渦電流探傷法による環境遮断封止溶接部の疲労き裂検出及び残肉量推定について
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カテゴリ: 第2回
1.緒言
加圧水型原子カプラント上蓋貫通部 J溶接 部の健全性の確保は、近年の原子力発電所の保 全活動における最重要事柄の一つとなってい る。当該部に応力腐食割れが確認された場合、 必要に応じた上蓋の交換、もしくは補修が行わ れることになる。しかしながら、割れ発見後直 ちに炉容器上蓋を交換することは電気事業者 に多大な負担を強いるものである。そのため、 適切な補修により、健全性を確保した状態であ る程度の期間利用を続けることが検討されて いる。 - 現状では、当該部に応力腐食割れが確認され た場合の補修方法として、表面の割れを 690 系 ニッケル基合金溶接金属にて封止し、1 次冷却 材の漏えいを防止するとともに、1 次冷却材中 雰囲気における応力腐食割れを停止させる溶 接による補修が実施されている。補修後のき裂進展は、応力腐食割れが進展し たき裂面が1次冷却材から遮断されるために、 Fig.1に示すような大気中のき裂進展を考える。 - 現在原子力プラント内の大半の構造物は超 音波探傷法を用いて検査が行われているが、超 音波探傷法は残肉量の小さい割れに対する感 度が低く、またインコネル系の溶接金属は超音 波の散乱が特に著しいという問題がある。その ため、超音波探傷では当該部に発生した疲労割 れの検出、および割れが発生していることが確 認された場合の最小残肉量の推定が困難であ ることが予想される。 -- 以上のような現状を踏まえ、本研究は封止溶 接部の健全性評価に対する、渦電流探傷法の適 用性について検討する。渦電流探傷法は、従来 は溶接部に対しては適用が困難であり、また主 として開口欠陥の位置特定のための手法であ ると考えられてきた。しかしながら、近年の技 術開発の結果、溶接ノイズの影響を受けづらい各種プローブが開発されてきており、また数値 解析を援用することで得られた探傷信号から 割れの形状を推定することも可能であること が明らかとなってきている [1, 2]。前述のよう にインコネル溶接部は超音波探傷においては 大きなノイズ源となるが、電磁気的特性の変化 は比較的小さいため、当該部の検査手法として 渦電流探傷法は有効であることが期待できる。
clad (SUS304)||vessel headJ-weld- Weld overlaySUS304)||SCC -fatigue crack ? Fig. 1 Configuration of the problem2.試験体の設計と製作2.1 溶接平板試験体の製作 1. 本研究は上蓋貫通部のJ溶接部に施した封 止溶接部に発生した疲労割れを主たる対象と する。当該部を厳密に模擬するためには上蓋内 面の曲率を考慮する必要があるが、本研究の目 的は渦電流探傷法の適用性評価であり、通常渦 電流探傷法では構造物の極めて局所的な情報 が得られるものであることを考慮すると、その ような形状の影響は小さいものと考えられる。 よって、ここでは Fig. 2 に示すような溶接平 板試験体を製作し、これを用いて評価検討を行 うこととした。 - 試験体は、上蓋内面クラッド溶接を模擬した SUS309材と貫通部を模擬したSUS3 16材を突合せ溶接したものにインコネル6 90系合金で溶接を施した、厚さ約10mmの 平板試験体である。溶接金属の材料特性は特に 重要であると考えられたため、実機で用いられているものと同等の材料を用いて、溶接を行っ た。いずれの溶接にも自動TIGを用いており、 また溶接部の表面には溶接後グラインダー加 工などの平滑化処理は施していない。それに対 し、実機での溶接の表面には平滑化処理を施す とされている。よって、本試験体の探傷試験に おいては表面の凹凸によるノイズが実際より も大きなものとなると予想され、信号対ノイズ 比という観点からは安全側より評価が行われ ると考えられる。9Inconel weld overlay (ERNiCrFe-7.3 layers)mmmm2019/09/10-fatigue crack 2artificial notch (initial crack)100..21マイ・ruoid・infonting.ir Nanoidigoinがかかりするか3.avi.img.na
100いただいていた・・なかなかいなYo!!!!- Inconel weld (NIC-70A)!!!・る・Fig. 2 Plate specimen fabricated in this studyこのような溶接平板試験体を計5体製作した。2.2 疲労割れの導入 - 製作した溶接平板試験体に対し、突合せ溶接 面側(溶接を施したのと反対側)に疲労割れを 導入した。割れの発生箇所の制御のため突合せ 溶接金属内にはあらかじめ人工ノッチを施し、 疲労試験機により繰り返し引っ張り荷重を加 えることで、この人工ノッチを予き裂として疲 労割れを進展させた。割れ進展のモニタリング をポテンシャルドロップ法により行い、5体の 試験体それぞれに加工した疲労割れの深さが ばらつくように試験条件は調整している。 - 試験終了後溶接面側に浸透探傷試験を施し た結果、2体の試験体は割れが溶接面側まで貫 通してしまっていることが確認された。それ以 外の試験体に対しては超音波探傷法(縦波60 度の斜角探傷試験)により最小残肉厚の測定を行い、割れの深さがそれぞれ異なっていること を確認した。試験条件を Table 1 に、ポテンシ ャルドロップと超音波探傷法による最小残肉 厚推定値を Table 2 に、それぞれ示す。Table 1. Experimental condition 試験体名 最大,最小荷重(kN) 繰り返し回数 fc1 23,230204,000 fc2 23,230190,000 fc3 23,230232,000 fc4 23, 230141,900 fc5 23,230179, 100Estimated minimum wall thicknessPD 推定値(mm) UT 推定値 (mm)____*1Table 2. Estimated minimum wall thickness 試験体名 PD 推定値(mm) UT 推定値(mm)一 -*----*1fcl fc2----*1 ---** 1fc3fc4 fc54.0 1.52.0 *「割れが表面にまで貫通1899/12/31 19:12:003.渦電流探傷法の適用性評価3.1 疲労割れの検出製作した試験体に対し、溶接面側より渦電流 探傷試験を行った。用いたのは一様渦電流型の 渦電流探傷プローブ[3]であり、その励磁周波 数は10kHzと設定した。割れが溶接面にまで貫通していなかった3 体の試験体の探傷試験結果を Fig. 3 に示す。 割れは図中XY平面原点付近に、Y軸に平行に 発生しているのだが、いずれの場合においても 割れからの信号を明瞭に確認することが出来 る。 3.2 最小残肉量の推定 1. 続いて、測定された信号より数値解析を用い て最小残肉量を推定する試みを行った。解析に先立ち、Fig.2に示した試験体を数値 解析で考慮するための解析モデルを構築する 必要があるが、試験体内部の電磁気的特性の分 布、および表面の凹凸を解析にて厳密に考慮す ることは困難である。よってここでは、Fig.4 に示すような単純化した体系を用いて解析を 行うこととした。試験体は、表面が平滑であり、 また電磁気的特性は内部で均一であるインコネル平板600であるとし、前述のような複雑 性はここでは一切考慮しない。amplitude (V) |32222211--20 -15 -10 -5X(mm)( 5 10 15 2010Y (mm)a) fc3amplitude (V)メイクっイク-20-15-1050Y (mm)X (mm) 10 15 2010b) fc4あっといいでしょうamplitude (V)-15 -10 -5 0 X (mm)5 10 15201905/07/03y (mm)c) fc5Fig. 3 Measured eddy current signals本研究で対象とするのは疲労割れであるが、 疲労割れの形状は比較的単純であることが多 い。実際に問題となるのは溶接部の最小残肉量 であり、割れの厳密な断面形状までは必ずしも 必要ではないと考えられる。よって、ここでは 対象とする割れは Fig. 4 のような半楕円形を しているものと仮定して形状推定は行った。割 れの幅は0.3mmと固定し、破面の微細な接 触は割れ領域に一様な導電率を与えることで69考慮したInconel 600 base metalfatigue crackTable 3 Results of eddy current inversions 試験体名 内部導電率(%) 推定値(mm) 真値(mm) fc31.47 1.51 fc42.17 3.25 fc5 0.12.13102.244.結言Fig. 4 Numerical modelFig. 4 Numerical model形状推定には、以前の研究で開発した、勾配 法に基づく逆解析アルゴリズムを用いた [4]。 このアルゴリズムは、推定された形状の欠陥か」 らの探傷信号と測定された信号との差が最小 となるよう、誤差関数の勾配値に基づいて反復 的に欠陥形状の修正を行うものである。アルゴリズム自体は任意の欠陥パラメータ を考慮することが出来るのであるが、欠陥の内 部導電率を未知数として逆解析を行った場合、 その収束が急速に悪化するという問題点があ る。そのため、本研究においては欠陥内部の導 電率はあらかじめ決められた固定値とした。内 部導電率を試験体母材の 0, 0.1, 1, 3, 5, 7, 10, 13, 15%として逆解析を行い、最も信号の一致 の度合いが良好であったものを最終的な推定 結果として採用する。逆解析によって得られた溶接部の最小残肉 推定値を、破壊試験によって明らかとなった真 の値と併せて Table 3に示す。fc4試験体に 対する推定値は真値と1mm程度ずれていし まっているが、それ以外の2体に関しては良好 な推定結果が得られている。Table 2 に示した 値も考慮すると、渦電流探傷法が、今回適用し た3種類の非破壊検査手法の中では最も精度 良く溶接部の最小残肉量を推定できていたこ とがわかる。また、今回製作した試験体の最大 残肉量は3.25mmであったことから、溶接 部の残肉量3mm程度の疲労割れは渦電流探 傷法により十分に検出することが出来ると結 論付けることが出来るが、前述のように今回用 いた試験体の表面は実機よりもかなり粗いも のであるために、実際にはより深い割れの検出も可能であると期待できる。溶接部内部の疲労き裂検出及び残肉量推定 に対する渦電流探傷法の適用性を評価した。平 板溶接試験体を用いた検証試験の結果、溶接部 の残肉量3.25mmの疲労割れは明瞭に確認 することが出来ることが判明した。また残肉量 推定においても、渦電流探傷法は電位差法、お よび超音波探傷法と比べて優れたものである ということが明らかになった。参考文献[1] B.A. Auld and J.C. Moulder, “Review ofadvances in quantitative eddy current nondestructive evaluation”, Journal of Nondestructive Evaluation, Vol. 18, pp.3-36. [2] N. Yusa, Z. Chen, K. Miya, T. Uchimoto, andT. Takagi, “Large-scale_ parallel computation for reconstruction of natural stress corrosion cracks from eddy current testing signals““ , NDT&E international, Vol.36, pp. 449-459. 1 [3] K. Koyama and H. Hoshikawa, “Eddy currenttesting by uniform eddy current probe”, Proceedings of the 21 Asian Joint Seminar onApplied Electromagnetics, pp. 1-6. [4] Z. Chen and K. Miya, “ECT inversion using aknowledge based forward solver““, Journal of Nondest ructive Evaluation, Vol. 17, pp.157-165. [5] S. J. Norton and J. R. Bowler, “Theory of eddycurrent inversion““, Journal of Applied Physics, Vol. 73, pp. 501-512.“ “渦電流探傷法による環境遮断封止溶接部の疲労き裂検出及び残肉量推定について“ “遊佐 訓孝,Noritaka YUSA,ラディスラブ ヤノーセック,Ladislav JANOUSEK,ミハイ レビカン,Mihai REBICAN,陳 振茂,Zhenmao ZHEN,宮 健三,Kenzo MIYA,千種 直樹,伊藤 肇,Hajime ITO
加圧水型原子カプラント上蓋貫通部 J溶接 部の健全性の確保は、近年の原子力発電所の保 全活動における最重要事柄の一つとなってい る。当該部に応力腐食割れが確認された場合、 必要に応じた上蓋の交換、もしくは補修が行わ れることになる。しかしながら、割れ発見後直 ちに炉容器上蓋を交換することは電気事業者 に多大な負担を強いるものである。そのため、 適切な補修により、健全性を確保した状態であ る程度の期間利用を続けることが検討されて いる。 - 現状では、当該部に応力腐食割れが確認され た場合の補修方法として、表面の割れを 690 系 ニッケル基合金溶接金属にて封止し、1 次冷却 材の漏えいを防止するとともに、1 次冷却材中 雰囲気における応力腐食割れを停止させる溶 接による補修が実施されている。補修後のき裂進展は、応力腐食割れが進展し たき裂面が1次冷却材から遮断されるために、 Fig.1に示すような大気中のき裂進展を考える。 - 現在原子力プラント内の大半の構造物は超 音波探傷法を用いて検査が行われているが、超 音波探傷法は残肉量の小さい割れに対する感 度が低く、またインコネル系の溶接金属は超音 波の散乱が特に著しいという問題がある。その ため、超音波探傷では当該部に発生した疲労割 れの検出、および割れが発生していることが確 認された場合の最小残肉量の推定が困難であ ることが予想される。 -- 以上のような現状を踏まえ、本研究は封止溶 接部の健全性評価に対する、渦電流探傷法の適 用性について検討する。渦電流探傷法は、従来 は溶接部に対しては適用が困難であり、また主 として開口欠陥の位置特定のための手法であ ると考えられてきた。しかしながら、近年の技 術開発の結果、溶接ノイズの影響を受けづらい各種プローブが開発されてきており、また数値 解析を援用することで得られた探傷信号から 割れの形状を推定することも可能であること が明らかとなってきている [1, 2]。前述のよう にインコネル溶接部は超音波探傷においては 大きなノイズ源となるが、電磁気的特性の変化 は比較的小さいため、当該部の検査手法として 渦電流探傷法は有効であることが期待できる。
clad (SUS304)||vessel headJ-weld- Weld overlaySUS304)||SCC -fatigue crack ? Fig. 1 Configuration of the problem2.試験体の設計と製作2.1 溶接平板試験体の製作 1. 本研究は上蓋貫通部のJ溶接部に施した封 止溶接部に発生した疲労割れを主たる対象と する。当該部を厳密に模擬するためには上蓋内 面の曲率を考慮する必要があるが、本研究の目 的は渦電流探傷法の適用性評価であり、通常渦 電流探傷法では構造物の極めて局所的な情報 が得られるものであることを考慮すると、その ような形状の影響は小さいものと考えられる。 よって、ここでは Fig. 2 に示すような溶接平 板試験体を製作し、これを用いて評価検討を行 うこととした。 - 試験体は、上蓋内面クラッド溶接を模擬した SUS309材と貫通部を模擬したSUS3 16材を突合せ溶接したものにインコネル6 90系合金で溶接を施した、厚さ約10mmの 平板試験体である。溶接金属の材料特性は特に 重要であると考えられたため、実機で用いられているものと同等の材料を用いて、溶接を行っ た。いずれの溶接にも自動TIGを用いており、 また溶接部の表面には溶接後グラインダー加 工などの平滑化処理は施していない。それに対 し、実機での溶接の表面には平滑化処理を施す とされている。よって、本試験体の探傷試験に おいては表面の凹凸によるノイズが実際より も大きなものとなると予想され、信号対ノイズ 比という観点からは安全側より評価が行われ ると考えられる。9Inconel weld overlay (ERNiCrFe-7.3 layers)mmmm2019/09/10-fatigue crack 2artificial notch (initial crack)100..21マイ・ruoid・infonting.ir Nanoidigoinがかかりするか3.avi.img.na
100いただいていた・・なかなかいなYo!!!!- Inconel weld (NIC-70A)!!!・る・Fig. 2 Plate specimen fabricated in this studyこのような溶接平板試験体を計5体製作した。2.2 疲労割れの導入 - 製作した溶接平板試験体に対し、突合せ溶接 面側(溶接を施したのと反対側)に疲労割れを 導入した。割れの発生箇所の制御のため突合せ 溶接金属内にはあらかじめ人工ノッチを施し、 疲労試験機により繰り返し引っ張り荷重を加 えることで、この人工ノッチを予き裂として疲 労割れを進展させた。割れ進展のモニタリング をポテンシャルドロップ法により行い、5体の 試験体それぞれに加工した疲労割れの深さが ばらつくように試験条件は調整している。 - 試験終了後溶接面側に浸透探傷試験を施し た結果、2体の試験体は割れが溶接面側まで貫 通してしまっていることが確認された。それ以 外の試験体に対しては超音波探傷法(縦波60 度の斜角探傷試験)により最小残肉厚の測定を行い、割れの深さがそれぞれ異なっていること を確認した。試験条件を Table 1 に、ポテンシ ャルドロップと超音波探傷法による最小残肉 厚推定値を Table 2 に、それぞれ示す。Table 1. Experimental condition 試験体名 最大,最小荷重(kN) 繰り返し回数 fc1 23,230204,000 fc2 23,230190,000 fc3 23,230232,000 fc4 23, 230141,900 fc5 23,230179, 100Estimated minimum wall thicknessPD 推定値(mm) UT 推定値 (mm)____*1Table 2. Estimated minimum wall thickness 試験体名 PD 推定値(mm) UT 推定値(mm)一 -*----*1fcl fc2----*1 ---** 1fc3fc4 fc54.0 1.52.0 *「割れが表面にまで貫通1899/12/31 19:12:003.渦電流探傷法の適用性評価3.1 疲労割れの検出製作した試験体に対し、溶接面側より渦電流 探傷試験を行った。用いたのは一様渦電流型の 渦電流探傷プローブ[3]であり、その励磁周波 数は10kHzと設定した。割れが溶接面にまで貫通していなかった3 体の試験体の探傷試験結果を Fig. 3 に示す。 割れは図中XY平面原点付近に、Y軸に平行に 発生しているのだが、いずれの場合においても 割れからの信号を明瞭に確認することが出来 る。 3.2 最小残肉量の推定 1. 続いて、測定された信号より数値解析を用い て最小残肉量を推定する試みを行った。解析に先立ち、Fig.2に示した試験体を数値 解析で考慮するための解析モデルを構築する 必要があるが、試験体内部の電磁気的特性の分 布、および表面の凹凸を解析にて厳密に考慮す ることは困難である。よってここでは、Fig.4 に示すような単純化した体系を用いて解析を 行うこととした。試験体は、表面が平滑であり、 また電磁気的特性は内部で均一であるインコネル平板600であるとし、前述のような複雑 性はここでは一切考慮しない。amplitude (V) |32222211--20 -15 -10 -5X(mm)( 5 10 15 2010Y (mm)a) fc3amplitude (V)メイクっイク-20-15-1050Y (mm)X (mm) 10 15 2010b) fc4あっといいでしょうamplitude (V)-15 -10 -5 0 X (mm)5 10 15201905/07/03y (mm)c) fc5Fig. 3 Measured eddy current signals本研究で対象とするのは疲労割れであるが、 疲労割れの形状は比較的単純であることが多 い。実際に問題となるのは溶接部の最小残肉量 であり、割れの厳密な断面形状までは必ずしも 必要ではないと考えられる。よって、ここでは 対象とする割れは Fig. 4 のような半楕円形を しているものと仮定して形状推定は行った。割 れの幅は0.3mmと固定し、破面の微細な接 触は割れ領域に一様な導電率を与えることで69考慮したInconel 600 base metalfatigue crackTable 3 Results of eddy current inversions 試験体名 内部導電率(%) 推定値(mm) 真値(mm) fc31.47 1.51 fc42.17 3.25 fc5 0.12.13102.244.結言Fig. 4 Numerical modelFig. 4 Numerical model形状推定には、以前の研究で開発した、勾配 法に基づく逆解析アルゴリズムを用いた [4]。 このアルゴリズムは、推定された形状の欠陥か」 らの探傷信号と測定された信号との差が最小 となるよう、誤差関数の勾配値に基づいて反復 的に欠陥形状の修正を行うものである。アルゴリズム自体は任意の欠陥パラメータ を考慮することが出来るのであるが、欠陥の内 部導電率を未知数として逆解析を行った場合、 その収束が急速に悪化するという問題点があ る。そのため、本研究においては欠陥内部の導 電率はあらかじめ決められた固定値とした。内 部導電率を試験体母材の 0, 0.1, 1, 3, 5, 7, 10, 13, 15%として逆解析を行い、最も信号の一致 の度合いが良好であったものを最終的な推定 結果として採用する。逆解析によって得られた溶接部の最小残肉 推定値を、破壊試験によって明らかとなった真 の値と併せて Table 3に示す。fc4試験体に 対する推定値は真値と1mm程度ずれていし まっているが、それ以外の2体に関しては良好 な推定結果が得られている。Table 2 に示した 値も考慮すると、渦電流探傷法が、今回適用し た3種類の非破壊検査手法の中では最も精度 良く溶接部の最小残肉量を推定できていたこ とがわかる。また、今回製作した試験体の最大 残肉量は3.25mmであったことから、溶接 部の残肉量3mm程度の疲労割れは渦電流探 傷法により十分に検出することが出来ると結 論付けることが出来るが、前述のように今回用 いた試験体の表面は実機よりもかなり粗いも のであるために、実際にはより深い割れの検出も可能であると期待できる。溶接部内部の疲労き裂検出及び残肉量推定 に対する渦電流探傷法の適用性を評価した。平 板溶接試験体を用いた検証試験の結果、溶接部 の残肉量3.25mmの疲労割れは明瞭に確認 することが出来ることが判明した。また残肉量 推定においても、渦電流探傷法は電位差法、お よび超音波探傷法と比べて優れたものである ということが明らかになった。参考文献[1] B.A. Auld and J.C. Moulder, “Review ofadvances in quantitative eddy current nondestructive evaluation”, Journal of Nondestructive Evaluation, Vol. 18, pp.3-36. [2] N. Yusa, Z. Chen, K. Miya, T. Uchimoto, andT. Takagi, “Large-scale_ parallel computation for reconstruction of natural stress corrosion cracks from eddy current testing signals““ , NDT&E international, Vol.36, pp. 449-459. 1 [3] K. Koyama and H. Hoshikawa, “Eddy currenttesting by uniform eddy current probe”, Proceedings of the 21 Asian Joint Seminar onApplied Electromagnetics, pp. 1-6. [4] Z. Chen and K. Miya, “ECT inversion using aknowledge based forward solver““, Journal of Nondest ructive Evaluation, Vol. 17, pp.157-165. [5] S. J. Norton and J. R. Bowler, “Theory of eddycurrent inversion““, Journal of Applied Physics, Vol. 73, pp. 501-512.“ “渦電流探傷法による環境遮断封止溶接部の疲労き裂検出及び残肉量推定について“ “遊佐 訓孝,Noritaka YUSA,ラディスラブ ヤノーセック,Ladislav JANOUSEK,ミハイ レビカン,Mihai REBICAN,陳 振茂,Zhenmao ZHEN,宮 健三,Kenzo MIYA,千種 直樹,伊藤 肇,Hajime ITO