炉内計装筒管台内面軸方向応力腐食割れき裂進展シミュレーション

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カテゴリ: 第3回
1. 緒言
一致していると言われるすべり酸化モデル[3]に基づく 応力腐食割れ(Stress Corrosion Cracking; SCC)のき裂 * モデルによりき裂進展速度を表現する。また、後者を 進展挙動は、力学・材料・環境の 3 つの因子による複力学因子によるき裂進展と考え、き裂先端ひずみ速度 雑な相互作用により支配されており、それらの組み合を力学因子で求められる 3D-FEM を用いてき裂先端の わせ条件をすべて実験的に評価するのは物理的制限に ひずみ勾配を計算し、き裂進展速度とき裂先端ひずみ より非常に困難であり現実的ではない。そこで、限ら速度の関係を導出する手法により評価する。ここで重 れた実験事実に基づき高温高圧水中における環境助長要なことは、Rice ら[4][5]によると、き裂先端に生じる 割れの進展機構を解明し、それに基づいてき裂進展速 ひずみはその要因によらず加算されうるものであり、 度を定量的に予測しようとする試みがなされている[1]。 ひずみ量が適切に評価されていれば負荷モードによら . 本研究では、CT 試験片を用いた SCC き裂進展をシず統一的にき裂進展速度を評価することが可能である ミュレートするため開発された 3 次元有限要素法コーという点である。これらの考え方に基づき、材料・環 ド[2]を配管状試験体内面軸方向 SCC き裂進展へと拡境・力学因子が複雑に関与した環境助長割れ進展速度 張しその有効性を実験結果と比較することで検証した。 式が次式のように提案されている[6]。
11 (1) 2. SCC シミュレーション
dt - これまでの研究によれば、環境助長割れの主因は、 ここでなはき裂先端ひずみ速度、m は酸化速度減衰 環境と材料との化学的又は電気化学的過程、あるいは 曲線の傾き、K,は酸化速度定数である。シミュレー それに付随して生じる現象によるものであり、その場ションではき裂先端ひずみ速度を、成長き裂先端ひず 所はき裂先端あるいはその周辺であることは事実であ み勾配と予め実験的に求められているき裂進展速度か る。そこで本研究では「環境と材料との化学的又は電ら求め、(1)式を用いてき裂進展速度を予測した。シミュレーションの対象とした SCC 試験は Fig.1 に 気化学的過程あるいはそれに付随して生じる現象によ示すように、加圧水型原子炉(PWR)炉内計装筒管台試 るもの」であることと「その場所はき裂先端あるいは験体の内面に 2 つの軸方向スリットを有し、スリット その周辺である」こととを独立事象と考え、この2つConcentrated load(93kN) の事象が相互に作用するときに環境助長割れが発生すTube-shaped specimen るものと考える。これらの事象のうち前者を材料・環...... .....EDM slit 1 境因子によるき裂進展として考え、環境助長割れモデ1140mmHigh temperature water ルの一つであり、高温高圧水中において実現象とよくEDM slit 2 連絡先:佐藤康元、〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻 字青葉 6-6-01 東北大学大学院工学研究科附属エネルギConcentrated load(93kN) 一安全科学国際研究センター、電話:022-795-7520、 Fig. 1 Illustration of SCC test setup using tube-shaped e-mail:yasumoto.sato@rift.mech.tohoku.ac.jpspecimen.382. SCC シミュレーションこれまでの研究によれば、環境助長割れの主因は、 環境と材料との化学的又は電気化学的過程、あるいは それに付随して生じる現象によるものであり、その場 所はき裂先端あるいはその周辺であることは事実であ る。そこで本研究では「環境と材料との化学的又は電 気化学的過程あるいはそれに付随して生じる現象によ るもの」であることと「その場所はき裂先端あるいは その周辺である」こととを独立事象と考え、この2つ の事象が相互に作用するときに環境助長割れが発生す るものと考える。これらの事象のうち前者を材料・環 境因子によるき裂進展として考え、環境助長割れモデ ルの一つであり、高温高圧水中において実現象とよく連絡先:佐藤康元、〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻 字青葉 6-6-01 東北大学大学院工学研究科附属エネルギ ー安全科学国際研究センター、電話: 022-795-7520、 e-mail:yasumoto.sato@rift.mech.tohoku.ac.jp-118直上に集中荷重(93kN)を負荷するものである。試験体 には PWR1 次冷却水を循環させる状態を想定した。3. SCC 試験方法 * 供試材は溶体化処理された Ni 基合金 600 であり、 Fig.1 に示した PWR炉内計装筒管台形状の試験体へと 加工した。荷重負荷方法もシミュレーションで想定し ている状態とし、試験体内部に PWR1 次系模擬水 (1200pm B+2ppm L、溶存水素量 2.8~3.0ppm)を循環さ せて SCC試験を実施した。4. 結果および考察 - SCC試験終了後、疲労負荷により試験片を破断して 破面観察に供した。Fig.2 に深さ 4mm のスリット周辺 の破面の写真と SEM像を示す。スリット先端から疲労 予き裂が発生し、疲労予き裂の先端から SCC が生じて いる。しかし、荷重線周辺では SCC は発生せず(深さ 6mm のスリットでも荷重線周辺では疲労予き裂、SCC ともに発生していなかった)、荷重線の両脇において最 もき裂進展量が大きい結果となった。Fig.3 には2つのスリットから導入されている疲労予 き裂先端から生じたSCC進展量を破面観察により測定 しスリット中心から軸方向の位置に対してプロットし た。また同図にはシミュレーションにより計算された き裂進展量を合わせて示した。Fig.3(a)に見られるよう に、中央部分において 0.1mm 程度の SCC き裂進展が シミュレーションにより計算されているが、Fig.2 にも 示したように実験結果においてはスリット中央部で SCC は全く発生していない。これは疲労予き裂は試験 片を開放するまでは形状が不明であり、シミュレーシ ョンでは全くモデル化されていないために生じた誤差 と考えられる。さらに深さ 4mm のスリット先端から生 じた疲労予き裂の大きさは 6mm のスリットから生じ たものよりもおよそ2倍大きかった。Fig.3(b)に示した ように、両端で若干の過小評価が見られるものの、中 央付近で全くき裂が生じていないことも含めてシミュ レーションと実験は良好な一致を示した。Loading line Fig. 2 Fracture surface around EDM slit 1all (a) a0=4mm1--- Experiment. SimulationSCC crack length, mmPosition, mm““ post.... (b) a0=6mm- Experiment Simulation?SCC crack length, mmPosition, mmFig. 3 Increments of the cracks obtained by the experiment and the simulation.5.結言 1) 深さ 6mm のスリットから生じた SCC き裂進展挙動は実験結果とシミュレーションで良好な一致を1示した。2) 疲労予き裂形状をモデル化できなかったため、深さ 4mm のスリットから生じた SCC き裂進展挙動 にたいして中央部周辺で 0.1mm 程度シミュレーシ ョンが過大評価した。謝辞本研究の一部は独立行政法人原子力安全基盤機構 安全調査研究として実施した。参考文献 [1] T. Shoji et al., A New Parameter for Characterizing Corrosion FatigueCrack Growth, Trans. ASME, J. Engineering Materials and Technology,Vol. 103, October 1981, pp.298-304. [2] T. Shoji et al., 3D-FEM Simulation of EAC Crack Growth Based on theDeformation/Oxidation Mechanism, Proc. 11th Int. Symp. Environ. Degradation Mater. Nuclear Power Systems - Water Reactors, 2003,pp.855-861.. [3] F. P. Ford, A Mechanism of Environmentally-Controlled Crack-Growthof Structural Steels in High-Temperature Water, Proc. of the IAEA Specialists Meeting on Subcritical Crack Growth, Vol.2, Freiburg, W.H.Cullen Ed.,NUREG/CP-0044, MEA-2014, May 13-15, 1981,pp.249-294. [4] J. R. Rice and E. P. Sorensen, Continuing Crack-Tip Deformation andFracture for Plane-Strain Crack Growth in Elastic-Plastic Solids, J.Mech. Phys. Solids, Vol.26, 1978, pp.163-186. [5] J. R. Rice., W. J. Drugan and T. L. Sham, Elastic-Plastic Analysis ofGrowing Cracks, , Fracture Mechanics, Twelfth Conference, ASTMSTP 700, 1980, pp. 189-221. [6] T. Shoji et al., Modeling and quantitative prediction of environmentallyassisted cracking based upon a deformation-oxidation mechanism, PVP-Vol.479, Residual stress, Fracture, and Stress Corrosion Cracking, PVP-2004-2662. Ed.Y. Y. Wang, ASME, New York, 2004, pp.175-184.119“ “炉内計装筒管台内面軸方向応力腐食割れき裂進展シミュレーション“ “佐藤 康元,Yasumoto SATO,庄子 哲雄,Tetsuo SHOJI
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