水中レーザ溶接技術の開発 -当て板補修工法-

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カテゴリ: 第3回
1.緒言
近年、BWR や PWR の炉水環境と高線量の放射線下 で長時間使用された原子炉炉内構造物において、応力 腐食割れが確認されている。ひび割れを炉水環境から 隔離することで、さらに SCC が進展することを抑制す ることが可能となる[1]。東芝では、SCC に対する補修 技術として、ひび割れに直接溶接金属を溶接する水中 レーザ封止溶接法[2][3]及び、補修部位を当て板で覆う 水中レーザ当て板溶接法を開発した。原子炉は、定期 検査中であっても、炉水を抜くことは難しいことから、 こうした水中での溶接を可能とする技術は、効率的な 原子力発電所の運用に非常に有効な保全技術である。 本報告では、水中レーザ当て板溶接法について報告する。
2. 水中レーザ当て板溶接法の原理
水中レーザ当て板溶接法は、封じ切るときに当て板 と母材との間に残留した水が溶接時の加熱でガス化す る噴出し対策として、ガス抜き穴がついた当て板の周 囲の 4 辺溶接を行った後、ガス抜き穴をふさぐ2段階 での溶接を行う。水中レーザ溶接工法は水中施工であ ることから、施工対象部位を気中環境にするための時 間の短縮及び、水遮蔽の効果により炉内での施工中に おける作業者の被曝低減に有効な工法である。連絡先:田村雅貴、〒231-0045 横浜市鶴見区末広町 2-4 、(株)東 芝 、 電 話: 045-510-5202 、 e-mail: masa.tamura@toshiba.co.jp3.水中レーザ当て板溶接法の開発 3.1 溶接ヘッドの開発当社で開発した溶接ヘッドは Nd:YAG レーザを応 用し、溶接ヘッドの周辺を部分的に気中とするもので ある。図1はこの装置の主要な機器の一つである溶接 ヘッドの外観と実験装置を示す。Nd:YAG レーザ発振 器から発振されたレーザは光ファイバーを通して溶接 ヘッドに伝送され、内蔵された光学系により集光され、 溶融池を形成する。溶接ヘッドは水槽中に入るが、シ ールドガスを供給することで、施工部近傍を局所的な 気中とすることができる。また、図中に示す溶接ヘッ ドは照明とカメラを内蔵しており、溶接の位置をカメ ラで確認した後で、溶接することができる。光ファイバ (コア径 0.8mm)Nd:YAG レーザ発振器NC加工機シールドガス内蔵カメラ内蔵照明toolCOOL溶接ヘッドシールド ガス(Ar)水水樹0.333333333333333試験片溶接ヘッド固定治具図1 実験装置と溶接ヘッド外観1013.2 当て板溶接 - 図2に当て板周囲の4辺溶接の施工概念図を示す。 割れがある補修部位に当て板を固定するため、シール ドガスを供給することで局所的な空洞を形成し、その 空洞中でレーザを照射することで当て板周囲の4辺溶 接を行う。当て板の直線部を直接ねらうと溶け落ちが 顕著となるため、当て板側に 0.5~1.5mm ずらした位置 を溶接狙い位置とした。図3に4辺溶接後の外観及び 断面マクロ写真を示す。当て板のガス抜き穴は開口幅 0.3mm、長さ 15mm のスリットを示したが、小0.5mm の穴 (12 箇所)でも有効である。このように、当て板 にガス抜き穴を設けることで、安定した4辺溶接が可 能であることを確認した。レーザ シールドガス入り!ガス抜き穴水当て板て割れ母材図2 4辺溶接の施工概念図1 ガス抜き穴4mmプラス図3 4辺溶接後の外観及び断面マクロ写真 ガス抜き穴をふさぐ溶接法として、封止溶接法の施 工概念図を図4に示す。封止溶接法では、局所的に形 成した空洞中でレーザを照射し、かつ溶接ワイヤを供 給することで、ガス抜き穴の上部に封止溶接層を形成 させる。図5に封止溶接後の外観写真と封止溶接部を 示す。封止溶接部には、噴出しはなく、金属光沢があ る良好な溶接ビードによりガス抜き穴をふさぐことができることを確認した。レーザー x 溶接ワイヤシールドガス「ガスマスリー10.00 水で、 ガス抜き穴ガス抜き穴DomY当て板母材図4 封止溶接法の施工概念図5mm図5 封止溶接後の外観写真と封止溶接部3.結言・ 当て板溶接は、封じ切るときに当て板と母材との間 に残留した水が噴き出すため、水中での施工が難しか ったが、ガス抜き穴を設けることで可能となることを 確認し、ガス抜き穴をふさぐ条件を明確にすることが できた。今後、実機施工に向け、補修溶接までも対応 可能な溶接ヘッドへの改良、アクセス施工装置の開発 などを進める。参考文献「11 伊藤幹郎、ほか. “環境隔離されたき裂の SCC 進展抑制効果(II)”, (社)腐食防食協会、第 51 回材料と環境討論会講演集、頁 51-54(2004年 10月). [2] 金澤ら、“水中レーザ溶接技術”、東芝レビュー、60巻 10号、頁 36-39(2005 年 10月). [3] M. TAMURA, et al, “Development of Underwater LaserCladding and Underwater Laser Seal Welding Techniques for Reactor Components”, ICONE13 -50141, Beijing, China, May, 2005.102“ “水中レーザ溶接技術の開発 -当て板補修工法- “ “田村 雅貴,Masataka TAMURA,松永 圭司,Keiji MATSUNAGA,牧野 吉延,Yoshinobu MAKINO
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