ガイド波を用いた配管中の損傷画像化技術
公開日:
カテゴリ: 第3回
1. 緒言
ガイド波は,配管などの長尺材料中を長手方向に伝 播する超音波モードであり,20kHz~100kHz 程度の低 周波帯域を用いれば、数十mの長距離を伝播すること から,配管の大領域高速検査に利用できるとして期待 されている.しかしガイド波は,いくつもの音速の異 なるモードが同時に発生し,それぞれは強い分散性を 持っていることが多いため、損傷のない配管中を伝播 しただけの波形でも非常に複雑な波形を示し,解析が 困難であることがほとんどである.そのため、できる だけ分散性の小さい軸対称のモードを選んで,励起・ 受信することで,受信波形の複雑さを回避してきた.しかしながら,軸対称モードを用いて損傷などの反射 源からのエコーを受信した場合には,損傷の長手方向 位置は決定できるものの、円周方向の情報は全く得ら れない。つまり,その反射波が配管のある部分に局在 する損傷からのものなのか,それとも軸対称な反射源 である溶接線からのものなのか,円周方向のどの位置 に損傷があるのか,その大きさはどのくらいかなどは 分からない.そこで,非軸対称モードを積極的に用い た損傷評価技術が検討されている[1]-[3]. その中で著者 らは,ガイド波の反射波を円周方向多点で受信し,そ の多数の波形をモードごとに分解した後,分散曲線デ
ータにしたがって処理することで,損傷に相当する反 射源の画像が得られるという技術を確立した[3]. さら に実際に使用する数十m規模の探傷の際に起こる画像 劣化について,詳細に検討し,低次モードのみを利用 することで,劣化を低減できることを示した[4].本報では,この損傷画像化について紹介し,損傷画 像化および画像劣化低減機能を搭載した配管検査装置 について述べる.2. ガイド波を用いた損傷画像化および劣化 低減技術について配管中のガイド波には、円周方向に振動分布の異な る多数のモードが存在し,それぞれは異なる音速で伝 播する.損傷からの反射波には,これら多数のモード が混在しており,それぞれのモードは強い分散性を持 つため、非常に複雑は波形が測定される.そこで,ま ず,測定された波形をモードごとに分離することを考 える.各モードは円周方向の振動分布が異なるので, 円周方向に小さなセンサーを 8個程度ならべ,受信さ れたそれぞれの波形に,振動分布に対応する重みを与 えて積算することにより,各モードが分離した波形が 得られる. 分離された各モードの音速は分散曲線とし て解析的に求められるため,その理論音速データを基 に,各モードの時間波形を各時刻の空間波形に変換す ることができる.各モードの円周方向振動分布を考慮 して,各時刻,各モードの配管表面上における空間波 形を重ね合わせることによって,各時刻における損傷362からの反射波の空間波形(スナップショット)が得ら れることになる。入射波がちょうど損傷に到達する時刻において,損 傷からの反射波が大きくなることなら,この時刻のス ナップショットを求めることにより,損傷画像が得ら れる。一般には,入射波が損傷に到達した時刻は分からな いので,入射波として分散性が無く横波音速 crで伝播 する TO,1)モードを用いることで,入射波位置が zech xt(1) と表され,この位置の波形を追跡することで, 1 枚の 損傷画像が得られる.このとき,理論分散曲線と実際の配管を伝播するガ イド波音速の間に誤差があるため、長距離伝播させる と,画像の劣化として影響が現れる.そこで,誤差の 大きい高次モードを利用せず,低次モードのみを使っ て損傷画像化を行うことで,画像の劣化を低減するこ とができる.その反面、円周方向に複雑な分布を持っ 高次モードを無視するため、円周方向の分解能が低下 するという欠点がある.3.損傷画像化のためのガイド波検査装置図1は損傷画像化を行うためのガイド波検査装置の 概略である. 30kHz~100kHz 程度のバースト波やチャ ープ波の数 A の波形をスイッチングボックスを通して センサーコイルへ流すことで,磁わい型センサーが駆 動する. このとき、円周方向に並べられたすべてのセ ンサーを駆動することで,T(0,1)モードが励起される. センサーコイルは2列に並べ、片方のレーンに適切な 時間遅れを与えることで,配管の片方向へのみエネル ギーを伝播させることができる. 磁わい型センサーは、 あらかじめ磁化されたニッケル薄板を配管に接着して おき,その上からセンサーコイルをかざすことにより, ガイド波を送受信できる仕組みである.一度, ニッケ ル薄板を接着させれば、あとは非接触でのセンシング になるため、非常に感度よくガイド波を検出できると ともに,複数のセンサーを用いる際の,センサー間の 感度誤差を小さくすることができる.363|トモード解析・画像化Imag1807aray scale 画像表示モードFull modes120人工欠陥70浜館to表示距職Angle (degree]ト-80画像データ計算 OK区間分割数 1,500-130-180これにCalculation StatusDistance [m]表示角度、 -180 to +180配管端面フロット分散性補正 距離表示20表示モードT01)15停止105!~~~~~~~しいwwwwwwwwwww-5-10分散曲線データディレクト」C:\Documents and SettingsTakahiro HAYASHI\My gDocuments\ |ULTRASONICS20064 PIPE_EXP\Imaging9labview\““15周波数軸補正Readling Status在時間6.1.12Tracing ReflectionあなたFig.2 Screen shot of a software for analyzing guided waves containing defect imaging analysis.コイルで受信 1 つずつ波損傷からの反射波は,同じセンサーコイルで受信 され,スイッチングボックスを通して, 1 つずつ波 形が自動的に収録される.収録された波形はコンピューター内のソフトウェ アにより処理され,モードごとの波形,空間波形お よび損傷画像を得ることができるようになっている.図2はその解析ソフトウェアの一部である.得ら れた波形より図2上のような損傷画像が数十秒で得 られる高速アルゴリズムを用いている.図2の上は、 文献[3]で示した 1.2m先の 2 個の貫通穴からの反射 皮を用いたものである.ちょうど 1.2m 先に2個の強 度分布の大きい領域があり, 1.7m先に帯上の非常に 大きな強度分布が見られる. 1.2m の位置は貫通穴を, 1.7m の位置は配管の端面を表している.損傷画像は,遠距離においては,高次モードを 含めるほど、劣化が激しくなる傾向にあり,低次 モードのみの画像も得られるようになっている.4.結言ガイド波を用いた配管検査に,著者らが開発した損 島画像化技術を適用するための,検査装置について ポべた. 現場で試験を行える程度の装置化ができたので,今後, 現場の長距離検査や溶接や防錆・防食テープ, 保温材の影響などを詳しく調べ,改良を加えていく ン要がある。射辞本研究は,独立行政法人 新エネルギー・産業技術 総合開発機構 平成15年度産業技術研究助成事 業により実施した.参考文献1] D. N. Alleyne and P. Cawley, “Long rangepropagation of Lamb waves in chemical plant pipework.” Materials Evaluation, 55, 1997,pp.504-508 2] J. Li and J L. Rose, “Excitation and propagation ofnon-axisymmetric guided waves in a hollow cylinder.““ J. Acoust. Soc. Am., Vol.109, No.2, 2001,pp.457-468 3] T. Hayashi and M. Murase, “Defect imaging withguided waves in a pipe”, J. Acoust. Soc. Am.,Vol.117, No.4, 2005, pp.2134-2140 4] 長尾将弘,林高弘,村瀬守正,“ガイド波を用いた配管探傷画像化システムの改良” 非破壊検査 協会平成 17 年度秋季大会講演概要集64“ “ガイド波を用いた配管中の損傷画像化技術“ “林 高弘,Takahiro HAYASHI,村瀬 守正,Morimasa MURASE,長尾 将弘,Masahiro NAGAO
ガイド波は,配管などの長尺材料中を長手方向に伝 播する超音波モードであり,20kHz~100kHz 程度の低 周波帯域を用いれば、数十mの長距離を伝播すること から,配管の大領域高速検査に利用できるとして期待 されている.しかしガイド波は,いくつもの音速の異 なるモードが同時に発生し,それぞれは強い分散性を 持っていることが多いため、損傷のない配管中を伝播 しただけの波形でも非常に複雑な波形を示し,解析が 困難であることがほとんどである.そのため、できる だけ分散性の小さい軸対称のモードを選んで,励起・ 受信することで,受信波形の複雑さを回避してきた.しかしながら,軸対称モードを用いて損傷などの反射 源からのエコーを受信した場合には,損傷の長手方向 位置は決定できるものの、円周方向の情報は全く得ら れない。つまり,その反射波が配管のある部分に局在 する損傷からのものなのか,それとも軸対称な反射源 である溶接線からのものなのか,円周方向のどの位置 に損傷があるのか,その大きさはどのくらいかなどは 分からない.そこで,非軸対称モードを積極的に用い た損傷評価技術が検討されている[1]-[3]. その中で著者 らは,ガイド波の反射波を円周方向多点で受信し,そ の多数の波形をモードごとに分解した後,分散曲線デ
ータにしたがって処理することで,損傷に相当する反 射源の画像が得られるという技術を確立した[3]. さら に実際に使用する数十m規模の探傷の際に起こる画像 劣化について,詳細に検討し,低次モードのみを利用 することで,劣化を低減できることを示した[4].本報では,この損傷画像化について紹介し,損傷画 像化および画像劣化低減機能を搭載した配管検査装置 について述べる.2. ガイド波を用いた損傷画像化および劣化 低減技術について配管中のガイド波には、円周方向に振動分布の異な る多数のモードが存在し,それぞれは異なる音速で伝 播する.損傷からの反射波には,これら多数のモード が混在しており,それぞれのモードは強い分散性を持 つため、非常に複雑は波形が測定される.そこで,ま ず,測定された波形をモードごとに分離することを考 える.各モードは円周方向の振動分布が異なるので, 円周方向に小さなセンサーを 8個程度ならべ,受信さ れたそれぞれの波形に,振動分布に対応する重みを与 えて積算することにより,各モードが分離した波形が 得られる. 分離された各モードの音速は分散曲線とし て解析的に求められるため,その理論音速データを基 に,各モードの時間波形を各時刻の空間波形に変換す ることができる.各モードの円周方向振動分布を考慮 して,各時刻,各モードの配管表面上における空間波 形を重ね合わせることによって,各時刻における損傷362からの反射波の空間波形(スナップショット)が得ら れることになる。入射波がちょうど損傷に到達する時刻において,損 傷からの反射波が大きくなることなら,この時刻のス ナップショットを求めることにより,損傷画像が得ら れる。一般には,入射波が損傷に到達した時刻は分からな いので,入射波として分散性が無く横波音速 crで伝播 する TO,1)モードを用いることで,入射波位置が zech xt(1) と表され,この位置の波形を追跡することで, 1 枚の 損傷画像が得られる.このとき,理論分散曲線と実際の配管を伝播するガ イド波音速の間に誤差があるため、長距離伝播させる と,画像の劣化として影響が現れる.そこで,誤差の 大きい高次モードを利用せず,低次モードのみを使っ て損傷画像化を行うことで,画像の劣化を低減するこ とができる.その反面、円周方向に複雑な分布を持っ 高次モードを無視するため、円周方向の分解能が低下 するという欠点がある.3.損傷画像化のためのガイド波検査装置図1は損傷画像化を行うためのガイド波検査装置の 概略である. 30kHz~100kHz 程度のバースト波やチャ ープ波の数 A の波形をスイッチングボックスを通して センサーコイルへ流すことで,磁わい型センサーが駆 動する. このとき、円周方向に並べられたすべてのセ ンサーを駆動することで,T(0,1)モードが励起される. センサーコイルは2列に並べ、片方のレーンに適切な 時間遅れを与えることで,配管の片方向へのみエネル ギーを伝播させることができる. 磁わい型センサーは、 あらかじめ磁化されたニッケル薄板を配管に接着して おき,その上からセンサーコイルをかざすことにより, ガイド波を送受信できる仕組みである.一度, ニッケ ル薄板を接着させれば、あとは非接触でのセンシング になるため、非常に感度よくガイド波を検出できると ともに,複数のセンサーを用いる際の,センサー間の 感度誤差を小さくすることができる.363|トモード解析・画像化Imag1807aray scale 画像表示モードFull modes120人工欠陥70浜館to表示距職Angle (degree]ト-80画像データ計算 OK区間分割数 1,500-130-180これにCalculation StatusDistance [m]表示角度、 -180 to +180配管端面フロット分散性補正 距離表示20表示モードT01)15停止105!~~~~~~~しいwwwwwwwwwww-5-10分散曲線データディレクト」C:\Documents and SettingsTakahiro HAYASHI\My gDocuments\ |ULTRASONICS20064 PIPE_EXP\Imaging9labview\““15周波数軸補正Readling Status在時間6.1.12Tracing ReflectionあなたFig.2 Screen shot of a software for analyzing guided waves containing defect imaging analysis.コイルで受信 1 つずつ波損傷からの反射波は,同じセンサーコイルで受信 され,スイッチングボックスを通して, 1 つずつ波 形が自動的に収録される.収録された波形はコンピューター内のソフトウェ アにより処理され,モードごとの波形,空間波形お よび損傷画像を得ることができるようになっている.図2はその解析ソフトウェアの一部である.得ら れた波形より図2上のような損傷画像が数十秒で得 られる高速アルゴリズムを用いている.図2の上は、 文献[3]で示した 1.2m先の 2 個の貫通穴からの反射 皮を用いたものである.ちょうど 1.2m 先に2個の強 度分布の大きい領域があり, 1.7m先に帯上の非常に 大きな強度分布が見られる. 1.2m の位置は貫通穴を, 1.7m の位置は配管の端面を表している.損傷画像は,遠距離においては,高次モードを 含めるほど、劣化が激しくなる傾向にあり,低次 モードのみの画像も得られるようになっている.4.結言ガイド波を用いた配管検査に,著者らが開発した損 島画像化技術を適用するための,検査装置について ポべた. 現場で試験を行える程度の装置化ができたので,今後, 現場の長距離検査や溶接や防錆・防食テープ, 保温材の影響などを詳しく調べ,改良を加えていく ン要がある。射辞本研究は,独立行政法人 新エネルギー・産業技術 総合開発機構 平成15年度産業技術研究助成事 業により実施した.参考文献1] D. N. Alleyne and P. Cawley, “Long rangepropagation of Lamb waves in chemical plant pipework.” Materials Evaluation, 55, 1997,pp.504-508 2] J. Li and J L. Rose, “Excitation and propagation ofnon-axisymmetric guided waves in a hollow cylinder.““ J. Acoust. Soc. Am., Vol.109, No.2, 2001,pp.457-468 3] T. Hayashi and M. Murase, “Defect imaging withguided waves in a pipe”, J. Acoust. Soc. Am.,Vol.117, No.4, 2005, pp.2134-2140 4] 長尾将弘,林高弘,村瀬守正,“ガイド波を用いた配管探傷画像化システムの改良” 非破壊検査 協会平成 17 年度秋季大会講演概要集64“ “ガイド波を用いた配管中の損傷画像化技術“ “林 高弘,Takahiro HAYASHI,村瀬 守正,Morimasa MURASE,長尾 将弘,Masahiro NAGAO