保全への知識基盤ツールの適用
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カテゴリ: 第2回
1. 緒言
筆者らは、リスクベースの設備管理について報告し たが、現場を預かる当事者の関心事は、提案した手法 が果たして身近な保全に効果的に活用でき、従来より も経済的、技術的に高く評価できるかということであ る。実際に、理論とそれを活かすツールは、保全をは じめ、目的に過不足なく適応できるということは経験 上ない。その理由は、「出来ます」と「使えます」の根 本的な認識の違いに拠るが、使うための環境整備(デ ータ登録を含め)が手間、コストを考えると間尺に合 わないと言うことであろう。筆者らの提案するリスクベースの設備管理を高い評 価で実現させるためには、上記のツールの持つ宿命を 解き放たなければならない。本手法は、設備の持つ特 性を、現場での保全課題という切り口で高所からの解 決を目指した全体最適化システムであり、寿命予測が 確率されていない現状下で、技術基盤知識を最大限に 活用し、設備の特性を評価することによって、設備から有用な機能のみを効果的に引き出すためのツール活 用である。実施にあたっては設備やオーナの事情によ って設備管理の条件が異なるので、利用内容を目的に 合わせたツールの使いこなしが必要である。本発表で はツールの適切な運用について記載する。
2. 設備管理の現状と改善課題2.1 現状筆者らの提案する全体最適化の手法は、実証されて いるが、技術知識基盤ツールは、機能は紹介されてい るものの現在では未だ活用されていないしリスクベー スの設備管理との連携も行われていない。一方、より狭義の「保全」レベルでは管理ツール、 保全ツールが利用されて成果を挙げている。これらの 活用は大いに評価できるが、設備管理の基本であるプ ロセス、機能、設備の3特性の評価から出発したもの でないために、設備評価の洗礼を受けていないという 盲点がある。従って、リスクの起こり易さとその影響 の度合いの部分的な評価や個々の設備での保全の成果 はあっても、全体としての見方がないために、部分最 適化の域を抜けていない。即ち、コストミニマムでは なく、全体から見てリスクミニマムにもなっていない と言える。8912.2 課題」 - 全体最適化の手法は既に実証されているので、現存 する保全ツールを含めて技術知識基盤ツールをどのよ うに連携していくかが課題である。技術知識基盤ツー ル導入の上での課題は何であるかといえば; 1 技術知識基盤ツールの拡大制約自然言語 NFL、リファレンスライブラリ 2設備のブレークダウン ( 33特性の把握と入力 である。1はシステムの問題で、該当の設備にそのま ま利用できない場合は、NFL やトランスレータ開発や ライブラリ登録が必要で、その採否は設備の規模や方 針に拠るであろう。23は、本手法を適用するには欠 かせない。誰がどの程度の理解を以って実行するかが 鍵となる。Fig.1 に理解のためにシステム全体を記す。Risk EvaluationRisk EvaluationStured knowledge(Human Judgment)Equip Property Process Property Equip FunctionCRFC (Concentration Rate of Naintenance Consideration■■■ Naintenance Prescription (EAP SheetEquip BreakdownFig.1 Concept of Optimized Maintenance byTechnology Knowledge Infrastructure3. 設備管理システムの適用3.1 システム導入 * 大規模且つ長期継続的な設備であれば前記の技術知 識基盤ツールの拡大が可能であるし、そうすべきであ る。しかし大半の場合は費用の面で1は見送り、利用 可能な技術知識基盤ツールを活用すると思われる。し かし2設備のブレークダウン、33特性の把握と入力 は、評価の基準となるので実施が必要である。費用の 問題もあるので、先ず1つのブラントで先行実施して システムの評価を出しておくのが賢明であろう。3.2 システム運用1の技術知識基盤ツールの拡大は別として、2の設 備のブレークダウンから始まる場合は、設備オーナ側 の技術者とコンサルタントが強い意思疎通を持って設 備のブレークダウン、特性の把握と登録(所謂、知識化) を行う。トランスレータで情報を登録できるもの、 例えば互換性のあるツールで表現された線図は知識と しての登録が可能である。さらに保全ツールを介して 収集した情報を現状の設備の信頼性として登録する。なお、ベースとなる基準はいくつか用意されていて、 実情に合わせての吟味に供することができる。 ・ 全ての要素を取り纏め、3要素のリスク評価として 纏められたら、ブラント毎の保全管理密度(CRMC) の作成が可能になり、設備毎の保全処方(MP シート) が作成できる。万一、技術知識基盤ツールが整ってい なくても、この段階での作業は人間系でも行うことが できる。重要なのは最終的な判断はどんな場合でも人 が行うことで、これは本システムも例外ではない。 こうした作業を通じて、次の項目が実現出来る。設備に有害な事態の発生を防止する * . 有害事態を防止の対策コストを削減する . 有害な事態を防止する「贅肉」を最小化する なお、システムの運用に際しては、ツールのみの導 入や自己流の活用ではなく、コンサルタントの指導を 受けた協業が効果的である。具体的な展開を Fig.2 に示す。Equipment BreakdownEquipmentMaintenanceEquipment PropertyProcess PropertyEquipment FunctionStored KnowledgeRisk EvaluationCRFC... Declare Maintenance PolicyMaintenance prescriptionIMP SheelMake M P Sheet to maintain Equip ReliabilityStep to improveInaintenancePlan to improve Equip reliabilityImprove maintenance without risk (Modify CRFC)Fig.2 Development of Optimized Maintenance ProceduresFig.24.結言総合的な見地から保全費の最適運用を期待するので あれば、ブラントの現状に則した判断の下で、全体最 適化手法に技術知識基盤ツールを適用することが提案 できる。これにより、現存のツールからの取込可能情 報を含め有機的な知識利用により、保全の節減のみな らず、生産ニーズの充足、設備の信頼性維持の各活動 を高次元で調和させた最適運用が実現出来る。“ “保全への知識基盤ツールの適用“ “川中 勉,Tsutomu KAWANAKA,太田 吉美,Yoshimi OTA,玉木 悠二,Yuji TAMAKI
筆者らは、リスクベースの設備管理について報告し たが、現場を預かる当事者の関心事は、提案した手法 が果たして身近な保全に効果的に活用でき、従来より も経済的、技術的に高く評価できるかということであ る。実際に、理論とそれを活かすツールは、保全をは じめ、目的に過不足なく適応できるということは経験 上ない。その理由は、「出来ます」と「使えます」の根 本的な認識の違いに拠るが、使うための環境整備(デ ータ登録を含め)が手間、コストを考えると間尺に合 わないと言うことであろう。筆者らの提案するリスクベースの設備管理を高い評 価で実現させるためには、上記のツールの持つ宿命を 解き放たなければならない。本手法は、設備の持つ特 性を、現場での保全課題という切り口で高所からの解 決を目指した全体最適化システムであり、寿命予測が 確率されていない現状下で、技術基盤知識を最大限に 活用し、設備の特性を評価することによって、設備から有用な機能のみを効果的に引き出すためのツール活 用である。実施にあたっては設備やオーナの事情によ って設備管理の条件が異なるので、利用内容を目的に 合わせたツールの使いこなしが必要である。本発表で はツールの適切な運用について記載する。
2. 設備管理の現状と改善課題2.1 現状筆者らの提案する全体最適化の手法は、実証されて いるが、技術知識基盤ツールは、機能は紹介されてい るものの現在では未だ活用されていないしリスクベー スの設備管理との連携も行われていない。一方、より狭義の「保全」レベルでは管理ツール、 保全ツールが利用されて成果を挙げている。これらの 活用は大いに評価できるが、設備管理の基本であるプ ロセス、機能、設備の3特性の評価から出発したもの でないために、設備評価の洗礼を受けていないという 盲点がある。従って、リスクの起こり易さとその影響 の度合いの部分的な評価や個々の設備での保全の成果 はあっても、全体としての見方がないために、部分最 適化の域を抜けていない。即ち、コストミニマムでは なく、全体から見てリスクミニマムにもなっていない と言える。8912.2 課題」 - 全体最適化の手法は既に実証されているので、現存 する保全ツールを含めて技術知識基盤ツールをどのよ うに連携していくかが課題である。技術知識基盤ツー ル導入の上での課題は何であるかといえば; 1 技術知識基盤ツールの拡大制約自然言語 NFL、リファレンスライブラリ 2設備のブレークダウン ( 33特性の把握と入力 である。1はシステムの問題で、該当の設備にそのま ま利用できない場合は、NFL やトランスレータ開発や ライブラリ登録が必要で、その採否は設備の規模や方 針に拠るであろう。23は、本手法を適用するには欠 かせない。誰がどの程度の理解を以って実行するかが 鍵となる。Fig.1 に理解のためにシステム全体を記す。Risk EvaluationRisk EvaluationStured knowledge(Human Judgment)Equip Property Process Property Equip FunctionCRFC (Concentration Rate of Naintenance Consideration■■■ Naintenance Prescription (EAP SheetEquip BreakdownFig.1 Concept of Optimized Maintenance byTechnology Knowledge Infrastructure3. 設備管理システムの適用3.1 システム導入 * 大規模且つ長期継続的な設備であれば前記の技術知 識基盤ツールの拡大が可能であるし、そうすべきであ る。しかし大半の場合は費用の面で1は見送り、利用 可能な技術知識基盤ツールを活用すると思われる。し かし2設備のブレークダウン、33特性の把握と入力 は、評価の基準となるので実施が必要である。費用の 問題もあるので、先ず1つのブラントで先行実施して システムの評価を出しておくのが賢明であろう。3.2 システム運用1の技術知識基盤ツールの拡大は別として、2の設 備のブレークダウンから始まる場合は、設備オーナ側 の技術者とコンサルタントが強い意思疎通を持って設 備のブレークダウン、特性の把握と登録(所謂、知識化) を行う。トランスレータで情報を登録できるもの、 例えば互換性のあるツールで表現された線図は知識と しての登録が可能である。さらに保全ツールを介して 収集した情報を現状の設備の信頼性として登録する。なお、ベースとなる基準はいくつか用意されていて、 実情に合わせての吟味に供することができる。 ・ 全ての要素を取り纏め、3要素のリスク評価として 纏められたら、ブラント毎の保全管理密度(CRMC) の作成が可能になり、設備毎の保全処方(MP シート) が作成できる。万一、技術知識基盤ツールが整ってい なくても、この段階での作業は人間系でも行うことが できる。重要なのは最終的な判断はどんな場合でも人 が行うことで、これは本システムも例外ではない。 こうした作業を通じて、次の項目が実現出来る。設備に有害な事態の発生を防止する * . 有害事態を防止の対策コストを削減する . 有害な事態を防止する「贅肉」を最小化する なお、システムの運用に際しては、ツールのみの導 入や自己流の活用ではなく、コンサルタントの指導を 受けた協業が効果的である。具体的な展開を Fig.2 に示す。Equipment BreakdownEquipmentMaintenanceEquipment PropertyProcess PropertyEquipment FunctionStored KnowledgeRisk EvaluationCRFC... Declare Maintenance PolicyMaintenance prescriptionIMP SheelMake M P Sheet to maintain Equip ReliabilityStep to improveInaintenancePlan to improve Equip reliabilityImprove maintenance without risk (Modify CRFC)Fig.2 Development of Optimized Maintenance ProceduresFig.24.結言総合的な見地から保全費の最適運用を期待するので あれば、ブラントの現状に則した判断の下で、全体最 適化手法に技術知識基盤ツールを適用することが提案 できる。これにより、現存のツールからの取込可能情 報を含め有機的な知識利用により、保全の節減のみな らず、生産ニーズの充足、設備の信頼性維持の各活動 を高次元で調和させた最適運用が実現出来る。“ “保全への知識基盤ツールの適用“ “川中 勉,Tsutomu KAWANAKA,太田 吉美,Yoshimi OTA,玉木 悠二,Yuji TAMAKI