異温度流体混合における熱流動特性の評価
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カテゴリ: 第2回
1. 緒言
原子力発電所に代表される大型プラントにおいては、 異なる温度の流体が混合する領域が数多く存在する。こ れらの領域では、流体の不安定混合に伴う非定常の温度 揺らぎが発生する。温度揺らぎの振幅、周波数によって は構造材に熱疲労が生じる可能性があるため、今後のプ ラントの設計において熱疲労の緩和は重要な課題である。 これまで特に T 字配管合流系を対象とした研究が、数多 く実施されており、混合形態と壁面温度変動の関係が明 らかにされている[1][2][3]。しかしながら、実際の合流系 においては配管合流部の上流側に90度ベンドを有する場 合が多く、ベンド内で形成される 2 次流れが上述の流体 混合をさらに複雑化している。このような背景の下に、過去の研究では PIV(Particle Image Velocimetry) を用いて流体混合領域における可視化 実験、ならびに壁近傍に置ける流体温度変動の計測を行 っており、その結果、90度ベンドにより生じる2次流れ の非定常性により、ベンドが存在しない体系よりも高い 温度変動が生じることが明らかになった[4]。これまで主配管口径 108mm に対して、枝配管口径が小 口径 (15mm)、大口径(31mm)の場合について実験を行
い、混合状態が成層流および偏向噴流の遷移域にある場 合に温度変動が極大化されることを確認した[5]。本研究 では中口径(21mm)の場合について実験を行い、これま で得られたデータを総括して温度変動予測式の構築につ いて検討する。また、温度変動が極大化される場合の混 合状態の可視化を行い、温度変動の要因について考察す る。2. 試験部詳細および実験条件- Fig.1 に試験部詳細図を示す。試験部における主流は鉛 直上向きに流れ、途中、枝管が垂直に流入しT字配管合 流領域を形成する。主配管の口径 Dm=108mm と一定に対 し、枝配管口径Ds=15、21、31mm と 3パターンに変化可 能である。本実験では D-21mm を用いる。主流流速 Um を 0.24~0.72m/s、枝流流速 UL を 0.23~0.79m/s と変化さ せる。 T 字配管合流部上流 200mm の位置に曲率半径比 1.41 の90度ベンドが設置される。壁面温度変動を計測す る場合、主流および枝流温度はそれぞれ 20°Cおよび 60°C とし、可視化実験を行う場合は主流および枝流温度は 20°Cとする。 可視化実験の場合、PIV システムによる流 れ場の可視化のため、試験部は肉厚 1mm のアクリル円Branch flowD......200mm1.85D.Main flow70m)90d-degree bend7-31.41、1.0 Fig.1 Details of test section137138139160.751TIAN10.31~R1.011%3D21 D3108mmbranch flowFig.2 The T.C. section to the downstream管で構成され、さらにその周りには屈折率整合のためダ クト状ウォータージャケットが設置される。Fig.2 に温度計測位置を示す。合流点の下流側に計 59 本の熱電対が設置され、合流点より約 4DM下流まで温度 を計測する。温度変動に対する熱応答性を考慮して素線 径が0.1mm の非被覆型K型熱電対を使用し、60Hzで2100 点 (35s) 計測する。設置位置は壁面から約1mm である。 総サンプリング数 6300 点から温度変動強度A Time を次式で求める。Arms = (VE(-)11 )/ ATここで、Ti、T はそれぞれ瞬時および平均の温度、 温度データのサンプリング数である。nはここで、 温度デー3. 実験結果および考察3.1 D-21mm における温度変動強度ATmの特性 - Fig.3 は枝流流速 U, を 0.23、0.39、0.63、0.79m/s と変化 させた場合の温度変動強度分布であり、各座標は0-21mm で規格化されている。また熱電対設置点以外の領域はス プライン補間されている。Fig.3 から枝流合流部下流域に 中心軸から左右にずれた位置に温度変動のピークが生じ ていることが確認できる。枝流流速が 0.23m/s の場合、枝 流は主流壁近傍を下流方向に流れていると考えられ、高 温噴流が常に存在する領域では温度は高いが、温度変動 はさほど大きくないと考えられる。しかしながら、高温 噴流は 2 次流れの非定常挙動により周方向に振動するた め左右にずれた位置にピークが存在する。またこのピー ク値はUの増加とともに減少しているが、これは枝流が 主流深く侵入して流れるためである。これは Un=0.24、 0.72m/s の場合も同様であった。そこで本研究では測定範 囲内において得られる温度変動強度の最大値 ATmes mac に2-1.5-150. 510.30.3(a) Us=0.23m/s(b)U0.39m/s10.30.3(c) Ub=0.63m/s(d) Ub=0.79m/s Fig.3 The effect of the branch velocity on the ATms72着目し評価した。Fig.4はATmes man に対する枝流流速の影響を示している。 比較の為、同時にD=15、31mm の場合も示す。Fig.4よ り、最も枝配管口径が小さい Do=15mm の場合では枝流流 量が小さいため、枝流は主流中で障害物としての役割を 果たさず 2 次流れに追従してエンタルピが拡散されるた め、ATmewome は単調減少の傾向を示すと考えられる (Fig.4(a))。今回実験を行った D-21mm の場合では、主流 流速 UL-0.72m/s の時に枝流流速 Us-0.4m/s 付近で極値を 取る(Fig.4(6)。また、以前実験を行った D=31mm の場合 は、Um=0.72m/s だけでなく Un=0.48m/s の時にも極値を取 る事が確認されている(Fig.4(C)。すなわち枝配管口径 D, が大きく且つ主流流速Unが速い場合、つまり枝流による 障害作用が大きい場合に ATmes manは極大化される。 0.3―OU-024m/s AU-10.48m/s o Un-0.72m18A Trus max-1% 0.04 0.08 112 Veocity of branch pipe flow U[m/s](a) D.=15mm0.3」A Trus maxl-1%0 Uh=0.24 m/s A Un-0.48m/sロ Uh=0.72m/s 0.2 0.4 0.6 0.8 1 12 Velocity of branch pip e flow ?[m/s](b) D = 2 Imm3円 0.2f7on=0.24m/sui=0.48m/sw=0.72 m/s D =13mm T.50.48m/)AT...,max [-]% on agos 0% 1-12 Velocity of branch pip e flow Us [m/s](c)D=31mmFig.4 The effect of the branch velocity on the ATms,maxPIV による可視化から混合形態は大きく、Fig.5 に示す 三種類に分けられる。ピーク付近の混合条件では Fig.5(b) に示すような噴流後方に循環渦の生成・消滅が確認され、 循環渦の生成・消滅が温度変動を大きくする要因である ことがわかる。また、枝配管口径 D,が大きくなるほど枝 流流量が増加するため、温度変動が増加すると考えられ るが、D=31mm になると枝流の慣性が大きくなり振動し にくくなる。それゆえ温度変動は D-21mm ほど大きくな らなかったと考えられる。(b) Fig.5 Fluid mixing patterns (a)Stratified flow (b)Re-attachment flow (c)Turn-jet flow3.2 流速比(USUn)が温度変動に与える影響 - Fig.6 に流速比(USUM)で整理した温度変動強度の最 大値ATme mon を示す。Do=15、31mm におけるATms, max も同時に示している。流速比 USUmをパラメータにした 場合においても、US/Um=0.6 付近にピークがあることが確 認できる。図中 A付近の流速比において混合形態は成層 流の形を取る (Fig.5(a))。この時、枝流が壁近傍を流れる ため、温度は大きいと考えられるが温度変動はさほど大 きくならない。さらに流速比が大きくなった B において 混合形態は再付着噴流の形を取る(Fig.5(b))。 B付近にお ける温度変動の要因は、後流の発生、2次流れによる周方 向および径方向振動が考えられる。後流とは、枝流が障 害物の役割を果たすことにより枝流下流側に発生するカ ルマン渦列に似た渦を指す。 B 付近においては枝流の形 状が崩れにくく、かつ枝流が壁近傍で大きく振動するた めに上記の 3 つの要因が発生しやすい。よって温度変動 が最も大きくなっていると考えられる。 C の領域では混 合形態は偏向噴流の形を取る (Fig.5(C)。 C では流速比の 増大とともに温度変動は減少している。これは枝流が主 流深く進入するためである。 また、口径比 D.D.の増大に伴い温度変動は増加する傾73向にあるが、D-21mm のときに最大値を取っている。こ れは先にも述べたが、大口径になると噴流の慣性力が強 くなり、噴流が振動しにくくなる為である。 -- 以上の事をより定量的に議論するため速度変動分 布に注目する。ここで、D-21mm の場合で最も温度変 動が高い値を示している Us-0.4m/s 付近の混合形態を議 論する。 Fig.7はU0.46m/sでUm=0.24、0.48、0.72m/sま で変化させた場合における縦断面及び水平断面の速度変 動強度を示している。主流速度 Unが 0.24、0.48m/s の場 合、噴流の侵入位置周辺で速度変動が高いのに対し、Um =0.72m/s の場合では循環渦の生成・消滅に伴い強い速度 変動領域そのものが壁面へ再付着する分布が確認され、 これが壁面温度変動を最大化する要因であると考えられ る。水平断面における分布において、Um=0.24m/s の場合 では90度ベンドが存在しない体系における変動分布に類 似しているが、Un0.48、0.72m/s においては類似性は見 られない。これは主流流速の増大に伴い混合場が大きく 変化していることを示唆しており、縦断面も含めたより3 次元的な議論を展開していく必要がある。4. 混合形態ごとの温度変動予測式の構築温度変動予測の際、流速比の変化に伴い変化する流動 構造を無視することは難しい。従って温度変動予測式を 成層流の場合、再付着噴流から偏向噴流の場合と二つに 分けて構築する。Fig.8 および Fig.9 に速度比および口径比を用いて最大 温度変動強度 A Timg. maxの回帰分析結果を示す。 成層流の 場合において 20%以内の誤差で予想可能であることがわ かる。一方、再付着噴流から偏向噴流の場合においても 約8割、温度変動を予測することが可能である。重回帰 曲線よりややずれているデータは温度変動が大きいとい う特徴がある。温度変動が大きい領域は混合形態が再付 着噴流の領域であるが、この領域における混合形態が正 確に予測できていないために、重回帰曲線からずれてし まったと考えられる。Fig.10 はデータ整理に用いた混合 形態の分類であり、目視により得られたものである。同 時にベンドが存在しない体系における分類も示す[3]。 Fig.10 より上流に90度ベンドが存在する体系では、高温 噴流はベンドが存在しない体系より深く主流中に侵入し ている。予測式の高精度化ならびに T 字合流管の設計指 針を得る為にも、混合形態をより定量的に予測する必要 があると考えられる。10. 3AB( 3? Db=15mm A D=21mm ■ Dis=31mmA Trms, maxms, maxUJU Fig.o Effect of velocity ratio on A Tms,max△Tms,maxBranchUm=0.24m /sBranchLateral section position0.340.25Um=0.48m/sLongitudinal section position0.243:50:24Um=0.72m/s10.210.15Fig.7 Distribution of velocity fluctuation intensity(D-21mm、Us=0.46m/s)740.21cms. max0.2-20% |? De=15mmA D=21mm - Db=31mm0.0440.042:24:000.2 0.53(U,Jum)9.1(D/D 10.36 Fig.8 Prediction of A Tms,max(Stratified flow)rms, max0.2-0.2●D%3D15mm 4 Do=21mm ■D%3D31mm0.08.041010.2 1.48(09/Umj..8(D3/Dpm21.39 ) Fig.9 Prediction of A Tms,max(Re-attached flow ~ Turn-jet flow)AAAA[kg・m/s3gooStratified flow Turn-jet including Re-attachment flowK(B““ 1.08m10.01 01Molkg ? m/s Classification without 90-degree bend (A) Impiping Jet ----- (M M )=0.35 (B) Deflecting Jet ---- (M M )=1.35 (C) Re-attachment Jet、ー (M.M)=4.00 (D) Wall Jet Fig.10 Classification of fluid mixing pattern5 結言上流に90度ベンドを有するT字配管合流領域における 異温度流体混合実験により、以下の知見が得られた。 1) 混合形態が再付着噴流のとき、後流および2次流れの影響を受け枝流が激しく振動するため、壁近傍におけ る温度変動が最も激しくなる。 2) D-21mm、U-0.46m/s における可視化より、主流流速の増大に伴い強い速度変動領域が壁面へ再付着する為、 温度変動が大きくなる。 3) 水平断面の流れ場は、主流が低流速においては 90 度 ベンドが存在しない体系における変動分布に類似して いるが、主流流速が増大すると類似性は見られず、混合場が大きく変化しているため、縦断面も含めた議論 __ を展開していく必要がある。4) 混合形態ごとの温度変動予測式により、誤差20%以内 ・ に温度変動を予測可能である。 5) 今後、温度変動予測式の高精度化のために混合形態を より定量的に分類する必要がある。謝辞* 本研究は核燃料サイクル開発機構の先行基礎工学研究 の支持を受けて実施されたものであり、ここに感謝の意 を表す。[2]参考文献[1] 高橋志郎・他5名“T 字形合流配管部における温度差を有する二流体の熱的混合特性”、日本機械学会論 文集(B 編) 63 巻 613 号(1997-9)、p.68-74 [2] Minoru IGARASHI, Masaaki TANAKA, NobuyukiKIMURA and Hideki KAMIDE “STUDY ON FLUID MIXING PHENOMENA FOR EVALUATION OF THERMAL STRIPING INAMIXING TEE ≫NURETH-10, (2003) [3] Masaaki TANAKA, Toshiharu MURAMATSU““TURBULENCE MIXING CHARACTERISTICS IN T-JUNCTION PIPE WITH ELBOW PIPE INUPSTREAM SIDE” NUTHHOS-6,(2004) [4] 結城和久、田嶋祐、戸田三朗、橋爪秀利、村松壽晴“上流に90度ベンドを有するT字配管合流域での熱的混合特性に対する曲率半径比の影響”、日本機械学会論文集(B 編) 70 巻 700 号(2004-12)、p118-125 [5] Kazuhisa YUKI, Yoshimasa SUGAWARA, HoseiniSeyed MOHAMMAD, Hidetoshi HASHIZUME, Saburo TODA, Masaaki TANAKA, Toshiharu MURAMATSU “PREDICTION OF THE WALL TEMPERATURE FLUCTUATION IN A T-JUNCTION AREA WITH A90-DEGREE BEND UPSTREAM” NUTHOS-6, (2004) - 76 -“ “異温度流体混合における熱流動特性の評価“ “菅原 良昌,Yoshimasa SUGAWARA,結城 和久,Kazuhisa YUKI,Hoseini Seyed MOHAMMAD,橋爪 秀利,Hidetoshi HASHIZUME,田中 正暁,Masaaki TANAKA
原子力発電所に代表される大型プラントにおいては、 異なる温度の流体が混合する領域が数多く存在する。こ れらの領域では、流体の不安定混合に伴う非定常の温度 揺らぎが発生する。温度揺らぎの振幅、周波数によって は構造材に熱疲労が生じる可能性があるため、今後のプ ラントの設計において熱疲労の緩和は重要な課題である。 これまで特に T 字配管合流系を対象とした研究が、数多 く実施されており、混合形態と壁面温度変動の関係が明 らかにされている[1][2][3]。しかしながら、実際の合流系 においては配管合流部の上流側に90度ベンドを有する場 合が多く、ベンド内で形成される 2 次流れが上述の流体 混合をさらに複雑化している。このような背景の下に、過去の研究では PIV(Particle Image Velocimetry) を用いて流体混合領域における可視化 実験、ならびに壁近傍に置ける流体温度変動の計測を行 っており、その結果、90度ベンドにより生じる2次流れ の非定常性により、ベンドが存在しない体系よりも高い 温度変動が生じることが明らかになった[4]。これまで主配管口径 108mm に対して、枝配管口径が小 口径 (15mm)、大口径(31mm)の場合について実験を行
い、混合状態が成層流および偏向噴流の遷移域にある場 合に温度変動が極大化されることを確認した[5]。本研究 では中口径(21mm)の場合について実験を行い、これま で得られたデータを総括して温度変動予測式の構築につ いて検討する。また、温度変動が極大化される場合の混 合状態の可視化を行い、温度変動の要因について考察す る。2. 試験部詳細および実験条件- Fig.1 に試験部詳細図を示す。試験部における主流は鉛 直上向きに流れ、途中、枝管が垂直に流入しT字配管合 流領域を形成する。主配管の口径 Dm=108mm と一定に対 し、枝配管口径Ds=15、21、31mm と 3パターンに変化可 能である。本実験では D-21mm を用いる。主流流速 Um を 0.24~0.72m/s、枝流流速 UL を 0.23~0.79m/s と変化さ せる。 T 字配管合流部上流 200mm の位置に曲率半径比 1.41 の90度ベンドが設置される。壁面温度変動を計測す る場合、主流および枝流温度はそれぞれ 20°Cおよび 60°C とし、可視化実験を行う場合は主流および枝流温度は 20°Cとする。 可視化実験の場合、PIV システムによる流 れ場の可視化のため、試験部は肉厚 1mm のアクリル円Branch flowD......200mm1.85D.Main flow70m)90d-degree bend7-31.41、1.0 Fig.1 Details of test section137138139160.751TIAN10.31~R1.011%3D21 D3108mmbranch flowFig.2 The T.C. section to the downstream管で構成され、さらにその周りには屈折率整合のためダ クト状ウォータージャケットが設置される。Fig.2 に温度計測位置を示す。合流点の下流側に計 59 本の熱電対が設置され、合流点より約 4DM下流まで温度 を計測する。温度変動に対する熱応答性を考慮して素線 径が0.1mm の非被覆型K型熱電対を使用し、60Hzで2100 点 (35s) 計測する。設置位置は壁面から約1mm である。 総サンプリング数 6300 点から温度変動強度A Time を次式で求める。Arms = (VE(-)11 )/ ATここで、Ti、T はそれぞれ瞬時および平均の温度、 温度データのサンプリング数である。nはここで、 温度デー3. 実験結果および考察3.1 D-21mm における温度変動強度ATmの特性 - Fig.3 は枝流流速 U, を 0.23、0.39、0.63、0.79m/s と変化 させた場合の温度変動強度分布であり、各座標は0-21mm で規格化されている。また熱電対設置点以外の領域はス プライン補間されている。Fig.3 から枝流合流部下流域に 中心軸から左右にずれた位置に温度変動のピークが生じ ていることが確認できる。枝流流速が 0.23m/s の場合、枝 流は主流壁近傍を下流方向に流れていると考えられ、高 温噴流が常に存在する領域では温度は高いが、温度変動 はさほど大きくないと考えられる。しかしながら、高温 噴流は 2 次流れの非定常挙動により周方向に振動するた め左右にずれた位置にピークが存在する。またこのピー ク値はUの増加とともに減少しているが、これは枝流が 主流深く侵入して流れるためである。これは Un=0.24、 0.72m/s の場合も同様であった。そこで本研究では測定範 囲内において得られる温度変動強度の最大値 ATmes mac に2-1.5-150. 510.30.3(a) Us=0.23m/s(b)U0.39m/s10.30.3(c) Ub=0.63m/s(d) Ub=0.79m/s Fig.3 The effect of the branch velocity on the ATms72着目し評価した。Fig.4はATmes man に対する枝流流速の影響を示している。 比較の為、同時にD=15、31mm の場合も示す。Fig.4よ り、最も枝配管口径が小さい Do=15mm の場合では枝流流 量が小さいため、枝流は主流中で障害物としての役割を 果たさず 2 次流れに追従してエンタルピが拡散されるた め、ATmewome は単調減少の傾向を示すと考えられる (Fig.4(a))。今回実験を行った D-21mm の場合では、主流 流速 UL-0.72m/s の時に枝流流速 Us-0.4m/s 付近で極値を 取る(Fig.4(6)。また、以前実験を行った D=31mm の場合 は、Um=0.72m/s だけでなく Un=0.48m/s の時にも極値を取 る事が確認されている(Fig.4(C)。すなわち枝配管口径 D, が大きく且つ主流流速Unが速い場合、つまり枝流による 障害作用が大きい場合に ATmes manは極大化される。 0.3―OU-024m/s AU-10.48m/s o Un-0.72m18A Trus max-1% 0.04 0.08 112 Veocity of branch pipe flow U[m/s](a) D.=15mm0.3」A Trus maxl-1%0 Uh=0.24 m/s A Un-0.48m/sロ Uh=0.72m/s 0.2 0.4 0.6 0.8 1 12 Velocity of branch pip e flow ?[m/s](b) D = 2 Imm3円 0.2f7on=0.24m/sui=0.48m/sw=0.72 m/s D =13mm T.50.48m/)AT...,max [-]% on agos 0% 1-12 Velocity of branch pip e flow Us [m/s](c)D=31mmFig.4 The effect of the branch velocity on the ATms,maxPIV による可視化から混合形態は大きく、Fig.5 に示す 三種類に分けられる。ピーク付近の混合条件では Fig.5(b) に示すような噴流後方に循環渦の生成・消滅が確認され、 循環渦の生成・消滅が温度変動を大きくする要因である ことがわかる。また、枝配管口径 D,が大きくなるほど枝 流流量が増加するため、温度変動が増加すると考えられ るが、D=31mm になると枝流の慣性が大きくなり振動し にくくなる。それゆえ温度変動は D-21mm ほど大きくな らなかったと考えられる。(b) Fig.5 Fluid mixing patterns (a)Stratified flow (b)Re-attachment flow (c)Turn-jet flow3.2 流速比(USUn)が温度変動に与える影響 - Fig.6 に流速比(USUM)で整理した温度変動強度の最 大値ATme mon を示す。Do=15、31mm におけるATms, max も同時に示している。流速比 USUmをパラメータにした 場合においても、US/Um=0.6 付近にピークがあることが確 認できる。図中 A付近の流速比において混合形態は成層 流の形を取る (Fig.5(a))。この時、枝流が壁近傍を流れる ため、温度は大きいと考えられるが温度変動はさほど大 きくならない。さらに流速比が大きくなった B において 混合形態は再付着噴流の形を取る(Fig.5(b))。 B付近にお ける温度変動の要因は、後流の発生、2次流れによる周方 向および径方向振動が考えられる。後流とは、枝流が障 害物の役割を果たすことにより枝流下流側に発生するカ ルマン渦列に似た渦を指す。 B 付近においては枝流の形 状が崩れにくく、かつ枝流が壁近傍で大きく振動するた めに上記の 3 つの要因が発生しやすい。よって温度変動 が最も大きくなっていると考えられる。 C の領域では混 合形態は偏向噴流の形を取る (Fig.5(C)。 C では流速比の 増大とともに温度変動は減少している。これは枝流が主 流深く進入するためである。 また、口径比 D.D.の増大に伴い温度変動は増加する傾73向にあるが、D-21mm のときに最大値を取っている。こ れは先にも述べたが、大口径になると噴流の慣性力が強 くなり、噴流が振動しにくくなる為である。 -- 以上の事をより定量的に議論するため速度変動分 布に注目する。ここで、D-21mm の場合で最も温度変 動が高い値を示している Us-0.4m/s 付近の混合形態を議 論する。 Fig.7はU0.46m/sでUm=0.24、0.48、0.72m/sま で変化させた場合における縦断面及び水平断面の速度変 動強度を示している。主流速度 Unが 0.24、0.48m/s の場 合、噴流の侵入位置周辺で速度変動が高いのに対し、Um =0.72m/s の場合では循環渦の生成・消滅に伴い強い速度 変動領域そのものが壁面へ再付着する分布が確認され、 これが壁面温度変動を最大化する要因であると考えられ る。水平断面における分布において、Um=0.24m/s の場合 では90度ベンドが存在しない体系における変動分布に類 似しているが、Un0.48、0.72m/s においては類似性は見 られない。これは主流流速の増大に伴い混合場が大きく 変化していることを示唆しており、縦断面も含めたより3 次元的な議論を展開していく必要がある。4. 混合形態ごとの温度変動予測式の構築温度変動予測の際、流速比の変化に伴い変化する流動 構造を無視することは難しい。従って温度変動予測式を 成層流の場合、再付着噴流から偏向噴流の場合と二つに 分けて構築する。Fig.8 および Fig.9 に速度比および口径比を用いて最大 温度変動強度 A Timg. maxの回帰分析結果を示す。 成層流の 場合において 20%以内の誤差で予想可能であることがわ かる。一方、再付着噴流から偏向噴流の場合においても 約8割、温度変動を予測することが可能である。重回帰 曲線よりややずれているデータは温度変動が大きいとい う特徴がある。温度変動が大きい領域は混合形態が再付 着噴流の領域であるが、この領域における混合形態が正 確に予測できていないために、重回帰曲線からずれてし まったと考えられる。Fig.10 はデータ整理に用いた混合 形態の分類であり、目視により得られたものである。同 時にベンドが存在しない体系における分類も示す[3]。 Fig.10 より上流に90度ベンドが存在する体系では、高温 噴流はベンドが存在しない体系より深く主流中に侵入し ている。予測式の高精度化ならびに T 字合流管の設計指 針を得る為にも、混合形態をより定量的に予測する必要 があると考えられる。10. 3AB( 3? Db=15mm A D=21mm ■ Dis=31mmA Trms, maxms, maxUJU Fig.o Effect of velocity ratio on A Tms,max△Tms,maxBranchUm=0.24m /sBranchLateral section position0.340.25Um=0.48m/sLongitudinal section position0.243:50:24Um=0.72m/s10.210.15Fig.7 Distribution of velocity fluctuation intensity(D-21mm、Us=0.46m/s)740.21cms. max0.2-20% |? De=15mmA D=21mm - Db=31mm0.0440.042:24:000.2 0.53(U,Jum)9.1(D/D 10.36 Fig.8 Prediction of A Tms,max(Stratified flow)rms, max0.2-0.2●D%3D15mm 4 Do=21mm ■D%3D31mm0.08.041010.2 1.48(09/Umj..8(D3/Dpm21.39 ) Fig.9 Prediction of A Tms,max(Re-attached flow ~ Turn-jet flow)AAAA[kg・m/s3gooStratified flow Turn-jet including Re-attachment flowK(B““ 1.08m10.01 01Molkg ? m/s Classification without 90-degree bend (A) Impiping Jet ----- (M M )=0.35 (B) Deflecting Jet ---- (M M )=1.35 (C) Re-attachment Jet、ー (M.M)=4.00 (D) Wall Jet Fig.10 Classification of fluid mixing pattern5 結言上流に90度ベンドを有するT字配管合流領域における 異温度流体混合実験により、以下の知見が得られた。 1) 混合形態が再付着噴流のとき、後流および2次流れの影響を受け枝流が激しく振動するため、壁近傍におけ る温度変動が最も激しくなる。 2) D-21mm、U-0.46m/s における可視化より、主流流速の増大に伴い強い速度変動領域が壁面へ再付着する為、 温度変動が大きくなる。 3) 水平断面の流れ場は、主流が低流速においては 90 度 ベンドが存在しない体系における変動分布に類似して いるが、主流流速が増大すると類似性は見られず、混合場が大きく変化しているため、縦断面も含めた議論 __ を展開していく必要がある。4) 混合形態ごとの温度変動予測式により、誤差20%以内 ・ に温度変動を予測可能である。 5) 今後、温度変動予測式の高精度化のために混合形態を より定量的に分類する必要がある。謝辞* 本研究は核燃料サイクル開発機構の先行基礎工学研究 の支持を受けて実施されたものであり、ここに感謝の意 を表す。[2]参考文献[1] 高橋志郎・他5名“T 字形合流配管部における温度差を有する二流体の熱的混合特性”、日本機械学会論 文集(B 編) 63 巻 613 号(1997-9)、p.68-74 [2] Minoru IGARASHI, Masaaki TANAKA, NobuyukiKIMURA and Hideki KAMIDE “STUDY ON FLUID MIXING PHENOMENA FOR EVALUATION OF THERMAL STRIPING INAMIXING TEE ≫NURETH-10, (2003) [3] Masaaki TANAKA, Toshiharu MURAMATSU““TURBULENCE MIXING CHARACTERISTICS IN T-JUNCTION PIPE WITH ELBOW PIPE INUPSTREAM SIDE” NUTHHOS-6,(2004) [4] 結城和久、田嶋祐、戸田三朗、橋爪秀利、村松壽晴“上流に90度ベンドを有するT字配管合流域での熱的混合特性に対する曲率半径比の影響”、日本機械学会論文集(B 編) 70 巻 700 号(2004-12)、p118-125 [5] Kazuhisa YUKI, Yoshimasa SUGAWARA, HoseiniSeyed MOHAMMAD, Hidetoshi HASHIZUME, Saburo TODA, Masaaki TANAKA, Toshiharu MURAMATSU “PREDICTION OF THE WALL TEMPERATURE FLUCTUATION IN A T-JUNCTION AREA WITH A90-DEGREE BEND UPSTREAM” NUTHOS-6, (2004) - 76 -“ “異温度流体混合における熱流動特性の評価“ “菅原 良昌,Yoshimasa SUGAWARA,結城 和久,Kazuhisa YUKI,Hoseini Seyed MOHAMMAD,橋爪 秀利,Hidetoshi HASHIZUME,田中 正暁,Masaaki TANAKA