ECT センサロボットによる欠陥形状検査システムの開発
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カテゴリ: 第3回
1.緒言
近年,原子力プラントの高経年齢化に伴い, シュラ ウド等の構造物において応力腐食割れ(SCC)等の傷 が多数報告されており,その検査・補修が緊急の課題 となっている.現在,欠陥が検出されとめその欠陥が 構造強度に影響しない範囲であれば常時監視のもとで プラント運転の継続を許容する方法が議論されており, これを実現するための必須条件として従来の欠陥の検 出技術のみならず,高度な欠陥のサイジング技術が求 められている[1][2]. 一方で,原子力施設の検査の多くは検査者によって直 接的に行なわれており,人体への多大な影響が懸念さ れる.さらに検査者の安全を確保するために多大なコ ストと時間を費やし,場合によっては一度原子炉の運 転を停止しなければならず大きな損失となる. このような背景から,本研究では移動ロボットを用い て非破壊検査技術のひとつである ECT(Eddy Current Testing:渦電流探傷法)による欠陥の形状検査を行なう ことをその目的とする.移動検査ロボットを用いた検 査システムを構築するとともに,ECT の特性に基づい た傷探査アルゴリズムを提案する.ECT は非接触で高 速な検査手法で,表面及び表層の欠陥検出に優れる. この ECT の優位性に着目し,本研究では ECT ロボッ トによって欠陥の検出を自動的に行ない,欠陥幅を含 む欠陥の表面形状を自動的に再構成する.
Interface PCECT Sensor AnalizerAD boardOperator→ ECT sensor signal *********** Other signals11specueFig. 1 Inspection System with ECT Sensor Robot2.欠陥形状検査システム 2.1 検査システム構成本研究における検査システムの構成をFig.1に示す. ECT センサロボットは、左右の車輪に走行カウンタを もつ小型移動ロボット Khepera と, 一対の励磁・検出 コイルを持つ ECT センサから構成される. 検査者はイ ンターフェース PC から ECT センサロボットを操作す ることで検査を行なう. ECT センサの検出信号は探傷 装置本体で処理されたのち, A/D ボードを介してイン ターフェース PC に送信される.ロボットはインター フェース PC からコマンドを受信し、行動する.2.2欠陥形状検査アルゴリズム 本アルゴリズムでは、検査領域に対する全体検査と特 一定領域に対して精密検査を行なう2段階の検査方式を 採用している.全体検査では、 欠陥の検出を目的とし,
(a) Measuring_ (b) Extraction of (c) Connection Points Peak Points with B-SplineCurve Fig. 3 Reconstruction of Crack Shape検査領域全体を粗く検査する.ここで,あらゆる角度 に伸びる欠陥に対応するため,ECT センサロボットを Fig.2 のように縦・横方向に操作し,検査を行う. 全体 検査の結果から検査者が欠陥の存在が疑われる領域を 指定し,その領域に対してさらに精密検査を行なう. 精密検査では,欠陥形状の再構成を目的とし,全体検 査での操作より細かい操作を行い,欠陥の近傍におけ る検出信号を収集する.また,ロボットの自己位置誤 差の軽減のため,各検査の切り替わり時に原点に移動 し,原点を基準に自己位置を修正する. 1検査の終了後,本システムは精密検査で取得した ECT 検出信号から傷表面形状の推定を行なう.センサ が傷に対して垂直になるように走査した際のECT検出 信号は欠陥上で最も高い値をとることから,精密検査 の各計測点における検出信号 (Fig.3(a))から,各走査 ライン上で最も検出信号が最も高くなる計測点を抽出 し (Fig. 3(b)), その計測点を欠陥点とする.また,検 出信号の大きさは,欠陥の幅と密接に関係しているこ とから,抽出された計測点をB スプラインで補完する とともに,その計測点における B スプラインの幅を検 出信号の大きさから決定する (Fig. 3(c)). これにより, 欠陥形状の再構成を行う.3.実験1. 提案した欠陥形状検査システムを用いて, Fig. 4 に示 す実験環境において,実験を行った. 再構成する欠陥 は枝分かれのある欠陥であり,その傷幅は段階的に変 化する実験により,再構成された欠陥形状をFig.5に示す. この結果より,欠陥形状がほぼ正確に再構成でき,枝 分かれの部分も再構成できたことが分かる.欠陥の幅 においても,段階的に変化していることが再構成結果 から分かる.また,原点を基準とした自己位置補正に300mm...........................300mmInspection farget areaFig. 4 Experimental EnviromentFig. 5 Inspection Resultより,ECT センサロボットの自己位置認識誤差の影響 による欠陥位置の誤差は 10mm 程度以内に収まった.4.結言欠陥形状の検査を目的に,ECT センサロボットを用い た欠陥形状検査システムを構築し,欠陥形状の再構成 を行う欠陥形状検査アルゴリズムを提案した.本アル ゴリズムでは,全体検査と精密検査の2段階の検査と ともに,ECT 検出信号の特性に考慮した再構成を行っ た.枝分かれがあり傷幅の変化がある欠陥に対して形 犬を再構成する実験を行い,本システムの正当性を示 した.辞実験環境の構築に際して、ご協力いただいた日立製 作所電力・電機開発研究所の西水亮氏,小池正浩氏, 公井哲也氏に深甚の謝意を表する.参考文献1] 小島史男,河合信弘,“境界要素・有限要素併用法 を用いた渦電流探傷法による自然き裂の同定手法”, 日本計算数理工学会境界要素法論文集,Vol.3, 2004,pp.13-18 2] 小島史男,河合信弘,“電磁非破壊検査に関する進化計算を用いた自然き裂モデルによる定量評価に ついて”, 日本計算数理工学会計算数理工学論文集, Vol.5, 2005, pp.89-94“ “ECT センサロボットによる欠陥形状検査システムの開発“ “小林 太,Futoshi KOBAYASHI,小島 史男,Fumio KOJIMA,中塚 恆,Hisashi NAKATSUKA
近年,原子力プラントの高経年齢化に伴い, シュラ ウド等の構造物において応力腐食割れ(SCC)等の傷 が多数報告されており,その検査・補修が緊急の課題 となっている.現在,欠陥が検出されとめその欠陥が 構造強度に影響しない範囲であれば常時監視のもとで プラント運転の継続を許容する方法が議論されており, これを実現するための必須条件として従来の欠陥の検 出技術のみならず,高度な欠陥のサイジング技術が求 められている[1][2]. 一方で,原子力施設の検査の多くは検査者によって直 接的に行なわれており,人体への多大な影響が懸念さ れる.さらに検査者の安全を確保するために多大なコ ストと時間を費やし,場合によっては一度原子炉の運 転を停止しなければならず大きな損失となる. このような背景から,本研究では移動ロボットを用い て非破壊検査技術のひとつである ECT(Eddy Current Testing:渦電流探傷法)による欠陥の形状検査を行なう ことをその目的とする.移動検査ロボットを用いた検 査システムを構築するとともに,ECT の特性に基づい た傷探査アルゴリズムを提案する.ECT は非接触で高 速な検査手法で,表面及び表層の欠陥検出に優れる. この ECT の優位性に着目し,本研究では ECT ロボッ トによって欠陥の検出を自動的に行ない,欠陥幅を含 む欠陥の表面形状を自動的に再構成する.
Interface PCECT Sensor AnalizerAD boardOperator→ ECT sensor signal *********** Other signals11specueFig. 1 Inspection System with ECT Sensor Robot2.欠陥形状検査システム 2.1 検査システム構成本研究における検査システムの構成をFig.1に示す. ECT センサロボットは、左右の車輪に走行カウンタを もつ小型移動ロボット Khepera と, 一対の励磁・検出 コイルを持つ ECT センサから構成される. 検査者はイ ンターフェース PC から ECT センサロボットを操作す ることで検査を行なう. ECT センサの検出信号は探傷 装置本体で処理されたのち, A/D ボードを介してイン ターフェース PC に送信される.ロボットはインター フェース PC からコマンドを受信し、行動する.2.2欠陥形状検査アルゴリズム 本アルゴリズムでは、検査領域に対する全体検査と特 一定領域に対して精密検査を行なう2段階の検査方式を 採用している.全体検査では、 欠陥の検出を目的とし,
(a) Measuring_ (b) Extraction of (c) Connection Points Peak Points with B-SplineCurve Fig. 3 Reconstruction of Crack Shape検査領域全体を粗く検査する.ここで,あらゆる角度 に伸びる欠陥に対応するため,ECT センサロボットを Fig.2 のように縦・横方向に操作し,検査を行う. 全体 検査の結果から検査者が欠陥の存在が疑われる領域を 指定し,その領域に対してさらに精密検査を行なう. 精密検査では,欠陥形状の再構成を目的とし,全体検 査での操作より細かい操作を行い,欠陥の近傍におけ る検出信号を収集する.また,ロボットの自己位置誤 差の軽減のため,各検査の切り替わり時に原点に移動 し,原点を基準に自己位置を修正する. 1検査の終了後,本システムは精密検査で取得した ECT 検出信号から傷表面形状の推定を行なう.センサ が傷に対して垂直になるように走査した際のECT検出 信号は欠陥上で最も高い値をとることから,精密検査 の各計測点における検出信号 (Fig.3(a))から,各走査 ライン上で最も検出信号が最も高くなる計測点を抽出 し (Fig. 3(b)), その計測点を欠陥点とする.また,検 出信号の大きさは,欠陥の幅と密接に関係しているこ とから,抽出された計測点をB スプラインで補完する とともに,その計測点における B スプラインの幅を検 出信号の大きさから決定する (Fig. 3(c)). これにより, 欠陥形状の再構成を行う.3.実験1. 提案した欠陥形状検査システムを用いて, Fig. 4 に示 す実験環境において,実験を行った. 再構成する欠陥 は枝分かれのある欠陥であり,その傷幅は段階的に変 化する実験により,再構成された欠陥形状をFig.5に示す. この結果より,欠陥形状がほぼ正確に再構成でき,枝 分かれの部分も再構成できたことが分かる.欠陥の幅 においても,段階的に変化していることが再構成結果 から分かる.また,原点を基準とした自己位置補正に300mm...........................300mmInspection farget areaFig. 4 Experimental EnviromentFig. 5 Inspection Resultより,ECT センサロボットの自己位置認識誤差の影響 による欠陥位置の誤差は 10mm 程度以内に収まった.4.結言欠陥形状の検査を目的に,ECT センサロボットを用い た欠陥形状検査システムを構築し,欠陥形状の再構成 を行う欠陥形状検査アルゴリズムを提案した.本アル ゴリズムでは,全体検査と精密検査の2段階の検査と ともに,ECT 検出信号の特性に考慮した再構成を行っ た.枝分かれがあり傷幅の変化がある欠陥に対して形 犬を再構成する実験を行い,本システムの正当性を示 した.辞実験環境の構築に際して、ご協力いただいた日立製 作所電力・電機開発研究所の西水亮氏,小池正浩氏, 公井哲也氏に深甚の謝意を表する.参考文献1] 小島史男,河合信弘,“境界要素・有限要素併用法 を用いた渦電流探傷法による自然き裂の同定手法”, 日本計算数理工学会境界要素法論文集,Vol.3, 2004,pp.13-18 2] 小島史男,河合信弘,“電磁非破壊検査に関する進化計算を用いた自然き裂モデルによる定量評価に ついて”, 日本計算数理工学会計算数理工学論文集, Vol.5, 2005, pp.89-94“ “ECT センサロボットによる欠陥形状検査システムの開発“ “小林 太,Futoshi KOBAYASHI,小島 史男,Fumio KOJIMA,中塚 恆,Hisashi NAKATSUKA