運用・保守段階での機能向上を考慮したプラント保全モデルの基礎的検討
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カテゴリ: 第3回
1. 緒言
現在,各種プラントや工場設備におけるメンテナン スが非常に重要視されてきている. 戦後の高度経済成 長期から日本の経済発展と歩を合わせて建設された発 電プラントや化学プラント等の産業施設・設備及び橋 梁,港湾設備, トンネル等の社会資本構造物は,既に 老朽化しているものも多く,近い将来での廃棄物の大 量発生が予想されている.2000 年時点で蓄積されてい る構造物のストックは金額にして約 2000 兆円に達し ており,これら構造物がやがて設計寿命を迎えると, 現在 8000 万トンの建設廃棄物が 2035 年には4億トン まで増加されるとの試算もある[1].石油化学プラントを例にとると,プラントは大型構 造物, タンク・反応塔,ボイラ,熱交換器類,配管・ バルブ類,ポンプ・モータ・設備機械類,電気・計装 類などから構成され,初期の設備投資額は数十億から 数千億,それら設備の寿命期間は一般に, 計画・設計・ 調達・建設に 1~3年,商業稼動は 30~40 年である. ここで運用時のオペレーション&メンテナンス費は, 初期設備投資額の数倍と言う膨大な額がかかり,メン テナンス技術の優劣がその後の延命化に大きく影響を 与えると言われている. 連絡先:妻屋彰,〒565-0871 大阪府吹田市山田丘 2-1, 大 阪大学大学院工学研究科マテリアル生産科学専攻,電 話: 06-6879-7556, e-mail:tsumaya@mapse.eng.osaka-u.ac.jp原子力発電プラントにおいては、他のプラント設備 と同様の特徴を持っているが,安全性に対する社会的 要求が極めて高いため,建設及びメンテナンスに関す る状況はより厳しいものとなっている. 現行の軽水炉 型原子力発電プラントでは,基本的に設備は疲労・腐 食などの経年変化によって所用の機能が全うできるよ うに余裕を持たせて設計し,機器,設備の点検によっ て,劣化の進行が想定内であることを確認しつつ「適 切に」補修・取り替えをすることとしている. このよ うに、設計時の寿命を「維持」することを目標に,プ ラントの運転がなされている状況がある.これに対し 現在,既存のプラントは建設時には 30 年を寿命とし て設計されているが,より長期に渡って運転を継続す るために,追加的保全活動を行うことによって 60 年 程度の利用を,科学的合理性を持った実効性の高い長 期保全対策を推進することによって達成しようという 活動が行われている.このような背景のもと,モニタ リング技術や情報管理・提供技術を用いた信頼性や安 全性を高度に維持する運転・保守の支援システムの開 発等が行われている[2]. _ しかしここで,その後の技術の進歩・進展により, より高機能・高性能な材料・部品などへの取り替えが 行われても,そのままでは設計時に設定した寿命を短 絡的に延長することは困難である.これは,実際の原 子力プラントは経年変化や保全活動により,設計時の 理想状態とは差異が生じるにも関わらず,それが大き
な意味での設計情報に反映されないため,高機能・高 性能な材料・部品を現状の原子力プラントに組み込ん だときの正確な全体評価ができないためである. この ことは,保全活動を設計時の状態をあくまで「維持」 する活動であると捉えてきたことによる. 1 建設期間が長いという原子力プラントの特徴から, その期間中の技術革新や設計変更を考慮し,設計変更 手順の厳格なルール化や設計情報の徹底的な図書化の 必要性,また,安全確保のための設計図書間や申請図 書と設計図書間の整合性確認の必要性などが重要とさ れているが[3], これらをさらに運用・保全時にまで拡 張し,設計時の状態を「維持」するだけでなく,技術 革新やそれによる変更を可能とする枠組みが必要であ ると考える.すなわち, プラントの設計段階から建設, 運用,保守,さらには廃炉まで,高機能・材料部品の 投入や経年変化等によるプラント要素・構成・環境の 変化をも含めた情報管理を一貫して行うとともに,変 化に即応する寿命の評価及びメンテナンス計画の立案 を行う枠組みである. これは、一貫管理による情報整 合性の確保に伴う安全性の向上を目指すだけでなく, 原子力プラントを機能向上により長寿命化するという 発想に基づいた新しい情報管理・情報活用の方法を提 案することになる.化に即応する寿命の評価及びメンテナンス計画の立案 これらの問題への対処がメンテナンス活動であり, を行う枠組みである. これは、一貫管理による情報整主として(1)に対しては設備改良,(2)(3) に対 合性の確保に伴う安全性の向上を目指すだけでなく, しては設備改善,(4) に対しては設備維持の活動とな 原子力プラントを機能向上により長寿命化するという る.このようにメンテナンスの種類は大別してもいく 発想に基づいた新しい情報管理・情報活用の方法を提 つかあり,プラントの大規模であるという特徴も考慮 案することになる.すると,合理的なメンテナンスを実現するためには, 設備各部毎に適切なメンテナンスを設定・実施する必要がある. 2. ライフサイクル・メンテナンスそこでここでは, Fig. 1に示す生産設備のライフサイ 2.1 ライフサイクル・メンテナンスの考え方 クル・メンテナンスのフレームワーク [4]に基づいて議 ・メンテナンスの目的は,一般に安全の確保、ライフ 論する. メンテナンスでは、状態把握のための検査・ サイクルコストの低減,消費資源・環境負荷の低減と診断をどのタイミングと方法で行うか,処置の実施の いった条件を満たしながら,設備の寿命期間を通して基準は時間か状態か,処置方法としては何をとるかな 設備の能力を最大限に引き出すことによって,ユーザどを予め決定して行っているが,この図ではこの基本 のニーズに応えることにある[1]. このため,少なくと、 的なメンテナンス計画を中心として3つの管理ループ も設備の寿命期間を通して有する機能レベルがユーザ が示されている.最も内側の 1st loop は、使用段階に DevelopmentOperationMaintenance-Motosen MaintenancestrategyMaintenancet ask planningplanningon InspecionImonitoring diagnosisBreamDesignl Improvementand Production modificationDesign dataand ProductionrecordMaintenancestraty planning deterioration Failure Hailureeffects evaluationK's, evaluaton Effectiveness evaluation ofmaintenance *** technologiesEvaluation of maintenanceresultspouco Revision of maintenanceTreatment (if necessary)Corrective maintenance3rd loop2nd loop1st loop productmaintenancemaintenance improvementstrategy planning task execution Framework for life cycle maintenance management of manufacturing assets.Fig. 1Fig. 1-37の求める機能レベルを満足していることが必要である. このような条件が満たされなくなる状況は大別すると 以下の4種類のいずれかとなる. (1) 使用環境・ニーズの変化 使用環境や要求機能が変化してニーズが設備の実 現可能な機能を超えてしまう.(2) 設備に作り込まれた欠陥 - 設備不良,製造/施工不良,あるいは材料/部品/ 機器の不良等により,設備に不具合が発生する (3) 強制劣化 運転条件,使用条件が不適切であるために,設備の 劣化が加速され,不具合が発生する. (4) 自然劣化 使用に伴い不可避的に生じる劣化により不具合が発 生する。おけるメンテナンス作業実施のためのループである. チックに機能向上・開発を含めたメンテナンスを行う ここでは,予め設定した基本的なメンテナンス計画・手法の開発が大幅な長寿命化への鍵となる. 方式に基づいてメンテナンス作業計画が立案され実施 2.2 ISO18435 される. 作業の結果はその都度評価され,想定範囲で先にも述べた通り, メンテナンスの重要性は原子力 あれば,そのまま次のメンテナンス作業計画に移る. 等のプラントのみならず,工場内の生産設備・機器・ 評価の結果,選択されたメンテナンス方式に不都合がソフトウェアにおいても,近年ますます重要視されて 認められたり,予想していなかった問題が現れたりし いる.そこで, プラントの設計段階から建設,運用, た場合には 2nd loop に移り,当初設定した基本的なメ 保守,廃炉までの寿命期間全体に渡る情報管理手法を ンテナンス計画・方式を得られた結果データに基づい 検討するにあたり,ISO で進められている生産設備・ て修正しなければならないさらに, メンテナンス計機器・ソフトウェアにおけるメンテナンスのモデル化 画作成時に改良保全が適当と判断された場合には, 3rd を取り上げ,概要と機能向上型のメンテナンスを考慮 loop に従い開発段階に戻って改良を行う必要がある。 する場合の問題点を述べる.このように基本的なメンテナンス計画を軸とした管 ISO (International Organization for Standardization) D 理を行うことにより,設備の使用条件の変化等にも柔TC184 (Industrial Automation Systems and Integration) は 軟に対応しながら,設備状態の維持・改善というメン 産業オートメーション分野の標準化を目的に 1982 年 テナンス目標が達成できる. このような設備の改良・ に設立され,標準化をすすめている.ここでは,現在, 改善も含めた広義のメンテナンスは日本の製造業にお産業オートメーション分野を対象とした診断,能力評 いては経験的ではあるが普通に行われているものであ 価,メンテナンスにおけるアプリケーションの統合の るが,大型のプラントはその大規模性から経験的かつための標準である ISO18435 (Industrial automation 局所的な改良・改善を行うことは極めて難しく特に原 systems and integration - Diagnostics, Capability 子力プラントでは安全性に対する社会的要求が高いこ assessment, and maintenance applications interation) の策 ともあって,これまで現状維持を目的とした 2nd loop 定が進められている. 著者らの一人がこの策定に携わ までをメンテナンス対象として考慮してきた.しかし, っているので,まず,このモデルを簡単に紹介する. 原子力プラント等の大型プラントに対し,その機能向 Fig.2 は ISO18435 で提案されているメンテナンス活動 上も含めたメンテナンスを行うことにより、大幅な長モデルである Activity Domain Integration Diagram 寿命化を実現出来ると見込まれる.従って, システマ (ADID) である. この図は,企業における工場やプラン4.1. Intra-enterprise activities: Business Planning, || 4.2- Intra-enterprise activities: Supply Chain Sales Orders & Production, and MaintenancePlanning, Logistics StrategyLevel43.2- Capability Assessment3.1 - Operations Planning & Scheduling3.3- Maintenance Planning & SchedulingDecision SupportLevel 32.1- SupervisoryControl & Human-MachineInterface2.2- Asset Prognostics and Health! Quality, Safety, & EnvironmentakManagement2.3- Maintenance Work Order Management& TrackingLevel 2P11.1- Control & VO, operational Data Historian& Panel Displays1.2-Asset Utilization, Condition Monitoring & Quality Monitoring1.3- Asset ConfigurationCalibration & Repair / ReplaceLevel 10.1- Non-capital Resource Registry Service(Identification and Location)0.2-Capital Asset Resource Registry Service(Identification and Location)Level0Fig. 2Activity Domain Integration Diagram.38ト等の運用・保守活動をシステムの大きさ(Enterprise, Area, Work Center, Work Unit, Asset の各レベル)と活動 の種類(Operation, Assessment, Maintenance)によって 分けられた活動ブロックに分類し,活動ブロックの機 能とブロック間を流れる情報をモデル化したものであ る. 現在,このモデルを基本に標準の全体像を定義す る ISO18435-1 (Part1:Overview and general requirements) のワーキングドラフトの作成が進められている[5].. 原 子力をはじめとする大型プラントにおいても, メンテ ナンス活動の種類は基本的に生産設備と同様であると 考えて差し支えないので, システムの大きさのレベル をEnterprise, Site, Area, System, Asset とすることによっ て同様のモデルが使用できる. _ しかし,ISO18435 では,その Scope で,取り扱うメ ンテナンスの範囲として主に Fig.1 における 1st loopを 対象とすると規定しており,狭義のメンテナンスに焦 点を絞っている.そのため, 2nd loop の一部や 3rd loop に相当する機能向上を含む広義のメンテナンスはそも そも対象とされていない.筆者等は、ISO18435 で定義 されている ADID を用いていくつかの USECASE の作 成・検討を行っているが,例えば設計レベルの変更を 含むような「法律の改正に伴うメンテナンス」の場合, 法律改正の決定をエンタープライズレベルで受けてか ら,法律変更によって具体的にどのように各レベルで メンテナンスを行う必要があるのか,現場と情報をや り取りしながら計画決定・検証するフェーズを記述す ることが困難である.また,部材レベルでの改良案が 出てきた場合,その効果や影響範囲をどこまで考える 必要があるか,また実際にどのようになるのかを事前 に検証するフェーズも ADID には含まれていない.このように考えると ISO18435 で標準化が進められ ているモデルでは、主に新規・追加の計画や検証につ いて対応するには不充分であると言える.3. 新しいメンテナンス活動のモデル化3.1 拡張 ADID の提案先に述べたように現在策定中の ISO18435 の枠組み では、今後大型プラントにおいても必要になると考え られる機能向上を目的としたメンテナンス活動を明確 にモデル記述することは難しい.典型的なメンテナン ス活動のケースについて適用を試みた結果,ADID で 不足している機能は、メンテナンス活動における最初の段階によく現れる「機能向上のための新たなメンテ ナンスプランの作成・評価」とメンテナンス後の「作 成したプランにより目的の機能向上が果たせているか どうかの評価」であることがわかった.すなわち,計 画・評価系が不足していることが明確になった. - これらの解決方法の一つとしては,ADID モデル内 の各活動ブロックの機能をそれぞれ追加・拡張する方 法が考えられるが,この場合,既に多くの機能を担っ ている 4.0, 3.2, 2.2 の活動ブロックに対して更なる大 きな機能追加が必要だと予想され,得策ではないと判 断し,ここでは,ADID に対して新たに計画・検証を 行う活動ブロックを追加することによってこれらを解 決することにする.提案する拡張 ADIDをFig.3 に示す. ここで,新たに追加した Validation に関する活動ブロッ クは,それぞれが含まれる Site, Area, System の各レ ベルの枠内で,新たなメンテナンスプランの作成機能 とそれに対するシミュレーション評価機能を持つLv.4 Enterprise4Assessment Lv.3 Site / 3.1/3.2 5.Validation15.4Lv.2 Areal | 2.1 | 2.2 ||| 2.4 Lv.1 System V1.1 1 1.2 X11.3 (111.4Operation Maintenance Lv.0 Asset0Fig. 3 Extended Activity Domain Integration Diagram.新たに作成するメンテナンスプランとは,ISO18435 の提案するメンテナンスフレームワークのうち 1st loop 及び 2nd loop の場合に存在する,予め用意するメ ンテナンスマニュアルに相当するものであり,「目的を 達成するために,どのアセットに対してどのようなメ ンテナンス作業内容を行うか」を意味する. このメン テナンス作業内容には、何をどの手順で行うかが含ま れる。 ・ また,作成したメンテナンスプランに対するシミュ レーション評価には,以下のような内容が含まれる.メンテナンスプラン実行による効果測定 他のレベルへの影響度の測定 可能であるかの判断39コスト面での対投資効果の判断において System レベルで作成する.この際1.4⇒2.4 や 2.4⇒3.4 等フィードバックも行う. レーションはバーチャルファクトリ上のシミ (2) 作成されたプランは再度各レベルの0.1~0.3 ョン(各活動ブロックに対応するようなシミにメンテナンス後の理想状態としてシミュレ ョン用アプリケーション)と,実際に実機をーション結果を伝達する. アルファクトリトのシミュレーションのボ古シミュレーションはバーチャルファクトリ上のシミ ュレーション(各活動ブロックに対応するようなシミ ュレーション用アプリケーション)と,実際に実機を 用いたリアルファクトリ上のシミュレーションの両方 を指す。今回提案したモデルは,計画・検証系の活動ブロッ クを追加したものであるが,理想的には, Fig.4 のよう に ADID と同じ構造のものがリアルファクトリとバー チャルファクトリの双方で構成される2層構造を考え ている.現状では検証・評価を行うにはまだ,シミュ レーション技術や信頼性の面で完全にバーチャルファ3.2- Virtual Plant33ス Shrink to 3.4 23 -Shink to 2.4/ ―Shrink to 1.4-- / 3.1 // 21 21 221 .1....// 1.3. Result of simulation (plan, validation, ..)X11.3Real world data4/3. 1W13.2 / 3.3 1 / 2. 1 2 .223 ア Q1 .1 / 1.2 / 13 ス ーReal PlantFig. 4 Real-virtual 2 layered ADID. クトリ上でのシミュレーションで実現することは難し いため,この部分を計画・検証系としている. 3.2 拡張 ADID を用いたメンテナンス活動モ デル提案したモデルを用いて,これまで ISO18435 の ADID では明確に記述出来なかった USECASE につい ても記述が可能となる. メンテナンス活動の流れは大 きく分けると数種類にまとめることができるが,本報 では ISO18435 の枠組みでは記述できない例として先 に挙げた法律改正による設計変更も含むメンテナンス に対応するメンテナンス活動の流れを記述する. この 場合は,トップダウンで行われる機能向上を含むメン テナンスと見ることができ,そのときのメンテナンス の流れは Fig.5 で示される.ここで各フェーズは以下の 内容である.「メンテナンスプラン作成フェーズ」 (1) 4.0 からの指示に始まり, 3.4 が 3.1~3.3 の実データを基に Site レベルのプラン作成とシミ ュレーションを行う. 次に 2.4 において 2.1~ 2.3 を基に Area レベルで作成する.同様に 1.4「メン (3)テナンス実行フェーズ」作成されたプラン(具体的な作業内容)を基に, 通常のISO18435で提案されている ADIDの枠! 内で,運転スケジュール,アセット能力,メ ンテナンススケジュールを参照しながら,い つ,誰が,どのようにメンテナンスを行うか」 について決定し、実行する.「メンテナンス後評価フェーズ」 (4) メンテナンス後出力を 1.2 において(2) で伝達した理想状態と比較する.理想状態達成 が出来ていない場合は再度プラン作成フェー ズ(1)へ戻る。ここで,具体例として燃料被覆管材料の耐スエリン グ性改善を取り上げ上記の活動モデルに適用したとこ ろ,以下の通り記述することができた.-Making Maintenance Plan-....、 Reflect real world data Send result of simulationMaintenance Execution13.3(31|32|3311-134 |21|22|20103.342.31.3Evaluation after Maintenance1.12.3Fig. 5Maintenance activity model.Fig. 540テナンスプラン作成フェーズ」 4.0 から, スエリングによる端栓溶接部の応力 低減法として開先形状の変更が求められた. 3.4 において、ペレットから放出される核分裂 生成ガスによる内圧の再定義による修正を提 案. 2.4 で 2.3 からの過去の他の実績を参考に適性 を確認. 1.4 で模擬入力を使って動作の確認を行った. 3.1~3.3 においてバーチャルプラントを使っ た試験運転日時の調整を行った. 2.4, 1.4 において起動運転時の評価プランを作 成した. 1.3 においてメンテナンス実行と起動運転を 行った。 1.2 で健全性向上を確認した.テナンス実行フェーズ」 作成されたメンテナンスプランが 3.3 に送ら れ, 3.1, 3.2 と相互にやり取りをし,実際のメ ンテナンス計画を練った結果,次回の定期点 検時の装荷を行うことになった. 2.3 において より詳細の作業分担を行い, 1.3 においてメン テナンスが実行された.このフェーズは ISO18435 のモデルで記述できるものと同様で ある.「メンテナンス後評価フェーズ」 (10) 1.2 において,実際のプロセスを通して当初 の目的である健全性の向上が実現できていることを確認した。ここでは、紙面の関係上,USECASE については一 例のみを示すにとどまっているが,大きく分類したと きの他の分類に属するケースについても,提案したモ デルによってメンテナンス活動の流れを記述できるこ とを確認している.たたる4.結言* 原子力プラントの長寿命化のため、プラントの寿命期間全体に渡り機能向上可能なものとして取り扱える 情報管理・活用システム開発の第一歩として、メンテ ナンス活動をモデル化・体系化することを目的とした. 本報での成果は以下の通りである.メンテナンス活動のモデルの調査を行い,不充分 な点を明らかにした. 現在の原子力プラントでの メンテナンス活動は設計時の状態を維持すること を目的としているが,プラントの物理的・機能的 長寿命化のためには,機能向上をも含むメンテナ ンス活動を考慮する必要があることを述べた.ま た,生産設備のメンテナンス活動モデル化の動き を調査し,現在策定中の ISO18435 のモデルでは, このようなメンテナンス活動を扱うには不充分で あることを示した. 新しいメンテナンス活動モデルを提案した. ISO18435 のモデルで不足していた検証プロセスに 関する新しい活動ブロックを定義し,それらを追 加した拡張 ADID を提案した. このモデルを用い て, ISO18435 のモデルでは記述困難であるメンテ ナンスケースについて記述を試み,記述可能であ ることを示した.参考文献[1] “平成16年度 産業・社会資本構造物におけるメンテナンス情報の活用に関する調査研究報告書”,、財団法人エンジニアリング振興協会, 2005. [2] 若林二郎, 大賀孝治, 永井哲郎,今瀬正博,園田幸夫“原子力発電プラント・セーフティサポー トシステムの開発”, 日本原子力学会誌, Vol.43,No.4, 2001、 pp.331-341. [3] 「原子力システム設計」研究専門委員会, “原子カシステム開発の将来像”, 日本原子力学会誌,Vol.43,No.3, 2001, pp.194-205. [4] 高田祥三,“ライフサイクルメンテナンス”, 精密工学会誌, Vol.65,No.3, 1999, pp.349-355. [5] ““ISO 18435-1 Draft-03 Industrial automation systemsand integration - Diagnostics, capability assessment, and maintenance applications integration - Part1: Overview and general requirements““, 2005.41“ “運用・保守段階での機能向上を考慮したプラント保全モデルの基礎的検討“ “妻屋 彰,Akira TSUMAYA,井上 和也,Kazuya INOUE,望月 正人,Masahito MOCHIZUKI,若松 栄史,Hidefumi WAKAMATSU,荒井 栄司,Eiji ARAI
現在,各種プラントや工場設備におけるメンテナン スが非常に重要視されてきている. 戦後の高度経済成 長期から日本の経済発展と歩を合わせて建設された発 電プラントや化学プラント等の産業施設・設備及び橋 梁,港湾設備, トンネル等の社会資本構造物は,既に 老朽化しているものも多く,近い将来での廃棄物の大 量発生が予想されている.2000 年時点で蓄積されてい る構造物のストックは金額にして約 2000 兆円に達し ており,これら構造物がやがて設計寿命を迎えると, 現在 8000 万トンの建設廃棄物が 2035 年には4億トン まで増加されるとの試算もある[1].石油化学プラントを例にとると,プラントは大型構 造物, タンク・反応塔,ボイラ,熱交換器類,配管・ バルブ類,ポンプ・モータ・設備機械類,電気・計装 類などから構成され,初期の設備投資額は数十億から 数千億,それら設備の寿命期間は一般に, 計画・設計・ 調達・建設に 1~3年,商業稼動は 30~40 年である. ここで運用時のオペレーション&メンテナンス費は, 初期設備投資額の数倍と言う膨大な額がかかり,メン テナンス技術の優劣がその後の延命化に大きく影響を 与えると言われている. 連絡先:妻屋彰,〒565-0871 大阪府吹田市山田丘 2-1, 大 阪大学大学院工学研究科マテリアル生産科学専攻,電 話: 06-6879-7556, e-mail:tsumaya@mapse.eng.osaka-u.ac.jp原子力発電プラントにおいては、他のプラント設備 と同様の特徴を持っているが,安全性に対する社会的 要求が極めて高いため,建設及びメンテナンスに関す る状況はより厳しいものとなっている. 現行の軽水炉 型原子力発電プラントでは,基本的に設備は疲労・腐 食などの経年変化によって所用の機能が全うできるよ うに余裕を持たせて設計し,機器,設備の点検によっ て,劣化の進行が想定内であることを確認しつつ「適 切に」補修・取り替えをすることとしている. このよ うに、設計時の寿命を「維持」することを目標に,プ ラントの運転がなされている状況がある.これに対し 現在,既存のプラントは建設時には 30 年を寿命とし て設計されているが,より長期に渡って運転を継続す るために,追加的保全活動を行うことによって 60 年 程度の利用を,科学的合理性を持った実効性の高い長 期保全対策を推進することによって達成しようという 活動が行われている.このような背景のもと,モニタ リング技術や情報管理・提供技術を用いた信頼性や安 全性を高度に維持する運転・保守の支援システムの開 発等が行われている[2]. _ しかしここで,その後の技術の進歩・進展により, より高機能・高性能な材料・部品などへの取り替えが 行われても,そのままでは設計時に設定した寿命を短 絡的に延長することは困難である.これは,実際の原 子力プラントは経年変化や保全活動により,設計時の 理想状態とは差異が生じるにも関わらず,それが大き
な意味での設計情報に反映されないため,高機能・高 性能な材料・部品を現状の原子力プラントに組み込ん だときの正確な全体評価ができないためである. この ことは,保全活動を設計時の状態をあくまで「維持」 する活動であると捉えてきたことによる. 1 建設期間が長いという原子力プラントの特徴から, その期間中の技術革新や設計変更を考慮し,設計変更 手順の厳格なルール化や設計情報の徹底的な図書化の 必要性,また,安全確保のための設計図書間や申請図 書と設計図書間の整合性確認の必要性などが重要とさ れているが[3], これらをさらに運用・保全時にまで拡 張し,設計時の状態を「維持」するだけでなく,技術 革新やそれによる変更を可能とする枠組みが必要であ ると考える.すなわち, プラントの設計段階から建設, 運用,保守,さらには廃炉まで,高機能・材料部品の 投入や経年変化等によるプラント要素・構成・環境の 変化をも含めた情報管理を一貫して行うとともに,変 化に即応する寿命の評価及びメンテナンス計画の立案 を行う枠組みである. これは、一貫管理による情報整 合性の確保に伴う安全性の向上を目指すだけでなく, 原子力プラントを機能向上により長寿命化するという 発想に基づいた新しい情報管理・情報活用の方法を提 案することになる.化に即応する寿命の評価及びメンテナンス計画の立案 これらの問題への対処がメンテナンス活動であり, を行う枠組みである. これは、一貫管理による情報整主として(1)に対しては設備改良,(2)(3) に対 合性の確保に伴う安全性の向上を目指すだけでなく, しては設備改善,(4) に対しては設備維持の活動とな 原子力プラントを機能向上により長寿命化するという る.このようにメンテナンスの種類は大別してもいく 発想に基づいた新しい情報管理・情報活用の方法を提 つかあり,プラントの大規模であるという特徴も考慮 案することになる.すると,合理的なメンテナンスを実現するためには, 設備各部毎に適切なメンテナンスを設定・実施する必要がある. 2. ライフサイクル・メンテナンスそこでここでは, Fig. 1に示す生産設備のライフサイ 2.1 ライフサイクル・メンテナンスの考え方 クル・メンテナンスのフレームワーク [4]に基づいて議 ・メンテナンスの目的は,一般に安全の確保、ライフ 論する. メンテナンスでは、状態把握のための検査・ サイクルコストの低減,消費資源・環境負荷の低減と診断をどのタイミングと方法で行うか,処置の実施の いった条件を満たしながら,設備の寿命期間を通して基準は時間か状態か,処置方法としては何をとるかな 設備の能力を最大限に引き出すことによって,ユーザどを予め決定して行っているが,この図ではこの基本 のニーズに応えることにある[1]. このため,少なくと、 的なメンテナンス計画を中心として3つの管理ループ も設備の寿命期間を通して有する機能レベルがユーザ が示されている.最も内側の 1st loop は、使用段階に DevelopmentOperationMaintenance-Motosen MaintenancestrategyMaintenancet ask planningplanningon InspecionImonitoring diagnosisBreamDesignl Improvementand Production modificationDesign dataand ProductionrecordMaintenancestraty planning deterioration Failure Hailureeffects evaluationK's, evaluaton Effectiveness evaluation ofmaintenance *** technologiesEvaluation of maintenanceresultspouco Revision of maintenanceTreatment (if necessary)Corrective maintenance3rd loop2nd loop1st loop productmaintenancemaintenance improvementstrategy planning task execution Framework for life cycle maintenance management of manufacturing assets.Fig. 1Fig. 1-37の求める機能レベルを満足していることが必要である. このような条件が満たされなくなる状況は大別すると 以下の4種類のいずれかとなる. (1) 使用環境・ニーズの変化 使用環境や要求機能が変化してニーズが設備の実 現可能な機能を超えてしまう.(2) 設備に作り込まれた欠陥 - 設備不良,製造/施工不良,あるいは材料/部品/ 機器の不良等により,設備に不具合が発生する (3) 強制劣化 運転条件,使用条件が不適切であるために,設備の 劣化が加速され,不具合が発生する. (4) 自然劣化 使用に伴い不可避的に生じる劣化により不具合が発 生する。おけるメンテナンス作業実施のためのループである. チックに機能向上・開発を含めたメンテナンスを行う ここでは,予め設定した基本的なメンテナンス計画・手法の開発が大幅な長寿命化への鍵となる. 方式に基づいてメンテナンス作業計画が立案され実施 2.2 ISO18435 される. 作業の結果はその都度評価され,想定範囲で先にも述べた通り, メンテナンスの重要性は原子力 あれば,そのまま次のメンテナンス作業計画に移る. 等のプラントのみならず,工場内の生産設備・機器・ 評価の結果,選択されたメンテナンス方式に不都合がソフトウェアにおいても,近年ますます重要視されて 認められたり,予想していなかった問題が現れたりし いる.そこで, プラントの設計段階から建設,運用, た場合には 2nd loop に移り,当初設定した基本的なメ 保守,廃炉までの寿命期間全体に渡る情報管理手法を ンテナンス計画・方式を得られた結果データに基づい 検討するにあたり,ISO で進められている生産設備・ て修正しなければならないさらに, メンテナンス計機器・ソフトウェアにおけるメンテナンスのモデル化 画作成時に改良保全が適当と判断された場合には, 3rd を取り上げ,概要と機能向上型のメンテナンスを考慮 loop に従い開発段階に戻って改良を行う必要がある。 する場合の問題点を述べる.このように基本的なメンテナンス計画を軸とした管 ISO (International Organization for Standardization) D 理を行うことにより,設備の使用条件の変化等にも柔TC184 (Industrial Automation Systems and Integration) は 軟に対応しながら,設備状態の維持・改善というメン 産業オートメーション分野の標準化を目的に 1982 年 テナンス目標が達成できる. このような設備の改良・ に設立され,標準化をすすめている.ここでは,現在, 改善も含めた広義のメンテナンスは日本の製造業にお産業オートメーション分野を対象とした診断,能力評 いては経験的ではあるが普通に行われているものであ 価,メンテナンスにおけるアプリケーションの統合の るが,大型のプラントはその大規模性から経験的かつための標準である ISO18435 (Industrial automation 局所的な改良・改善を行うことは極めて難しく特に原 systems and integration - Diagnostics, Capability 子力プラントでは安全性に対する社会的要求が高いこ assessment, and maintenance applications interation) の策 ともあって,これまで現状維持を目的とした 2nd loop 定が進められている. 著者らの一人がこの策定に携わ までをメンテナンス対象として考慮してきた.しかし, っているので,まず,このモデルを簡単に紹介する. 原子力プラント等の大型プラントに対し,その機能向 Fig.2 は ISO18435 で提案されているメンテナンス活動 上も含めたメンテナンスを行うことにより、大幅な長モデルである Activity Domain Integration Diagram 寿命化を実現出来ると見込まれる.従って, システマ (ADID) である. この図は,企業における工場やプラン4.1. Intra-enterprise activities: Business Planning, || 4.2- Intra-enterprise activities: Supply Chain Sales Orders & Production, and MaintenancePlanning, Logistics StrategyLevel43.2- Capability Assessment3.1 - Operations Planning & Scheduling3.3- Maintenance Planning & SchedulingDecision SupportLevel 32.1- SupervisoryControl & Human-MachineInterface2.2- Asset Prognostics and Health! Quality, Safety, & EnvironmentakManagement2.3- Maintenance Work Order Management& TrackingLevel 2P11.1- Control & VO, operational Data Historian& Panel Displays1.2-Asset Utilization, Condition Monitoring & Quality Monitoring1.3- Asset ConfigurationCalibration & Repair / ReplaceLevel 10.1- Non-capital Resource Registry Service(Identification and Location)0.2-Capital Asset Resource Registry Service(Identification and Location)Level0Fig. 2Activity Domain Integration Diagram.38ト等の運用・保守活動をシステムの大きさ(Enterprise, Area, Work Center, Work Unit, Asset の各レベル)と活動 の種類(Operation, Assessment, Maintenance)によって 分けられた活動ブロックに分類し,活動ブロックの機 能とブロック間を流れる情報をモデル化したものであ る. 現在,このモデルを基本に標準の全体像を定義す る ISO18435-1 (Part1:Overview and general requirements) のワーキングドラフトの作成が進められている[5].. 原 子力をはじめとする大型プラントにおいても, メンテ ナンス活動の種類は基本的に生産設備と同様であると 考えて差し支えないので, システムの大きさのレベル をEnterprise, Site, Area, System, Asset とすることによっ て同様のモデルが使用できる. _ しかし,ISO18435 では,その Scope で,取り扱うメ ンテナンスの範囲として主に Fig.1 における 1st loopを 対象とすると規定しており,狭義のメンテナンスに焦 点を絞っている.そのため, 2nd loop の一部や 3rd loop に相当する機能向上を含む広義のメンテナンスはそも そも対象とされていない.筆者等は、ISO18435 で定義 されている ADID を用いていくつかの USECASE の作 成・検討を行っているが,例えば設計レベルの変更を 含むような「法律の改正に伴うメンテナンス」の場合, 法律改正の決定をエンタープライズレベルで受けてか ら,法律変更によって具体的にどのように各レベルで メンテナンスを行う必要があるのか,現場と情報をや り取りしながら計画決定・検証するフェーズを記述す ることが困難である.また,部材レベルでの改良案が 出てきた場合,その効果や影響範囲をどこまで考える 必要があるか,また実際にどのようになるのかを事前 に検証するフェーズも ADID には含まれていない.このように考えると ISO18435 で標準化が進められ ているモデルでは、主に新規・追加の計画や検証につ いて対応するには不充分であると言える.3. 新しいメンテナンス活動のモデル化3.1 拡張 ADID の提案先に述べたように現在策定中の ISO18435 の枠組み では、今後大型プラントにおいても必要になると考え られる機能向上を目的としたメンテナンス活動を明確 にモデル記述することは難しい.典型的なメンテナン ス活動のケースについて適用を試みた結果,ADID で 不足している機能は、メンテナンス活動における最初の段階によく現れる「機能向上のための新たなメンテ ナンスプランの作成・評価」とメンテナンス後の「作 成したプランにより目的の機能向上が果たせているか どうかの評価」であることがわかった.すなわち,計 画・評価系が不足していることが明確になった. - これらの解決方法の一つとしては,ADID モデル内 の各活動ブロックの機能をそれぞれ追加・拡張する方 法が考えられるが,この場合,既に多くの機能を担っ ている 4.0, 3.2, 2.2 の活動ブロックに対して更なる大 きな機能追加が必要だと予想され,得策ではないと判 断し,ここでは,ADID に対して新たに計画・検証を 行う活動ブロックを追加することによってこれらを解 決することにする.提案する拡張 ADIDをFig.3 に示す. ここで,新たに追加した Validation に関する活動ブロッ クは,それぞれが含まれる Site, Area, System の各レ ベルの枠内で,新たなメンテナンスプランの作成機能 とそれに対するシミュレーション評価機能を持つLv.4 Enterprise4Assessment Lv.3 Site / 3.1/3.2 5.Validation15.4Lv.2 Areal | 2.1 | 2.2 ||| 2.4 Lv.1 System V1.1 1 1.2 X11.3 (111.4Operation Maintenance Lv.0 Asset0Fig. 3 Extended Activity Domain Integration Diagram.新たに作成するメンテナンスプランとは,ISO18435 の提案するメンテナンスフレームワークのうち 1st loop 及び 2nd loop の場合に存在する,予め用意するメ ンテナンスマニュアルに相当するものであり,「目的を 達成するために,どのアセットに対してどのようなメ ンテナンス作業内容を行うか」を意味する. このメン テナンス作業内容には、何をどの手順で行うかが含ま れる。 ・ また,作成したメンテナンスプランに対するシミュ レーション評価には,以下のような内容が含まれる.メンテナンスプラン実行による効果測定 他のレベルへの影響度の測定 可能であるかの判断39コスト面での対投資効果の判断において System レベルで作成する.この際1.4⇒2.4 や 2.4⇒3.4 等フィードバックも行う. レーションはバーチャルファクトリ上のシミ (2) 作成されたプランは再度各レベルの0.1~0.3 ョン(各活動ブロックに対応するようなシミにメンテナンス後の理想状態としてシミュレ ョン用アプリケーション)と,実際に実機をーション結果を伝達する. アルファクトリトのシミュレーションのボ古シミュレーションはバーチャルファクトリ上のシミ ュレーション(各活動ブロックに対応するようなシミ ュレーション用アプリケーション)と,実際に実機を 用いたリアルファクトリ上のシミュレーションの両方 を指す。今回提案したモデルは,計画・検証系の活動ブロッ クを追加したものであるが,理想的には, Fig.4 のよう に ADID と同じ構造のものがリアルファクトリとバー チャルファクトリの双方で構成される2層構造を考え ている.現状では検証・評価を行うにはまだ,シミュ レーション技術や信頼性の面で完全にバーチャルファ3.2- Virtual Plant33ス Shrink to 3.4 23 -Shink to 2.4/ ―Shrink to 1.4-- / 3.1 // 21 21 221 .1....// 1.3. Result of simulation (plan, validation, ..)X11.3Real world data4/3. 1W13.2 / 3.3 1 / 2. 1 2 .223 ア Q1 .1 / 1.2 / 13 ス ーReal PlantFig. 4 Real-virtual 2 layered ADID. クトリ上でのシミュレーションで実現することは難し いため,この部分を計画・検証系としている. 3.2 拡張 ADID を用いたメンテナンス活動モ デル提案したモデルを用いて,これまで ISO18435 の ADID では明確に記述出来なかった USECASE につい ても記述が可能となる. メンテナンス活動の流れは大 きく分けると数種類にまとめることができるが,本報 では ISO18435 の枠組みでは記述できない例として先 に挙げた法律改正による設計変更も含むメンテナンス に対応するメンテナンス活動の流れを記述する. この 場合は,トップダウンで行われる機能向上を含むメン テナンスと見ることができ,そのときのメンテナンス の流れは Fig.5 で示される.ここで各フェーズは以下の 内容である.「メンテナンスプラン作成フェーズ」 (1) 4.0 からの指示に始まり, 3.4 が 3.1~3.3 の実データを基に Site レベルのプラン作成とシミ ュレーションを行う. 次に 2.4 において 2.1~ 2.3 を基に Area レベルで作成する.同様に 1.4「メン (3)テナンス実行フェーズ」作成されたプラン(具体的な作業内容)を基に, 通常のISO18435で提案されている ADIDの枠! 内で,運転スケジュール,アセット能力,メ ンテナンススケジュールを参照しながら,い つ,誰が,どのようにメンテナンスを行うか」 について決定し、実行する.「メンテナンス後評価フェーズ」 (4) メンテナンス後出力を 1.2 において(2) で伝達した理想状態と比較する.理想状態達成 が出来ていない場合は再度プラン作成フェー ズ(1)へ戻る。ここで,具体例として燃料被覆管材料の耐スエリン グ性改善を取り上げ上記の活動モデルに適用したとこ ろ,以下の通り記述することができた.-Making Maintenance Plan-....、 Reflect real world data Send result of simulationMaintenance Execution13.3(31|32|3311-134 |21|22|20103.342.31.3Evaluation after Maintenance1.12.3Fig. 5Maintenance activity model.Fig. 540テナンスプラン作成フェーズ」 4.0 から, スエリングによる端栓溶接部の応力 低減法として開先形状の変更が求められた. 3.4 において、ペレットから放出される核分裂 生成ガスによる内圧の再定義による修正を提 案. 2.4 で 2.3 からの過去の他の実績を参考に適性 を確認. 1.4 で模擬入力を使って動作の確認を行った. 3.1~3.3 においてバーチャルプラントを使っ た試験運転日時の調整を行った. 2.4, 1.4 において起動運転時の評価プランを作 成した. 1.3 においてメンテナンス実行と起動運転を 行った。 1.2 で健全性向上を確認した.テナンス実行フェーズ」 作成されたメンテナンスプランが 3.3 に送ら れ, 3.1, 3.2 と相互にやり取りをし,実際のメ ンテナンス計画を練った結果,次回の定期点 検時の装荷を行うことになった. 2.3 において より詳細の作業分担を行い, 1.3 においてメン テナンスが実行された.このフェーズは ISO18435 のモデルで記述できるものと同様で ある.「メンテナンス後評価フェーズ」 (10) 1.2 において,実際のプロセスを通して当初 の目的である健全性の向上が実現できていることを確認した。ここでは、紙面の関係上,USECASE については一 例のみを示すにとどまっているが,大きく分類したと きの他の分類に属するケースについても,提案したモ デルによってメンテナンス活動の流れを記述できるこ とを確認している.たたる4.結言* 原子力プラントの長寿命化のため、プラントの寿命期間全体に渡り機能向上可能なものとして取り扱える 情報管理・活用システム開発の第一歩として、メンテ ナンス活動をモデル化・体系化することを目的とした. 本報での成果は以下の通りである.メンテナンス活動のモデルの調査を行い,不充分 な点を明らかにした. 現在の原子力プラントでの メンテナンス活動は設計時の状態を維持すること を目的としているが,プラントの物理的・機能的 長寿命化のためには,機能向上をも含むメンテナ ンス活動を考慮する必要があることを述べた.ま た,生産設備のメンテナンス活動モデル化の動き を調査し,現在策定中の ISO18435 のモデルでは, このようなメンテナンス活動を扱うには不充分で あることを示した. 新しいメンテナンス活動モデルを提案した. ISO18435 のモデルで不足していた検証プロセスに 関する新しい活動ブロックを定義し,それらを追 加した拡張 ADID を提案した. このモデルを用い て, ISO18435 のモデルでは記述困難であるメンテ ナンスケースについて記述を試み,記述可能であ ることを示した.参考文献[1] “平成16年度 産業・社会資本構造物におけるメンテナンス情報の活用に関する調査研究報告書”,、財団法人エンジニアリング振興協会, 2005. [2] 若林二郎, 大賀孝治, 永井哲郎,今瀬正博,園田幸夫“原子力発電プラント・セーフティサポー トシステムの開発”, 日本原子力学会誌, Vol.43,No.4, 2001、 pp.331-341. [3] 「原子力システム設計」研究専門委員会, “原子カシステム開発の将来像”, 日本原子力学会誌,Vol.43,No.3, 2001, pp.194-205. [4] 高田祥三,“ライフサイクルメンテナンス”, 精密工学会誌, Vol.65,No.3, 1999, pp.349-355. [5] ““ISO 18435-1 Draft-03 Industrial automation systemsand integration - Diagnostics, capability assessment, and maintenance applications integration - Part1: Overview and general requirements““, 2005.41“ “運用・保守段階での機能向上を考慮したプラント保全モデルの基礎的検討“ “妻屋 彰,Akira TSUMAYA,井上 和也,Kazuya INOUE,望月 正人,Masahito MOCHIZUKI,若松 栄史,Hidefumi WAKAMATSU,荒井 栄司,Eiji ARAI