渦電流探傷画像のベクトル化による表面きず評価について
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カテゴリ: 第3回
1. 緒言
渦電流探傷(Eddy Current Testing, ECT)は、金属材料の 表面のきず、き裂などを検出する非破壊検査法の1つ である。その原理は、10励磁コイルに交流電流を印加 して交流磁束を生成する。2)交流磁束を検査対象に分 布させることにより、電圧が誘起し、導電率などの材 料因子に応じた渦電流が流れる。3)このとき、きずな どの欠陥が存在すれば、渦電流経路の変化に起因して 磁場分布の変化がする。4)磁場分布の変化をセンサの インピーダンス変化などとして捕らえるというもので ある[1]。磁場系の現象を用いることにより検査対象に 対して非接触かつ高速に計測が可能である。近年の計算機ハードウェア・ソフトウェア技術の進 歩により渦電流探傷は、計測結果に対して電磁場数値 解析をベースにした定量的評価の分野一計算電磁非破 壊評価学(Computational Electromagnetic Non-Destructive Evaluation, CENDE)に拍車がかかり、プラント構造物 内におけるき裂深さサイジング手法の実用化開発が注 目されている[2-4]。さらに、プラント保全活動最適化 が議論されているなかで、各種検査技術の迅速化、高 精度化が社会的に要求されている。これらを背景に、 瞬時に計測データを画像化できるマルチコイル渦電流 探傷センサを開発し、画像処理、電磁場数値解析を利 用した「ECT カメラシステム」の開発に取り組んでい る。 Fig.1 は、ECT カメラシステム構想を表現したもの である。マルチコイル型 ECT のセンサ部であるコイル を““Lens““、その励磁周波数を““Focus““、センサから得ら
TargetDefectECT ProbeCoil = Lens Exciting FrequencyFocusECT Data AcquisitionDepth (%)これをもとへ 1454-32-10 123416Position (mm) Visualization of Crack ShapesPictureECT Signals FilmInversionDeveloperFig. 1 Concept of ECT camera. れる画像化データを““Film““、計測データからの定量的 評価を““Developer““、評価結果可視化を““Picture““、という ように検査から評価までの一連のプロセスを写真が現 像される過程と対応されたアプローチである。 - 本論文では、プラント構造物保全において極めて重 要となるき裂表面形状の情報を可視化する手法として、 マルチコイル型 ECTプローブの2次元コイル配列を生 かしたベクトルイメージング方法を検討する。これは、 Fig.1 の ECT カメラシステム構想における情報リッチ な画像化データ生成に対応する要素技術開発であり、 ““Developer““と ““Picture““の前段に組み込むことによって 検査の迅速化、高精度化を図る。2. マルチコイル型 ECT プローブ- Fig.2 に示すマルチコイル型 ECTセンサはECT カメ ラの““Lens““に対応する。センサコイルは 2 列に並べら れており、外径 2.5mm のコイル 35 ヶから構成されて いる。探傷器のマルチプレクサ回路のスイッチング制 御により、1ヶのコイルが励磁、検出の両方の機能を21217 coils18 coils84mm(a)Probe headLow 0 High (b) An example of ECT image for proximate EDM slitsFig.2 Multicoil ECT probe. 有し、コイル間の相互干渉を回避しながら各チャンネ ルの励磁パターンを実現する。またマルチコイルであ るために一方向のみの走査により ECT 信号を Fig.2(b) のような2次元画像として得ることが出来るという特 長をもつ[5]。ここで2列のコイル位置がコイル半径分 シフトしているのは、一方向走査において、センサコ イルが検査対象直上を通らない面積、すなわち不感帯 領域を削減するためである。 Fig.2(b)の ECT 画像は、励 * 磁周波数 40kHz でステンレス平板上に放電加工機で付 与したスリット状人工模擬き裂(以降、EDM スリット と略記)を測定したものである。3mm間隔で5本のEDM スリットが存在するが、スリットの(長手)方向を判 断するのは困難である。き裂方向の情報を取得できる ECT プローブとして、 Fig.3 に示すようなコイル駆動方式を採用する。マルチ * コイル型 ECT プローブを構成するセンサ要素として、 励磁および検出コイルを1ヶづつ用いた Transmit-Receive (TR)型センサを用いる。TR 型センサ は、き裂直上で、励磁・検出コイルの配列とき裂の長 手方向とが平行になるような位置関係のときに大きな センサ出力をもたらす。一方、励磁・検出コイルの配iQOPickuExcitingExcitindwExciting Pickup(a)TR sensor elements
(b)U scan mode 00000000000000000(c)T scan mode Fig.3 Sensor elements and scan modes ofthe multicoil ECT probe. 列とき裂の長手方向とが垂直になるような位置関係の 場合、き裂の端で大きなセンサ出力を得るが、き裂の 直上での出力値は比較して小さくなる性質がある。さ らに、TR 型センサは励磁と検出コイルがある一定の間 隔をもつために、支配的になりやすい励磁コイル直下 の検査対象情報を抑え、深い場所に誘起された渦電流 に起因する情報を取得することが可能である「61。この TR型センサを Fig.2(a)のプローブヘッドで実現 することを考え、Figs. 3()(C)に示すスキャンパターン を採用する。一方は、コイル列をまたぐように励磁・ 検出コイルを組み合わせる U スキャンモード (32 チャ ンネル)、他方は、18ヶから成るコイル列方向に励磁・ 検出コイルを組み合わせるTスキャンモード (16チャ ンネル)である。 U スキャン、T スキャンそれぞれの モードで得られるECT画像データをベクトルの方向成 分に対応させて画像化することによって、き裂方向を 可視化することが基本的な考え方である。しかしなが ら、コイル列の位置的なずれや、U スキャンモード、T スキャンモードのチャンネル数の違い、さらにセンサ の空間分解能など問題に起因して、ベクトル ECT 画像 生成には多くの課題が存在する。2133. ベクトル化 ECT 画像の検討ベクトル ECT 画像生成法を検討するために、Fig. 4 に示すような近接 EDM スリットモデルに対して渦電 流場における有限要素解析(7)より、U スキャンモード、 Tスキャンモードの ECT 信号および画像の性質を調査 する。このモデルでは、同図左から深さ 0.5, 1, 2,3,3mm の矩形 EDM スリットを 4mm 間隔で仮定している。0.3mmRectangular EDM slits10mmT mode4mmU modeFig. 4 Proximate EDM slit model.Fig.5 は、U スキャンモード、Tスキャンモードで得 られる ECT 画像を計算した結果である。また、Fig. 6 は、同計算で得られるセンサ出力を複素平面上にプロ ットしたものである。ここで、VR、V.(V)はそれぞれ渦 電流探傷装置によって計測されたセンサ出力電圧の実 数成分、虚数成分であり、偏角 arctan( VIVI)は入力 電圧と出力電圧の位相差に対応している。EDM スリッ トの存在していないセンサ位置での出力を複素平面上 の原点に置き、そこから EDM スリットの有無等に起 因する出力電圧の差および位相の変化を示しており、 渦電流探傷においては、Fig. 6 のようなデータ表示法が 広く用いられている。 EDM スリット長手方向と励磁・ 検出コイルの配列とが平行の位置関係にあるTスキャ ンモードでは、EDM スリット直上で大きなセンサ出力 をもたらす。一方で、励磁・検出コイルの配列とき裂 の長手方向とが垂直になるような位置関係の場合、き 裂の端で大きなセンサ出力をもたらすが、き裂の直上 での出力値は比較して小さくなる傾向が計算結果から もわかる。Fig. 6 の ECT 信号複素平面表示をみると、 EDM スリットによる渦電流のさえぎられ方に起因し て、U スキャンモード、T スキャンモードで明らかな 信号位相方向の大きな違いがある。この性質を利用し てベクトル ECT 画像生成を試みる。y mm??-12.5 L 11 -19.-9. 59. 5190. x(mm)(a) U mode imagey mm-12.5 LL1899/12/11-9. 50 . x(mm)9.519(b)T mode imageLowHighFig. 5 ECT images representing the model in Fig. 4.(100kHz, V, components)?? 4センサ出力は、VR、V, の2変数あるが、画像のピク セル輝度は、1 変数である。センサ出力をその絶対値 や位相などに置き換えて表示するか、または、VR、V どちらか1成分を表示するかであるが、Fig.6 で示した TR 型センサの性質であるUスキャンモード、Tスキャ ンモードの信号位相の違いを利用して、センサ出力の 1成分を表示することにする。ここで、ECT 信号が交 流回路理論の上に成り立っているから、センサ出力の 1成分を表示することは、ある時間における瞬時値電 圧を観測していることを意味する。また、EDM スリッ トの方向が既知であるから、その方向が最も大きくな る電圧成分を基準位相におき、同相、逆相成分をベク トル画像生成に用いれば、直交するベクトル成分の値 が小さくなり、き裂方向のベクトル指示が強くなる。 例えば、Fig. 7 に示すようにTスキャンモードの最大214値を軸に位置するようにU スキャンモード、Tスキ ャンモードの全サンプル信号に位相の回転の補正を施 す。各測定点に対して、ベクトルのx 方向成分をU ス キャンモード、y方向成分をTスキャンモードの V信 号値を対応させれば、Fig. 8 のようなベクトル ECT 画 像生成することが可能である。VV0 0. 20. 40.6 14-20 VR (V)VR (V)AA |-0.6-04 -0.2 00. 20.40.612VR (V)VR (V)(a) U mode signals(b)T mode signals Fig. 6 ECT signal variations representingthe model in Fig. 4. (100kHz)VV10_02_04VVVIV11-04-020 0.2044 VR (V)-2024V R(V)12(a) U mode signals(b)T mode signals Fig. 7 Phase-shifted ECT signal variationsshown in Fig. 6. (100kHz)-10 - 505x(mm)LowHigh Fig. 8 Vector ECT image using V, signals in Fig. 7.4.結言- き裂表面形状の情報を可視化する手法として、ベク トル ECT 画像について検討した。TR 型センサを採用 することにより、き裂方向が比較的簡単な信号処理で 可視化できることを示した。き裂長さのサイジングの 高度化などへの寄与が期待されるが、近接き裂の場合 や実際のプローブを用いる上でき裂に起因する信号の 分離や画像の補間法等、未だ解決すべき問題が多く存 在する。謝辞本研究の一部は、文部科学研究補助金特別研究員奨 励費(課題番号 16*2972)、日本学術振興会重点研究国際 協力事業によって実施された。また、ステンレス鋼試 験体をご提供いただいた(財)エネルギー総合工学研 究所、測定装置の管理をしていただいた東北大学流体 科学研究所 佐藤武志氏への感謝の意をここに記す。参考文献[11 M. Kurokawa, et al., ““New eddy current probe forNDE of steam generator tubes““, Studies in Applied Electromagnetics and Mechanics 15, IOS Press,Amsterdam, 1999, pp. 57-64. [2] T. Sollier, et al., ““CODECI, A new system for theinspection of surface breaking flaws based on eddy current array probe and high resolution CCD camera““, Studies in Applied Electromagnetics and Mechanics 24,IOS Press, Amsterdam, 2004, pp. 215-222. [3] M. Rebican, et al., ““Reconstruction of multiple cracksin an ECT round-robin test““, Int. J. Appl. Electromagn.Mech., Vol. 19, Nos. 1-4, 2004, pp. 399-404. [4] H. Huang, and T. Takagi, ““Inverse analyses for naturaland multi-cracks using signals from a differential transmit-receive ECT probe““, IEEE Trans. Magn., Vol.38, No. 2, 2002, pp. 1009-1012. 「5) 遠藤、他:渦電流探傷画像からの複雑形状欠陥再構成の試み,日本非破壊検査協会表面探傷分科会,2004, pp.1-3. [6] 高木、遠藤:厚肉構造物のための渦電流探傷技術、非破壊検査、Vol.53, No.10, 2004, pp.602-607. [7] 高木, 遊佐:渦電流探傷試験の数値解析,日本AEM 学会誌, Vol.9, No.1, 2001 pp.48-54.215“ “渦電流探傷画像のベクトル化による表面きず評価について“ “遠藤 久,Hisashi ENDO,高木 敏行,Toshiyuki TAKAGI
渦電流探傷(Eddy Current Testing, ECT)は、金属材料の 表面のきず、き裂などを検出する非破壊検査法の1つ である。その原理は、10励磁コイルに交流電流を印加 して交流磁束を生成する。2)交流磁束を検査対象に分 布させることにより、電圧が誘起し、導電率などの材 料因子に応じた渦電流が流れる。3)このとき、きずな どの欠陥が存在すれば、渦電流経路の変化に起因して 磁場分布の変化がする。4)磁場分布の変化をセンサの インピーダンス変化などとして捕らえるというもので ある[1]。磁場系の現象を用いることにより検査対象に 対して非接触かつ高速に計測が可能である。近年の計算機ハードウェア・ソフトウェア技術の進 歩により渦電流探傷は、計測結果に対して電磁場数値 解析をベースにした定量的評価の分野一計算電磁非破 壊評価学(Computational Electromagnetic Non-Destructive Evaluation, CENDE)に拍車がかかり、プラント構造物 内におけるき裂深さサイジング手法の実用化開発が注 目されている[2-4]。さらに、プラント保全活動最適化 が議論されているなかで、各種検査技術の迅速化、高 精度化が社会的に要求されている。これらを背景に、 瞬時に計測データを画像化できるマルチコイル渦電流 探傷センサを開発し、画像処理、電磁場数値解析を利 用した「ECT カメラシステム」の開発に取り組んでい る。 Fig.1 は、ECT カメラシステム構想を表現したもの である。マルチコイル型 ECT のセンサ部であるコイル を““Lens““、その励磁周波数を““Focus““、センサから得ら
TargetDefectECT ProbeCoil = Lens Exciting FrequencyFocusECT Data AcquisitionDepth (%)これをもとへ 1454-32-10 123416Position (mm) Visualization of Crack ShapesPictureECT Signals FilmInversionDeveloperFig. 1 Concept of ECT camera. れる画像化データを““Film““、計測データからの定量的 評価を““Developer““、評価結果可視化を““Picture““、という ように検査から評価までの一連のプロセスを写真が現 像される過程と対応されたアプローチである。 - 本論文では、プラント構造物保全において極めて重 要となるき裂表面形状の情報を可視化する手法として、 マルチコイル型 ECTプローブの2次元コイル配列を生 かしたベクトルイメージング方法を検討する。これは、 Fig.1 の ECT カメラシステム構想における情報リッチ な画像化データ生成に対応する要素技術開発であり、 ““Developer““と ““Picture““の前段に組み込むことによって 検査の迅速化、高精度化を図る。2. マルチコイル型 ECT プローブ- Fig.2 に示すマルチコイル型 ECTセンサはECT カメ ラの““Lens““に対応する。センサコイルは 2 列に並べら れており、外径 2.5mm のコイル 35 ヶから構成されて いる。探傷器のマルチプレクサ回路のスイッチング制 御により、1ヶのコイルが励磁、検出の両方の機能を21217 coils18 coils84mm(a)Probe headLow 0 High (b) An example of ECT image for proximate EDM slitsFig.2 Multicoil ECT probe. 有し、コイル間の相互干渉を回避しながら各チャンネ ルの励磁パターンを実現する。またマルチコイルであ るために一方向のみの走査により ECT 信号を Fig.2(b) のような2次元画像として得ることが出来るという特 長をもつ[5]。ここで2列のコイル位置がコイル半径分 シフトしているのは、一方向走査において、センサコ イルが検査対象直上を通らない面積、すなわち不感帯 領域を削減するためである。 Fig.2(b)の ECT 画像は、励 * 磁周波数 40kHz でステンレス平板上に放電加工機で付 与したスリット状人工模擬き裂(以降、EDM スリット と略記)を測定したものである。3mm間隔で5本のEDM スリットが存在するが、スリットの(長手)方向を判 断するのは困難である。き裂方向の情報を取得できる ECT プローブとして、 Fig.3 に示すようなコイル駆動方式を採用する。マルチ * コイル型 ECT プローブを構成するセンサ要素として、 励磁および検出コイルを1ヶづつ用いた Transmit-Receive (TR)型センサを用いる。TR 型センサ は、き裂直上で、励磁・検出コイルの配列とき裂の長 手方向とが平行になるような位置関係のときに大きな センサ出力をもたらす。一方、励磁・検出コイルの配iQOPickuExcitingExcitindwExciting Pickup(a)TR sensor elements
(b)U scan mode 00000000000000000(c)T scan mode Fig.3 Sensor elements and scan modes ofthe multicoil ECT probe. 列とき裂の長手方向とが垂直になるような位置関係の 場合、き裂の端で大きなセンサ出力を得るが、き裂の 直上での出力値は比較して小さくなる性質がある。さ らに、TR 型センサは励磁と検出コイルがある一定の間 隔をもつために、支配的になりやすい励磁コイル直下 の検査対象情報を抑え、深い場所に誘起された渦電流 に起因する情報を取得することが可能である「61。この TR型センサを Fig.2(a)のプローブヘッドで実現 することを考え、Figs. 3()(C)に示すスキャンパターン を採用する。一方は、コイル列をまたぐように励磁・ 検出コイルを組み合わせる U スキャンモード (32 チャ ンネル)、他方は、18ヶから成るコイル列方向に励磁・ 検出コイルを組み合わせるTスキャンモード (16チャ ンネル)である。 U スキャン、T スキャンそれぞれの モードで得られるECT画像データをベクトルの方向成 分に対応させて画像化することによって、き裂方向を 可視化することが基本的な考え方である。しかしなが ら、コイル列の位置的なずれや、U スキャンモード、T スキャンモードのチャンネル数の違い、さらにセンサ の空間分解能など問題に起因して、ベクトル ECT 画像 生成には多くの課題が存在する。2133. ベクトル化 ECT 画像の検討ベクトル ECT 画像生成法を検討するために、Fig. 4 に示すような近接 EDM スリットモデルに対して渦電 流場における有限要素解析(7)より、U スキャンモード、 Tスキャンモードの ECT 信号および画像の性質を調査 する。このモデルでは、同図左から深さ 0.5, 1, 2,3,3mm の矩形 EDM スリットを 4mm 間隔で仮定している。0.3mmRectangular EDM slits10mmT mode4mmU modeFig. 4 Proximate EDM slit model.Fig.5 は、U スキャンモード、Tスキャンモードで得 られる ECT 画像を計算した結果である。また、Fig. 6 は、同計算で得られるセンサ出力を複素平面上にプロ ットしたものである。ここで、VR、V.(V)はそれぞれ渦 電流探傷装置によって計測されたセンサ出力電圧の実 数成分、虚数成分であり、偏角 arctan( VIVI)は入力 電圧と出力電圧の位相差に対応している。EDM スリッ トの存在していないセンサ位置での出力を複素平面上 の原点に置き、そこから EDM スリットの有無等に起 因する出力電圧の差および位相の変化を示しており、 渦電流探傷においては、Fig. 6 のようなデータ表示法が 広く用いられている。 EDM スリット長手方向と励磁・ 検出コイルの配列とが平行の位置関係にあるTスキャ ンモードでは、EDM スリット直上で大きなセンサ出力 をもたらす。一方で、励磁・検出コイルの配列とき裂 の長手方向とが垂直になるような位置関係の場合、き 裂の端で大きなセンサ出力をもたらすが、き裂の直上 での出力値は比較して小さくなる傾向が計算結果から もわかる。Fig. 6 の ECT 信号複素平面表示をみると、 EDM スリットによる渦電流のさえぎられ方に起因し て、U スキャンモード、T スキャンモードで明らかな 信号位相方向の大きな違いがある。この性質を利用し てベクトル ECT 画像生成を試みる。y mm??-12.5 L 11 -19.-9. 59. 5190. x(mm)(a) U mode imagey mm-12.5 LL1899/12/11-9. 50 . x(mm)9.519(b)T mode imageLowHighFig. 5 ECT images representing the model in Fig. 4.(100kHz, V, components)?? 4センサ出力は、VR、V, の2変数あるが、画像のピク セル輝度は、1 変数である。センサ出力をその絶対値 や位相などに置き換えて表示するか、または、VR、V どちらか1成分を表示するかであるが、Fig.6 で示した TR 型センサの性質であるUスキャンモード、Tスキャ ンモードの信号位相の違いを利用して、センサ出力の 1成分を表示することにする。ここで、ECT 信号が交 流回路理論の上に成り立っているから、センサ出力の 1成分を表示することは、ある時間における瞬時値電 圧を観測していることを意味する。また、EDM スリッ トの方向が既知であるから、その方向が最も大きくな る電圧成分を基準位相におき、同相、逆相成分をベク トル画像生成に用いれば、直交するベクトル成分の値 が小さくなり、き裂方向のベクトル指示が強くなる。 例えば、Fig. 7 に示すようにTスキャンモードの最大214値を軸に位置するようにU スキャンモード、Tスキ ャンモードの全サンプル信号に位相の回転の補正を施 す。各測定点に対して、ベクトルのx 方向成分をU ス キャンモード、y方向成分をTスキャンモードの V信 号値を対応させれば、Fig. 8 のようなベクトル ECT 画 像生成することが可能である。VV0 0. 20. 40.6 14-20 VR (V)VR (V)AA |-0.6-04 -0.2 00. 20.40.612VR (V)VR (V)(a) U mode signals(b)T mode signals Fig. 6 ECT signal variations representingthe model in Fig. 4. (100kHz)VV10_02_04VVVIV11-04-020 0.2044 VR (V)-2024V R(V)12(a) U mode signals(b)T mode signals Fig. 7 Phase-shifted ECT signal variationsshown in Fig. 6. (100kHz)-10 - 505x(mm)LowHigh Fig. 8 Vector ECT image using V, signals in Fig. 7.4.結言- き裂表面形状の情報を可視化する手法として、ベク トル ECT 画像について検討した。TR 型センサを採用 することにより、き裂方向が比較的簡単な信号処理で 可視化できることを示した。き裂長さのサイジングの 高度化などへの寄与が期待されるが、近接き裂の場合 や実際のプローブを用いる上でき裂に起因する信号の 分離や画像の補間法等、未だ解決すべき問題が多く存 在する。謝辞本研究の一部は、文部科学研究補助金特別研究員奨 励費(課題番号 16*2972)、日本学術振興会重点研究国際 協力事業によって実施された。また、ステンレス鋼試 験体をご提供いただいた(財)エネルギー総合工学研 究所、測定装置の管理をしていただいた東北大学流体 科学研究所 佐藤武志氏への感謝の意をここに記す。参考文献[11 M. Kurokawa, et al., ““New eddy current probe forNDE of steam generator tubes““, Studies in Applied Electromagnetics and Mechanics 15, IOS Press,Amsterdam, 1999, pp. 57-64. [2] T. Sollier, et al., ““CODECI, A new system for theinspection of surface breaking flaws based on eddy current array probe and high resolution CCD camera““, Studies in Applied Electromagnetics and Mechanics 24,IOS Press, Amsterdam, 2004, pp. 215-222. [3] M. Rebican, et al., ““Reconstruction of multiple cracksin an ECT round-robin test““, Int. J. Appl. Electromagn.Mech., Vol. 19, Nos. 1-4, 2004, pp. 399-404. [4] H. Huang, and T. Takagi, ““Inverse analyses for naturaland multi-cracks using signals from a differential transmit-receive ECT probe““, IEEE Trans. Magn., Vol.38, No. 2, 2002, pp. 1009-1012. 「5) 遠藤、他:渦電流探傷画像からの複雑形状欠陥再構成の試み,日本非破壊検査協会表面探傷分科会,2004, pp.1-3. [6] 高木、遠藤:厚肉構造物のための渦電流探傷技術、非破壊検査、Vol.53, No.10, 2004, pp.602-607. [7] 高木, 遊佐:渦電流探傷試験の数値解析,日本AEM 学会誌, Vol.9, No.1, 2001 pp.48-54.215“ “渦電流探傷画像のベクトル化による表面きず評価について“ “遠藤 久,Hisashi ENDO,高木 敏行,Toshiyuki TAKAGI