原子力発電所2次系配管減肉管理手法の日米比較

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カテゴリ: 第3回
2.2次系減肉の点検保守状況
2.1 日米の減肉管理手法日米の減肉管理手法の比較を図1に示す。 - 米国の事業者は、FAC(flow accelerated corrosion、流 れ加速腐食)監視プログラムを設定し、検査部位の抽 出、検査の実施、監視及び傾向分析を行うとともに、 検査の結果により ASME 規格等に従って補修・交換時 期を決定する。現在、全米の原子力発電所で EPRI(Electric Power Research Institute) D CHECWORKS Y フトウェアが導入されており、材料、流況、水化学、 減肉速度、超音波探傷データから解析を行い、配管の 減肉状況を予測し、次回の交換・点検部位を決定して いる。一方、国内の管理指針では、炭素鋼配管に関して湿 り度、流速、温度等の条件から「主要系統」とされた1.緒言平成16年8月、関西電力(株)美浜発電所3号機にお いて2次系の復水系配管が破損し、高温水が流出し原 子炉が自動停止した[1]。事故によりタービン建屋にい た作業員 11 名が死傷した。原因は、いわゆるエロージ ョン/コロージョン[2]により減肉した配管が破損した ものであった。国内で PWR を保有する電力会社では、「原子力設備 2次系配管肉厚の管理指針 (PWR)」(以下、管理指針) [1]を定め、これに基づき2次系炭素鋼配管の肉厚管理 を実施してきたが、美浜発電所3号機において当該部 位が当初の管理リストから欠落し、その後修正できな かった保守管理の不適切がこの事故の直接的な原因で あるとされた。 - 著者は、管理指針の実質的な有効性を確認するため、 配管減肉管理手法について、国内外の配管減肉管理状 況を調査した。また、(株)原子力安全システム研究所 (INSS)のデータベースをもとに、入手している過去 の海外における2次系配管減肉事象の発生状況を分析 し、国内の配管肉厚管理手法の有効性を検証した[3]。 1本研究では、米国の原子力発電事業者の2次系減肉 管理状況の調査を行い、点検保守状況の日米比較によ り国内の減肉管理手法の妥当性を検討する。
NFANULY 2 PTTVU VU ““ . 三肉速度、超音波探傷データから解析を行い、配管の 三肉状況を予測し、次回の交換・点検部位を決定して る。 一方、国内の管理指針では、炭素鋼配管に関して湿 度、流速、温度等の条件から「主要系統」とされた米国 点検対象 ]日本 点検対象主要系統|| その他系統CHECWORKS主数10年で0.25抽出 ・減肉想定部位」 予測精度向上運転経験を 水平展開点検部位毎の減肉 速度の算出次回 点検時期ーく点検余寿命評価肉厚く基準り少余寿命く2年 修理修理図1 軽水炉2次系配管減肉管理手法の日米比較- 269 -図1 軽水炉2次系配管減肉管理手法の日米比較部位は、その全数について点検時期を計算し、点検結 果により部位毎の減肉速度と余寿命を算出し、次の点 検時期の決定または修理が行われる。対象としている系統は日米で大きな違いは認められ ず、米国では CHECWORKS 等により抽出した部位を 点検・修理しているのに対し、国内では対象箇所全数 の肉厚を測定し、修理箇所を決定しているところに大 きな違いがある。2.2 日米の減肉保守状況 - 美浜3号機の指針制定以降の点検箇所数と配管取替 箇所数の推移を図2に示す[4]。美浜3号機では、毎年 200~800 箇所程度の点検を行ってきており、2004 年に ついては事故の後で対象範囲全数に加え、ステンレス 管等の知見拡充を含めて 6,260 箇所の点検を行った。 また、事故前までの累計で、約 1,600 箇所がステンレ ス鋼や低合金鋼に取替える等の修理が行われている。 1. 次に、米国 Virginia Power 社(現 Dominion 社)の Surry 1/2 号、North Anna 1/2 号の4 ユニットにおける年度毎 の減肉補修状況を図3に示す[]。 Surry 2号機の事故10006,260箇所図2点検箇所(指針制定以降) ■取替箇所(事故前)箇所数、1977 1978 1980 1981 1983 1984 1985 1986 1987 1989 1990 1991 1993 1994 1996 1997 1999 2000 2001 2003 2004時期 図2 美浜3号機の配管点検と取替状況12001000一計画的 |-o 検査結果取替箇所数Surry-20???????? ??????? - 9-p19851990200020051995 年度図3 米国軽水炉2次系配管取替の例 (4 ユニット分)後の2年間は、点検結果に基づいて取替えられた配管 が多くあったが、その後はほとんどの配管が計画的に 取替えられている。 - 取替え箇所の累計は4ユニット全体で約6,000 箇所、 1ユニットあたり 1,500 箇所程度となる。これは、美浜 3号機でステンレス鋼や低合金鋼等に取替えられた箇 所数約 1,600 と同程度である。今回新たに First Energy社の Beaver Valley発電所の調 査を行い、米国の減肉管理に係る情報を入手した。Beaver Valley 発電所1/2号機はいずれも Westinghouse 社製3ループ PWR で、1号機は 1976年 10 月の運開で美浜3号機と同時期、2号機は 1987 年 11月運開のプラントである。美浜3号機、Virginia Power 社(Surry、North Anna) ユニット平均、および Beaver Valley1/2 号機の年度毎の 配管取替状況を図4に示す。美浜3号機の約 1,600 箇所、および、Virginia Power 社平均約 1,500 箇所、いずれも継続的に修理が行われ ている。それに対し、今回調査した Beaver Valley 発電 所は、1号機が累計 54 箇所、2号機が累計 28 箇所と、 極めて少ないことがわかった。2.3 減肉管理手法の検討 -Beaver Valley-2 号機の系統毎の減肉管理状況を美浜 3号機のデータと合わせ表1に示す。 - 平均減肉速度について、Beaver Valley-2号機の実測 値が 0.20 × 10*mm/hr、予測値が 0.23 × 10*mm/hr である のに対し、美浜3号機の平均 (実測値) 0.24 × 10*mm/hr であり、両者は同程度の減肉速度を持っている。それ にもかかわらず、肉厚管理対象箇所数は、Beaver Valley2号機が 386 箇所であるのに対し美浜3号機が 4,248400ロMihama-3(事故前) SVEPCO Ave.Beaver Valley-1 ■Beaver Valley-2取替箇所数る1980 198219841986 988661996199807002004取替時期図4 軽水炉2次系配管取替状況の国内外比較270表1Beaver Valley 2号機と美浜3号機の減肉管理状況73Beaver Valley 2| 美浜3号機 平均減肉速度(×10*mm/hr) | 取替箇所数|点検対象箇所数、 実測? - | CHECWORKS T (累計) 復水系 0.23 0.2148594 給水系 0.25 0.26542 主蒸気系 0.28 0.23825 抽気系、 0.190.2353351 ドレン系 0.17 0.23182 1.533 その他 0.13 0.2317403 合計 | 0.20(平均) | 0.23(平均)| 28 ・386 美浜3号機約1,600 ※1 美浜3号機減肉速度は、第11~15回定検の累積測定回数3回以上のデータの平均値 ※2 美浜3号点検対象箇所数は、事故後測定計画時(H16.11.25)における指針該当箇所数今回点検部位6,260箇所には、知見拡充等のための点検箇所が含まれる0約0.2414,248※箇所(事故後計画値)、累計取替箇所数が 28 箇所に対 して約1,600 箇所と、大きな差がある。Beaver Valley 発電所と美浜3号機の運転パラメータ の比較状況を表 2 に示す。系統構成と使用材料に大き な差はない。水処理について、Beaver Valley 発電所で はヒドラジンを低減させることを意図しているが、 180°Cの単相流環境においてヒドラジン量が FAC 感受表2 Beaver Valley 発電所と美浜3号機の運転パラメータの比較Beaver Valley - 1/2美浜3号機系統条件 温度 流速 湿り度両者共にWH社製3ループプラントで、系統構成、運転条件、 使用材料等に大きな差異はない。 Beaver Valley発電所は2001年9月24日付で1.4%の熱出力 増加が承認されているが、出力増加によるFAC感受性への 寄与は問題とならないとしている。 また、今後の8%までの出力増強を申請中。 運転認可更新は、近く申請の予定。材料pH 溶存酸素濃度水化学29.3低 アンモニアナモルフォリン(ヒドラジン低減)8.8~9.7< 10ppb 全揮発性薬品処理(AVT) +エタノールアミン(ETA)水処理「運要領書 スケルトン図 設備書等材質 湿り度 温度 流速 水処理<測定部位肉厚測定386箇所<管理部位|<測定部位 管理帳票日 測定結果> <進展評価EPRI CHECWORKS測定結果約65部位 /各定検是正措置エ学的判断測定部位追加 |管理対象追加| 修理(累計28箇所)、対策の水平展開】「修理件数が不明の部分] 図5 Beaver Valley 2号機減肉管理の概念図図5 Beaver Valley 2号機減肉管理の概念図図6- 271 -性に影響しないと示すデータもある[6]。運転条件に大 きな違いはないとともに、平均の減肉速度が同等であ ることから、両発電所で FAC 感受性に大きな差はない ものと考える。次に、Beaver Valley-2号機の減肉管理の概念を図5 に示す。対象の全系統のなかから EPRI の CHECWORKS と工学的判断から管理対象部位 386 箇 所が選ばれ、管理帳票に基づいた管理が行われる。そ の結果、定期検査毎に平均65 箇所の点検と、判定基準 を下回った部位への是正措置として、これまで累計 28 箇所の補修と対策の水平展開が行われている。ここで、 28 箇所の補修部位は 386 箇所の内数で、水平展開によ り修理された部位の数は分からないが、調査した範囲 では情報はなく、それほど多くはないものと思われる。次に、減肉修理の判定の考え方を図6に示す。肉厚 測定の結果、減肉が公称肉厚の 12.5%以下であれば対 応の必要はない。減肉が認められ、測定値が最小肉厚 を満たしている場合は、寿命評価を行い、次回点検ま で問題なければ是正措置の必要はない。最小肉厚を下 回る場合は、EPRI 指針または ASME 規格に従い妥当 性評価を行い、不適のものについて是正措置が行われ る。図7に、設計最小肉厚に対する取替時の測定肉厚を プロットした。多くが設計最小肉厚を下回って運転継 続されているが、日本では技術基準不適合となり許さ れていない。このことが、Beaver Valley 発電所の修理 件数が少ない要因のひとつと考える。配管補修状況の日米比較結果を図8に示す。対象と したユニットはすべて Westinghouse 社製3ループユニ ットで、Beaver Valley 2号と美浜3号では減肉速度が同肉厚測定結果 Tmeas.STmeas. > 0.875Trom >対応不要 |NMTreg><余寿命評価妥当性評価」是正措置必要な時期に再測定等Tmeas. 肉厚測定部位の代表肉厚(最小値) Tnom. 素管の公称肉厚 Treq. 応力評価による設計要求最小肉厚Beaver Valley 2号機の修理判定の流れみを行っていることが分かった。3.結言妥当性評価し測定最小肉厚 Tmeas. (mm)2次系配管減肉事象に関して 調査し、点検保守状況の比較検 の結論を得た。 ・米国は、電力会社によって減目 きく違うことがわかった。日本 国における取替箇所数の幅の」1 0 2 4 6 8 10 12 14 16設計最小肉厚 Trea.(mm) 図7 Beaver Valley 2号機配管取替時の肉厚図7美浜3号機Virginia Powerf修理箇所 (平均)Surry - 1/2 North Anna - 1/2修理箇所 約1,600約1,500 箇所箇所参Beaver Valley-2電力会社によって修理状況が大きく違う美浜3号機は、修理 箇所数比較の結果、 米国と同等以上の取 り組みを実施管理対象範囲が386箇所 に絞り込まれ、補修範囲 も限定されているn|修理箇所-28箇所設計最小肉厚を下回って も妥当性評価により運転 継続が可能図8 2次系配管修理状況の日米比較結果程度であった。修理箇所数に関して、Beaver Valley-2 号機では、抜 取り検査と運転継続の考え方から修理された配管は28 箇所、一方で、Virginia Power 社は1ユニット平均で約 1,500 箇所が修理されており、米国では電力会社によっ て修理状況が大きく違うことが分かった。また、美浜 3号機は事故前の段階で約 1,600 箇所の修理が行なわ れており、その結果、国内は米国と同等以上の取り組3.結言-2次系配管減肉事象に関して米国の減肉管理状況を 調査し、点検保守状況の比較検討を行った結果、以下 の結論を得た。 ・米国は、電力会社によって減肉配管の保守状況が大 きく違うことがわかった。日本の取替箇所数は、米 国における取替箇所数の幅の上限と同等以上であった。 ・その結果、国内の減肉管理手法は米国と比較してそ ん色はなく、妥当であると考える。参考文献[1] 原子力安全・保安院, 美浜発電所3号機二次系配管破損事故調査委員会, 「関西電力株式会社美浜発電 所3号機二次系配管破損事故について(最終報告書)」,(2005). [2] 腐食防食協会編, “腐食・防食ハンドブック““, 93, 丸善, (2000). [3] 千葉吾郎,「海外原子力発電所における2次系配管減肉不具合の発生状況」,INSS Journal, vol.12,(2005). [4] 原子力安全・保安院, 高経年化対策検討委員会(第4回)配付資料,「電気事業者における配管減肉データの分析結果について」, (2005). [5] NRC Staff's handout for 08/08/2002 Meeting WithDominion VEPCO. [6] E. M. Pavageau, O. Bouvier, and K. Fruzzetti, “Of theRole of Temperature and pH on the Hydrazine Effect on Flow Accelerated Corrosion”, Int. Conference Water Chemistry of Nuclear Reactor Systems, San Francisco,11-14 Oct. (2004). - 272“ “原子力発電所2次系配管減肉管理手法の日米比較“ “千葉 吾郎,Goro CHIBA
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