「ASCC 感受性の予兆診断手法に関する研究

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カテゴリ: 第3回
1. 緒言
従来の軽水炉においてこれまで経験されてきたトラ ブルの多くは構造材料の損傷に起因するものであり、 設計段階で予測できなかった損傷事例としては応力腐 食割れ(SCC)、照射誘起応力腐食割れ(IASCC)など が挙げられる。これらの事象は現行炉の高経年化、次 世代型原子炉における構造材料の高速中性子による過 酷な照射環境及び高温環境での使用により、さらに重 要な問題となることが予測される。そのため原子炉シ ステムの安全かつ安定的な運転のためには、これらの 材料損傷につながる材料劣化を予兆段階で検知し、損 傷発生を未然に回避するための技術開発が重要である。これまでに導入されている原子炉構造材料の劣化診 断技術としては、超音波探傷法、渦電流探傷法等が挙 げられるが、いずれもすでに構造材料に微細き裂など の損傷が発生した後に検知可能な診断法である。本研 究においては、炉内構造材料の損傷発生以前にIASCC 感受性の上昇を検知する、予兆診断手法の開発の可能 性について検討する。
2. 「ASCC 感受性と磁気特性の相関性評価 2.1 評価方法 1研究に用いた試料は、不純物元素濃度が極力少なく なるように製作した高純度モデルオーステナイト系ス テンレス合金(HP304) と、その合金に炭素を約0.1mass% 添加した合金(HP304/C)、及びモリブデンを約 2.5mass% 添加した合金 (HP316) である。これらの化学組成を Table1に示す[1, 2]。以上3 種類の組成の合金の1dpa、 5dpa 照射材について、高温水中低歪み速度引張り (SSRT)試験を行った試験片について評価を実施した。 試験片形状を Fig. 1 に示す。JRR-3 における照射条件 を Table2 に示す。高温水中 SSRT 試験はいずれの試験 片についても、歪み速度 1.7 x 107/s で行った。試験 温度及び溶存酸素濃度は 1dpa 照射材については 573K、 32ppm、5dpa 照射材については 561K、8ppm で行った。 SSRT 試験の後、破断面の走査型電子顕微鏡(SEM)観 察によって粒界破面率を求め、IASCC 感受性の評価を 行った[1, 2]。またこれら試験片のつかみ部について、 JIS 規格(JIS G 0580) に基づく電気化学的再活性化 (EPR)率測定法による腐食試験を行い、またフラックス ゲート(FG) センサーによる磁気測定を行った[3-5]。332IASCC 感受性を高めると考えられる[11-12]。Table 1 Chemical compositions (mass%) D lc | si Mn|p Is lar | Ni Mo|ti | ain HP304 fo.003|0.01/1.36 0.001 | 0.0014|18.17|12.27) - 10.01 0.160.0014 HP304/c/0.098|0.03|1.39 0.001 | 0.0020|18.30| 12.50| - Iko.01|o.11|0.0016 |HP316 0.004/0.02|1.40| <0.001|0.0010|17.21| 13.50|2.50.01 Jo.10|00020Fe: balance unroofyuv4ery1.41.40 -0.001 | .000| |. | 10.01.20 .V.10.000Fe: balanceBz (max) [uT]Table 2Irradiation conditionsI doa1Fluence,Temp. (K) | Fluence,5tpgE>1MeV(n/m2)E<0.68eV(n/m2)-511page201001dpa513+106.7 x 10243.0x1025406080 TASCC[%]5dpa543+203.5x1051.7 x 1025Fig.2 Relation between IASCC susceptibility andmaximum leakage magnetic flux densityR10Fig.3 に EPR 率と最大漏えい磁束密度の関係を示す。 それぞれの合金で照射による EPR 率の上昇に伴って漏 えい磁束密度が上昇した。しかしFig.2に示した IASCC|15.5GL2415. 5mGL24 ..55(unit:mm]Fig.1 Shape of specimens2.2 評価結果と考察高温水中 SSRT 試験の結果得られた料 した IASCC 感受性と、磁気測定の結果 2.2 評価結果と考察高温水中 SSRT 試験の結果得られた粒界破面率で表 した IASCC 感受性と、磁気測定の結果得られた最大涌 えい磁束密度との関係を Fig. 2 に示す。各合金で照射 量の上昇に伴い IASCC 感受性が上昇しており、同時に 最大漏えい磁束密度も上昇し、IASCC 感受性と最大漏 えい磁束密度の間には相関がみられた。また組成の異 なる3種類の合金のデータが、比較的近い範囲内で分 布していた。IASCC 感受性と最大漏えい磁束密度の上昇に共通し て寄与すると考えられる要因は複数考えられるが、本 研究ではその中で特に、粒界での照射誘起偏析と、粒 内での照射欠陥生成に着目した。粒界での照射誘起偏 析による Cr 欠乏層の生成は、耐食性劣化をもたらし IASCC 感受性を高めると考えられるが、それによるマ ルテンサイト相の生成が磁気的性質に寄与する可能性 もある [6-11]。また、粒内での照射欠陥の生成は、格 子歪などによる磁気的性質の変化をもたらす可能性が 考えられ、また同様に照射欠陥生成による照射硬化は 析による Cr 欠乏層の生成は、耐食性劣化をもたらし IASCC 感受性を高めると考えられるが、それによるマ ルテンサイト相の生成が磁気的性質に寄与する可能性 もある [6-11]。また、粒内での照射欠陥の生成は、格 子歪などによる磁気的性質の変化をもたらす可能性が 考えられ、また同様に照射欠陥生成による照射硬化は1dpa1dpa10 EPR[%]Fig.3 Relation between EPR ratio andmagnetic flux density- 333 -一P304HP304/C ~HP316さん1pa-511pas.1020406080100TASCC[%] * Fig.3 に EPR 率と最大漏えい磁束密度の関係を示す。 それぞれの合金で照射による EPR 率の上昇に伴って漏 えい磁束密度が上昇した。しかしFig.2に示した IASOCI 感受性と最大漏えい磁束密度の関係に比べて、合金ご との差異が大きくなった。これは測定された最大漏え い磁束密度が、粒界での Cr 欠乏層生成のみに依存する ものではないことを示していると考えられる。このた め、従来の熱鋭敏化材の SCC を磁気評価で捉える技術 開発に関する研究では、粒界偏析によるマルテンサイ ト相の生成に着目して研究を進めてきたが[6-7]、照射 材の場合は粒界偏析のみで IASCC 感受性と磁気変化の 関係を評価するのではなく、その他の照射欠陥等の要 因についても検討する必要があると考えられる。5dpa155-HP304 FHP304/C ーHP316| 5dpa1dpa5dpa1dpa1dpa10( 1520EPR[%] Fig.3 Relation between EPR ratio and maximum leakage- 次に Fig. 4 に 0.2%耐力と最大漏えい磁束密度の関係 を示す。それぞれの合金で照射による 0.2%耐力の上昇 に伴って漏えい磁束密度が上昇した。HP304 合金と HP316 合金のデータは比較的近い範囲内で分布したが、 HP304/C 合金のデータは離れた位置に分布していた。 これは炭素を添加した HP304/C 合金においては炭化物 の生成が硬化に寄与するが、磁気的性質には寄与しな いためと考えられる。しかし炭素添加量の少ない HP304 合金と HP316 合金のデータが比較的近い範囲内で分布 したことから、炭化物の生成が起こりにくい条件では、 照射硬化をもたらす照射欠陥の生成が磁気的性質にも 影響を及ぼしている可能性があると考えられる。HP304 HP304/C HP3165cpaBz (max) [uT]% 5 05 055dpa1dpaSdpa1dpa10_ 200400 600 800 10000.2% Proof Stress (MPa) Fig. 4 Relation between 0.2% proof stress and maximumleakage magnetic flux densityIASCCの発生は、粒界偏析等を含む照射欠陥生成、水 質などの環境条件、応力条件などの複合効果によって 起こると考えられるため、今後より多くの要因につい て詳細な研究を進めていく必要がある。そのため現在、 様々な条件で作成した材料劣化模擬材を用いてSSRT試 験、漏えい磁束密度測定の他、導電率測定、渦電流法 測定、交流磁化法測定、第一原理計算による磁気評価 などを実施中である。IASCC感受性と最大漏えい磁束密度の間の相関関係 について研究を進めることによって、IASCC感受性の予 兆診断手法を開発できる可能性がある。また、合金の 組成がある程度変化してもIASCC感受性と磁気データ が比較的近い範囲内で相関関係を示すとすれば、その 手法はより広い範囲に応用可能となるため、今後検討 を進めていく必要がある。3. 結言1) 高純度モデルオーステナイト系ステンレス合金について、FG センサーによる最大漏えい磁束密度と IASCC 感受性との間に相関関係が存在した。この関 係は、IASCC 感受性の非破壊診断及び IASCC 損傷の予兆診断に利用できる可能性がある。 2) 照射材における最大漏えい磁束密度と IASCC 感受 性の相関関係の要因については、粒界偏析以外に照 射欠陥等、様々な要因について検討する必要がある。参考文献[1] J. Nakano, Y. Miwa, T. Kohya, T. Tsukada, “Effects ofsilicon, carbon and molybdenum additions on IASCC of neutron irradiated austenitic stainless steels”, Journal ofNuclear Materials, 329-333 (2004) 643-647. [2] Y. Miwa, T. Tsukada, S. Jitsukawa, S. Kita, S. Hamada,Y. Matsui, M. Shindo, “Effects of minor elements on irradiation assisted stress corrosion cracking of model austenitic stainless steels”, Journal of Nuclear Materials,233-237 (1996) 1393-1396. 「31 上野文義、永江勇二、根本義之、三輪幸夫、高屋茂、星屋泰二、塚田隆、青砥紀身、石井敏満、近江正 男、清水道雄、阿部康弘、吉武庸光、中村保雄、 山下卓哉、「原研-サイクル機構融合研究報告書 照射環境における原子炉構造材料の劣化現象に関 する研究」JAERI-Reserch 2005-023, JNC TY94002005-013. [4] 吉武庸光、永江勇二、高屋茂、青砥紀身、星屋泰二、松元慎一郎、上野文義、根本義之、三輪幸夫、塚 田隆、重藤好克、「照射済みオーステナイト系ステンレス鋼の 磁化特性変化挙動-照射環境における原子炉構造 材料の劣化現象に関する研究(第 3 報) -」、日本原子力学会、2006年春の年会 C08. [S] 上野文義、根本義之、三輪幸夫、塚田隆、石井敏満、近江正男、永江勇二、高屋茂、青砥紀身、吉武庸 光、星屋泰二、「照射環境における原子炉構造材料 の劣化現象に関する研究-(第4報) 照射後オース テナイト系ステンレス鋼の腐食特性変化の検討-」日本原子力学会、2006年春の年会 C09. [6] 鎌田康寛、張楽福、荒克之、菊池弘昭、徳武洋介、高橋正氣、塚田隆、「ステンレス鋼粒界での照射誘 起偏析を模擬した合金のマルテンサイト変態と磁性」、日本金属学会誌、第68巻、第2号(2004)122-125. [7] S. Takaya, T. Suzuki, Y. Matsumoto, K. Demachi and M.Uesaka, “Estimation of stress corrosion cracking sensitivity of type 304 stainless steel by magnetic force microscope”, Journal of Nuclear Materials 327 (2004) 19-27.334[8] R.L. Johnes, G.M. Gordon and G.H. Neils,“Environmental degradation of materials in boiling water reactors”, Proc. 4th Int. Symp. Environmental Degradation of Materials in Nuclear Power Systems -Water Reactors (1990) 1-1. [9] S.M. Bruemmer, B.W. Arey and L.A. Charlot,“Influence of chromium depletion on intergranular stress corrosion cracking of 304 stainless. steel““,Corrosion vol.48, No.1, (1992) 42-49. [10] S.M. Bruemmer, B.W. Arey and L.A. Charlot, “Grainboundary chromium concentration effects on theIGSCC and IASCC of austenitic stainless steels”, Proc. 6th Int. Symp. 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