ECT による配管減肉率の評価
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カテゴリ: 第3回
1. 緒言
原子炉炉心の中性子量を調べるため、センサーを挿 入する細い配管がある。図1に示したように、配管を 支持するため、管台や支持板などの構造が設けている。 振動などの原因で摩耗が発生し、配管の外面に減肉が 発生する。この減肉を渦電流探傷(ECT)を使って評 価するため、数値解析により ECT 信号を分析した。
2.配管減肉の ECT 信号この配管の減肉状況を管内に ECT プローブを挿入 し、減肉進展状況を調べる方法を検討する。数値解析 手法を使って、ECT 信号を計算し、減肉率の評価方法 を検討した。渦電流解析は、マクスウェルの方程式から導かれる電磁界の支配方程式を解くことに帰着する。 支配方程式の変数には、一般的にはポテンシャルが多 く用いられている。本研究では、磁気ベクトルポテン シャルと電流ベクトルポテンシャルを用いた。離散化 手法として、辺要素有限要素法を用いた[1][2]。2.1減肉形状とECT プローブ図1の配管の減肉状況を考慮し、3種類の減肉モデ ルが想定される。図2にこの3種類の減肉モデルを示 し、それぞれ片減肉、両減肉、全周減肉モデルと呼ぶ ことにする。 - 有限要素法では、導体(管)、空気、欠陥領域を全て メッシュ分割する。この問題に対しては、減肉部分の メッシュはある程度複雑で、工夫する必要がある。両 減肉モデルのメッシュを図 3 に示す。全領域では計 57,024 要素に分割され、経験上、このようなメッシュ では数値計算の計算精度を確保できる。本試験では、絶対型と差動型のボビンタイプのプロ ーブを使用した。どちらが減肉率の評価に優れている かを調査し、評価方法を検討した。両減肉モデル 全周減肉モデルNo.1]図2 配管の減肉モデル232図3 両減肉モデルの減肉部分のメッシュ 翻信号がはは等しい。また、減肉半の胃加するにつ て、位相信号が反時計方向に回転することが判った。1.21片内 ・両肉 女全周肉0.8(A)10.60.420011005010.150.0 位置 (mm)(a) 信号の振幅配管及び減肉の条件を以下に列記する。 ・配管材質 : SUS316 ・配管導電率: 1.4× 10'S/m ・比透磁率 : 1.0 ・配管内径 : 5.0 mm ・配管肉厚 : 1.3 mm ・減肉長さ : 10.0 mm ・減肉深さ : 管厚の 20%, 40%, 60%, 80%, 100%また、コイルのサイズ及び試験条件を以下で示す。 ・試験周波数: 400 kHz ・コイル外径: 3.7 mm ・コイル内径: 2.7 mm ・コイル長さ: 3.0 mm ・巻き線径 : 0.1 mm ・巻き数 : 100t ・コイル間隔: 6.0 mm (差動の場合) ・ノイズ : 考慮しない2.2 振幅信号と位相信号- 片減肉、両減肉及び全周減肉の三種類の減肉につい て、減肉率(最大の減肉深さ)が 20%, 40%, 60%, 80%, 100%に変化した場合のECT信号を計算した。ここで、 減肉率を最大減肉深さの管厚に対する割合として定義する。図4に、減肉率 60%の場合における絶対型の ECT プローブによる解析結果を示す。プローブは減肉の浅 い方から減肉の深い方へ走査するため、振幅 位置図に は、信号の最大値は中央0位置ではなく、少し0位置 を過ぎたところ(即ち減肉の体積の中心)で得られた。- 233 -また、同じ減肉率であっても、片減肉、両減肉及び全 周減肉三種類の減肉の振幅信号が異なることが判った。 減肉信号のリサージュ波形図によると、同じ減肉率の 位相信号がほぼ等しい。また、減肉率が増加するにつ れて、位相信号が反時計方向に回転することが判った。1.20.9片成肉両減肉 一全周波肉0.60.3(A)製0.3-0.6-0.9-1.20 -1.20 -0.900.60-0.300,000.30 0.600.01.20実数部(V)(6) 信号のリサージュ波形図4 ECT 信号(絶対型、減肉率 60%、400kHz)図5に、差動型の ECT プローブによる解析結果を示 す。差動型のプローブであるため、減肉中央で検出し たECT 信号が小さい。代わりに、プローブが減肉範囲 に進入する時と離れる時に、信号のピークが得られた。 絶対型の ECT プローブと同様に、同じ減肉率の位相信 号がほぼ等しいこと、減肉率が増加するにつれて、位 相信号が反時計方向に回転することが判った。 ・ 理論上、減肉が上下対称の場合には、差動型の ECT プローブの振幅信号は絶対型の2倍で、位相信号は絶 対型と同じである。今回解析したような上下対称では ないモデルでも、ほぼ同じことが言える。絶対型と差 動型のプローブの振幅と位相特性は、ほぼ同じであることが判った。片肉 ・両内1全周内0.80.40.20.00 ーーーー 11 10.05 . 00位.0 1 (mm)510015(a) 信号の振幅1.20.9+片減肉 , 両肉 ~全周波肉0.6|30(N-0.3-0.6-0.9-1.211-1.20-0.9-0.61.2-0.300,000.300.600.90実数部(V)片減肉 , 両減肉 -- 全周波肉-0.9-0.60.600.901.20-0.300,000.30実数部(V)~1.20-1.2-0.91.2-0.60-0.300,000.300,600.90実数部(い)(6) 信号のリサージュ波形図5 ECT 信号(差動型、減肉率 60%、400kHz)2.3 ECT 信号と減肉率の関係絶対型と差動型の ECT プローブに対して、減肉率を 振幅信号及び位相信号による評価曲線を作成し、評価 曲線による減肉率の評価誤差を検討した。 1. 絶対型の ECT プローブを用いた場合には、振幅信号 が多用されているが、位相信号を使うことも可能であ る。10.8mm 貫通穴×3による ECT 信号を振幅の校正 信号(1.2V に)とし、内面深さ 0.5mm の全周デント によるECT信号を位相の校正信号(180度に)とした。図6に絶対型のECTプローブを用いた場合の振幅信 号と減肉率の関係を示す。同じ減肉率でも、両減肉の 信号振幅は片減肉の2倍、全周減肉の信号振幅は片減 肉の約5.5倍であることが判った。図7に絶対型のECT プローブを用いた場合の位相信号と減肉率の関係を示 す。 全周減肉の曲線には若干ずれがあるが、ほぼ同じ 曲線で表現できることが判った。 絶対型と差動型のボビンタイプ ECT プローブは、原理的に大きいな違いがなく、減肉率の評価には、位相 信号が適していることが判った。測定現場の環境、プ ローブのノイズに対する性能を考慮すると、差動型の ECT プローブが減肉の評価に適していることが考え られる。3500030000片内 ・両内 -全周肉25000ト・・2000015000100005000007080,000.00100.0010.0020.0030.0040,0050.00 .60.00演肉率(%)図6 振幅信号と減肉率の関係(絶対型プローブ)15120片肉 - 両肉 全周被肉80.01...信号位相(度)こ☆010.0020.0030.0040.0050.0060.00708090100図7 位相信号と減肉率の関係 (絶対型プローブ)3.配管減肉率の評価手法 3.1 ノイズの影響リフトオフノイズや傾斜ノイズをモデル化し、ノイ ズを付加した場合の減肉率評価への影響を検討した。 励磁コイルを導体及びそれを囲む空間と独立に取り 扱う変形磁気ベクトルポテンシャル法 Ar 法を適用す ることによって、コイルの位置の変化即ちリフトオフ ノイズや傾斜ノイズを考慮しても新たにメッシュ作 成する必要がない。 ・- コイルのサイズ及び試験条件は前節と同じである。 但し、図8に示したように、減肉の種類とノイズの種 類の組合せは以下の通り:リフトオフノイズ+片減肉2343、両減肉 2、全周減肉 1、傾斜ノイズ XZ 平面と角度 を持ち3、YZ 平面と角度を持ち3、総計 12 ケース。 リフトオフは 0.3mm、傾斜角度は2度に設定する。( O0ECTプローブ(a) リフトオフノイズモデル図9X or Y() 傾斜ノイズモデル」 図8 ノイズモデル扱幅()前節の結果により、ここでは差動型プローブだけを 考慮することにした。図9~図 12 に、減肉率 60%の場 合における、差動型の ECT プローブによる減肉信号を 示す。信号を見易くするため 12 ケースの結果を4枚の 図にした。 ・- リフトオフノイズや傾斜ノイズなどを計算する際、 コイルの位置をシフト又は回転して計算する。この場 合、検出信号に二つの成分が含まれている。一番目の 成分は、欠陥なしの管に対して、コイルの軸の位置が 管の中心軸からずれたことによって信号の変化分であ る。この信号は信号処理によって消去できる。二番目 の成分は軸中心からずれたまま減肉を通過する時得ら れた減肉信号。この減肉信号は軸のずれによって異な るので、減肉率の評価に影響を与える。ここでは、こ の二番目の成分を計算し、リフトオフ及び傾斜の影響 を検討する。0.20.18・・・片減肉(x) ・・・片域内(x)片内(y)振幅(v)0-15-1010150.0 位置 (mm)(a) 信号の振幅+片肉(+) ... - 片 肉 (-) +片肉(y+)(A)が-0.2-0.2-0.15 -0.100.13:36:170.05 0.000.05実数部(い)(C) 信号のリサージュ波形 9 ECT 信号の1(差動型、減肉率 60%、400k4400kHz)1.40r|肉(X+) |-5 両被肉(Y+)全周v由(X+)扱幅()15-105. 0100.0 位置 (mm)(a) 信号の振幅+両被内(X+) ・ - 両破肉(Y+) - 全周波肉(X+)(4号-2-2-1.50-1.001001.52,00-0.500,000.50実数部()(6) 信号のリサージュ波形 ECT 信号の2 (差動型、減肉率 60%、400kHz)10-21-2-1.5図10235片 -西成肉rol-ス - 全周内rot-xz(A)|0.00000~ -15.0-10100150.0 15 .0 位置(mm)(a) 信号の振幅+片減肉rol-ZMitro- ー全周域内rot--2-2.00 1-2.00-1.50-1,000 .500 ,000,501.001.50実敷郎()2(6) 信号のリサージュ波形 11 ECT 信号の3 (差動型、減肉率 60%、400kHのはいいールハ図11 ECT信号の3 (差動型、減肉率 60%、400kHz)1.4片 内rol-yz *・両 肉rol- ~全周内rot-ya1振幅(W)0.60.40 )0.20-15-1010150.0 15.0 位 (mm)(a) 信号の振幅+片 rol-yz西成肉roly +全周臓内rol-yz-2つ-1.3-2-211.52,00-1.50 -1,000.300,000.50実数部(0)(b) 信号のリサージュ波形 12 ECT 信号の4 (差動型、減肉率 60%、400kH図12ECT 信号の4 (差動型、減肉率 60%、400kHz)- 信号の1と信号の2の図はリフトオフがある場合の 信号、信号の3と信号の4の図は軸の傾斜がある場合 の信号である。 - 差動型のプローブであるため、減肉中央で検出した ECT 信号が小さい。代わりに、プローブが減肉範囲に 進入する時と離れる時に、信号のピークが得られた。 減肉は上下対称ではないため、減肉信号のリサージュ 波形が完全な“g”の字にはなっていない。欠陥に近いほど信号振幅が大きくなり、また、減肉 の体積が大きいほど信号振幅も大きい。リフトオフの 影響に関しては、X方向の変動の影響が大きく、Y方 向の変動は信号に余り影響しないことが判った。プロ ーブの外径と管の内径はほぼ一致していて、傾斜の角 度は極めて小さいので、傾斜の影響は小さいと判った。 減肉信号のリサージュ波形図によると、同じ減肉率の 位相信号がほぼ等しい。また、減肉率が増加するにつ れて、位相信号が反時計方向に回転することが判った。3.2 安全側からの評価手法ノイズを付加した場合の減肉率への影響及び評価方 法を検討した。 差動型の ECT プローブに対して、減肉 率を位相信号による評価曲線を作成した。差動型の ECT プローブを用いた場合には、ピークツ ウピーク信号が多用されている。即ち、プローブが欠 陥領域に進入する時のピーク信号と脱出する時のピー ク信号を引算して、その大きさを振幅とし、その位相 角を位相信号として使う。信号の校正は前節と同じ信 号を使うことにした。図13~図 17 に差動型のECT プローブを用いた場合 の位相信号と減肉率の関係を示す。また、位相信号の 最小値を評価曲線(赤い破線)として示した。比較し 易いため、ノイズなしとノイズありの結果を3ケース ごとに図に示した。位相信号の場合では、同じ減肉率 に対して位相はほぼ等しいことが判った。図13~図 17 をまとめて、XY 軸を交換すれば、位相 信号の評価曲線が得られる。過小評価を回避し、安全 側からの評価曲線を図 18 に示す。同図には推定誤差の 下限も示した。誤差下限1と評価曲線が囲む範囲は実 際な減肉率の可能範囲を示し、誤差下限2は全周減肉 を除外した範囲を示す。位相信号で減肉率を推定する 場合では、減肉の形式に関わらず過大評価の絶対値は 12%以内に留まった。23681900/05/19120信号位相(度)401900/07/180.040.10.20.3400.60.70.85 0% 成肉率(%)0.91図 13 位相信号と減肉率の関係(ノイズなし)160|-一片 ・・ ・・片内(あかり () 内 +)信号位相(度)K1900/01/090.20.30.450% 肉率(%)0.70.80.91図14 位相信号と減肉率の関係 (lit-off ノイズ 1)全肉()信号位相(度)11020030% 40506070%80%0.91図15 位相信号と減肉率の関係 (lit-off ノイズ 2)片内() ・・・ の 内 (0 )*全開肉(17) ・評価曲信号位相()100.10.20.30.40.60.70.80.9150% 肉率%)図16 位相信号と減肉率の関係(傾斜ノイズ 1)・・・・ 内 で ) ...(ror-ya) 評価曲線信号位相(度)012010.30.450% 内率()70800.91図17 位相信号と減肉率の関係(傾斜ノイズ 2)100ーー評価曲線を一眼差下限1 ・・・・銀差下限2)(%)=懲0010. 0203040. 0800100.0 1100120.050. 0 60.0 70.0信号位相(度)図18 位相信号の評価曲線(差動型プローブ)4.結言 1)ECT 信号の位相を用いて配管の減肉率を評価することが可能であった。 2) ノイズの軽減等を考えると、差動型の ECT プローブが減肉の評価に適していることが考えられる。 3) 差動型のECT プローブの場合では、位相信号を用いて減肉率を絶対誤差+12%以内で推定すること が可能であることが示された。謝辞本研究は株式会社四国総合研究所の受託研究「ECT に よる配管減肉率評価方法調査」の成果の一部である。参考文献[1] H. Fukutomi, T. Takagi, J. Tani, M. Hashimoto, T. Shimoneand Y. Harada, “Numerical evaluation of ECT impedance signal due to minute cracks,” IEEE Transactions on Magnetics,vol. 33, no. 2, pp.2123-2126, 1997. [2] A. Kameari, “Solution of asymmetric conductor with a hole byFEM using edge-element,” COMPEL, vol. 9, pp.230-232, 1990237“ “ECT による配管減肉率の評価“ “黄 皓宇,Haoyu HUANG,遊佐 訓孝,Noritaka YUSA
原子炉炉心の中性子量を調べるため、センサーを挿 入する細い配管がある。図1に示したように、配管を 支持するため、管台や支持板などの構造が設けている。 振動などの原因で摩耗が発生し、配管の外面に減肉が 発生する。この減肉を渦電流探傷(ECT)を使って評 価するため、数値解析により ECT 信号を分析した。
2.配管減肉の ECT 信号この配管の減肉状況を管内に ECT プローブを挿入 し、減肉進展状況を調べる方法を検討する。数値解析 手法を使って、ECT 信号を計算し、減肉率の評価方法 を検討した。渦電流解析は、マクスウェルの方程式から導かれる電磁界の支配方程式を解くことに帰着する。 支配方程式の変数には、一般的にはポテンシャルが多 く用いられている。本研究では、磁気ベクトルポテン シャルと電流ベクトルポテンシャルを用いた。離散化 手法として、辺要素有限要素法を用いた[1][2]。2.1減肉形状とECT プローブ図1の配管の減肉状況を考慮し、3種類の減肉モデ ルが想定される。図2にこの3種類の減肉モデルを示 し、それぞれ片減肉、両減肉、全周減肉モデルと呼ぶ ことにする。 - 有限要素法では、導体(管)、空気、欠陥領域を全て メッシュ分割する。この問題に対しては、減肉部分の メッシュはある程度複雑で、工夫する必要がある。両 減肉モデルのメッシュを図 3 に示す。全領域では計 57,024 要素に分割され、経験上、このようなメッシュ では数値計算の計算精度を確保できる。本試験では、絶対型と差動型のボビンタイプのプロ ーブを使用した。どちらが減肉率の評価に優れている かを調査し、評価方法を検討した。両減肉モデル 全周減肉モデルNo.1]図2 配管の減肉モデル232図3 両減肉モデルの減肉部分のメッシュ 翻信号がはは等しい。また、減肉半の胃加するにつ て、位相信号が反時計方向に回転することが判った。1.21片内 ・両肉 女全周肉0.8(A)10.60.420011005010.150.0 位置 (mm)(a) 信号の振幅配管及び減肉の条件を以下に列記する。 ・配管材質 : SUS316 ・配管導電率: 1.4× 10'S/m ・比透磁率 : 1.0 ・配管内径 : 5.0 mm ・配管肉厚 : 1.3 mm ・減肉長さ : 10.0 mm ・減肉深さ : 管厚の 20%, 40%, 60%, 80%, 100%また、コイルのサイズ及び試験条件を以下で示す。 ・試験周波数: 400 kHz ・コイル外径: 3.7 mm ・コイル内径: 2.7 mm ・コイル長さ: 3.0 mm ・巻き線径 : 0.1 mm ・巻き数 : 100t ・コイル間隔: 6.0 mm (差動の場合) ・ノイズ : 考慮しない2.2 振幅信号と位相信号- 片減肉、両減肉及び全周減肉の三種類の減肉につい て、減肉率(最大の減肉深さ)が 20%, 40%, 60%, 80%, 100%に変化した場合のECT信号を計算した。ここで、 減肉率を最大減肉深さの管厚に対する割合として定義する。図4に、減肉率 60%の場合における絶対型の ECT プローブによる解析結果を示す。プローブは減肉の浅 い方から減肉の深い方へ走査するため、振幅 位置図に は、信号の最大値は中央0位置ではなく、少し0位置 を過ぎたところ(即ち減肉の体積の中心)で得られた。- 233 -また、同じ減肉率であっても、片減肉、両減肉及び全 周減肉三種類の減肉の振幅信号が異なることが判った。 減肉信号のリサージュ波形図によると、同じ減肉率の 位相信号がほぼ等しい。また、減肉率が増加するにつ れて、位相信号が反時計方向に回転することが判った。1.20.9片成肉両減肉 一全周波肉0.60.3(A)製0.3-0.6-0.9-1.20 -1.20 -0.900.60-0.300,000.30 0.600.01.20実数部(V)(6) 信号のリサージュ波形図4 ECT 信号(絶対型、減肉率 60%、400kHz)図5に、差動型の ECT プローブによる解析結果を示 す。差動型のプローブであるため、減肉中央で検出し たECT 信号が小さい。代わりに、プローブが減肉範囲 に進入する時と離れる時に、信号のピークが得られた。 絶対型の ECT プローブと同様に、同じ減肉率の位相信 号がほぼ等しいこと、減肉率が増加するにつれて、位 相信号が反時計方向に回転することが判った。 ・ 理論上、減肉が上下対称の場合には、差動型の ECT プローブの振幅信号は絶対型の2倍で、位相信号は絶 対型と同じである。今回解析したような上下対称では ないモデルでも、ほぼ同じことが言える。絶対型と差 動型のプローブの振幅と位相特性は、ほぼ同じであることが判った。片肉 ・両内1全周内0.80.40.20.00 ーーーー 11 10.05 . 00位.0 1 (mm)510015(a) 信号の振幅1.20.9+片減肉 , 両肉 ~全周波肉0.6|30(N-0.3-0.6-0.9-1.211-1.20-0.9-0.61.2-0.300,000.300.600.90実数部(V)片減肉 , 両減肉 -- 全周波肉-0.9-0.60.600.901.20-0.300,000.30実数部(V)~1.20-1.2-0.91.2-0.60-0.300,000.300,600.90実数部(い)(6) 信号のリサージュ波形図5 ECT 信号(差動型、減肉率 60%、400kHz)2.3 ECT 信号と減肉率の関係絶対型と差動型の ECT プローブに対して、減肉率を 振幅信号及び位相信号による評価曲線を作成し、評価 曲線による減肉率の評価誤差を検討した。 1. 絶対型の ECT プローブを用いた場合には、振幅信号 が多用されているが、位相信号を使うことも可能であ る。10.8mm 貫通穴×3による ECT 信号を振幅の校正 信号(1.2V に)とし、内面深さ 0.5mm の全周デント によるECT信号を位相の校正信号(180度に)とした。図6に絶対型のECTプローブを用いた場合の振幅信 号と減肉率の関係を示す。同じ減肉率でも、両減肉の 信号振幅は片減肉の2倍、全周減肉の信号振幅は片減 肉の約5.5倍であることが判った。図7に絶対型のECT プローブを用いた場合の位相信号と減肉率の関係を示 す。 全周減肉の曲線には若干ずれがあるが、ほぼ同じ 曲線で表現できることが判った。 絶対型と差動型のボビンタイプ ECT プローブは、原理的に大きいな違いがなく、減肉率の評価には、位相 信号が適していることが判った。測定現場の環境、プ ローブのノイズに対する性能を考慮すると、差動型の ECT プローブが減肉の評価に適していることが考え られる。3500030000片内 ・両内 -全周肉25000ト・・2000015000100005000007080,000.00100.0010.0020.0030.0040,0050.00 .60.00演肉率(%)図6 振幅信号と減肉率の関係(絶対型プローブ)15120片肉 - 両肉 全周被肉80.01...信号位相(度)こ☆010.0020.0030.0040.0050.0060.00708090100図7 位相信号と減肉率の関係 (絶対型プローブ)3.配管減肉率の評価手法 3.1 ノイズの影響リフトオフノイズや傾斜ノイズをモデル化し、ノイ ズを付加した場合の減肉率評価への影響を検討した。 励磁コイルを導体及びそれを囲む空間と独立に取り 扱う変形磁気ベクトルポテンシャル法 Ar 法を適用す ることによって、コイルの位置の変化即ちリフトオフ ノイズや傾斜ノイズを考慮しても新たにメッシュ作 成する必要がない。 ・- コイルのサイズ及び試験条件は前節と同じである。 但し、図8に示したように、減肉の種類とノイズの種 類の組合せは以下の通り:リフトオフノイズ+片減肉2343、両減肉 2、全周減肉 1、傾斜ノイズ XZ 平面と角度 を持ち3、YZ 平面と角度を持ち3、総計 12 ケース。 リフトオフは 0.3mm、傾斜角度は2度に設定する。( O0ECTプローブ(a) リフトオフノイズモデル図9X or Y() 傾斜ノイズモデル」 図8 ノイズモデル扱幅()前節の結果により、ここでは差動型プローブだけを 考慮することにした。図9~図 12 に、減肉率 60%の場 合における、差動型の ECT プローブによる減肉信号を 示す。信号を見易くするため 12 ケースの結果を4枚の 図にした。 ・- リフトオフノイズや傾斜ノイズなどを計算する際、 コイルの位置をシフト又は回転して計算する。この場 合、検出信号に二つの成分が含まれている。一番目の 成分は、欠陥なしの管に対して、コイルの軸の位置が 管の中心軸からずれたことによって信号の変化分であ る。この信号は信号処理によって消去できる。二番目 の成分は軸中心からずれたまま減肉を通過する時得ら れた減肉信号。この減肉信号は軸のずれによって異な るので、減肉率の評価に影響を与える。ここでは、こ の二番目の成分を計算し、リフトオフ及び傾斜の影響 を検討する。0.20.18・・・片減肉(x) ・・・片域内(x)片内(y)振幅(v)0-15-1010150.0 位置 (mm)(a) 信号の振幅+片肉(+) ... - 片 肉 (-) +片肉(y+)(A)が-0.2-0.2-0.15 -0.100.13:36:170.05 0.000.05実数部(い)(C) 信号のリサージュ波形 9 ECT 信号の1(差動型、減肉率 60%、400k4400kHz)1.40r|肉(X+) |-5 両被肉(Y+)全周v由(X+)扱幅()15-105. 0100.0 位置 (mm)(a) 信号の振幅+両被内(X+) ・ - 両破肉(Y+) - 全周波肉(X+)(4号-2-2-1.50-1.001001.52,00-0.500,000.50実数部()(6) 信号のリサージュ波形 ECT 信号の2 (差動型、減肉率 60%、400kHz)10-21-2-1.5図10235片 -西成肉rol-ス - 全周内rot-xz(A)|0.00000~ -15.0-10100150.0 15 .0 位置(mm)(a) 信号の振幅+片減肉rol-ZMitro- ー全周域内rot--2-2.00 1-2.00-1.50-1,000 .500 ,000,501.001.50実敷郎()2(6) 信号のリサージュ波形 11 ECT 信号の3 (差動型、減肉率 60%、400kHのはいいールハ図11 ECT信号の3 (差動型、減肉率 60%、400kHz)1.4片 内rol-yz *・両 肉rol- ~全周内rot-ya1振幅(W)0.60.40 )0.20-15-1010150.0 15.0 位 (mm)(a) 信号の振幅+片 rol-yz西成肉roly +全周臓内rol-yz-2つ-1.3-2-211.52,00-1.50 -1,000.300,000.50実数部(0)(b) 信号のリサージュ波形 12 ECT 信号の4 (差動型、減肉率 60%、400kH図12ECT 信号の4 (差動型、減肉率 60%、400kHz)- 信号の1と信号の2の図はリフトオフがある場合の 信号、信号の3と信号の4の図は軸の傾斜がある場合 の信号である。 - 差動型のプローブであるため、減肉中央で検出した ECT 信号が小さい。代わりに、プローブが減肉範囲に 進入する時と離れる時に、信号のピークが得られた。 減肉は上下対称ではないため、減肉信号のリサージュ 波形が完全な“g”の字にはなっていない。欠陥に近いほど信号振幅が大きくなり、また、減肉 の体積が大きいほど信号振幅も大きい。リフトオフの 影響に関しては、X方向の変動の影響が大きく、Y方 向の変動は信号に余り影響しないことが判った。プロ ーブの外径と管の内径はほぼ一致していて、傾斜の角 度は極めて小さいので、傾斜の影響は小さいと判った。 減肉信号のリサージュ波形図によると、同じ減肉率の 位相信号がほぼ等しい。また、減肉率が増加するにつ れて、位相信号が反時計方向に回転することが判った。3.2 安全側からの評価手法ノイズを付加した場合の減肉率への影響及び評価方 法を検討した。 差動型の ECT プローブに対して、減肉 率を位相信号による評価曲線を作成した。差動型の ECT プローブを用いた場合には、ピークツ ウピーク信号が多用されている。即ち、プローブが欠 陥領域に進入する時のピーク信号と脱出する時のピー ク信号を引算して、その大きさを振幅とし、その位相 角を位相信号として使う。信号の校正は前節と同じ信 号を使うことにした。図13~図 17 に差動型のECT プローブを用いた場合 の位相信号と減肉率の関係を示す。また、位相信号の 最小値を評価曲線(赤い破線)として示した。比較し 易いため、ノイズなしとノイズありの結果を3ケース ごとに図に示した。位相信号の場合では、同じ減肉率 に対して位相はほぼ等しいことが判った。図13~図 17 をまとめて、XY 軸を交換すれば、位相 信号の評価曲線が得られる。過小評価を回避し、安全 側からの評価曲線を図 18 に示す。同図には推定誤差の 下限も示した。誤差下限1と評価曲線が囲む範囲は実 際な減肉率の可能範囲を示し、誤差下限2は全周減肉 を除外した範囲を示す。位相信号で減肉率を推定する 場合では、減肉の形式に関わらず過大評価の絶対値は 12%以内に留まった。23681900/05/19120信号位相(度)401900/07/180.040.10.20.3400.60.70.85 0% 成肉率(%)0.91図 13 位相信号と減肉率の関係(ノイズなし)160|-一片 ・・ ・・片内(あかり () 内 +)信号位相(度)K1900/01/090.20.30.450% 肉率(%)0.70.80.91図14 位相信号と減肉率の関係 (lit-off ノイズ 1)全肉()信号位相(度)11020030% 40506070%80%0.91図15 位相信号と減肉率の関係 (lit-off ノイズ 2)片内() ・・・ の 内 (0 )*全開肉(17) ・評価曲信号位相()100.10.20.30.40.60.70.80.9150% 肉率%)図16 位相信号と減肉率の関係(傾斜ノイズ 1)・・・・ 内 で ) ...(ror-ya) 評価曲線信号位相(度)012010.30.450% 内率()70800.91図17 位相信号と減肉率の関係(傾斜ノイズ 2)100ーー評価曲線を一眼差下限1 ・・・・銀差下限2)(%)=懲0010. 0203040. 0800100.0 1100120.050. 0 60.0 70.0信号位相(度)図18 位相信号の評価曲線(差動型プローブ)4.結言 1)ECT 信号の位相を用いて配管の減肉率を評価することが可能であった。 2) ノイズの軽減等を考えると、差動型の ECT プローブが減肉の評価に適していることが考えられる。 3) 差動型のECT プローブの場合では、位相信号を用いて減肉率を絶対誤差+12%以内で推定すること が可能であることが示された。謝辞本研究は株式会社四国総合研究所の受託研究「ECT に よる配管減肉率評価方法調査」の成果の一部である。参考文献[1] H. Fukutomi, T. Takagi, J. Tani, M. Hashimoto, T. Shimoneand Y. Harada, “Numerical evaluation of ECT impedance signal due to minute cracks,” IEEE Transactions on Magnetics,vol. 33, no. 2, pp.2123-2126, 1997. [2] A. Kameari, “Solution of asymmetric conductor with a hole byFEM using edge-element,” COMPEL, vol. 9, pp.230-232, 1990237“ “ECT による配管減肉率の評価“ “黄 皓宇,Haoyu HUANG,遊佐 訓孝,Noritaka YUSA