アコースティック・エミッションと電位揺動の同時計測による進展性塩化物応力腐食割れのモニタリング
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カテゴリ: 第3回
1.緒言
オーステナイステンレス鋼の応力腐食割れ(SCC) は依然大きな問題で, モニタリング技術が必要である. 著者らは,濃厚 MgCl, 溶液による粒内型(TG) SCC では AE は検出されないが,粒界(IG)型 SCC は AE を 発生すること報告した[1][2]. 粒内 SCC は活性経路の アノード溶解で成長することを意味しており, SCC は “割れ”ではないことを示唆している.SCC が TG 型になるか IG 型になるかは,鋭敏化の 有無だけでなく,環境条件や応力状態に依存する.多 軸応力下では,粒界型 SCC や結晶粒が脱落する SCC が発生する[3].現場装置の SCC モニタリングでは, SCC 自身による 一次 AE が検出できなくとも, SCC に関係する AE (二 次 AE という)が検出されればよい[4]. SCC に関与す るAE 源としては,1D孔食底や SCC 内における水素ガ スの発生, 2)腐食生成物の破壊と摩擦, 3) 破面の摩擦, 4)粒界 SCC では脱粒 がある[5][6]. このうち4)は進展 性 SCC に関係するので1次 AE に分類している.維持基準に基づいた設備保全では, AE が進展性 SCC から発生しているのか, 進展を停止した SCC(たとえ ば錆の破壊)から発生しているかを判定する必要がある.一方最近,腐食電位揺動(Corrosion Potential Fluctuation: CPF が SCC の萌芽を検出出来ることが報告 されている[7], CPF 法は,過渡的なアノード反応に伴 うノンファラディック反応を電位揺動として捉えるの で,萌芽期(顕微鏡レベルでの欠陥が確認される前段 階)を検出することには向いているが,局部腐食が進 展すると水素イオンの還元反応 (ファラディック反応) がおこるので、進展性 SCCのモニタリングは難しい[81.本研究では, AE と CPF のいずれの方法が SCC 萌芽 と進展の検出に優れているかについて検討した.
2. 外面応力腐食割れ (ESCC)の検出
溶接ステンレス鋼管の保温材下におけるSCCは年々 発生件数が増加している. 塩化物 ESCC を発生させた 突合せ溶接 4B 管に,最大 10MPa の内圧の増減試験を 行い AE が検出されるか否かを調べた - Fig.1 に累積 AE カウント数と圧力の関係を示した. 図中のハッチング期間は前に付加した圧力までの昇圧 期間で,薄いグレー期間は前に付加した圧力を超えて の昇圧期間である. 50kHz の共振センサは約 200 カウ ントの AE を記録しているが,その多くは IMPa から の降圧時と, 3MPa以上の昇圧および降圧時に検出され ている.1480 450kHz sensorAE energy 50kHz sensor150.1.あ0AE count 50kHz SensorCumulative AE countAEgnergy, VRPressure, Mia・・Pressure,PressureCAE count 5/450MH23Sensor20130g20004000 6000~80080Time, s O Pressure up - | Pressure up Pressure down&Holding Fig.1 Change of cumulative events and energies of AE detected by 50 and 450kHz sensor.の断面観察を行ったところFig.3 に示すように,一部の 表面粒子は脱落している.また Crack B内部に発生し た錆の破壊も観察される. Fig.4 には、50kHz センサ の検出 AE と周波数スペクトルを示した.特徴のある AE が検出されているが,高周波成分をもつ AE(左) は脱粒による AE と考えられた.脱粒のメカニズムは 必ずしも明らかではないが,粒界 Cr 欠乏層が腐食され, 機械的に剥離したものと考えている. SUS304 に水素を チャジして引張り負荷を与えると,粒界破壊が発生 (grain boundary separation)し AE が検出されるこ とが報告[9]されているが,粒界凝集力が低下されるこ とがあれば機械的な破壊に伴う AE が検出されると考 えられる.鋭敏化 304 鋼では,ポリチオン酸やフッ化 物イオンで脱粒型の SCC が発生するが,何れも AE を 発生するので,進展性 SCC の検出に使える.脱粒を伴 う粒界 SCC は,高温高圧水による粒界 SCC にも見ら れる. 表面粒子は脱落している. また Crack B内部に発生し た錆の破壊も観察される. Fig.4 には、50kHz センサ の検出 AE と周波数スペクトルを示した.特徴のある AE が検出されているが,高周波成分をもつ AE(左) は脱粒による AE と考えられた.脱粒のメカニズムは 必ずしも明らかではないが,粒界 Cr 欠乏層が腐食され, 機械的に剥離したものと考えている.SUS304 に水素を チャジして引張り負荷を与えると,粒界破壊が発生 (grain boundary separation)し AE が検出されるこ とが報告[9]されているが,粒界凝集力が低下されるこ とがあれば機械的な破壊に伴う AE が検出されると考 えられる.鋭敏化 304 鋼では,ポリチオン酸やフッ化 物イオンで脱粒型の SCC が発生するが,何れも AEを 発生するので,進展性 SCC の検出に使える.脱粒を伴 う粒界 SCC は,高温高圧水による粒界 SCC にも見ら れる.AE energyo 50kHz sensor200円15 10.1AE count 50kHz Sensorる出Cumulative AE countAEanergy, vk_PressurePressureSAE count450MHz Sensor16-- 000L391.00 0 2000 4000 6000 8000Time, s O Pressure up Pressure upure down&Holding Fig.1 Change of cumulative events and energies of AE detected by 50 and 450kHz sensor.「でも100F450-Ch.3150-Ch.2550-Ch.1...183/Crack-B510MmmmwwwwCnek-AE wavefocrackcOutput, Vm02FAinggoods450-Ch.1450-Ch.20.41400200 Time.us4000200 Time.usCrack-A【×10““【1d50-Ch.4cienta50-Ch.3FFTCoefficientCoefficient10mm501000500 Frequency. HzGruid boundaryattack10_75010191929[room 450-Ch.4 soond100 Fig.2 Source locations of AE events detected by 50 and 450 kHz sensors.Fig.4 Waveforms and frequency spectra of AEsdetected by 50kHz sensor. Crack A(HAZ) Crack B3. AE と CPF によるSCC モニタリング 3.1 等二軸引張応力下での SCC実験室では,短軸応力の SCC 試験が行われるが, SCC の下限界応力や割れ形態は2軸応力の影響を受け て変化する. Type304 鋼の粒内塩化物 SCC の下限界 SCC はひずみエネルギーによって整理でき,等2軸応 力での下限界応力は, 単軸下限界応力よりも低くなる. そこで鋭敏化 SUS304 鋼板(150 × 100 mm, 厚さ 3mm)に,エリクセン型負荷装置を用いて等二軸引張り応力 Fig.3 Transverse SEM of Crack-A in heat affected zone(280 MPa) を負荷した鋭敏化 304 鋼の SCC試験(Fig. 5) (a) and Crack-B (b)を行った.試験片中央部に設置したガラス製セルに試 AE 源の位置標定結果を Fig.2 に示す. AE は,ESCC 験溶液(30%MgCl)を入れ,バンドヒーで溶液温度を (Crack-A,B,C) 近傍に標定されている. Crack-A,-B,-C_363K に, また試験片下部のセラミックヒータで鋼板温(b)Falling niRunt crackTOP101Resinhing grainTOP1013- 149 -- 149 -度を 343K に制御した. 白金電極を参照電極として, 鋼板の腐食電位をディジタルボルトメータで測定した. また鋼板の下面には、8個の小型 AE センサ(PAC 社 製 PICO センサ,受感部径4mm,共振周波数 0.45 MHz) を直径 80 mm の円上に等間隔に設置してラム波(板波) AE を計測した. センサ出力は 40 dB 増幅し,高速 AID コンバーター(Gage Applied Inc 社: Gage Scope 1250) でディジタルデータとして,独自に開発した信号解析 システム(ADAS)に取込んだ.(PF-3ydem)DigitalVoltmeter Vertical resolution: IV Sampling intervat:0.43Data loggerThermocoupleSilicone oil in glass tubeGlass cell ID:p50mmBandElectrode:Pt20:200mm SUS304 (400x1502) Sensitized:600 Cox-shheater O-nng & Silicone/sealant30% MgCl2RigidRing wall (8ch-AE system)ADAS2-Ceramic healerThermometer8-AE sensorsSteel Ring =80mmSteel ball 0338mmBottom viewAD converter8-AE sensors (Pico:PAC)ADASampling:2048 Interval:400s TH:20mVCeramic healer 10x25mmCorrosion cell 450mmPre-amp:40dB Fig.5 Experimental setup for equai-biaxial SCC test AE 波形を調べると,2種類に分類されることがわか った. Fig.6 には2種類(Type-I および- II)の波形と FFT, ウェーブレット係数等高線図を示す. Type-I は、 Type-II よりも高周波数成分をもち, So モーType I AE (E.C.13: 397 ks)12A E waveform10.13FFTWavelet contour map合50AOutput, mVCoefficientFrequency, MHzso。1500 50.10015010.5 Time, usFrequency, MHz Type II AE (E.C.3545: 527 ks)[10-1311032 64 96 128 160Time, us.(あ~100200TAOutput, mvSoftwalCoefficientFrequency, MHz0.5326496128160Time, us3-2011 0 50 100 15000.5 Time, usFrequency, MHz100100 Fig.6 Waveforms, frequency spectra and wavelet contour map of AE detected in equi-biaxial SCC test. ド波(中心軸に対して対称振動するモード波)も検出されている.これは,fig.2(b)の脱粒が放出した AE の 特徴に似ている.一方 Type-II の周波数成分は, 0.15MHz 以下で Ao モード波(非対称振動モード)である.Fig.7 に SEM 写真を示す. (a)は表面写真であるが, ひび割れた酸化物(甲羅状クロム酸・水酸化物)で孔 食が埋められている. 酸化物成長中に体積が膨張する ので甲羅状に分裂するとすれば,膨大な数の AE が検(a)(C)Falling offof grain100μm(b)TG-SCC10104m50kmFig.7 SEM photos of surface (a),(b) and transverse (c) SCC in equi-biaxial SCC test. 出される. SCC 先端()では, 酸化物のない直径約 20 um の食孔が見られる. (C)には甲羅状酸化物のない孔食 (b)の SEM 写真を示す.食孔は矩形状であるが,アス ペクト比(孔食深さ直径)の大きな矩形孔食は,粒界 腐食と2軸引張り応力によって結晶粒が脱落して生成 されたものと考えられる.このとき高帯域の AE を放 出する.表面粒子が粒界腐食を受けると,粒界に浸透 した溶液の pH は加水分解反応によって低下するので, 表面下の結晶粒やクロム欠乏層は激しい腐食を受けて 酸化物を生成すると考えられる.すなわち SCC の発 生・伝播過程では,表面の結晶粒が脱落することによ る AE と,甲羅状酸化物の生成による AE の可能性が ある. * Fig.8 には Type-I と-IIAE に分けて累積数,振幅(図 ので,最大振幅波のピーク/ピーク電圧:Vo)と腐食 電位の経時変化を示した.また,図中の SCC1から4 は,目視で確認した SCC の発生期間である. Type-I の AE は,360 ks までに約 30 イベント検出されたが,そ の後はほとんど検出されていない、腐食電位は卑方向 にシフト(アノード溶解が先行)するが,-500mV vs. Ag/AgCl では,RD型の電位揺動が頻繁に観察される. この電位揺動は,過渡的なアノード溶解による電子の150(a) Type-I AE |Heating AE data overnow -300,AE_data overflowHeatingAE count2-400FPotentialPotential,mV vs. Ag/AgClCumulative AE countAE amplitude Vpp V日-500HSCC:@One5001000電気二重層コンデンサーへ充電と,放電によるもと解 釈される.すなわちこのような電位揺動は,SCC の萌 芽現象を検出している.Type-II の腐食生成物の破壊による二次 AE が多く検 出され,SCC モニタリングに有用と判断されるが,腐 食生成物の破壊は SCC の成長以外,例えば温度や環境 によっても引き起こされる.しかしながら, Fig.8(6)の ように SCC 進展中においても高周波 CPF が検出され ば,AE と CPF との同時計測により SCC の進展モニタ リングが可能である.(a) Type-I AE,AE_data overflowHeating-300AE countP-4001parentaPotentialPotential,mVvs. Ag/AgClCumulative AE countAE amplitude Vpp V-500SCC:2SCC:50010003.2 熱流束のある304鋼 SCC熱流束を受ける鋭敏化 SUS304 板(115mmL x 40 mmWxlmmT)の3点曲げ(300MPa) SCC試験を行 って AE 発生源を調べた.試験液は 35 mass%MgCl, 溶 液で, pH は 2.8(363K)のため水素ガス発生反応も起 こる.試験片裏面に装着した2個のセラミックヒータ によって,試験片温度を363K,溶液温度を 323K に制 御した.引張側表面には 120MPa の2軸引張熱応力が 重畳する. 試験後(380ks)の表面: (a),(b),(c) と断面 写真:(d)を Fig.9 に示す.Time, ks AE threshold value,mVF13'20'30'20'15' (b) Type-II AEAE data overflow Heating71 -300円AE countX1070.1-400Potential(a)11 (6) -b)Potential,mVvs. Ag/AgClCumulative AE countAE amplitude Vpp, Vーーーえる-500SCC2Secutsecascca/5001000きれる.すなわちこのような電位揺動は,SCC の萌 見象を検出している.(b)... 100mm100m type-II V7z エルフ吸による一八タ 出され,SCC モニタリングに有用と判断されるが,腐 食生成物の破壊は SCC の成長以外,例えば温度や環境 によっても引き起こされる.しかしながら, Fig.8(6)の ように SCC 進展中においても高周波 CPF が検出され ば,AE と CPF との同時計測により SCC の進展モニタ リングが可能である.(a) Type-I AE,AE_data overflowHeating-30070.1AE count2-400F|| Souental1PotentialPotential,mVvs. Ag/AgCICumulative AE count10AE amplitude Vpp V日-500HSCC2 gcc.0sic@|| 84CG!50010003.2 熱流束のある304鋼 SCC熱流束を受ける鋭敏化 SUS304 板 (115mmL x 40 mmWx1 mmT)の3点曲げ(300MPa) SCC 試験を行 って AE 発生源を調べた.試験液は 35 mass%MgCl,溶 液で, pH は 2.8(363K)のため水素ガス発生反応も起 こる.試験片裏面に装着した2個のセラミックヒータ によって,試験片温度を363K,溶液温度を 323K に制 御した.引張側表面には 120MPa の2軸引張熱応力が 重畳する. 試験後(380ks)の表面:(a),(b),(c) と断面 写真:(d)を Fig.9 に示す.Time, ksAE threshold value ,mVF1013'20'30'20'15'(b) Type-II AEAE data overflowHeatingx10-300円AE count1Potential(a)| (0) -b)20.05Potential,mVvs. Ag/AgClCumulative AE countAE amplitude Vpp, V5-500SCCDsc0 secofscca/JoJo100i10km5001000AE threshold(C)Time, ks value.mv ト―Panohohorial Fig.8 Change of potential fluctuation and cumulative Type-I AE(a) and Type-II AE(b) count in equi-biaxial SCC test.10910μm一方 Type-II の AE は,枝分れ SCC が成長しはじめたFig.9 Surface photos (a)-(c) and transverse photo Dks 近傍で急増(2,000 イベント)したのちその発生(d) of SCC in sensitized SUS304 steel. 少なくなっているが,SCC:2が成長し始めた 800ks 4本の SCC が発生したが,3本は円状孔食を起点とし 再び急増(5,000 イベント)している.振幅()値 て長さ 1mm まで進展した. (b)に示すように,直径約SCC:1と2が伝播を開始する時期に大きくなって100um の孔食周縁や底には粒界割れが観察されるほか, る. AE がどのような現象によって放出されたかを推表面 SCC には結晶粒の脱落(C)が観察される. アスペク することは容易ではないが,高周波数の Type-I AE ト比の大きな矩形孔食は,脱粒によって生成したもの SCC:1の孔食萌芽期に, Type-II AE が SCC 伝播期にである. 孔食内には薄い腐食生成物が存在し,その底 出されたことから判断すると, Type-I は表面結晶粒から粒内 SCC が発生している. 前節よりも腐食生成物 脱落によって, Type-II は甲羅状酸化物の破壊によっ が少ないのは、高濃度溶液による溶存酸素の低下,水 生成された可能性が高い。なお,この領域において素ガス発生に伴う腐食生成物の脱落が考えられる,腐 察された高周波数の RD-CPF は,酸化物が破壊して食生成物が水素ガス圧によって脱落すれば AE を放出 合い溶液が錆の内部に浸透してアノード溶解を引き するので,脱粒や水素ガスによる AE が検出されれば, すというメカニズムが考えられる.進展性 SCC と判断できる.- 151 -が SCC:1の孔食萌芽期に, Type-II AE が SCC 伝播期に 検出されたことから判断すると, Type-I は表面結晶粒 の脱落によって, Type-II は甲羅状酸化物の破壊によっ て生成された可能性が高い。なお,この領域において 観察された高周波数の RD-CPF は,酸化物が破壊して - 151 - 4本の SCC が発生したが,3本は円状孔食を起点とし て長さ 1mm まで進展した. (b)に示すように,直径約 100um の孔食周縁や底には粒界割れが観察されるほか, 表面 SCC には結晶粒の脱落(C)が観察される.アスペク ト比の大きな矩形孔食は,脱粒によって生成したもの である。孔食内には薄い腐食生成物が存在し,その底 から粒内 SCC が発生している.前節よりも腐食生成物 が少ないのは,高濃度溶液による溶存酸素の低下,水 素ガス発生に伴う腐食生成物の脱落が考えられる,腐 食生成物が水素ガス圧によって脱落すれば AE を放出 するので,脱粒や水素ガスによる AEが検出されれば, 進展性 SCC と判断できる.検出 AE は,3タイプ(Type-a,b および c)に分別でき た. Fig.10 にそれらの波形と周波数スペクトルを示す. Type-a および-b の AE は Fig.6 の Type-I および II に似 ており,脱粒および腐食生成物の破壊によるものと考 えられる. Type-c は, 300kHz付近の周波数成分をもつ AE で, 水素ガス発生に伴って検出される.Type=a E.C.62Output, mVCoefficient500Time, usFrequency, kHzType-bE.C.195Output, mVCoefficient58Time.usFrequency, kHz(1.10““)Type-C E.C.137Output, mVCoefficientNP1000Time, usFrequency, kHz Fig.10 Waveforms (a) and frequency spectra (b) of AEs detected of sensitized SUS304 steel.Fig.11 に腐食電位とタイプ別 AE の累積カウント変 化を示す.電位は試験開始後にいったん卑方向にシフ トしているが,この時点で孔食の発生が始まっている. 70ks 以降の電位は,-324~-340mV の間にある.脱粒 SCC による Type-a の AE は, 150-200ks と 250-300ks で 急増している.またこれらの期間では,水素ガスによPre heating-3207T1600PotentialType-a AEPotential E, mV (vs. Ag/AgCI)Cumulative AE countType-C AEType-b AE200400 Time, ks Fig.11 Change of potential fluctuation and cumulative Type-a, -b and -c AE count during SCC of sensitizedる Type-c および生成物破壊による Type-b の AE も発生 するが,脱粒 SCC の AE(Type-c)と比較して少なく, Type-c よりも遅れて発生している.すなわちこの系に おける SCC の成長過程は,脱粒 SCC が発生したのち に,腐食性生物の生成と水素ガスの発生が続くと考え られる. Fig.12 には、0-200ks と 200-350ks で検出され た AE の位置標定結果を示す.音源位置は、ウェーブ レット変換を用いて Type-a AE では 330kHz, Type-b AE では 250kHz, Type-c では 330kHz 成分の経時変化を求 め,初動最大振幅の到達時間差と仮想音源走査法 を用いて標定した.200 - 350ks| 0 - 200ksGlabs cell40TnaoCh.1Ch.1Glass cell ch.41000ob0 Ch. 2OmmCh.3conalon2 tom10mmCh.320200Maximum stressMaximum stress●:Type-a AE A:Type-b AE O:Type-c AEX:SCCFig.12 Source location of AE detected during SCC of sensitized SUS304 steel.なお,全てのセンサは同じ感度でないため十分な振幅 をもつ AE のみを標定した.図にはタイプ別(●:脱 粒 SCC, A : 生成物破壊, : ○水素ガス)の標定結果を 示したが,200ks までの AE 源は,最大引張応力の位置 (X-23mm)に集中しており,脱粒 SCC および水素ガス による AE と思われる.一方 200-350ks の AE源は,X=10 ~20mm に観察された3本の SCC 近傍にも標定され, 脱粒,水素ガス発生とそれによる腐食生成物の破壊を 捕らえている.これらの3タイプの AE のうち,脱粒 と水素ガスによる AE は, 進展性 SCC に関係するので, AE を検出すれば SCC が進展しているか否かを判断で きる.なお,この段階になると CPF からき裂の進展の 可否を議論することは難しい.4. 結言 Type304 鋼の粒内・粒界 SCC に伴う, アコースティック・アコースティック・152における電位振動と AE-SCC 先端粒界の予腐食に よる脱粒と AE-材料と環境,投稿中 [5]米津明生,長秀雄,小川武史,竹本幹男,塩化物 - 応力腐食割れによるアコースティック・エミッションと電位振動同時計測, 材料試験技術, 50(3), , - pp. 133-139 (2005) [6] 米津明生,伊藤進一,諸藤浩一,佐藤昌一,長 秀雄,竹本幹男, アコースティック・エミッショ ン(AE)を用いた外面応力腐食割れ(ESCC)の検出,材料と環境,54(7),pp. 329-336 (2005) [7]井上博之,電気化学ノイズ測定の基礎,材料と環境,52,pp.441-451(2003) [8]米津明夫,谷山嘉啓,長秀雄,小川武史,竹本幹男,酸化物を生成する塩化物 SCC における AE と 電位振動,材料,55-2, pp.211-217 (2006) [9] S.H.Carpeneter and D.R.Smith, Jr, The Effect ofCathodic Charging on the Acoustic Emission Generated by Intergranular Cracking in Sensitized 304 Stainless Steel, Matallurgical Trans.A, 21A, pp.1933-1939(1990)エミッション(AE)と腐食電位揺動(CPF)を計測し, SCC の発生・進展が検出できるか否かを調べた. *1) 外面 SCCのあるSUS304鋼管の内圧負荷に伴うAE の検出したところ,枝分かれ SCC 面の摩擦, さび破壊, 脱粒によって発生することが判った.脱粒SCCは, 比較的高周波数の AEを放出する. 2) 等2軸引張負荷状態で 30%MgCl2 溶液中のSCC 試験を行った. SCC の発生・伝播過程で は,表面結晶粒が脱落することによる AE (一 次 AE) と,甲羅状酸化物の生成による AE (二 次 AE) が発生した. AE の周波数スペクトルお よび腐食電位揺動との対応から,一次と二次 AE を分類した. 高周波の一次 AE は 30 イベン ト程度に対して,低周波の二次 AE は 12500 イ ベントも検出された. この系における SCC のモニタリングは 二次 AE の検出が有効である. 3) 熱流束をもつ Type304 の2軸引張塩化物 SCC(35mass%)では,脱粒 SCC が発生して矩形の 孔食を形成する. 孔食底には腐食生物物が生成 し,粒内型 SCC が発生する.この試験におい ては,脱粒 SCC による一次 AE, 腐食生成物の 破壊および水素ガスによる二次 AE が検出され、 るが,周波数成分からそれらを分類した.脱粒 SCC と水素ガスの AE が検出されれば, SCCは成長性であると判断できると思われる. 謝辞 1. 本研究の一部は、青山学院大学 21 世紀 COE プロ グラムの援助を受けた.参考文献 [1] 竹本幹男、中澤知之,いわゆる“活性経路アノ ・ーード溶解型応力腐食割れ”のメカニズム,材料と環境,44-3,(1995)pp.166-173 [2] 竹本幹男,AE は腐食研究に対して役立つ技術 のか?-原波形解析による環境劣化のダイナミックス ,材料と環境,53-11,(2004)pp.511-519 「31竹本幹男,青木陽一,引張り・捩り組合せ応力を 受けるオーステナイステンレス鋼 SUS304 鋼の応力腐食割れ,防食技術, 31,pp.753-759(1982) [4]米津明生,谷山嘉啓,長秀雄,竹本幹男,二軸応力をうける鋭敏化 SUS304 鋼の粒界型塩化物 SCC 153 -“ “アコースティック・エミッションと電位揺動の同時計測による進展性塩化物応力腐食割れのモニタリング“ “米津 明生,Akio YONEZU,長 秀雄,Hideo CHO,竹本 幹男,Mikio TAKEMOTO
オーステナイステンレス鋼の応力腐食割れ(SCC) は依然大きな問題で, モニタリング技術が必要である. 著者らは,濃厚 MgCl, 溶液による粒内型(TG) SCC では AE は検出されないが,粒界(IG)型 SCC は AE を 発生すること報告した[1][2]. 粒内 SCC は活性経路の アノード溶解で成長することを意味しており, SCC は “割れ”ではないことを示唆している.SCC が TG 型になるか IG 型になるかは,鋭敏化の 有無だけでなく,環境条件や応力状態に依存する.多 軸応力下では,粒界型 SCC や結晶粒が脱落する SCC が発生する[3].現場装置の SCC モニタリングでは, SCC 自身による 一次 AE が検出できなくとも, SCC に関係する AE (二 次 AE という)が検出されればよい[4]. SCC に関与す るAE 源としては,1D孔食底や SCC 内における水素ガ スの発生, 2)腐食生成物の破壊と摩擦, 3) 破面の摩擦, 4)粒界 SCC では脱粒 がある[5][6]. このうち4)は進展 性 SCC に関係するので1次 AE に分類している.維持基準に基づいた設備保全では, AE が進展性 SCC から発生しているのか, 進展を停止した SCC(たとえ ば錆の破壊)から発生しているかを判定する必要がある.一方最近,腐食電位揺動(Corrosion Potential Fluctuation: CPF が SCC の萌芽を検出出来ることが報告 されている[7], CPF 法は,過渡的なアノード反応に伴 うノンファラディック反応を電位揺動として捉えるの で,萌芽期(顕微鏡レベルでの欠陥が確認される前段 階)を検出することには向いているが,局部腐食が進 展すると水素イオンの還元反応 (ファラディック反応) がおこるので、進展性 SCCのモニタリングは難しい[81.本研究では, AE と CPF のいずれの方法が SCC 萌芽 と進展の検出に優れているかについて検討した.
2. 外面応力腐食割れ (ESCC)の検出
溶接ステンレス鋼管の保温材下におけるSCCは年々 発生件数が増加している. 塩化物 ESCC を発生させた 突合せ溶接 4B 管に,最大 10MPa の内圧の増減試験を 行い AE が検出されるか否かを調べた - Fig.1 に累積 AE カウント数と圧力の関係を示した. 図中のハッチング期間は前に付加した圧力までの昇圧 期間で,薄いグレー期間は前に付加した圧力を超えて の昇圧期間である. 50kHz の共振センサは約 200 カウ ントの AE を記録しているが,その多くは IMPa から の降圧時と, 3MPa以上の昇圧および降圧時に検出され ている.1480 450kHz sensorAE energy 50kHz sensor150.1.あ0AE count 50kHz SensorCumulative AE countAEgnergy, VRPressure, Mia・・Pressure,PressureCAE count 5/450MH23Sensor20130g20004000 6000~80080Time, s O Pressure up - | Pressure up Pressure down&Holding Fig.1 Change of cumulative events and energies of AE detected by 50 and 450kHz sensor.の断面観察を行ったところFig.3 に示すように,一部の 表面粒子は脱落している.また Crack B内部に発生し た錆の破壊も観察される. Fig.4 には、50kHz センサ の検出 AE と周波数スペクトルを示した.特徴のある AE が検出されているが,高周波成分をもつ AE(左) は脱粒による AE と考えられた.脱粒のメカニズムは 必ずしも明らかではないが,粒界 Cr 欠乏層が腐食され, 機械的に剥離したものと考えている. SUS304 に水素を チャジして引張り負荷を与えると,粒界破壊が発生 (grain boundary separation)し AE が検出されるこ とが報告[9]されているが,粒界凝集力が低下されるこ とがあれば機械的な破壊に伴う AE が検出されると考 えられる.鋭敏化 304 鋼では,ポリチオン酸やフッ化 物イオンで脱粒型の SCC が発生するが,何れも AE を 発生するので,進展性 SCC の検出に使える.脱粒を伴 う粒界 SCC は,高温高圧水による粒界 SCC にも見ら れる. 表面粒子は脱落している. また Crack B内部に発生し た錆の破壊も観察される. Fig.4 には、50kHz センサ の検出 AE と周波数スペクトルを示した.特徴のある AE が検出されているが,高周波成分をもつ AE(左) は脱粒による AE と考えられた.脱粒のメカニズムは 必ずしも明らかではないが,粒界 Cr 欠乏層が腐食され, 機械的に剥離したものと考えている.SUS304 に水素を チャジして引張り負荷を与えると,粒界破壊が発生 (grain boundary separation)し AE が検出されるこ とが報告[9]されているが,粒界凝集力が低下されるこ とがあれば機械的な破壊に伴う AE が検出されると考 えられる.鋭敏化 304 鋼では,ポリチオン酸やフッ化 物イオンで脱粒型の SCC が発生するが,何れも AEを 発生するので,進展性 SCC の検出に使える.脱粒を伴 う粒界 SCC は,高温高圧水による粒界 SCC にも見ら れる.AE energyo 50kHz sensor200円15 10.1AE count 50kHz Sensorる出Cumulative AE countAEanergy, vk_PressurePressureSAE count450MHz Sensor16-- 000L391.00 0 2000 4000 6000 8000Time, s O Pressure up Pressure upure down&Holding Fig.1 Change of cumulative events and energies of AE detected by 50 and 450kHz sensor.「でも100F450-Ch.3150-Ch.2550-Ch.1...183/Crack-B510MmmmwwwwCnek-AE wavefocrackcOutput, Vm02FAinggoods450-Ch.1450-Ch.20.41400200 Time.us4000200 Time.usCrack-A【×10““【1d50-Ch.4cienta50-Ch.3FFTCoefficientCoefficient10mm501000500 Frequency. HzGruid boundaryattack10_75010191929[room 450-Ch.4 soond100 Fig.2 Source locations of AE events detected by 50 and 450 kHz sensors.Fig.4 Waveforms and frequency spectra of AEsdetected by 50kHz sensor. Crack A(HAZ) Crack B3. AE と CPF によるSCC モニタリング 3.1 等二軸引張応力下での SCC実験室では,短軸応力の SCC 試験が行われるが, SCC の下限界応力や割れ形態は2軸応力の影響を受け て変化する. Type304 鋼の粒内塩化物 SCC の下限界 SCC はひずみエネルギーによって整理でき,等2軸応 力での下限界応力は, 単軸下限界応力よりも低くなる. そこで鋭敏化 SUS304 鋼板(150 × 100 mm, 厚さ 3mm)に,エリクセン型負荷装置を用いて等二軸引張り応力 Fig.3 Transverse SEM of Crack-A in heat affected zone(280 MPa) を負荷した鋭敏化 304 鋼の SCC試験(Fig. 5) (a) and Crack-B (b)を行った.試験片中央部に設置したガラス製セルに試 AE 源の位置標定結果を Fig.2 に示す. AE は,ESCC 験溶液(30%MgCl)を入れ,バンドヒーで溶液温度を (Crack-A,B,C) 近傍に標定されている. Crack-A,-B,-C_363K に, また試験片下部のセラミックヒータで鋼板温(b)Falling niRunt crackTOP101Resinhing grainTOP1013- 149 -- 149 -度を 343K に制御した. 白金電極を参照電極として, 鋼板の腐食電位をディジタルボルトメータで測定した. また鋼板の下面には、8個の小型 AE センサ(PAC 社 製 PICO センサ,受感部径4mm,共振周波数 0.45 MHz) を直径 80 mm の円上に等間隔に設置してラム波(板波) AE を計測した. センサ出力は 40 dB 増幅し,高速 AID コンバーター(Gage Applied Inc 社: Gage Scope 1250) でディジタルデータとして,独自に開発した信号解析 システム(ADAS)に取込んだ.(PF-3ydem)DigitalVoltmeter Vertical resolution: IV Sampling intervat:0.43Data loggerThermocoupleSilicone oil in glass tubeGlass cell ID:p50mmBandElectrode:Pt20:200mm SUS304 (400x1502) Sensitized:600 Cox-shheater O-nng & Silicone/sealant30% MgCl2RigidRing wall (8ch-AE system)ADAS2-Ceramic healerThermometer8-AE sensorsSteel Ring =80mmSteel ball 0338mmBottom viewAD converter8-AE sensors (Pico:PAC)ADASampling:2048 Interval:400s TH:20mVCeramic healer 10x25mmCorrosion cell 450mmPre-amp:40dB Fig.5 Experimental setup for equai-biaxial SCC test AE 波形を調べると,2種類に分類されることがわか った. Fig.6 には2種類(Type-I および- II)の波形と FFT, ウェーブレット係数等高線図を示す. Type-I は、 Type-II よりも高周波数成分をもち, So モーType I AE (E.C.13: 397 ks)12A E waveform10.13FFTWavelet contour map合50AOutput, mVCoefficientFrequency, MHzso。1500 50.10015010.5 Time, usFrequency, MHz Type II AE (E.C.3545: 527 ks)[10-1311032 64 96 128 160Time, us.(あ~100200TAOutput, mvSoftwalCoefficientFrequency, MHz0.5326496128160Time, us3-2011 0 50 100 15000.5 Time, usFrequency, MHz100100 Fig.6 Waveforms, frequency spectra and wavelet contour map of AE detected in equi-biaxial SCC test. ド波(中心軸に対して対称振動するモード波)も検出されている.これは,fig.2(b)の脱粒が放出した AE の 特徴に似ている.一方 Type-II の周波数成分は, 0.15MHz 以下で Ao モード波(非対称振動モード)である.Fig.7 に SEM 写真を示す. (a)は表面写真であるが, ひび割れた酸化物(甲羅状クロム酸・水酸化物)で孔 食が埋められている. 酸化物成長中に体積が膨張する ので甲羅状に分裂するとすれば,膨大な数の AE が検(a)(C)Falling offof grain100μm(b)TG-SCC10104m50kmFig.7 SEM photos of surface (a),(b) and transverse (c) SCC in equi-biaxial SCC test. 出される. SCC 先端()では, 酸化物のない直径約 20 um の食孔が見られる. (C)には甲羅状酸化物のない孔食 (b)の SEM 写真を示す.食孔は矩形状であるが,アス ペクト比(孔食深さ直径)の大きな矩形孔食は,粒界 腐食と2軸引張り応力によって結晶粒が脱落して生成 されたものと考えられる.このとき高帯域の AE を放 出する.表面粒子が粒界腐食を受けると,粒界に浸透 した溶液の pH は加水分解反応によって低下するので, 表面下の結晶粒やクロム欠乏層は激しい腐食を受けて 酸化物を生成すると考えられる.すなわち SCC の発 生・伝播過程では,表面の結晶粒が脱落することによ る AE と,甲羅状酸化物の生成による AE の可能性が ある. * Fig.8 には Type-I と-IIAE に分けて累積数,振幅(図 ので,最大振幅波のピーク/ピーク電圧:Vo)と腐食 電位の経時変化を示した.また,図中の SCC1から4 は,目視で確認した SCC の発生期間である. Type-I の AE は,360 ks までに約 30 イベント検出されたが,そ の後はほとんど検出されていない、腐食電位は卑方向 にシフト(アノード溶解が先行)するが,-500mV vs. Ag/AgCl では,RD型の電位揺動が頻繁に観察される. この電位揺動は,過渡的なアノード溶解による電子の150(a) Type-I AE |Heating AE data overnow -300,AE_data overflowHeatingAE count2-400FPotentialPotential,mV vs. Ag/AgClCumulative AE countAE amplitude Vpp V日-500HSCC:@One5001000電気二重層コンデンサーへ充電と,放電によるもと解 釈される.すなわちこのような電位揺動は,SCC の萌 芽現象を検出している.Type-II の腐食生成物の破壊による二次 AE が多く検 出され,SCC モニタリングに有用と判断されるが,腐 食生成物の破壊は SCC の成長以外,例えば温度や環境 によっても引き起こされる.しかしながら, Fig.8(6)の ように SCC 進展中においても高周波 CPF が検出され ば,AE と CPF との同時計測により SCC の進展モニタ リングが可能である.(a) Type-I AE,AE_data overflowHeating-300AE countP-4001parentaPotentialPotential,mVvs. Ag/AgClCumulative AE countAE amplitude Vpp V-500SCC:2SCC:50010003.2 熱流束のある304鋼 SCC熱流束を受ける鋭敏化 SUS304 板(115mmL x 40 mmWxlmmT)の3点曲げ(300MPa) SCC試験を行 って AE 発生源を調べた.試験液は 35 mass%MgCl, 溶 液で, pH は 2.8(363K)のため水素ガス発生反応も起 こる.試験片裏面に装着した2個のセラミックヒータ によって,試験片温度を363K,溶液温度を 323K に制 御した.引張側表面には 120MPa の2軸引張熱応力が 重畳する. 試験後(380ks)の表面: (a),(b),(c) と断面 写真:(d)を Fig.9 に示す.Time, ks AE threshold value,mVF13'20'30'20'15' (b) Type-II AEAE data overflow Heating71 -300円AE countX1070.1-400Potential(a)11 (6) -b)Potential,mVvs. Ag/AgClCumulative AE countAE amplitude Vpp, Vーーーえる-500SCC2Secutsecascca/5001000きれる.すなわちこのような電位揺動は,SCC の萌 見象を検出している.(b)... 100mm100m type-II V7z エルフ吸による一八タ 出され,SCC モニタリングに有用と判断されるが,腐 食生成物の破壊は SCC の成長以外,例えば温度や環境 によっても引き起こされる.しかしながら, Fig.8(6)の ように SCC 進展中においても高周波 CPF が検出され ば,AE と CPF との同時計測により SCC の進展モニタ リングが可能である.(a) Type-I AE,AE_data overflowHeating-30070.1AE count2-400F|| Souental1PotentialPotential,mVvs. Ag/AgCICumulative AE count10AE amplitude Vpp V日-500HSCC2 gcc.0sic@|| 84CG!50010003.2 熱流束のある304鋼 SCC熱流束を受ける鋭敏化 SUS304 板 (115mmL x 40 mmWx1 mmT)の3点曲げ(300MPa) SCC 試験を行 って AE 発生源を調べた.試験液は 35 mass%MgCl,溶 液で, pH は 2.8(363K)のため水素ガス発生反応も起 こる.試験片裏面に装着した2個のセラミックヒータ によって,試験片温度を363K,溶液温度を 323K に制 御した.引張側表面には 120MPa の2軸引張熱応力が 重畳する. 試験後(380ks)の表面:(a),(b),(c) と断面 写真:(d)を Fig.9 に示す.Time, ksAE threshold value ,mVF1013'20'30'20'15'(b) Type-II AEAE data overflowHeatingx10-300円AE count1Potential(a)| (0) -b)20.05Potential,mVvs. Ag/AgClCumulative AE countAE amplitude Vpp, V5-500SCCDsc0 secofscca/JoJo100i10km5001000AE threshold(C)Time, ks value.mv ト―Panohohorial Fig.8 Change of potential fluctuation and cumulative Type-I AE(a) and Type-II AE(b) count in equi-biaxial SCC test.10910μm一方 Type-II の AE は,枝分れ SCC が成長しはじめたFig.9 Surface photos (a)-(c) and transverse photo Dks 近傍で急増(2,000 イベント)したのちその発生(d) of SCC in sensitized SUS304 steel. 少なくなっているが,SCC:2が成長し始めた 800ks 4本の SCC が発生したが,3本は円状孔食を起点とし 再び急増(5,000 イベント)している.振幅()値 て長さ 1mm まで進展した. (b)に示すように,直径約SCC:1と2が伝播を開始する時期に大きくなって100um の孔食周縁や底には粒界割れが観察されるほか, る. AE がどのような現象によって放出されたかを推表面 SCC には結晶粒の脱落(C)が観察される. アスペク することは容易ではないが,高周波数の Type-I AE ト比の大きな矩形孔食は,脱粒によって生成したもの SCC:1の孔食萌芽期に, Type-II AE が SCC 伝播期にである. 孔食内には薄い腐食生成物が存在し,その底 出されたことから判断すると, Type-I は表面結晶粒から粒内 SCC が発生している. 前節よりも腐食生成物 脱落によって, Type-II は甲羅状酸化物の破壊によっ が少ないのは、高濃度溶液による溶存酸素の低下,水 生成された可能性が高い。なお,この領域において素ガス発生に伴う腐食生成物の脱落が考えられる,腐 察された高周波数の RD-CPF は,酸化物が破壊して食生成物が水素ガス圧によって脱落すれば AE を放出 合い溶液が錆の内部に浸透してアノード溶解を引き するので,脱粒や水素ガスによる AE が検出されれば, すというメカニズムが考えられる.進展性 SCC と判断できる.- 151 -が SCC:1の孔食萌芽期に, Type-II AE が SCC 伝播期に 検出されたことから判断すると, Type-I は表面結晶粒 の脱落によって, Type-II は甲羅状酸化物の破壊によっ て生成された可能性が高い。なお,この領域において 観察された高周波数の RD-CPF は,酸化物が破壊して - 151 - 4本の SCC が発生したが,3本は円状孔食を起点とし て長さ 1mm まで進展した. (b)に示すように,直径約 100um の孔食周縁や底には粒界割れが観察されるほか, 表面 SCC には結晶粒の脱落(C)が観察される.アスペク ト比の大きな矩形孔食は,脱粒によって生成したもの である。孔食内には薄い腐食生成物が存在し,その底 から粒内 SCC が発生している.前節よりも腐食生成物 が少ないのは,高濃度溶液による溶存酸素の低下,水 素ガス発生に伴う腐食生成物の脱落が考えられる,腐 食生成物が水素ガス圧によって脱落すれば AE を放出 するので,脱粒や水素ガスによる AEが検出されれば, 進展性 SCC と判断できる.検出 AE は,3タイプ(Type-a,b および c)に分別でき た. Fig.10 にそれらの波形と周波数スペクトルを示す. Type-a および-b の AE は Fig.6 の Type-I および II に似 ており,脱粒および腐食生成物の破壊によるものと考 えられる. Type-c は, 300kHz付近の周波数成分をもつ AE で, 水素ガス発生に伴って検出される.Type=a E.C.62Output, mVCoefficient500Time, usFrequency, kHzType-bE.C.195Output, mVCoefficient58Time.usFrequency, kHz(1.10““)Type-C E.C.137Output, mVCoefficientNP1000Time, usFrequency, kHz Fig.10 Waveforms (a) and frequency spectra (b) of AEs detected of sensitized SUS304 steel.Fig.11 に腐食電位とタイプ別 AE の累積カウント変 化を示す.電位は試験開始後にいったん卑方向にシフ トしているが,この時点で孔食の発生が始まっている. 70ks 以降の電位は,-324~-340mV の間にある.脱粒 SCC による Type-a の AE は, 150-200ks と 250-300ks で 急増している.またこれらの期間では,水素ガスによPre heating-3207T1600PotentialType-a AEPotential E, mV (vs. Ag/AgCI)Cumulative AE countType-C AEType-b AE200400 Time, ks Fig.11 Change of potential fluctuation and cumulative Type-a, -b and -c AE count during SCC of sensitizedる Type-c および生成物破壊による Type-b の AE も発生 するが,脱粒 SCC の AE(Type-c)と比較して少なく, Type-c よりも遅れて発生している.すなわちこの系に おける SCC の成長過程は,脱粒 SCC が発生したのち に,腐食性生物の生成と水素ガスの発生が続くと考え られる. Fig.12 には、0-200ks と 200-350ks で検出され た AE の位置標定結果を示す.音源位置は、ウェーブ レット変換を用いて Type-a AE では 330kHz, Type-b AE では 250kHz, Type-c では 330kHz 成分の経時変化を求 め,初動最大振幅の到達時間差と仮想音源走査法 を用いて標定した.200 - 350ks| 0 - 200ksGlabs cell40TnaoCh.1Ch.1Glass cell ch.41000ob0 Ch. 2OmmCh.3conalon2 tom10mmCh.320200Maximum stressMaximum stress●:Type-a AE A:Type-b AE O:Type-c AEX:SCCFig.12 Source location of AE detected during SCC of sensitized SUS304 steel.なお,全てのセンサは同じ感度でないため十分な振幅 をもつ AE のみを標定した.図にはタイプ別(●:脱 粒 SCC, A : 生成物破壊, : ○水素ガス)の標定結果を 示したが,200ks までの AE 源は,最大引張応力の位置 (X-23mm)に集中しており,脱粒 SCC および水素ガス による AE と思われる.一方 200-350ks の AE源は,X=10 ~20mm に観察された3本の SCC 近傍にも標定され, 脱粒,水素ガス発生とそれによる腐食生成物の破壊を 捕らえている.これらの3タイプの AE のうち,脱粒 と水素ガスによる AE は, 進展性 SCC に関係するので, AE を検出すれば SCC が進展しているか否かを判断で きる.なお,この段階になると CPF からき裂の進展の 可否を議論することは難しい.4. 結言 Type304 鋼の粒内・粒界 SCC に伴う, アコースティック・アコースティック・152における電位振動と AE-SCC 先端粒界の予腐食に よる脱粒と AE-材料と環境,投稿中 [5]米津明生,長秀雄,小川武史,竹本幹男,塩化物 - 応力腐食割れによるアコースティック・エミッションと電位振動同時計測, 材料試験技術, 50(3), , - pp. 133-139 (2005) [6] 米津明生,伊藤進一,諸藤浩一,佐藤昌一,長 秀雄,竹本幹男, アコースティック・エミッショ ン(AE)を用いた外面応力腐食割れ(ESCC)の検出,材料と環境,54(7),pp. 329-336 (2005) [7]井上博之,電気化学ノイズ測定の基礎,材料と環境,52,pp.441-451(2003) [8]米津明夫,谷山嘉啓,長秀雄,小川武史,竹本幹男,酸化物を生成する塩化物 SCC における AE と 電位振動,材料,55-2, pp.211-217 (2006) [9] S.H.Carpeneter and D.R.Smith, Jr, The Effect ofCathodic Charging on the Acoustic Emission Generated by Intergranular Cracking in Sensitized 304 Stainless Steel, Matallurgical Trans.A, 21A, pp.1933-1939(1990)エミッション(AE)と腐食電位揺動(CPF)を計測し, SCC の発生・進展が検出できるか否かを調べた. *1) 外面 SCCのあるSUS304鋼管の内圧負荷に伴うAE の検出したところ,枝分かれ SCC 面の摩擦, さび破壊, 脱粒によって発生することが判った.脱粒SCCは, 比較的高周波数の AEを放出する. 2) 等2軸引張負荷状態で 30%MgCl2 溶液中のSCC 試験を行った. SCC の発生・伝播過程で は,表面結晶粒が脱落することによる AE (一 次 AE) と,甲羅状酸化物の生成による AE (二 次 AE) が発生した. AE の周波数スペクトルお よび腐食電位揺動との対応から,一次と二次 AE を分類した. 高周波の一次 AE は 30 イベン ト程度に対して,低周波の二次 AE は 12500 イ ベントも検出された. この系における SCC のモニタリングは 二次 AE の検出が有効である. 3) 熱流束をもつ Type304 の2軸引張塩化物 SCC(35mass%)では,脱粒 SCC が発生して矩形の 孔食を形成する. 孔食底には腐食生物物が生成 し,粒内型 SCC が発生する.この試験におい ては,脱粒 SCC による一次 AE, 腐食生成物の 破壊および水素ガスによる二次 AE が検出され、 るが,周波数成分からそれらを分類した.脱粒 SCC と水素ガスの AE が検出されれば, SCCは成長性であると判断できると思われる. 謝辞 1. 本研究の一部は、青山学院大学 21 世紀 COE プロ グラムの援助を受けた.参考文献 [1] 竹本幹男、中澤知之,いわゆる“活性経路アノ ・ーード溶解型応力腐食割れ”のメカニズム,材料と環境,44-3,(1995)pp.166-173 [2] 竹本幹男,AE は腐食研究に対して役立つ技術 のか?-原波形解析による環境劣化のダイナミックス ,材料と環境,53-11,(2004)pp.511-519 「31竹本幹男,青木陽一,引張り・捩り組合せ応力を 受けるオーステナイステンレス鋼 SUS304 鋼の応力腐食割れ,防食技術, 31,pp.753-759(1982) [4]米津明生,谷山嘉啓,長秀雄,竹本幹男,二軸応力をうける鋭敏化 SUS304 鋼の粒界型塩化物 SCC 153 -“ “アコースティック・エミッションと電位揺動の同時計測による進展性塩化物応力腐食割れのモニタリング“ “米津 明生,Akio YONEZU,長 秀雄,Hideo CHO,竹本 幹男,Mikio TAKEMOTO