渦電流法によるインコネル 600の鋭敏化評価

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カテゴリ: 第3回
1. 緒言
ニッケル基合金は、火力・原子力発電所等における 高温環境下にて多用される重要な材料であるため、そ の応力腐食割れ対策は非常に重要な課題である。この ことから、ニッケル基合金の応力腐食割れの一因であ る鋭敏化を定量的に評価する手法を確立することが求 められている。ニッケル基合金のうち、インコネル 600 は固溶化処 理後には常磁性であるが、鋭敏化すると磁性を持つこ とが知られている[1]。また、磁気力顕微鏡観察を行う ことにより、結晶粒界におけるクロム欠乏と粒界にお ける磁化が関係づけられることが定性的に見いだされ ている[2]。 * 本研究では、インコネル 600 が鋭敏化することによ りその磁気特性が変化することに着目し、渦電流法を 用いて、鋭敏化度の非破壊評価を行うことを検討する。 このために、異なる熱時効処理を施した試験片につい て磁気特性の測定を行い、鋭敏化による磁気特性の変 化を評価した。さらに、過電流法を適用し、渦電流信 号と鋭敏化度との関係について議論する。
2. 供試材
本研究で使用したインコネル 600 供試材の化学組成 を表1に示す。試験片は、1100°C, 60 分の固溶化熱処 理を施した試験片と、固溶化熱処理の後に 650°Cに加 熱し、それぞれ 10, 15, 20, 30, 40, 80 時間保持して熱時効を行った試験片を用意した。3. 磁気ヒステリシス曲線の評価磁気特性の評価を行うために B-Hアナライザーを用 いて磁化曲線の測定を行った。B-H アナライザーは、 試験片と同軸の励磁コイルと検出コイルから構成され る。励磁コイルにより試験片の外部磁場を変化させ、 このときの試験片の磁化変化を検出コイル信号から解 析し、試験片のヒステリシスループを評価する。試験 片は 2 節で示した熱処理試験片を加工し 3mm,長さ 30mm の円柱状試験片に作製した。試験周波数は 100Hz に設定し、磁気ヒステリシスループ等を評価した。図1に、固溶化処理のみを施した試験片、10 時間、 80時間の熱時効処理を施した試験片の磁気ヒステリシ ス曲線を示す。本研究における供試材の炭素量と熱時 効条件から、熱処理時間 10時間前後に粒界におけるク ロム欠乏量のピークが見られ、その後クロムが補給さ れクロム欠乏が回復することが TTS 曲線から予想され る。ヒステリシス曲線は、このクロム欠乏と対応する表1 Incone1600 供試材の化学組成(mass%) | si |c | Fe | cr |cu|Mn Is | 0.1 | 0.03 | 9.0 | 16.6 | 0.1 | 0.2 | 0.001 | Bal.Ni226B (G)V (V)O hour ・10 hour 80 hour-40-30 -20 -10_0_ 10_2030H (Oe)H (Oe) 図1 熱時効処理によるヒステリシス曲線の変化図3 渦電流信号と熱処理時間との関係Coercive force■口Relative permeabilityCoercive force (Oe)Relative permeability試験周波数を 50kHz としたときの、渦電流プローブ 電圧のX信号と熱処理時間との関係を図3に示す。こ こで、リフトオフ変化による信号の変化が Y 信号方向 となるように信号の位相を調整した。渦電流信号にお いても、磁気パラメータと同様に Ca 欠乏と相関するよ うに変化していることがわかる。従って、渦電流法に より Inconel 600 の鋭敏化度の評価が可能であるとい。える。12。。20.. 40 ,601Aging time (hrs)5. 雪 5.結言Aging time (hrs)図2 保磁力および比透磁率と熱処理時間との関係異なる熱時効処理を施した Inconel 600 試験片につ いて磁気特性の測定を行い、鋭敏化に伴って比透磁率、 保磁力が変化することを確認した。さらに、過電流法 を適用し、渦電流信号が鋭敏化度と非常によい相関が あることを示した。ようにその形状が変化する。図1に示されるように、 固溶化処理のみを施した試験片及び 80 時間の熱時効 処理を施した試験片には、ヒステリシスが見られない が、10時間の熱時効処理を施した試験片では低磁場領 域にヒステリシスが見られる。図2に、保磁力及び300e における比透磁率と熱処理時間の関係を示す。保持力、 比透磁率の双方が、熱処理時間とともに変化しており、 Cr 欠乏を反映しているものと考えられる。謝辞本研究で使用した試験片の加工に際して、流体科学 研究所の渡邊努氏をはじめ技術職員の方々に多大なる 支援を承った。ここに感謝の意を表する。ようにその形状が変化する。図1 に示されるように、 固溶化処理のみを施した試験片及び 80 時間の熱時効 処理を施した試験片には、ヒステリシスが見られない が、10時間の熱時効処理を施した試験片では低磁場領 域にヒステリシスが見られる。図2に、保磁力及び300e における比透磁率と熱処理時間の関係を示す。保持力、 比透磁率の双方が、熱処理時間とともに変化しており、渦電流探傷装置と差動型プローブを用いて渦電流法 による鋭敏化試験片の評価を実施した. 差動プローブ は,外径 14mm, 内径8mm,厚さ 6mm, 200 ターンの コイルを上下2段に組合せたものであり,両コイルのAging time (hrs) 図3 渦電流信号と熱処理時間との関係 電圧のX信号と熱処理時間との関係を図3に示す。こ こで、リフトオフ変化による信号の変化が Y 信号方向 となるように信号の位相を調整した。渦電流信号にお いても、磁気パラメータと同様に Cr 欠乏と相関するよ うに変化していることがわかる。従って、渦電流法に より Inconel 600 の鋭敏化度の評価が可能であるとい異なる熱時効処理を施した Inconel 600 試験片につ いて磁気特性の測定を行い、鋭敏化に伴って比透磁率、 保磁力が変化することを確認した。さらに、渦電流法 を適用し、渦電流信号が鋭敏化度と非常によい相関が あることを示した。 岡田康孝、吉川州彦、行俊照夫、“磁性による Ni 基 600 合金の鋭敏化挙動の測定”、日本金属学会誌、 第45巻 第5号、1981、pp.496-502. S. Takaya, T. Suzuki, T. Uchimoto, K. Miya, Magnetic Force Microscopy Observation of Sensitized Inconel 600, Journal of Applied Physics, Vol.91, No.10 (2002), pp.7011-7013.“ “渦電流法によるインコネル 600の鋭敏化評価“ “内一 哲哉,Tetsuya UCHIMOTO,高木 敏行,Toshiyuki TAKAGI,阿部 利彦,Toshihiko ABE,程 衛英,Weiying CHENG
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