安全、安心とコスト・ダウンを両立させる保全

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カテゴリ: 第3回
1.目的及び背景
ても過言でない。 提供する製品やサービスには品質と提供するため2. リーン・エンジニアリングへの潮流 に必要なコストが発生する。品質は、顧客が享受する もので、コストは顧客が負担するものである。従って、 TPSは市場に合わせて迅速(agile)に多品種、少量生産 顧客に提供する品質は出来るだけ高いことが要求され を行うために、JIT (Just In Time)による平準化、つま るし、顧客が負担しなければならないコストは出来る。 り、部品供給から顧客までの全ての過程で無駄、無理、 だけ低いことが要求される。どのような産業において 斑を排除して行うところに特徴がある。そのため、全 も、企業の行う製品やサービスを提供する活動はなん ての製造過程で不良品零の高い生産の信頼性が要求さ らかの意味で経済活動であるので、市場から経済的にれ、「目に見える化」の方針の下に不良品が発生すると 支持されない活動を行うことは出来ない。例えば、ト 工程を必ず止めて原因を徹底的に追求し、再発防止を ヨタ生産システム(TPS)は、需要に合わせて生産す図っている。 る多品種少量生産方式で生産技術の長年の改善追求に安全は生産の前提として重視されており、優先的に より高い競争力収益力成功している。不良品を無くし、 作業者の危険性、肉体的苦痛を避けるためだけの自働 在庫や出荷までのリードタイムを最小化することでコ化が推進されている。TPS では実生産量/生産能力の稼 ストダウンと同時に顧客の多様な好みに合った高品質 *働率、可能生産量生産能力の可動率の違いがある。前 の製品を生産している。者は需要に合わせる必要があり、又、後者は需要に合 しかし、一般には品質とコストの関係は、トレード わせた生産を可能にするために常に 100%が要求され オフ又はバランスの問題と考えられ、品質が良ければ る。そのため、安全も保全も、作業者の能力もより高 コストも高いのが当然とされていた。しかし、自動車 い水準が要求され、結果として社会的な規範から要求 の例でも明らかなように、今日では国境の無い自由なされる安全性などをはるかに凌駕したものになってい 市場活動が一般的になり、グローバル化されつつある。 よう。 そして、価格を決定するのは市場、つまり、顧客とさTPS では、企業の利益追求つまり、無駄、無理、斑 れ、かつてのようにコストに適正利潤を上乗せすると のない生産を追及し、それはそのまま安全性のより高 言う考えは許されない。品質が良くてコストは安いが い水準での追及につながっている。ここでは、安全、 当然視され、従って品質とコストはトレードオフやバ 安心とコスト・ダウンはトレードオフでなく、安全を ランスという、かっての当然の考え方では対処出来な追及することは利益や利用者の負担を小さくすること い。従って、例え品質の一つと考えられる安全、安心につながっているのである。 であっても、それを提供するのによりコストがかかる、 このように、品質とコストダウンがそのまま一致す つまり、顧客に対しより大きな負担を求めることは困るような生産や保全方式が望ましい。その場合、安全 難である。安全、安心のためだけに過大な負担を要求のために行った努力が、企業の利益としてリサイクル
2. リーン・ 2. リーン・エンジニアリングへの潮流TPS は市場に合わせて迅速(agile)に多品種、少量生産 を行うために、JIT (Just In Time)による平準化、つま り、部品供給から顧客までの全ての過程で無駄、無理、 斑を排除して行うところに特徴がある。そのため、全 ての製造過程で不良品零の高い生産の信頼性が要求さ れ、「目に見える化」の方針の下に不良品が発生すると 工程を必ず止めて原因を徹底的に追求し、再発防止を 図っている。安全は生産の前提として重視されており、優先的に 作業者の危険性、肉体的苦痛を避けるためだけの自働 化が推進されている。TPS では実生産量/生産能力の稼 働率、可能生産量生産能力の可動率の違いがある。前 者は需要に合わせる必要があり、又、後者は需要に合 わせた生産を可能にするために常に 100%が要求され る。そのため、安全も保全も、作業者の能力もより高 い水準が要求され、結果として社会的な規範から要求 される安全性などをはるかに凌駕したものになってい よう。TPS では、企業の利益追求つまり、無駄、無理、斑 のない生産を追及し、それはそのまま安全性のより高 い水準での追及につながっている。ここでは、安全、 安心とコスト・ダウンはトレードオフでなく、安全を 追及することは利益や利用者の負担を小さくすること につながっているのである。このように、品質とコストダウンがそのまま一致す るような生産や保全方式が望ましい。その場合、安全 のために行った努力が、企業の利益としてリサイクル- 326 -され、安全のための原資として利用される。すると益々、 安全性が高まり、それは更に利益が増え、安全のため の努力に跳ね返り正にフィードバックされる。 -以上のような安全への努力がコストダウンの結果に つながる正のフィードバック・リサイクルが自動車工 業以外の他の産業では可能ではないのだろうか。ここ では、石油化学、化学、発電などプロセス・プラント の設備保全業務のあり方において、探ってみたい。3. 設備の信頼性向上によるリスクとコスト 削減、3.1 プロセス・プラントのリスクと操業期間プロセス・プラントは所謂、装置産業であり、特に 石油精製、大型化学、原子力・火力発電プラント等の 連続プラントでは 24時間絶え間なく操業されている。 大量の原料やエネルギーを消費し、大量の製品・サー ビスを提供しているので、需要がタイトな時期にプラ ントが操業を停止すると莫大な損失を招き、その額は 大型石化プラントで1日の停止で3億円、原子力プラ ントで1億円に達する。これ等のプラントでは停止、 再起動に大きなコストがかかるので、出来るだけ長期 に連続して安定運転を続けるかが、採算性に非常に関 係する。運転を停止する理由として、設備故障や誤操作によ る事故で、運転継続が不可能で停止する場合も、又、 不幸にして事故が火災、爆発により災害に発展し生産 が停止することもある。しかし、一般的に多いのは運 転期間を事前に決めておき、定期的に停止し、設備の 点検補修する場合である。 ““ 従って、このような大型プラントの場合は、故障等 による緊急停止や生産能力低下による生産損失を防ぐ と同時に、定期運転期間を延ばす、点検補修による定 期停止期間の短縮がコストダウンに大きく影響する。この場合、留意しなければならないのは、運転期間 を延ばすと一般に機器や配管、計器など設備の信頼性 が低下すると言う考えである。プロセス・プラントの 起動時には設備の初期故障が多く発生するので、運転 ・期間を短縮することは必ずしも全体的な信頼性を向上 させることにはならない。これは、起動してから定期 的な開放点検、補修のための定期停止までの最適な運 転期間があるのである。これは、回転機械や配管部品 の接合部などに適当な嵌め合いや摺り合せなどの調節が必要である。しかも、設備の状態は温度、圧力や流 体の流動状態などによっても変り、増し締めなど調整 する必要がある。開放して点検したり、更に補修した場合には、開放 に伴う問題が派生する。操業時と停止時の温度の違い による配管表面の結露もその一つだが、保温冷材の材 質と結露した水分が結合して高濃度の腐食環境を発生 させる。多く発生する配管サポートと配管との間のト ラブルはサポートによって固定された配管にかかる熱 応力によって発生する力によるものであるが、操業時 と停止時の温度差は必ず発生するので防ぐことは難し い。従って、操業期間を短縮するのは必ずしも設備の信 頼性を高めることにはならないのである。一般的には 初期故障と減耗や繰り返し応力、腐食などによる設備 劣化の2つの要因による信頼性の低下、リスクが総合 的に最低になる点が最適な運転期間であろう。中)リスク Rストロ(t)中1(t)+ p2() |ot Roptt操業経過時間T_ToptFig.1 操業期間とリスクFig.1 操業期間とリスク所謂バスタブ曲線と言われるリスク曲線である操業 期間 Tにおける平均リスク R はSpyde Sle(0) + pa(0)dT但し、 A(t):初期故障リスク」 ゆっ(t) : 寿命リスク である。3.2 リスクを最小にする最適操業期間操業期間中のリスクを最小にする、又は少なくとも 許容限界以内に抑制することが求められる。ここでは、327先ず、平均リスクを最小化することを考えると、最適な操業期間Tはスト入中()Tope = min imize R(t) = min imizedスク RRopt...““ R'optf000 - Chorschel -操業經過時間TT'opt100(T) + p, (T)}L_Fig.2 信頼性向上によるリスク削減と操業期間T2|* { (1) + (that . .Main a bocry) + .7m)}Topt4.設備管理の高信頼性化による安全とコス ト・ダウンの両立最も、平均リスクが小さくなるのは時間Tまでのリ スクの平均値と時間Tでのリスク値が一致した点で ある。従って、初期故障によるリスクの平均との差 分が、操業期間の延びによるリスク増加分とが一致 した時間が最適な定期運転時間(Topt)である。信頼性の高い設備管理を実施することで、的確に機 査したり、開放点検箇所を選定し、検査対象を限定す ることが可能になる。その結果、運転期間の延長だけ でなく、定期停止期間の短縮、検査に要する検査費、3.3 信頼性向上によるリスクとコストの削減以上のように、停止し再起動する場合に初期故障が 発生する以上、必ず、リスクが最小になる運転期間 が存在する。また、化学プラントではプラント再起 動時に大きな事故に遭遇する事例が多い。他のプラ ントでも、社会的なリスクの大きさから、表面化し ていなくとも再起動時の初期トラブルによるリスク はかなりのものがあると予想される。従って、徒に 運転期間を短縮することは反ってリスクが増大する ことになる。 それで、設備の信頼性を向上させ、定期運転時間を Tropt 延長することで設備の停止再起動の回数を削 減し、リスク R'opt を削減することができる。(Fig2. 参照) そして運転期間を大きくすることで運転経費も削減 することが出来る。コストを削減できるので、更に 信頼性を上げ安全を図る活動に投資することが可能 になる。つまり、設備の信頼性を向上させることで、 リスクの削減とコストダウンを両立させることが出 来る。()Toptリスク Rスへ(0)RoptR'opt操業經過時間TT'opt4.設備管理の高信頼性化による安全とコス ト・ダウンの両立- 信頼性の高い設備管理を実施することで、的確に検 査したり、開放点検箇所を選定し、検査対象を限定す ることが可能になる。その結果、運転期間の延長だけ でなく、定期停止期間の短縮、検査に要する検査費、 人件費の削減によるコスト・ダウンも可能である。こ のような例として知識処理を採用した配管劣化管理の 研究開発について報告する。4.1 配管劣化予測管理の高信頼性化による安全 とコスト・ダウンの両立プロセス・プラントは流体が錯綜した多くの配管を 通じて機器から機器へ輸送される。配管部品が無数に 近くあるということもあり、十分な専門的知識を持つ 配管劣化の技術者が不足するため、人手で的確な配管 管理を行えず、配管関係の事故に至った例も少なくな い。このような、問題点を解決するために、配管劣化に 関する検査結果や専門家の知識を劣化知識ベースに蓄 積する。それと3次元モデルやアイソメ図の配管デー タや設計データを知識化し、知識ベース化する。これ らの知識を統合して配管部品の劣化程度の予測を行い、 設備管理の信頼性を向上させるシステムの研究開発を 行っている。(Fig.5 参照)配管に無数に存在する配管部品はその型式、流体の 流れの方向、オリフィス下流であるなどの構造が、そ の劣化に関連する。そして、部品の材質と流体の種類 から可能性のある腐食など劣化モードが決まる。328更に、運転条件、流体の状態、不純物の存在などプそして、プロセス条件、つまり、流体や、その温度、 ロセス条件、劣化条件によって劣化モードに対する過圧力条件、流体が気体/液体個体の状態か、と詳細な劣 酷さの度合いが配管の構造との関連で決まるのである。 化条件、つまり、流体に腐食物や不純物が含まれるか、などによって発生する配管の劣化の度合いは異なる。検査記M&H表PFDプロセス条件 ・ 流体 ・ 温度圧力 ・ 流量 ・ 相 ・ 含有物ると、まちかな すごいエストロードローンツ照合比較inist劣化度予測」159まで!!劣化モードwaiianにまた不用紙Date2009124.0劣化部位|構造情報 知識化)・ 材質 アイソメ図・ 配管部品部品仕様 3Dモデル流れ方向設置方向 配管材料選定表・ 配管部位機能当劣化知識ベースFig.3 アイソメ図を用いた劣化評価画面例Fig.3 アイソメ図を用いた劣化評価画面例 Fig.3 は配管のエロージョンやコロージョン(腐食)に よる配管劣化度を予測し、アイソメ図上に表示した例 である。Fig.5 に示すように、各配管部品は、3次元も デルやアイソメ図から、その設置方向や流体の流れ方 向、及び流体が滞留する部位などの情報を生成する。これとプロセス条件により、配管劣化に関する熟達 者の知見や事例を蓄積した知識ベースを用いて配管部 品の劣化モードと劣化度を予測する。(劣化度は相対的 なものである) 四吉商所判定一覧 設定 配管部品リスト|配管検査ポイント」 No.「シンボル「置方向流れ方向部位BUT[miratoothcarent. FerritereutentengerstaturePipe Ebow PipeVerticalUp Horizontal Horizontall4trancenstanesersare.tsuestereservertraterentwomerformerアルマーwondancornitentronten.comTeePipeHorizontal128128 112B28 12B 2B 28 2B 28 128TeePipe SliceValPipe PipeVertical Vertical Vertical HorizontalVent Vent VentTee28PipeHorizontal128Fig.4 配管部品の劣化評価例 Fig.4 は、配管を流れる流体やプロセス条件と、配管 部品の部位等の条件から、エロージョンやコロージョ ンの劣化度を予測し、点数表示したものである。 - Fig.5 に配管劣化予測システムの情報の流れを示し た。材質と流体の組み合わせから可能な劣化モードが 想定できる。配管劣化管理システムの概要Fig.5 配管劣化管理システムの概要対象となるアイソメ図や 3次元モデルなどに含まれ る配管のデータから、配管の構造情報を取り出す。構 造情報には配管部品の材質、型式、サイズ、などの仕 様、設置方向、流体の流れの方向、オリフィスやバル ブの下流にある、流体の滞留部であるなどの部位など である。プロセス条件と構造情報によって、劣化知識 ベースを利用することで配管の劣化度を予測すること ができる。これは、流体と材質から可能な劣化モードを推定す る。劣化知識ベースに蓄積された劣化モードに対応す る、配管のオリフィスの下流にある、流体の滞留部で あるなどの配管部位、及び配管部品毎に発生可能な配 管部品部位の有無を調べる。そして劣化知識ベースに 蓄積している配管部品の材質、及びプロセス条件と詳 細な劣化条件の関係から該当する配管部品の劣化度を 推定すると言うのが基本機能である。又、過流探傷や 超音波探傷器など様々なインライン・インスペクトシ ョン装置と組み合わせて、より劣化度の予測の精度を 上げることが可能である。4.2 設備管理の高度化による信頼性の向上配管はその典型であるが設備に関して安全を確立す ると同時にコストダウンを実現するには、経済的に信 頼性の高い設備劣化予測が実現できるかにかかってい329る。このために、重要な鍵と考えられるのは、以下の 2 つのように必要な情報が獲得できるか、又、予測が迅 速にできるように情報を統合することである。1) 企業間の情報の共有化 企業間の安全、事故、設備の損傷情報の共有化が必 要である。安全に関連する事故や設備の損傷などに関 する情報で本来、少ないことが望ましいために取得し 難い場合が多いが解決する必要がある。2)情報の統合化 情報の有効利用と企業内での情報を統合化する。そ して、迅速な対応するために、処理しやすい知識に変 換する。出来るだけ正確な予測を行うには、広い範囲 の様々な形態をした情報を統合し迅速に処理できる必 要がある。5.企業間の事故、設備の損傷情報の共有化安全に関連する事故や災害など安全に関わる情報は、 企業内だけの情報では不十分である。これは、一つの 企業内で十分な事例情報が事故や災害に関してあるほ どの、例えば量的に十分な統計が取れるほど発生する ことは社会的にも一般に許されない。従って、リスク・ ベースなど合理的な判断をするためには、一つの企業 内だけでは、情報が不足することになる。 1 決定的な事故、災害が発生した場合には、当該企業 は公的に報告する必要があり、又、公的な管轄官庁か らの調査がなされ報告されるので当事者以外の外部も、 その範囲で知ることが出来る。 ・ しかし、重大な事故、災害に関する情報だけでは、 それを防ぐための情報としては、不十分であることは 言うまでもない。ハインリッヒの法則ではないが、重 大事故が発生するのを抑制するには、それ以前の中小 規模のトラブル、更には出来れば発生を阻止したがヒ ヤリとした兆候についての情報までも共有することが 望ましい。設備の最適保全と言う観点から見れば、更に、事故 に至らなくとも腐食など設備の損傷についても、企業 間で情報の共有が図られることが望ましい。しかし、、これ等の情報は、競争上の企業機密と見做され公 開されることは今までは殆ど無い。しかし、今日の企業間の競争は、より大きなグロー バルな競争に打ち克つために適当なグループを作り、 その中で共同作業を行い、情報を共有化する部分と、独自に振舞う部分に分けて行動することが要求されて いる。安全とコストダウンを両立させるためには、個々の 企業の枠内の情報だけを集めるのでは労力、コスト、 時間的に不十分だと考えられる場合がある。従って、 * ・ 有志企業が連合してコンソシアムを造る ・ 学会や産業団体が主導する行政が主導する 等で企業間の情報共有を進める必要がある。| サービス提供スパイラルアップ負担を減す品質の向上| コスト削減| 信頼性向上「操業率向上「確実な予測共有知識 ベースex. 検査範囲の絞込| ex.定期 SD 期間の短縮 |ex.検査報告| ex.検査工数・期間の削減| 検査サービス | 情報収集・蓄積 -監査 | 設備劣化情報の共有 | 安全情報の共有地域住民 | 企業 | 産業団体 ] | 企業 ] 企業企業 | 研究所 | | 中立監視者Fig.6 事故・損傷情報の共有6.情報の統合化設備保全で安全とコストダウンを両立させるには、 企業が持っている、又は外部から入手しえる情報をフ ルに活用する。そして、人手、時間を余りかけないで 正確に配管など設備の劣化状態を予測できることがで きるかが問題である。このためには、非常に多量の形 態の異なった図面、表、標準、数式などに含まれる情 報、知識を統合して利用する必要がある。 1)設備関連図書類企業には、設備の保全履歴や検査記録、運転ログな ど膨大なデータ、記録類がある。これ等を詳細に解析 し、吟味を徹底するだけでも安全性を確立するのに非 常に有効である。しかし、実際に過去の記録を解析し ようとすると、設備のフローシートなど図面や機器リ スト、配管リストなどスペック類を見る必要がある。 2)社外情報 他社の事例も非常に重要な情報である。ハインリッヒ の法則で示されるように、大規模な災害の前には数十 の中規模の事故があり、更には事故になる前にヒヤリ とするような予兆が数十とあるからである。 そのため、管轄省庁から他社での事故事例が連絡さ330れると、それと類似の危険箇所が自社の設備にないか、 数十人、数百人の技術者を動員して、数日-数週間か けて、自社のプラントの配管計装図を精査する。しか し、実は人の目でフローシートを観るだけでは、全て の設備の欠陥が発見出来ない。 3)計算式、ルール、標準例えば、配管のエロージョンのように配管内の流体 の状態や流速が問題になる。簡単な配管内の流体の流 速計算ですら、プロセス・フローシートや物質熱収支 表、流速計算など設計計算や設計ルール、配管腐食に 対する専門知識と共に安全、保全管理に関する標準な どを考慮しなければならない。元々、設備は設計、運 転、保全、安全管理などに関する様々な標準類とその 運用によってプラントの信頼性が確保されているとい ってよい。標準化することで初めて関係者間での技術 や情報の共有が可能になる。又、自分の担当以外の外 部の知見を採り入れて、より設備の信頼性を高めるこ とが可能になる。 4)計算と推論機能、手続き処理しかも、フローシートを見ながら流速計算を全ての 配管について行うことは、言わばプラント設計をやり 直すようなものになり、膨大な人手と時間、費用を必 要とすることになる。| サービス |知世の理 公IGHT- DB、図面、表、ルール、数式、手続き、Fig.6 統合知識処理 5) 知識ベース従って、設備管理者の努力と意欲が前提であるが、 それを支援する体制、システムが必要になる。これは、 膨大な量の設備関連のフローシートやスペックシート などの図書類と、それの設計に関する計算式を始め 様々な設備関連の技術、標準類を熟知し、それを運用 するのは個人では要求される時間内に行うのは困難だ からである。このため、知識ベースにフローシートや設備仕様シ ートなど設備関連の図書類を知識形式に変換を行い、要求する検索などの多様なサービスを知識処理で実現 するようにした。このため、知識も表現できる汎用情 報モデル(Generic Information Model)を開発し、これを 用いて知識型言語と手続き型言語の両方が処理できる ハイブリッド推論エンジンを開発した。これらを用いて、統合知識処理環境(A2KI:Active Application Knowledge Integration)を構築し、図面や表の 知識化、類似災害防止のための危険設備の論理検索、 配管劣化管理システムの開発等に利用している[1]。5.結語 *1) グローバル化に対応した多品種少量生産の組み立 て産業では安全性の確立とコストダウンは相反するも のでなく、両立させている。 2) プロセス・プラントにおけるリスク発生は初期故 障によるものと設備寿命劣化によるリスクの和であり、 所謂、バスタブ曲線で示される。そのとき、平均リス クを最低にする最適操業期間が存在することを示した。 従って、設備劣化によるリスクを低減させると、操業 期間を延長した方が全体の平均リスクが小さくなる。 3)設備管理の信頼性を上げることで設備の信頼性を 向上させ、検査期間の短縮により、検査費用、定期停 止期間の短縮によりコストダウンできることを配管劣 化管理の例で示した。 4) プラント産業でも、設備管理の信頼性を上げるこ とによって、安全性を向上させると共に、操業期間の 延長と、定期停止期間の短縮により、コストダウンを 両立させることが可能である。 5) これを実現するに必要な設備劣化予測を行うには、 企業間で安全や設備損傷、劣化に関する情報の共有の 必要性がある。 6)又、企業内の図面、スペックや設計、保全、安全 標準等に含まれる情報やルールなど大量、広範囲で、 多様な形態の情報、知識を統合する必要がある。謝辞配管劣化管理システムについて技術指導頂く三菱化 学(株) 技術・生産センター マネージャー宮澤正純様お よび株テクノスタッフ 金子武雄会長に感謝致します。参考文献[1] 芝尾紘一, “図面の知識化と安全・保全保全学会第回予稿集、保全学、 2006、331“ “安全、安心とコスト・ダウンを両立させる保全“ “芝尾 紘一,Koichi SHIBAO
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