電磁力による鉄筋コンクリートの診断

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カテゴリ: 第3回
1.緒言
鉄筋コンクリートは強度が高くかつ設計・施工の自 由度の高い構造物であり,広く普及していることは言 うまでもない. 鉄筋コンクリートは引張や曲げ強度が 小さいコンクリートの弱点をうまく補って鉄筋が配置 され,構造物としての強度を得ている.しかし,コン フリートの中性化およびひび割れによる雨水の浸入な どにより鉄筋の劣化が進行すると,鉄筋とコンクリー トとの付着力が低下し構造物としての強度が著しく低 下する. このような状態で大きな荷重や地震時のよう な短期の荷重が加わると,設計強度を保つことができ ずに鉄筋コンクリート構造物の崩落・倒壊などの事故 となりかねない。鉄筋コンクリートの現状における診断技術としては、 ひび割れや錆汁の発生等を見る目視検査,赤外線サー モグラフィや打音によるひび割れおよび剥離検査,放 寸線や超音波を使ったひび割れ深さ測定,コア採取に よるコンクリート強度および中性化度測定,電磁波や 電磁誘導法を利用した鉄筋位置およびかぶり厚さ測定 などが多方面で検討・実施されている.また,コンク ノート内の鉄筋腐食状態の診断については,自然電位 去を用いた手法が報告されている.しかしこの手法は 一つの電極を内部の鉄筋に接続する必要がある ''. 本報ではこれまでの手法とは異なる鉄筋とコンクリートの付着状況および鉄筋位置の推定ができる非破壊 検査手法として,パルス電磁力により発生する音響を 用いた鉄筋コンクリートの診断法(パルス電磁力音響 去)を提案してきた 2), 3)
2. パルス電磁力音響法の原理本測定法は,鉄筋コンクリート表面から内部の鉄筋 を直接振動させ,その健全性を評価する手法である. Fig.1に装置の構成図を示す.Reinforced concreteAcoustic sensor
Pulse current generating device(Condenser bank) Fig.1 Constitution of examination equipmentこの装置は電磁パルスを発生させるコンデンサーバ ンク装置(電源部) と 鉄筋より発生した音響を受信する センサー部とで構成されている.電源部はコンデンサ 一に蓄えた電荷を大電流として放出する.電流値は充 電電圧を制御することにより任意に決定できる. 音響合に比べ, コンクリート表面での信号は約 1/10 に低下 するが十分な SN 比を持って鉄筋から伝わる音響を計 則できることがわかる.また, Fig.3(b)の波形と比べ ると,パルス発生から音響の受信までの時間差が認め られる.次に Fig.4(c) の FFT 演算結果をみると, Fig.4(6) と比べ周波数成分は低い. これより鉄筋中に 発生する固有振動数は拘束されることによって高周波 のほうにシフトしていくが,コンクリート中には低い 周波数成分が伝わることがわかる. 3.1 受信センサー部は音響を電気信号に変え増幅器,フィ ルターをへてアナログ波形表示, また AD 変換装置を用 いてデジタル信号として波形情報を取得する.なお, コンクリートとの接触面にはセンサー受信感度を上げ る為,グリセリンペーストを用いている. 励磁コイル はコンクリート表面には接触させず, 1mm のギャップ を設けている.このパルス電磁力音響法は鉄筋を直接加振させるこ とができるために,超音波探傷試験に比べ,直接目的 とする鉄筋の情報を得ることができる。このてめ大き な弾性信号を得ることができる. パルス電流発生と鉄 筋の音響発生はほぼ同時と考えられることからセンサ 一が音響を受信するまでの時間差を利用し鉄筋の位置 情報も得られる.3.1 パルス電磁力による鉄筋の挙動 ,パルス電磁力音響法を鉄筋コンクリートに適用した 場合,鉄筋の状態による受信波形を Fig.2 に示すよう な構成で測定した. * Fig.2(a) はセンサーを鉄筋に取り付け,次に述べる Fig.2(b), (c) と同じ位置に励磁コイルを配置した. 鉄 筋はコンクリートで覆われてなく,糸で両端をつり支 持している状態である. このときのパルス電磁力によ る音響波形を測定した. Fig.3(a) にその結果を示す. この波形をみると,パルス発生と同時に鉄筋が大きく 振動し,その後自由振動していることがわかる. Fig.4(a)には、この波形の FFT 演算した周波数解析結 果を示している. この図から,長さ 150mm の鉄筋の固 有周波数に相当する 34kHz のピークが生じていること がわかる. ・ センサーをコンクリート中の鉄筋の端面に取り付け て,鉄筋のみの音響波形を測定した (Fig.2(b)). この ときの音響信号をFig.3(b)に示す.この波形をみると, 鉄筋のみの場合に比べ自由振動がコンクリートにより 抑制されるため,信号が小さくまたすぐに減衰してい ることがわかる. この信号の FFT 演算した周波数解析 結果を Fig.4(b)に示す.このとき鉄筋がコンクリート に覆われているため,同じ鉄筋長さを使用しているの にもかかわらず,固有の周波数が Fig. 4(a) とは異なり 40kHz~70kHz に広く分布している.Fig.2(c)はセンサーをコンクリート表面に取り付け 測定した.そのときの音響信号を Fig.3(c)に示す.こ のとき鉄筋に直接センサーを取り付けたFig.2(b)の場Amplitude[VJ
Fig.2 Examination conditionAmplitude[V]Time [ms] (a) Waveform of sensor put on reinforcing barAmplitude[V]Time [ms] (b) Waveform of sensor put on reinforcing bar in concreteAmplitude[V]kTime lagTime [ms] (c) Waveform of sensor put on concreteク値が小さく、立ち上がりもテストブロック A に比べ 遅くなることがわかった.IntensityEnvelop waveformA.250Frequency [Hz] (a) Power spectrum of wafveform of Fig.4(a)Amplitude[V]IntensityTime [ms] (a) Waveform of test brock AEnvelop waveform250Frequency [Hz] (b) Power spectrum of waveform of Fig. 4(b)Amplitude[V]GAMILLULLMAMMAAIAWAハンター出会いのリ アクリルキーサイドシルバイト・wwwwイケル・ルルームIntensityTime [ms] (b) Waveform of test brock BMMMMUNITUALWW.A250Frequency [Hz] (c) Power spectrum of waveform of Fig.4(c) Fig.4 Power spectrum of waveform shown in Fig.3Amplitude[V]4 鉄筋の付着力評価 鉄筋とコンクリートの付着力による差異をみるためTime [ms] (c) Waveform of test brock C- 4 鉄筋の付着力評価 - 鉄筋とコンクリートの付着力による差異をみるため のテストブロックを作成した. テストブロック A は鉄 筋を一本配置した正常な鉄筋コンクリートブロック, テストブロック B は疲労試験機により鉄筋とコンクリ ートとに初期のひび割れを発生させた.このときの疲 労試験は、ブロックを固定し側面に飛び出させた鉄筋 に,鉄筋の長さ方向に垂直に繰り返し荷重を加え,そ の変位が変化したことを確認して加振を止めたもので ある.テストブロック C はジャッキを用い, 3mm 引き 抜きのせん断荷重を加えてコンクリートと鉄筋との付 着力を低下させたものである. * Fig.5 はセンサーをコンクリート表面に取り付けた ときのそれぞれのテストブロックにおける受信信号を 示している. テストブロック A, B には応答波形が明確 にあらわれているのに対してテストブロック C はほと んど波形の応答がみられない.このテストブロック C の結果は鉄筋とコンクリートとの付着力が低下してい るためで,鉄筋-コンクリート間の音響の伝達損失が 大きいといえる.またテストブロック A と B の図中に 示した包絡線を比較すると,テストブロック B のピーテストブロック B の波形の周波数特性を Fig. 6 に示 す. テストブロック A の周波数特性はすでに Fig. 4(c) に示した.これらを比較すると,テストブロック A で は 20~40kHz にスペクトルが広がっているのに対し, テストブロック B では 34kHzの周波数が明確に現れた. これは割れによって鉄筋の拘束力が減り,鉄筋がより 自由に振動し, この振動波形が表面に伝わっているもIntensity
Frequency [Hz] ク値が小さく,立ち上がりもテストブロック A に比べ 遅くなることがわかった.Fig.5 Acoustic waves on surface of specimensIntensityFrequency [Hz]Fig. 6 Power spectrum of waveform of Fig.6 (b)182 -のと解釈できる.これらの結果から鉄筋とコンクリー トの付着状態の差を,非破壊的に明確に評価できるこ とが確認できた.5. 受信音響の時間特性パルス電磁力音響法の受信時間特性を測定した. テ ストブロックの中央に鉄筋が配置されて、その中心位 置でパルスを発生させたこの中心を原点(0, 0) (mm) と しそれぞれの点のパルス発生からの時間遅れを測定し た. 一例として位置(-80, 0) を Point A, (240, 140)を Point B とし、センサーを取り付けたときの波形を Fig.7(a), (b)にそれぞれ示す. 音源からの距離が異な るためにパルス発生からセンサー受信には時間差が認 められた.各点における時間差と発信源との距離の関 係を求めた結果良い相関を示した。よって2つ以上の センサを用いることにより、鉄筋位置および深さを診 断できることが確認できた。さらに、同じ条件で再現性の確認をした。Fig.8は パルサーとセンサを同じ位置に置き直して試験した時 の3回の試験結果を重ねて示している。この図からわ かるように、受信波形は基本波から高調波の波形まで ほとんど同じ結果が得られた。この方式の再現性の高 さが確認できた。ちなみに打診法についても同様の試 験を行ったが、再現性のある波形はほとんど得られな かった。この手法の電磁応用の優位性が確認された。6. まとめ鉄筋コンクリート構造物の経年劣化を非破壊的に評 価する手法としてパルス電磁力音響法を提案した。こ の手法を鉄筋の付着力評価に適用した結果、鉄筋コン クリート構造物の表面から非破壊的に鉄筋の付着力を 評価できることを確認できた。さらにこの手法は鉄筋 の位置や深さを評価することができ、その再現性も電 磁気的に音を発生させているため優れていることを確 認できた。コンクリートの中性化および割れの評価お よびそれに伴う鉄筋の錆の検出事例等は発表会場で報 告する。0.2Electromagnetic pulse waveformAmplitude[V]Time lag500Time (us) (a) Waveform of sensor in point A on concreteand electromagnetic pulse waveformElectromagnetic pulse waveformAmplitude[V]Time lag500・ Time [us] (b) Waveform of sensor in point B on concreteand electromagnetic pulse waveformFig. 7 Measurement result of delay of acoustic waveformElectromagnetic pulse waveformAmplitude[V]WTime [ms]Fig.8 Waveform by PEFAM (3times)参考文献 1) (社)日本非破壊検査協会編:コンクリート構造物の非破壊試験法,養賢堂, pp. 10-281, (1994) 2) 高鍋雅則,橋本光男:パルス電磁力を用いた鉄筋コンクリート診断,表面探傷・サーモグラフィ合同シンポジ ウム講演論文集, (社)日本非破壊検査協会, pp. 91-94,(2001) 3) 高鍋雅則,橋本光男:電磁パルスを用いた鉄筋コンクリートの診断, 電磁力関連のダイナミックスシンポジウ ム講演論文集, 日本 AEM 学会, pp.599-602,(2002)183“ “電磁力による鉄筋コンクリートの診断 “ “橋本 光男,Mitsuo HASHIMOTO,高鍋 雅則,Masanori TAKANABE
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