非線形超音波による微細損傷の画像化

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カテゴリ: 第3回
1. 緒言
従来の広帯域パルス波を用いる線形超音波法(横波 端部エコー法, TOFD 法, フェイズドアレイ法)では, 超音波が密着したき裂面をかなり透過し反射波振幅 が低下するため,その検出が容易でない.このため, 原子力発電所ステンレス鋼配管の応力腐食割れ (SCC)の深さ測定において,寸法測定誤差を考慮し て, 当面測定値に 4.4mm の余裕を加えることとされて いる.ただし, PD(Performance Demonstration) 資格を 有する検査技術者が測定した場合には,この加算は不 要である.このため,上記加算を必要としない、新し い信頼性の高い超音波き裂寸法評価法が求められて いる.局部冷却あるいは加熱により発生させた曲げ応力 により,密着き裂を開口させ,従来線形超音波法によ りき裂寸法を測定する方法[1]が提案されている.
しかし,この方法では1箇所について数分程度の測定 時間を必要とする.その場で短時間で密着したき裂を 検出するため,き裂部に大振幅超音波を入射し,密着 き裂部で励起される高調波[2](入射周波数の整数倍の 周波数を持つ波),あるいは分調波[3] (入射周波数の 分数の周波数を持つ波)を使用する方法が試みられて いる。筆者らは,水浸集束探触子を用いて微細損傷部で励 起される2次高調波振幅を画像化[4]する方法を開発 し,また最近では,集束横波後方散乱波振幅を用いて 微細開口き裂面自体を画像化[5]する方法を開発した. 1本報告では,上記2方法を結合することにより,2 次及び高次高調波振幅を用いて,従来線形超音波法で 検出困難な密着き裂面を高い S/N 比で検出・サイジン グできることを示す.2. 基本概念1 疲労き裂面はき裂先端部の局部塑性変形によるスト ライエーション,また粒界応力腐食割れは結晶粒オー ダーの微細な凹凸を伴う(Fig. 1). この微細な凹凸面を 超音波が部分的に透過するので,平面探触子を用いる パルス反射法では,き裂面の直接画像化ができない.358Fig.1 Backscattering from crack surface.Surface reflectionreflectionRef.4IS DSVWaterInterfaceDS|SolidwaveScattered from defectFig. 2 Model of mode- converted wave propagation上記き裂面に降伏応力程度の圧縮応力が作用しても, 一旦形成された微細な隙間が完全に消失することはな い.従って,その微細凹凸部に集束超音波ビームの焦 点を合わせ,高い増幅によりそこからの散乱波を受信 し,それを画像化[5]することが考えられる.Fig. 1 に示すように,水浸法で点集束探触子を用い て斜角入射し,水/材料界面におけるモード変換横波 の焦点を個々の凹凸に合わせ,探触子を走査し受信振 幅をマッピングする. この方法を用いると, Fig. 2 左 側に示すように、エネルギーの大きい超音波ビームは 水/材料界面で反射され, 探触子に受信されないので, 表面多重反射波による不感帯がほとんどない。このた め、欠陥による微弱な散乱波を高増幅で検出すること が可能になる.密着き裂面の平均隙間間隔より大きい振幅の縦波 バースト波を入射すると, Fig. 3 に単純化して示す[4] ように,圧縮波によりき裂面が接触した後,圧縮応力 は部分的に透過する.しかし,希薄波(引張波)はき 裂面で反射される. この繰返しにより,入射正弦バー スト波波形にひずみが生じ,周波数域では高次高調波 が現れる。3.水浸高調波計測システム* 測定に用いた高調波測定・画像化システムのブロッ ク図[4]を Fig. 4 に示す.従来の超音波画像化装置との 違いは,材料中で 10nm 程度の大振幅バースト波を発 生させるパルサーと,受信波に含まれる2次及び高次 高調波を増幅し,それを抽出するバンドパス,あるい はハイパスフィルタを用いることである.Fig. 4 に示すような斜角入射においては,水の非線 形性に比べて,密着き裂面で励起される超音波の非線 形性がはるかに大きい.4. 測定例 4.1 横波後方散乱波による SU304 疲労き裂面の画像化 - Fig. 2 の測定配置により, SUS304 平板に導入した部 分疲労き裂面の画像化を行った.試験片はノッチ部を 除去した厚さ 15mm の板である. Fig. 5(a)に示すよう にき裂面側から,中心周波数 5MHz, 焦点距離 51mm の点集束探触子を用いて, モード変換横波を入射し後 一方散乱波を受信し,その振幅を画像化した. Fig. 5(0) が線形短パルス波画像,(c)が入射波 3.5MHz の2taun wa dA Nogptw 1117LONU Var16の発次いオオカヤ(1) No gap(0) A總Fig. 3 Clapping model of very narrow gaps comparable to incident wave amplitude.線Imaging unitSignal processing Waveform recordingHigh power amplifierScannerFilter Amplifier部をうmScanner controllerFocused transducerSampleSigna generator後Fig. 4 Ultrasonic imaging system.- 359 - - 359 -Fig.1 Backscattering from crack surface.Surface reflectionLSSVWaterInterfaceInterfaceSolidwaveScattered from defectRef.SDWaterInterfaceDOSolidwaveScattered from defectFig. 2 Model of mode- converted wave propagation and received signal.Plane waveD2AAAdiAFig. 4 Ultrasonic imaging system.次高調波画像である. バンドパスフィルタを用いて基 本波(入射波と同一周波数成分)振幅を 40dB 低下さ せ,2次高調波を抽出した. Fig. S(d)より 7MHz 成分 が大きいことが分かる.線形画像の方がやや大きいき 裂深さを示す.4.2 線形及び非線形超音波による 7075 アルミニウム合金疲労き裂面の画像化 厚さ10mm のアルミニウム合金 7075 平板に貫通疲 労き裂を導入した試験片について, Fig. 6(a)に示す配 置で,周波数 30MHz, 焦点距離 25mm の点集束探触子 を用いて側面から縦波斜角入射により,高次高調波画 像化をおこなった.入射周波数は 17.5MHz であ15]ルート200210-Width1 , 000ストレットはFrt 255 a 6169) M““txt FFTON Peut. Frechu MH Oweimule 7.3RESSESSIeresseFF19Depthかな()(a)(d) Fig. 5 Fatigue cracked surface image of SUS 304. (a): Measurement scheme, (b) Linear image,(c): Second harmonic image, (d): Received waveform and spectrum.Fatigue cracksto180いwwwwは い . . ..ism. .イイです12日Leics.ioFatigue crackままでいかないwin““ Yさ んはいいで..カッター・ ちぶせさい!あれかないルー(a)(b) Fig. 6 Second harmonic image of fatigue crack surface of 7075 aluminum alloy. (a): Measurement scheme, (b): Second harmonic image, (c): Waveforms and spectra.り, 25MHz のハイパスフィルタを用いて,入射波成分 を40dB低下させた, Fig. 6(c)に示すように,V溝より 下方の疲労き裂部で2次(35MHz)及び3次高調波(52. 5MHz)が励起されている. - 使用したハイパスフィルタでは,V溝コーナー部の 振幅の大きな基本波を十分低減できなかったため,V 溝に沿った輝度の高い部分が表示されている。ちなみ に,測定点4はき裂から離れた位置であり,高調波は 受信されず,基本波に対応する周波数成分が見られる だけである.従って,斜角入射における水の非線形性 は密着き裂部により励起される高調波より小さいの で,実用上は無視できる. - 現実のき裂サイジングにおいては,Fig.7(a)に示360す測定配置でのき裂深さ測定が要求される.そこで,参考文献 周波数 10MHz, 焦点距離 75mm の点集束探触子を用い、 て,入射角 20 度(横波屈折角 45 度)の斜角入射によ [1] M. Saka, H. Tohmyoh, H. Okabe and S. R. Ahmed, り,線形パルス波及び2次高調波を用いて,同一領域 Proc. FENDT 2006, pp. 33-39. を走査して得た Cスキャン像と B スキャン像, ならび [2] O. Buck, W. L. Morris and J. M. Richardson, に受信波形とそのスペクトルを Fig. 7(b)と(c)に示す。 Appl. Phys. Lett., 33(1978), pp. 371-373. - Fig. 7(6)に比べて, (C)の2次高調波 C スキャン像で [3] I. Yu. Solodov, 1994 IEEE Ultrasonic symposium,は,き裂先端部が高輝度で表示される.また対応する pp. 1279-1283. Bスキャン像でも,(b)の線形画像ではコントラストが[4] 川嶋紘一郎他 6名,非破壊検査,54(2005), pp. 弱くノイズを含むが,(c)の2次高調波画像のコントラ 509-514. ストが大きく,き裂面を確実に識別できる. (C)より求 [5] 川嶋紘一郎,山田龍三,松田正文,日本機械学会 めたき裂先端までの距離は 20.5mm, ノッチ底までの 2005 年度年次大会講演論文集, 1, pp.677-678. 距離は 25.6mm であり、目視による 20mm 及び 25mm [6] 川嶋紘一郎, 小林大輔,村瀬守正,日本非破壊検 とほぼ一致する. Fig. 7(c)に示すスペクトルにおいて, 査協会平成 17 年度秋季大会講演概要集, 2005, pp. 2次高調波とともに3次高調波が検出されることも。 135-138. ある。1→ Saning 5.結言Fatiga crackDHAIトケーキがtronTrar水浸集束探触子を用いて密着したき裂部を検出・画 像化する方法を示した. 線形横波後方散乱波を用いて も疲労き裂面をほぼ画像化できる.しかし,大振幅バ ースト波を入射し,2次あるいは高次高調 波振幅を画像化することにより,線形画 像よりはるかに高い S/N 比で密着き裂面 を画像化できる。 * ハイパスフィルタを用いるとき,2次及び3次高調波が同程 一度の振幅で検出される理由につ いては,今後検討する必要があ る.arence200mだななんだからx」 at | sit]コード部-6Fig. 7 Linear and second harmonic image of fatigue crack surface of 7075 aluminum alloy. (a): Measurement scheme, (b) Linear Cand B-scan images, (c): Harmonic C- and B-scan images and spectra.361“ “非線形超音波による微細損傷の画像化“ “川嶋 紘一郎,Koichiro KAWASHIMA,村瀬 守正,Morimasa MURASE,伊藤 智啓,Toshihiro ITO
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