制御弁の診断装置とグランドパッキン管理

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カテゴリ: 第3回
1.緒言
原子力発電所には多数の空気作動制御弁が使用さ れており、水や蒸気の流れを制御したり、閉止した りする重要な働きを担っている。これら弁の信頼性 確保はプラントの安全運転遂行上、重要な問題であ る。しかし、運転中の空気作動制御弁のトラブルは 複雑、難解であり、また、環境問題により従来パッ キン材として用いられてきたアスベストから炭素系 材料へのノンアスベスト化も今後の保守上の課題と なっている。実施面においては、従来の弁保守は現 場技術者の経験と技量で支えられて来たところが大 きく、熟練技術者の高齢化による技術伝承方策の確 立も急務である。この様な取組みの一つとして、電力業界では信頼 性を維持しつつ経済的な発電を達成するため、保全 近代化の取り組みが検討され、設備を停止すること なく、弁の状態を監視する新たな監視診断技術の開 発が期待されている。ここではこれら命題を解決す べく、開発した空気作動制御弁の診断装置の概要と それを用いたグランドパッキン管理について述べる。
2.制御弁診断装置の開発にあたって
従来の制御弁保守は、一部で試験装置が使われて
いた程度で、ほとんどが現場技術者の経験と技量 (勘)に負うところが多く、停止時の定期点検にあ わせ分解点検やグランドパッキン取替えを行う時間 計画保全が取られていた。しかし、近年の熟練技術 者の減少に伴って、現場技術を如何に維持・継承し て行くかが心配事になっている。一方運転中のハンチング、グランドパッキン漏洩 等の事象は複雑、難解で、必ずしも定量的な点検手 法や管理手法が整っていず、原因究明にも困難さが 伴い、プラント停止を余儀なくされる場合がある。これら問題の合理的なソリューションは、現場技 術者の支援が可能な科学的知見に基づいた設備診断 技術の開発とコンピューター技術の融合による制御 弁保全の高度化であると考えられる。この主旨に沿って著者らが開発した制御弁診断装 置「AVIDAS」(Air Operated Valve Intelligent Diagnostic Analysis System)は、運転中に発生す るトラブルの原因究明を評価可能とするため、プラ ント運転中でも、運転に影響なく信号が取出せ、長 期に渡ってデータ採取できる機能を持たせている。 この診断装置の大きな特徴は、弁情報が集中してい る弁棒軸力を運転中でも直接監視できるセンサーを 開発し、診断に利用したことである。軸力により流 体力の影響、内弁の摺動性、弁の締切力、駆動力、 パッキン摩擦力を知ることができる。そして、この 軸力センサーと外部から取り付け容易な開度センサ ー、及び弁へのデマンド信号を監視することで基本 的に制御弁の運転中診断を行うことが可能である。287・ 一方、停止時定検においては、単体のステップ応 答、ランプ応答による弁特性試験装置として使え、 そこから得られたデータの診断・判定は、可能な限 り定量的に自動判定ができるものとした。例えば、 弁のベンチセット、シート力、駆動部ばね情報、設 計基準に対する性能評価、弁の開閉時間などが自動 判定できる。また、後の章で説明するがグランドパ ッキンのシール性についての管理も可能な診断装置 である。3. 軸力センサーについて軸力センサーの当初の開発にあたっては、運転中 でも高精度かつ容易に軸力に含まれる弁負荷情報を 得るため、弁棒に直接センサーを内蔵したメンテナ ンスフリーの弁棒固定型とした。 - 小型弁については、上部弁棒にセンサーを内蔵す るタイプとし、正接、逆接とも信号ケーブルが空気 室を貫通することのない工夫をしており、既設弁に も簡単に適用できるものが開発できた。(図1a,b 参照)10図1a 小型弁(正接)の軸力センサー図1b 小型弁(逆接)の軸力センサー大型弁については、原子力発電所の給水制御弁等 に多く用いられているCCI社製の弁について開発 を行った。大型弁の軸力センサーに求められることは、大きな弁閉止力と小さなパッキン摩擦力の双方 を精度よく取出さなければならないことである。こ のためヨーク部を一部改良するだけで簡単に取り付 けられる弁棒固定型の軸力センサーを開発した(写 真1参照)。軸力センサ写真1 大型弁の軸力センサー しかし、これらの弁棒固定型軸力センサーは弁棒 に働く力を高精度で検出できるが、一部弁棒の取替 えや、若干のヨーク改造を伴うというわずらわしさ があった。そこで、既設弁であっても弁の改造なし で軸力を検出するため、弁棒軸力の反力が加わるヨ ーク(フレーム)に容易に設置でき、間接的に弁棒 軸力を検出するヨーク軸力センサーを開発した。こ の手法は、従来も簡易に軸力を知る手段として使わ れることがあったが、弁棒軸力に比べヨークにかか る応力が極めて小さいこと及び校正手法が確立して いなかったため、定量的な診断や運転中診断には使 えなかった。開発したセンサーは、この欠点を補う ため、高感度仕様でコネクターを装備したカプセル 型歪センサーとし、運転中でも容易に設置できるタ イプとした。また、真の弁棒軸力との校正手法も確 立した。工場試験、実プラント試験の結果では、弁 棒固定型軸力センサーより精度は劣るものの、十分 実用に供することが実証された。(写真2参照)ヨーク軸力センサー写真2 ヨーク軸力センサー 弁設置当初から軸力センサーを使う場合は、弁製1900/10/14造時点で固定型軸力センサーを組み込むことにより 信頼性の高い性能監視が得られる。また、運転途中 から既設弁に適用する場合は、ヨーク・力センサー を利用する方が便利である。4. 診断装置によるデータ採取と診断写真3 データ採取中の AVIDAS (1)定検中における診断 AVIDASは標準的に次の5チャンネルの入 力点を有している。1軸力(弁棒固定型、ヨーク・ 力型)、2弁開度、3弁空気圧、4電空変換器への入 カデマンド信号、6電空変換器からの出力空気圧で ある。尚、他に予備入力として2チャンネル装備し ている。(写真3)プラント停止中は、上記5チャンネルでデータ収 集を行い、弁の精密診断を行う。これは定検で弁を 調整・保守した場合に、弁が健全であることの確認 が主な診断となる。診断装置は応答特性試験機能を 持ち、ステップ応答指令、ランプ応答指令により、 自動的にデータ採取が可能である。(図2参照)。TOYOメインメニューイヤー入力用のデータベースDHE SO-RAYTOYODAマジに考くあり1938/05/011902/10/06「10FB2 1456051812558-211・・・2003)m1902/09/26ステップ応答ランプ応答2201/03/020.583333333333333h2000・・・・・・・・・...iriturmetitistilitiiiim1900/04/09・・・・・・・デー図2 採集された診断データ図2の採取されたデータを基に、ソフト的に自動診断を行なうが、その診断項目はJEAC・G48 03-1999『軽水炉原子力発電所の運転保守指 針』の「空気作動弁の試験パラメータの決定手順」 に準拠している。(1) その項目を下記に列記する。 1ベンチセット 2駆動部空気圧 3シートカ @ばね定数、ばね締込量 5ストローク時間 6パッキン摩擦力 - 図3は自動診断結果の出力例である。この診断デ ータを比較したり、データ波形の詳細分析をするこ とによって、弁の供用期間中の変化(劣化)を把握 することができる。また、GP(グランドパッキン) 摩擦力から、実運転時におけるパッキンのシール性 評価を行うことができるが、これは5項のパッキン シール管理において述べる。「井名作:日出水利耕一15.1: TEST400ID 19:16-3437RF00498殺断結果選択、160629000MMロファイル判定用定データファイル名:09424amデータ収集日付:200304 25 192301900/02/2105?1121902/03/30・駆動部空気圧 設計基準力量 カバランス計算1900/01/301910/03/08駆動部空気圧0Pa) BEND ARME アンバランスカLF(みい |コンタクトロードOLIV フォースバランス FACE+PE) | ガストロークmm)スプリング型式 「ばね定数(W) スプリング込量() 無自荷時の空気圧レンジ(MPa) 団がりトリップがたり1900/03/102102/09/28・スプリング情報01~0440106~0.456・ベンチセット制御特性?「モジュレートX秒)91900/01/16 9:36:00・作動時間全工程時間) 「バッキン式 パッキン撃力PAIN・GP摩擦力パッキン弾力をEXCELへ改定図3 自動診断結果の出力例 AVIDASは図2に示すようにデータ波形のト レンド診断ができると同時に、図4~5に示すよう に採取したデータからヒステリシスカーブを簡単に 作成することができ、診断に供することができる。図4はIP入出力のヒステリシスカーブである。 誤差も併せて表記しているので、IP入力に対する 出力特性及び誤差が視覚的によくわかるようになっ ている。図5は弁開度100%近傍を拡大した軸力 一開度のヒステリシスカーブである。これよりパッ キンの静摩擦力、動摩擦力が直読できる。1900/10/15IP入出力(誤差)特性IPHD (kPa)誤差(FS*)1940/07/20IP入力(mA) 図4 IP入出力のヒステリシスカーブ- 85 I9095100 | 105軸力(kN)動鄰擦力静摩擦力弁開度(%)図5 軸力一開度のヒステリシスカーブ 上記以外にも各種のヒステリシスカーブが簡単 に作成でき、AVIDASの利用により、従来の静 的な観察だけでなく、動的な観察が簡単に視覚化で き、試験成績書についても合理的なレポートが作成 できる。(2) 運転中の診断 - AVIDASは運転中においてもデータ取得が可 能である。コンピューターの容量にもよるが、連続 的に1年以上のデータ取得が可能となっている。しかし、いい軸力- 静摩擦力ヨーク・力センサーコ intering alr_lin' inter図6 運転中におけるヨーク軸力センサー図6は敦賀2号機の給水制御弁において通常運転 中(弁開度は約67±2%)に採取したデータであ る。ヨーク・力センサーは弁(開度)の動きにつれ て、弁棒軸力の変化を良く捉えていることがわかる。 上図の丸で囲んだ部分では、まだ弁開度に変化は現 れていないが、軸力センサーでは、既に弁に働く力 の変化を捉えている。これは弁デマンドに応じ弁棒 を動かそうとする力がかかるが、パッキンの静摩擦 力が弁棒に作用しているため、初期段階では弁棒が グランドパッキンにより拘束され、静摩擦力を超え た瞬間に弁棒が動いていることを示している。以上 のようにヨーク軸力センサーにより、運転中のグラ ンドパッキン静摩擦力を計測することができ、次項 にて説明するグランドパッキン管理ソフトを用いる ことで、パッキン漏洩の可否についての定量的な判 定が可能になる。AVIDASではデータ収集、診 断とパッキン管理ソフトは連動しているが、パッキ ン管理ソフトは単体にても使うことができる。5. グランドパッキン管理について原子力発電所に用いる弁では、グランドパッキン の漏洩は系外漏洩の観点から大きな問題となる。ま た空気作動制御弁においては、制御性も重要な問題 であり。このシール性と制御性は共にグランドパッ キンの摩擦抵抗(側面圧)に大きく関係している。 グランドを締め付け、パッキン面圧を大きくすれば シール性は良くなるが、摩擦抵抗は増大し、弁の制 御性は悪くなる。即ち、弁のシール性と制御性は相 反する性質を持つ厄介者である。グランドパッキン は一般に性質の異なるパッキンリングを多段に組み 合わせて使うためその特性が複雑で、その管理は難 しく、未だ確立された手法があるとは言い難い。グランドパッキンのシール性については1960 年DENNY等により研究報告(2)がなされ、その中 でパッキンに働く力学的解明が行われている。(1) (2)式は実用化にあたってパッキンリング単位で 力関係をとらえ、考え方を平易にしたものである。 Pr/P=K(1) P h/P= a ここで P:上面圧Pr:側面圧 Ph:上面より h の距離の面圧
“ “制御弁の診断装置とグランドパッキン管理“ “伊藤 晴夫,Haruo ITO,安東 博,Hiroshi ANDO
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