引張試験片磁化特性装置を用いた強磁性材の機械特性非破壊評価

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カテゴリ: 第2回
1. 緒言
高速道路、橋梁等の大型構造物における経年劣化は 転位等の格子欠陥に起因する機械特性の劣化が主な要因 である. 構造物の経年劣化の非破壊検査には超音波探 傷, 渦電流探傷等の方法が用いられているが,これらの 手法は微小亀裂を検出するものである.近年,建設後 数十年が経過した構造物が増加しており,経年劣化に 起因した事故を未然に防止する目的から, 亀裂発生前 に機械特性を評価する必要を生じている. 構造物には 鉄系強磁性材料が用いられており,その磁気特性は硬 さ等の機械特性と良い相関をもつことが知られている.また, 原子力発電炉の圧力容器(PRV)は, 運転中に中 性子の照射を受け,脆化など材質劣化を生じる.その 評価は,シャルピー衝撃試験片などを定められた時期 に取り出し,破壊試験により行われている.もし試験 片を壊さずに劣化評価を行うことができれば、検査実 施回数を増加でき, 長寿命化への対応も可能になるも のと思われる。このような背景のもと,強磁性材の機械特性と磁気 特性との良い相関を利用し,材料の内部組織や機械特 性を磁気計測により非破壊で評価する研究が行われて いる[1,2]. この相関を利用した非破壊評価技術を実用 化する上では,機械特性と磁気特性との相関に関する データベースの構築が重要である. 小型の引張試験片の磁気計測を非破壊で行うことができれば、一つの試 験片から機械特性, 磁気特性の両方のデータが得られ てデータベースを構築する上で効率的である. よって, ここでは,引張試験片の磁化特性を測定する装置を開 発し,その装置を用いて測定した磁気特性と試料の機 械特性を比較したので報告する.
2. 実験方法
2.1 引張試験片磁化特性装置Fig. 1 は装置の概観を示したものである. 装置はプ ローブ部, 試料の搬入・搬出機構部から構成されている. プローブ部は、励磁コイルボビン,磁気ヨーク, BH * コイルボビン及び測定試料である引張試験片から構成 されている. 上下の磁気ヨークを用いて試験片を挟み 込むことにより閉磁路回路を形成する. 励磁コイルは 励磁コイルボビンの周囲に直径 0.2 mm の銅線を 2000 ターン巻いた. BH ボビンは磁界・磁束密度を計測する ための H コイル・B コイルを備えている. H コイルは直 径 0.025 mm の銅線を 1290 ターン巻き, 面積は 2 mm2 とした. B コイルは直径 0.08 mm の銅線を200 ターン巻 き,面積は1mm2である.2.2 測定試料及び測定方法 * 測定試料には圧延率が異なる S15C 鋼を用いた, 圧 延率は 0, 5, 10, 20, 40 %である. 引張試験片の寸法は565Upper Yoke-Upper Yoke GuideWeightExcit. CoilHall ElementInsertion Minitensile SpecimenPushing outH CoilPush Bar 2BCoilPush Bar 1Fig. 1 Schematic view of the apparatus.×0.5×24 mm で応力集中部の幅は2 mm とした. 引張 試験片とは別に JIS4 号 5 mmV ノッチ試験片を用意し て, シャルピー衝撃特性について評価し、その結果を 基に延性-脆性遷移温度(DBTT)を算出した. 延性-脆性 遷移温度(DBTT)のほかにビッカース硬さも測定した. 引張試験片については 2.1 で述べた装置に挿入し磁気 特性を評価した. 磁気計測時, 励磁周波数は 1 Hz を用 い, B, H-コイルの出力は積分して B, H の値を算出し, BH 曲線を求めた.3.実験結果- Fig. 2 は引張試験片の BH 曲線を圧延率0 - 40 %の 場合について示した図である. 圧延率の増加に伴い, ループの膨らみは大きくなり, ループの傾きは小さく なることがわかる. 磁気特性の違いを捉えており,作 製した装置による磁気特性評価が可能であることを示 している. Fig. 3 は, 保磁力に対する延性-脆性遷移温度 (DBTT)及びビッカース硬さの変化を示したものであ る. 保磁力はFig. 2 の BH 曲線から求めた. 延性-脆性遷 移温度及びビッカース硬さと保磁力の間には良い相関 が見られており,作製した引張試験片磁化特性装置を 用いて引張試験片の延性-脆性遷移温度及びビッカー ス硬さを間接的に評価することが可能となった.4. まとめ引張試験片の磁気特性を測定するための装置を作製 した. 引張試験片磁化特性装置を用いて測定した磁気 特性とシャルピー試験より求めた延性-脆性遷移温度 及びビッカース硬さの間の相関を明らかにした. この 相関関係を用いて,材料の機械特性を磁気計測により 間接的に評価することが可能となった.- 0 % ・50% ・10 %20% -- 40%Magnetic flux density (T)12 f=1Hz-6-4-20_246 Magnetic field (A/m)Fig. 2 BH curves of S15C steels.DBTTな...HvTransition temperature, DBTT (K)Vickers hardness, H (Hv)10_200400 600 800Chornive field UI (Aml1000200L120F0_200400 600 800Coercive field, H (A/m)1000Fig. 3 The relation between DBTT, Vickers hardness and coercive field.謝辞 本研究は独立行政法人原子力安全基盤機構からの委 託研究(平成16年度原子力安全基盤調査研究(原子力 安全基盤調査研究((原子炉圧力容器の脆性に対する磁 生を用いた非破壊検査の基礎研究部)))の成果の一部で ある。参考文献1] H. Kronmuller: “Magnetic Techniques for the Studyof Dislocations in Ferromagnetic Materials”, Int. J.Nondestruct. Testing, Vol. 3, pp.315-350 (1972). 2] S. Takahashi, J. Echigoya, and Z. Motoki:“Magnetization curves of plastically deformed Fe metals and alloys”, J. Appl. Phys., Vol. 87, No. 2, pp. 805-812(2000).“ “引張試験片磁化特性装置を用いた強磁性材の機械特性非破壊評価“ “菊池 弘昭,Hiroaki KIKUCHI,千葉 一也,Kazuya CHIBA,荒 克之,Katsuyuki ARA,鎌田 康寛,Yasuhiro KAMADA,小林 悟,Satoru KOBAYASHI,高橋 正氣,Seiki TAKAHASHI
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