な推定が可能である一方で,はく離の深さに いては, はく離が深い位置にあるほど推定が困難に ることがわかる.structures““, Materials Science Research International,Vol. 6,2000, pp.41-48. [3] D. Shiozawa, S. Kubo, T. Sakagami and K. Okuno,““An experimental study on applicability of passive electric potential CT method to crack identification.““, J. Soc. Material Science Japan, Vol. 8, 2000, pp.926-931. [4] D. Shiozawa, S.Kubo and T.Sakagami, ““Passive electric potential CT method using piezoelectric material for crack identification““, Inverse Problems in Science and Engineering, Vol. 12 , 2004, pp.71-79. [5] D.Shiozawa, S.Kubo and T. Sakagami, ““An experimental study on applicability of passive electric potential CT method to crack identification““, Proc. ofATEM'03, September 2003, paper\#OSO9W0285. [6] W.I. Zangwill, ““Minimizing a function without calculating derivations““, Computer J., Vol. 7, 1964, pp. 149-154.本研究では, ピエゾフィルムを用いた受動型電気ポ ンシャル CT 法を積層型複合材料に適用し,はく離 陥の同定を試み, 帯状はく離について寸法と位置が く離深さによらず推定可能であることを示した.は 離の深さについては,はく離が深い位置にあるほど 定が困難になることがわかった. =考文献 IEEE Standard on piezoelectricity, 1987, ANSI/IEEE, Std. 176. L. Shanqing, S. Kubo, T. Sakatami and L. Zhengxing, ““Theoretical and numerical investigations on crack identification using piezoelectric material-embedded58 -“ “複合材中のはく離欠陥の検出に対する受動型電気ポテンシャルCT法の適用“ “中谷 健作,Kensaku NAKATANI,久保 司郎,Shiro KUBO,阪上 隆英,Takahide SAKAGAMI
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