インテリジェント ECT の実機適用

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カテゴリ: 第3回
1. 緒言
加圧水型原子力プラント(PWR)には全長が 20m、 外径が20mm 程度のインコネル合金製の伝熱管を 3000本以上収納した蒸気発生器 (SG)が設置されてい る。これら伝熱管の全長全数検査を定期検査期間中に 実施するために、高速な検査技術として、ボビンコイ ル方式の渦流(ECT)プローブが適用されている。ボ ビン型 ECT プローブは伝熱管板厚 (約 1.3mm)の 40% 深さ程度の欠陥を検出可能であり、検査速度は 400mm/s が達成できる。一方、欠陥の検出性能に優れ る接触型回転方式の ECT プローブは、20%深さの欠陥 を検出可能であるが、検査速度が 5mm/s 程度に制限さ れるため、部分的な精密検査として使用されている。 検出性能と検査速度の関係を図1に示す。 ・ 弊社では、従来のボビン型 ECT プローブ並の高速検 査速度と回転ECTプローブ並の欠陥検出性を兼ね備え た、新型の高性能インテリジェント ECT プローブ及び システムを開発した。その概要について説明する。
2. インテリジ 2. インテリジェント ECT システム 2.1 インテリジェント ECT システムの特徴 図2にインテリジェント ECT の外観を示す。 24 個のコイルからなるプローブヘッド、電子回路及 びコネクタから構成されている。電子回路(マルチプ レクサ)をプローブコンジット部に搭載することによ り 24 コイルに必要な信号線を大幅に低減することを 実現している。 本プローブの主な特徴は以下の通りである。 ・ 周方向 24 コイル配置 1. 相互誘導自己比較方式 ・ 周方向/軸方向のきずが検出可能 検出コイルには形状均一性が高い薄膜アレイコ イルを採用
2.2 全自動探傷システム検査工程の短縮、作業員の削減及び被ばく線量の低 減を実現するため、全自動探傷システムを採用してい る(図3参照)。現地の電力サイトに設置したコンテナ よりロボット操作からプローブの挿入引抜き、データ 採取に至るまで遠隔操作可能なシステムとなっている。(現地)蒸気 発生器探傷ロボット (MR-III)データ収集 ユニット4連プッシャーPana M管支持板伝熱管インテリジェント ECTプローブ図3 全自動探傷システム概要2.3 分析システム24 コイルマルチアレイタイプのプローブを採用する ことにより、従来のボビンコイルと比較し、データ量 は24倍と増加する。これら増加したデータを信頼高く 効率的に分析するための分析システムを開発した。図 4にデータ処理全体フローを示す。自動分析有意機抽出マニュアル分析、フィルタリングスクリーニング、定獸譯衛【 その他」に指示信号図4 データ処理フロー・有意信号抽出増加したデータ全てを分析員が確認することは作業 量が膨大であり、現実的ではない。そこで、有意信号 抽出では、探傷信号からドリフト成分を除去した後、 閾値処理により全ての有意信号をピックアップし、こ れらの近傍区間を自動抽出する。同時に、構造物信号の自動認識を行い、分析時のデ ータ確認時間を大幅に低減している。これらの処理は 自動化することにより、大量データに対しても高い信 頼性と高速処理を実現した。・フィルタリング|探傷データには支持板や拡管等によるノイズが必然 的に重畳されるため、欠陥の見落としがなく、かつ過 剰指示の少ない分析のためにはフィルタリング技術が 有効である。インテリジェント ECT は、ボビン型プローブと異な り、周/軸方向に 2 次元分布をもった信号が得られる ため、従来型のフィルタに加えて信号の分布特徴を用 いたフィルタが適用可能である。フィルタリングの適 用例を図5に示す。図5は、支持板部に重畳した外面 欠陥(放電加工きず・深さ 20%t)の例で、フィルタリ ングの結果、ノイズである支持板信号のみが低減し、 SN 比が向上しているのがわかる。欠陥信号管支持板部/~28.3原信号caco-28.3管支持板信号メイドとか、1328.3処理結果をC820--20.3 . . 周方向軸方向図5 フィルタリング処理例207 -・スクリーニング - スクリーニング手法は抽出された信号からきずの可 能性がある信号を振るい分けする手法である。まず、 フィルタリング後に残ったECT信号をピックアップし、 信号処理する領域を確定した後、位相や電圧等の特徴 量を計算する。次に、きずの特徴に整合する信号をき ずとして検出し、分析システムの表示画面上にマーキ ング表示する。2.4 定量評価 ・ きずの深さ評価手法としてはリサージュ波形の位相 角から定量化する手法が知られているが、これはプロ ーブの通過位置やきずの長さに影響を受け変化するた め、誤差要因となる。これらの誤差要因を低減するた め本プローブにおいては、複数周波数の信号特徴を用 いた重回帰分析により定量評価精度を向上した。図 6 に外面減肉における定量評価性能検証結果を示す。 10%~40%の減肉試験片を使用し、20%以上と評価さ れた信号の評価誤差は最大で 5%(20)であった。傾き0°404深さ-AD傾き3 -- 又は5““30 深さ!!和きく傾きインテリジェントECT評価深さ(%)0≒2.5%10 | +5%■矩形減肉・傾き5°・直管部 4矩形減肉・傾き5・Uベンド部 ・ 矩形減肉・傾き3°・直管部 ・ 矩形減肉・傾き3° ・Uベンド部 |・矩形減肉・傾き0°・直管部矩形減肉・傾き0・Uベンド部±0%1-0.054010_ 10....20 30 に..微小減肉(20%未満)と評価実深さ(%) 図6 欠陥深さ定量評価性能(外面減肉)2.5 検出性人工 SCC試験片および EDM 試験片による検出性確 認試験の結果、内面・外面の周・軸方向欠陥にて 20% の検出が可能であることを確認した。図7に検出が難 しい拡管境界部のSCC内面軸方向試験片の結果を示す。A_B拡管境界SCC原信号(トンイC23フィルタリング信号C1728「破壞調?結果(SCC 破面)(外面)36%ttha(内面)A部(外面)54%t(内面)B部 図7 SCC 検出試験結果3.国内における適用結果国内においては2003年8月に発電設備技術検査協会 での確性試験を完了し、TT600 プラントの全長全数検 査に同年 12月より適用されている。これまでの適用本 数は 2006 年春現在、累計で 12 万本に及んでいる(図 8参照)。2006年度では14万本を突破する予定である。1600002006/4以降~ 1~2006/4まで総適用本数140,000 120,000 100,00080,000 60,000 40,000200002003200411 , 20052006 図8 国内でのインテリジェント ECT 適用本数 .2084.海外における適用結果・米国 - 米国では 2002年2月から実機試行を実施し、翌 2003 年9月より実機にて適用されてきている。適用結果を 表1に示す。また、適用に必要な EPRI Appendix H の 認証も随時取得してきた。表1 米国における適用実績 適用年月 プラントSG型式 適用本数、 管径項目2002/2Prairie Island 2WH 511247/8““2002/4Palo Verde 2CE System 80413/4““2002/4Sequoyah 2WH 517/8““美機2002/6San Onofre 2CE 34103/4““試行2002/10Palo Verde 1CE System 801423/4““2002/10Arkansas 1B&W OTSG2112019/05/082003/1Commanche Peak 1WH D4-2213/4““20032Diablo Canyon 2WH 517/8““2003/9Watts Bar 1WH D330007/8““実機2003/10Sequoyah 2WH 513000・7/8““適用2004/4CallawayWHF17863/4““また、本プローブは 2005 年に初の海外における取替 え SG の使用前検査にも適用された。NRC により管板 部の全長検査が要求されたためであり、これを満足す るための回転プローブの適用はコスト、工程にインパ クトがあるため、高速・高検出性を有した本プローブ が採用された。弊社工場内にて行われたこの PSI 検査 工事においては、コスト低減、工程短縮に寄与すると ともに本プローブにより全数全長データも採取され、 将来の ISI 工事における有用なデータベースとなる貴 重なデータが採取された。・台湾 * 台湾では 2002 年 11 月から実機試行を実施してきて いる。試行結果を表2に示す。これまでの試行結果に おいては、客先から検出性の高さ、データ採取及び分 析の速さ等について高評価を得ており、今後は、本格 的な実機適用も計画されている。- 209 -表2 台湾における適用実績 | 項目 | 適用年月 | プラント | SG型式 | 適用本数 | 管径Linkou Nuclear 2002/11 Training Center (探傷及び分析トレーニング)1 1100 美機 2004/11 Maanshan 1 WH Model F (half length and| 11/16““ 試行Candy cone)1253 2005/4 Maanshan2 | WH Model F | (20% Candt cone | 11/16““and 80%)5.結言弊社は高速・高性能なECT 手法としてインテリジェ ントECTプローブを核とした全自動探傷システムを構 築し、国内にて全数・全長検査の適用実績を積んでき た。また、米国、台湾での検査工事においても本プロ ーブを適用し、高速・高検出性による工程短縮、コス ト低減に寄与してきた。今後も多くのプラントに適用 していく予定である。参考文献[1] Y. Iwahashi, et al, “High Speed Performance ECTSystem”, Proceeding the 2nd International Conference on NDE in Relation to Structural Integrity for Nuclear andPressurized Components, New Orleans, 2000, 17-29 [2]K. Kawata, M. Kurokawa, N. Kawase, Y. Asada,“Intelligent ECT System” Inspection Technology, 2005.610-666-72 [3] M. Kurokawa, et al “Recent Improvement of IntelligentECT System” 20th EPRI Steam Generator NDEWorkshop, 2001 [4]T. Shichida, et al “Recent Intelligent ECT ProbeExperience”, 24th EPRI Steam Generator NDE Workshop, San Diego, 2005“ “インテリジェント ECT の実機適用“ “浅田 義浩,Yoshihiro ASADA,川田 かよ子,Kayoko KAWATA,川瀬 直人,Naoto KAWASE,七田 知紀,Tomonori SHICHIDA,高次 正弥,Masaya TAKATSUGU
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