送受信分割型マトリクスアレイ探触子による ステンレス鋼溶接部欠陥サイジング技術の開発

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カテゴリ: 第3回
1.緒言
原子力発電プラント設備の材料の一つであるステン レス鋼溶接部においては,その柱状晶組織により超音 波の散乱,曲がりが生じ、欠陥の深さ測定に不可欠で ある欠陥端部エコーの検出,識別に技術と経験を必要 とする.これに対して,従来の横波または縦波端部エ コー法に加えて,フェーズドアレイ法等の改良,高度 化された手法への取り組みがなされ [1] [2] , さらに検 査員の技量認定制度が導入されている. - 加圧水型原子力発電所の1次系配管材料は,主冷却 材管の鋳造2相ステンレス鋼の他,加圧器サージライ ン配管などのオーステナイト系ステンレス鋼がほとん どすべてである.このようなステンレス鋼溶接部での欠陥深さ測定に おいては,複数の手法,条件での測定を適用し,より 確からしい測定値を得ることが望ましい.本研究では,オーステナイト系ステンレス鋼配管の 溶接部において,配管の軸方向探傷に関して,母材側 からだけでなく溶接部を通過する側からも欠陥端部エ コーを的確にとらえ,その深さ測定が可能な技術を開 発することを目標とした.送受信ビームの交束範囲で のエコーのSN比向上を図るために,超音波入射方向 に対してアレイ振動子を前後左右方向に配列したマト リクスアレイ探触子を送信用と受信用に別個に使用し, フェーズドアレイ法による超音波探傷を行う,これま でにない送受信分割型マトリクスアレイ探触子を用い た超音波探傷試験技術を開発した.
2. 試験装置 2.1 フェーズドアレイ装置 1使用したフェーズドアレイ装置は,後述のマトリク スアレイ探触子を,送信用および受信用に別個に駆動 可能なプログラム機能を有する. 送受信用にそれぞれ 32エレメントまでの範囲内で1~5行×6?32列 のマトリクス配列をもつアレイ探触子を使用可能であ る.
2.2 フェーズドアレイ探触子図1に送受信分割型マトリクスアレイ探触子の概念 を示す. ステンレス鋼溶接部では,超音波の散乱減衰 が著しいことから,超音波の送受信に別個の振動子を 使用する送受信分割式を採用した.これは,両探触子 の超音波ビーム交束範囲において高いS/N比による 反射源の検出が期待できるためである.さらに,任意の深さ位置に超音波ビームを集束させ| る際に,超音波入射方向に対して左右方向においても 超音波ビームの振れが生じることから,より効果的な 超音波ビームの交差と集束を図るために,前後方向に 加えて左右方向にもアレイ振動子が配列された, マト リクス型探触子を使用した.16個探触子1111111MH2個 マトリクスアレイ探触子左右方向 ビーム走査tmmmmwmwomation前後方向 ビーム走査がしかしいweimmerい...左右方向側面図前後方向側面4図1 送受信分割型マトリクスアレイ探触子の概念試験には,超音波の入射方向に対して左右方向に2 行,前後方向に 16 列の配置(以下 2×16)で,合計3 2個の振動子を持つマトリクスアレイ探触子を使用し た.送受信用の2個のアレイ探触子は,曲率のある探 傷面に適合させたシューの上面に保持される. 試験対 象である試験体の曲率,板厚に合わせてシューを用意 し,選択した.図2にアレイ探触子の外観を示す.受信用マトリクスアレイ探触子 送信用マトリクスアレイ探触子射波シューは,あり図2 送受信分割型マトリクスアレイ探触子2.3 試験体図3に,ステンレス鋼溶接部配管試験体を示す.ス テンレス鋼溶接部配管試験体は,軸方向中心位置で周 方向溶接された口径 300~600A,板厚 15~35mm の配管 を,軸方向に切断したものである. ・ 溶接部近傍の熱影響部に,それぞれ2種類の寸法の 放電加工 (electric discharge machining, EDM) スリ ット, 疲労き裂,応力腐食割れ (stress corrosion cracking, SCC)が,試験体1体につき1個ずつ,その 長さ方向が周方向となるように付与されている.付与値300リュートステンレス鋼溶接部配管試験体図3 2.4 試験要領ステンレス鋼溶接部配管試験体 15t×300A, 25t× 350A のEDMスリット, 疲労き裂,SCCについて, その深さ測定を行なった. 探触子には, 2.25MHz/2× 16 マトリクスアレイ探触子を使用した. 1. 探傷方向すなわち超音波の入射方向は,周方向に付 与された欠陥に対して直行方向となる配管軸方向であ り,探触子の移動走査も配管軸方向を基本とした.反 射波の周方向への連続性を確認するために,必要に応 じ,周方向への探触子の移動走査による探傷も実施し た. 3.試験結果および考察図4に深さ測定試験結果のまとめを示す.欠陥深さ は,試験体製作メーカの納入時の製造記録による値で あり, EDMスリットを除き,推定値である.370-口母材側からの測定値 口溶接金属部側の測定値 |- 製造記録の値-「TTT-----TTTTT T11TLand.--すNo.1 | No.2 | No.1 | No.2 15t2.5t25tNo.1 | No.2 | No.1 | No.2151 300A | 350AEDNZU.No.1 | No.2 | No.1 | No.2 15t251 300A3 50A SCC300A3 50A疲労き裂図4 ステンレス鋼溶接部配管試験体深さ測定試験結果EDMスリットは、 溶接金属部を通過する側からも, 端部エコーをとらえ,深さ測定が可能であった.さら に,母材側および溶接金属側からの深さ測定値は,良 く一致した. メーカ製造記録による深さ値にくらべ過 小側に測定値が得られた. 疲労き裂は,15t×300A 試験体のいずれの疲労き裂 も,溶接金属側からの探傷では,端部エコーを検出, 識別することができなかった. 使用した口径 300A に対 応したシューの送受信交束範囲深さが 15t×300A 試験 体には最適ではなかったためと考えられる. 溶接金属 側からの測定が可能であった 25t 試験体では,両方向 からの測定値は良く一致している. メーカ製造記録と の比較では,EDMスリットでの差と同様の差がある が, 25t×350A 試験体の No. 2 については,その差が特 に大きい,今後,さらに他の探触子,試験条件での測 定とともに、 欠陥の切断調査による評価が必要である. 25t×350A 試験体の疲労き裂No.1に対する, フェ ーズドアレイ探傷画面を図5に示す.SCCは, 15t×300A 試験体では,溶接金属側から の探傷では,端部エコーを検出,識別することができ なかった.疲労き裂の場合と同様に,使用したシュー の不一致によるものと考えられる. 25t×350A 試験体 については,母材側および溶接金属部側からの測定値 の差は,他の欠陥の場合よりやや大きい傾向にあるが, 2mm 以下の差である. メーカ製造記録による深さ値に 比べ,他の欠陥の場合と異なり,大きい側の測定値が 得られた.同様に,他の条件での測定と欠陥切断調査1に対する, フェによる評価が必要である.25t×350A 試験体のSCC No.1に対する, フェ ーズドアレイ探傷画面を図6に示す.1-A1-MFulmar. MYmorollerms theali a. コーナーエコー(母材側からの探傷): 2d3 tr W.TEPORNOENGE 20120日に受b. 端部エコー(母材側からの探傷)c. 裏波エコー(溶接金属側からの探傷)dsRENETTESTEEバイトルwNmd.MMPulsertrain,Mar15d. 端部エコー(溶接金属側からの探傷)図5 ステンレス鋼溶接部配管試験体探傷画面( 25t×350A 試験体 / 疲労き裂 No. 1 )maradedruaryNiwant Caimitteria Life.n........----a. コーナーエコー(母材側からの探傷)STATEDmunitenanceMLMMalsor 17In 19.00BGir: 21.00b. 端部エコー(母材側からの探傷)-----medicameworld'AVITIC. 裏波エコー(溶接金属側からの探傷)INSIN:11000Girania-ビー・・・・・d. 端部エコー(溶接金属側からの探傷)図6 ステンレス鋼溶接部配管試験体探傷画面( 25t×350A 試験体 / SCC No. 1 )4.おわりに - 超音波の入射方向に対して左右方向に2行,前後方 向に16列の合計32個のアレイ振動子を配置したマ トリクスアレイ探触子2個を,それぞれ送信および受 信を別個に行なう,送受信分割型アレイ探触子を開発 した。これによりステンレス鋼溶接部配管試験体の欠 陥の深さ測定試験を実施した.得られた成果を以下に 示す。 1) 板厚 25mm の範囲のステンレス鋼溶接部において,従来は探傷が困難とされていた溶接金属を通過す る側からの探傷において,疲労き裂およびSCC について,そのコーナエコーの検出のみならず, 欠陥の先端からの微弱な回折波である端部エコーを検出することができた. 2) ステンレス鋼溶接部試験体の各欠陥の深さ測定について,母材側および溶接金属側からの測定値は 良好に一致した.また,試験体製作メーカによる製造記録深さ値とも概ね良好に一致した. * 送受信分割型マトリクスアレイ探触子を用いたフェ ーズドアレイ法は,欠陥が検出され,その欠陥評価を 行なうための深さ測定を行なう際に、母材側からの測 定に加えて溶接金属部を通過する側からの測定を可能 にするものである.このことは, 深さ測定値について, より確からしい寸法の評価,判断をする上で,極めて 有効であると言える.今後は,さらに端部エコーの識別性の向上と深さ測 定精度の向上を図るとともに,実機適用を念頭に自動 探傷装置等の検討を進める予定である.参考文献[1] 独立行シュラ報告書 [2] 独立行独立行政法人 原子力安全基盤機構, 平成16年度 シュラウド等の非破壊検査技術実証事業に関する 報告書,(2005). 独立行政法人 原子力安全基盤機構, 平成16年度 炉内構造物等特殊材料溶接部検査技術調査に関す る事業報告書,(2005).372“ “送受信分割型マトリクスアレイ探触子による ステンレス鋼溶接部欠陥サイジング技術の開発“ “石田 仁志,Hitoshi ISHIDA,黒住 保夫,Yasuo KUROZUMI,藤井 登,Noboru FUJII
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