保全の最適化に向けた取り組み

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カテゴリ: 第3回
1. はじめに
わが国の原子力発電業界では、米国原子力の 好調の一要因と言われる信頼性重視保全と状 態監視保全の考え方を取り入れ、保守管理の立 場から設備信頼性の向上を図るべく検討を行 ってきた。これらの努力はこれまで個別電力毎 に積み重ねられてきたものであるが、さらなる 推進のため、業界レベルでの取り組みが必要と の共通認識に至った。ここでは、そうした産業 界レベルでの取り組みについて考え方の概要 を紹介する。
2. 従来の保全方式とその課題従来のわが国の原子力発電所の保全は、その 営業運転開始以来、時間計画保全、しかも原子 炉を停止しての機器分解点検を中心として行 われてきた。こうした方式は発電所の安定、安 全運転に寄与してきた一方で、さまざまな課題 の要因ともなってきた。 (1)停止時のピーク年次で行われる定期検査停止時に、保全作業 の大半が行われ、作業員数にして千人規模のピ ークが発生している。これが現場作業環境の錯 綜を招くとともに、熟練技能者の確保を困難に する要因になっている。また、こうしたリソー スの制約が定期検査時期の柔軟性にも影響し、 年間を通じた運転計画の立案の上でも大きな 制約要因となっている。 (2) 作業時被ばく線量発電所での作業被ばく線量は、水質管理等、 さまざまな努力の結果、大きな低減効果を上げ てきた。しかし、国際的な比較からは、さらに 改善の余地があることが指摘されている。この 差は、保全の立場からは主に保全実施内容と停 止時作業計画の最適化レベルによるものと推 定され、さらなる工夫が求められている。 (3)経年化の進展営業運転開始からの経過時間が30年を越 えつつある状況に対応して、高経年化の観点か らの保全の見直しが進められている。その観点 からも、運転中の状態監視を積極的に取り入れ るべきこと、それらを含め保全の体系化を進め るべきことが指摘されている。 (4)保全手法の問題従来の時間計画、分解点検中心の方法には、 次のような弱点がある。このため、状態監視技 術との組み合わせによる保全の最適化検討が 必要と考えられている。 ・原理的に過剰保全になりやすく、人的過誤や初期故障の原因をつくる可能性がある。 ・運転中に偶発的に起こる事象の予兆把握と計 画的な対応に難。さらに言えば、こうした管理手法を半固定的 に長期間継続してきたことが、時間計画保全を 前提とした定期検査制度と相俟って、状態監視 技術等の新技術への取り組みやそれを含む保 全最適化のための継続改善努力が促進されに くい組織環境をつくる要因でもあったと考え られる。314今後めざす保全PDCAのイメージ <個別電力事業者><電力事業者共通基盤>システム機能分析と保全重要度評価 ・技術基準の機能要求、構造要求 ・指針によるクラス分類 ・供給信頼性に係る重要度 ・リスク情報、運転経験、経済性 ・機能影響評価(安全機能の喪失、出力低下、計画外のLCO逸脱、...) ・事業者別、設備個別の条件システム機能分析と保全重要度の考え方 ・技術基準の機能要求、構造要求 ・指針によるクラス分類 ・供給信頼性に係る重要度 ・リスク情報、運転経験、経済性 ・機能影響評価(安全機能の喪失、出力低下、計画外のL.CO脱、・・・)状況等を加味して国別の基準を満 車業者ごとに個別の要件、設のI(D)点検、補修の実施(C)保全の有効性評価標準テンプレートの見直し(標準的な保全内容、頻度) ポンプの点検手入れ前データ[おす◆保全の実施結果に対する評価 ・技術基準適合性を確認し、次回点検まで運 転可能であるかを評価えのえの当校名VAR手入れフルーSERVORU・新・SRAEL 価の高)まがりひび常よりも◆保全の内容に対する評価 ・保全内容、時期が適切であったかという観点からの評価 ・体系的に管理された電力共通基盤に基づい た評価 ・トラブルなど運転経験による知見から現状 保全の内容を評価 ・高経年化の観点から、現状保全の内容を 評価状態監視データ、運転監視データ ・振動、適滑油、赤外線熱画像 ・圧力、流量など標準テンプレートの見直し検討 ・保全の有効性、知性 |-故障モードの特性(発生可能性、劣化速度等) などをデータから再評価して保全の内容・頻度を 見直し知見をフィードバック 共通データに反映すべき基準の見直し海外、他産業等 の事例、知見保全活動管理指標 ・安全系統の待機除外時間割合 ・保守が不適切なため発生した 故障回数・個別機器の保全・監視基準子冷却ポンプ保全データ、故障データ、 保全計画ノウハウの共有故障、劣化特性 データの蓄積故障・劣化特性を考慮した保全・監視の技術ペース実施計画機器部位AG)10mHAIRDOTインプランポンプモー・運転中、停止中の一貫した保全計画 ・時間計画保全と状態監視保全を最適に組み合わせた保全計画 《・保全活動管理??計画●いつでKASENTO 使用:高用) 使用しいては・保全活動管理監視基準内側ケーブルタービン計画運転計画、停止工程、補修・取替及び改造計画 等3.これからの保全の方向性(1)方針 - 前項で指摘された課題に対応するための保 守管理充実策を次のように定めた。 <保守管理充実の方針> 科学的、合理的根拠に基づく保全 PDCA を充実 するため、次の2点を重点的に実施する。 1信頼性を重視した保全有効性評価の充実 2事業者の共有する基盤及び体制の構築 これにより、 ・運転中、停止中の一貫した保全 ・創意工夫を生かせる仕組み の実現を図っていく。 (2)信頼性を重視した保全有効性評価の充実従来の保全プロセスでは、定期検査、定期事 業者検査の枠組みの中、点検手入れ後の構造・ 機能健全性の確認に力点が置かれてきた。これ が、設備が健全に運用可能であることの確認と して重要な検査行為であることは言うまでも」ない。しかし、その一方で、行われた保全の内 容、時期が適切であったかについての評価にも 力を入れるべきことが改めて認識されている。 これを実現するため、前回点検後の推移を知る ための情報として、 ・点検手入れ前状態に関わるデータ ・設備運転中の状態監視データ といった情報の把握を進める。また、あわせて、 系統、主要設備のアベイラビリティ等、保全の 効果を測るための指標(保全活動管理指標)を 充実させ、保守管理の弱点把握を確実に、実効 的に行える体制を整えていく。 ・ また、これらのデータを科学的、合理的に評 価し、保全計画に反映していくためのエンジニ アリングの枠組みとして信頼性重視保全など の方法論を取り入れていくと共に、状態監視を 代表とする技術導入を推進していく。 (3) 事業者の共有する基盤及び体制の構築 * 国内原子力発電所のシステム、設備はきわめ て共通性が高く、保全に必要とされる技術も原315 -子力産業界を通じて共通のものである。そのた め、発電所レベルでのPDCAの充実に加えて 電力事業者レベルで知見を共有することが業 務品質と実効性の向上に有効と考えられる。そうしたことから、事業者レベルで共有、標 準化していくべき技術情報、知見、考え方等に ついて検討、管理、運営していく場を設け、推 進してゆくこととした。そのために、本件専任 チームを編成した上、以下のような項目を中心 に検討を進める計画である。 ・国内プラント保全、故障経験情報 ・海外事例等の外部情報 ・保全有効性評価の実施方法、体系の標準 ・管理指標等の標準 ・機種別等の保全内容の標準とその根拠 ・各種事例検討 ・国際標準への対応、ベンチマーク 等々保守管理の充実に向けてのアクションプラン(案) | H8 | H9H2O |項目H17H18H1911|▼各電力保全充実のFDCA開始日様保守管理の充実 1保全計画の見直し の点検手入れ前データ採取 ◎保全活動管理指標の運用各電力状態監視保全の基盤整備えた監視技術の導入 / 体制の整備及び測定評価技量の向上 / 測定評価手順の策定社内基盤対応準備ステアリングチーム電力共通基盤 体制強化共通基盤整備チーム。管理粗?技術基盤 OPで毎のシステム・機器機能分析 保全重要度 保全活動管理指標の定義電力共有2機種毎の故障モード分析 標準テンプレート運用標準 の電力共通業務手順マニュアル の保全活動管理指器の運用ルール ◎技術基盤の維持管理ルールなど運転停止間際の技術評価共通技術課題 データ採取 評価基準策定(計語ドリフト、PCVなど)...改定案作成規格・基準保守管理規定(JEAC4209)に改定) JEAC4209ガイド(JEAG)【新規】協会内議公衆審査学協会保全技術関係4.今後の展開この導入プロジェクトは、我々にとって単な る技術導入ではなく、保全に対する新しい概念 とこれまでにない業務スキームの導入の第一 ちであり、技術面はもとより、運営面ほかあら ゆる面にわたって課題が潜んでいると考えら てる。個別電力ごとの事情や、地域差をふまえ た調整はもちろん、電力間や外部専門家とのコ ミュニケーションの確立、公的な規格基準の整 青等を計画的にこなしていく必要がある。当面、今夏、専任チームを編成して事業者共 通基盤を中心に基礎固めの活動を開始するともに、個別電力の業務、規格基準等の整備を 進め、平成20年度には各電力において、段階 的に自律的なPDCAが回り始めることを目 票に進めていく計画である。16“ “保全の最適化に向けた取り組み “ “橋本 哲,Satoshi HASHIMOTO
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