もんじゅ」原子炉容器 ISI システムの開発
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カテゴリ: 第3回
. 緒言
1 高速増殖原型炉「もんじゅ」では、安全上重要な 器に対し、供用期間中検査(ISI : In-service aspection) を実施する計画である。原子炉容器 (RV : eactor Vessel) はプラント最重要機器の一つであり、 ■連続漏洩監視と目視検査を行う。また、冷却材の凍防止のため、検査時の温度は約 200°Cに維持され、 ご射線環境は約 10Sv/hr と、温度、放射線レベルとも 高い。 検査機は、ゴンドラに載せオペレーティングフロア に設置された検査機挿入装置を使って支持筒内を降ろ」れ、案内管内に達した後はゴンドラを出て自走し、 ■ と GV 間の約 300mm の隙間に挿入される、ばねの突 張り力とタイヤ摩擦力で自重を支え、遠隔操作で垂 走行させて検査を行う。平成4年の総合機能試験(以 = SKS)で使用した SKS 検査装置 (Figl)により目視 ミータを取得し、目標性能を満たした。また、R&D と って体積検査も実施している。本報では、さらに性能 上を図るために次世代装置開発 (Fig2) を行なった ーで報告する。
2. 目視検査現有検査装置では、Fiber Scope(以下、FS)を用い に RV 表面のナトリウム漏洩痕跡を確認する。FS は耐 熱性・耐放射線性に優れているが解像度が低くまた折 員し易い。新型機では、Fig3 に示す冷却システムを開 発し、FS の代りに汎用 CCD カメラを用いることとした。 CD カメラについては耐放射線試験、耐熱試験、シス テム試験を行い、使用限界を確認した。Fig4 は、耐放射線試験時に取得したカメラ画像であ る。カメラの使用温度 70°C、30 年間運転後のノミナル 女射線線量率値である 3.5Sv/hr の環境下で、140hr の 母性を確認した。検査時間は、SKS の実績で約 110hr (100%検査)であることから、汎用 CCD カメラでも、 令却により、検査環境下で利用できることがわかった。Adiabatic Expansion Hot Gas CODCold N2 Gas Cold Gas Cold Gas VartoVortex TubeHeatingCCD? ? ?Insulation caseInsulation tubeFig3. Cooling System for CCD Camera 3.5Svihr 70°C No1 Camera No2 Camera No3 CameraBefore testAfter 40hrs Change happens Total dose 140SvAfter 140hrsTotal dose 490SvFig4. Irradiation test at High temp. for CCD (75C,3.5Sv/hr).- 376 -また、酸素濃度と湿度を「もんじゅ」と同条件とした 場合のナトリウムの視認性試験を実施し、CCD カメラ を用いて漏洩痕の識別が可能であることを確認した (Fig5)。Fig5.Sodium leak test for CCD (Initial Specimen color L: Silver, R: Dark Brown) (0.2%O/ Vo, Dew point 13°C, Sodium 0.2mg, Surface 450°C)3. 要素部品の開発検査機軽量化のための要素部品の開発を行なった。 耐久性は、200°C、200hr 連続使用を目標とした。 ・ブラシレスDCモータ:検査機には、駆動用、ステ アリング用、補助輪押付用など各種のモータが搭載さ れている。SKS 機は AC インダクションモータを用いた が、新しく開発するモータは小型軽量化の観点から、 ブラシレス DC サーボモータを開発した。また、回転子 には高温でも減磁の少ないサマリウムコバルトを用い た。更に、SKS 機は機械式ブレーキを搭載していたが、 サーボモータをブレーキ代わりとすることで、ブレー キが不要となり更なる軽量化が図られた。開発したモ ータは、GV 側タイヤの駆動用 (SKS 機口70, 1.36kg⇒開 発機D52, 0.54kg)、RV 側タイヤの駆動用・ステアリ ング用(SKS 機口60, 1.22kg⇒開発機口39, 0.42kg) と 50%以下の重量減となった。また、回転角度は、モー タに直結した高温用レゾルバから検出することとした。 ・ステッピングモータ:検査機の目視装置には CCD カ メラを用いるが、焦点距離と検査視野確保の関係から、 カメラ画像は鏡を使って反射映像として捕らえる。そ のために、被検体を捉えるカメラと鏡を回転させるモ ータが必要である。SKS 機は、AC インダクションマイ クロモータを用いていたが、ブレーキがなくとも回転 位置の保持が可能で、位置検出器を用いずともオープ ン制御可能であるために小型軽量化可能なステッピン グモータを開発した。モータの大きさは、ロ42×40mm、 280g である。200°C、200hr の耐久試験により問題なく 使えることを確認した。 ・レゾルバ : 検査機には、モータの回転角や検査装置の姿勢を検出する角度センサが必要である。 SKS 機は、角度検出にシンクロ発振器(平19×45mm, 52g)を用いていた。しかし、回転軸が長いために、シ ャフト曲がり、軸受損傷などのトラブルが発生した。 この不具合を解消するために、角度検出性能に優れ、 回転軸の短いレゾルバを採用し、高温で使用できるブ ラシレスレゾルバ (125.4×22mm, 46g)を開発した。 これにより、シンクロ発信器に比べ堅牢性が増した。 また、モータ回転数を SKS 機ではタコジェネレータで 検出したが、レゾルバで検出することで検査装置の速 度制御性も向上した。レゾルバは、検査装置の角度検 出(ヨー、ロール、ピッチ)やステアリングモータの 角度検出等にも用いた。 ・タイヤ:検査機には、2 種類のタイヤが搭載されて いる。RV 側はステンレス製の金属タイヤで GV 側は検 査機の自重を支えるためゴム製タイヤとして摩擦係数 を確保している。タイヤの破損や性能低下は、検査機 の制御性の低下や破損に繋がるため、タイヤを健全な 状態で維持することが重要である。 SKS 機では、耐久性の不足により頻繁にタイヤ交換を 行う必要があった。そこで、タイヤの堅牢性を高め、 交換頻度を低減することを目的とした。タイヤの材質 としてシリコンゴムとフッ素ゴムを用いて試験を実施 した。その結果、フッ素ゴムを採用した。また、タイ ヤ径を大きくする(直径を 107mm⇒150mm)ことで耐磨 耗性を向上した。耐久性を確認するために、10Sv/hr, 200hr の照射試験を行い摩擦係数に変化ないことを確 認した。さらに、検査機の走行面には炉外計装配管な ど乗り越えが必要な段差があるため、走行面に障害物 を模擬した高温での障害物乗り越え性や耐摩耗性の試 験を実施し、十分な耐久性を有することを確認した。 ・ハーモニックドライブ TM: 検査機は、駆動用モータ のトルクを上げるために減速機を用いている。 SKS 機では、平板ギアを用いていたが、減速比が大き いため多段構造となり、重量増となっていた。一方、 ハーモニックドライブ TWは高減速比を得ることができ るが、多段構造ではないため軽量化が可能である。し かし、通常のハーモニックドライブ TWは、樹脂を使用 している部分があり高温では使用できない。そこで、 樹脂部を金属に改良した後、200°Cで本来の機能を発揮 できる最適な潤滑材の選定を行い、200°Cで200hr の耐 久試験により性能を確認した。また、ハーモニックド ライブ TM を用いて減速比を大きくすることで、セルフ377ロックが期待できるため、検査機駆動用のサーボモー タの電源喪失時にブレーキが開放されても安全性が確 保できる。 ・ランプ: FS は、長さが 50mであり光の減衰が大きい ため強い光源が必要であった。そのため、ハロゲンラ ンプに大電流を流し照度を上げていたが、大電流を流 すことによるランプの耐久性の低下とギラツキ(ハレ ーション)の発生による視認性の低下が課題であった。 目視装置として CCD カメラを採用することで、ランプ の光量を低減するとともに照明角度を調整し、ハレー ションの防止と耐久性向上を図った。ランプは、色の 再現性の良い白熱球を採用した。200°Cでの耐久試験を 行った結果、200hr 後の照度低下は 17%であり、画像 取得に影響はないことを確認した。 ・ビードセンサ : 原子炉容器は、オーステナイト系ス テンレス鋼の円筒を溶接でつないだ構造になっており、 検査はこの溶接を対象に実施される。このため、検査 機は溶接の位置を検出する渦電流式のビードセンサを 持つ。SKS 機は溶接を捉えるために機械式のスキャン 機構を持っていたが、軽量化のためスキャン機構を使 わない固定式のビードセンサの開発を行なった。 原子炉容器の溶接線幅は約 10mm であるため、ビードセ ンサの位置検出範囲を35mm に設定し、ビード幅 15mm の溶接に対して±2.5mmの検出精度を目標に開発した。 ビードセンサの形式は差動コイル合成式渦電流方式 (同軸コイル型) を採用し、センサを構成するコイルの 寸法、コイルの巻き数、コイルの組み合わせ方法等を 検討した。差動コイル合成式渦電流方式は、二つのコ イル間の電位差を使ってビード位置を検出するもので、 二つのコイルが接するセンサの中心部分は直線性が高 いが、センサ端部では直線性が低下する。このため、 コイルを多段化して検出領域の直線性を確保した (Fig6)。試作したビードセンサの寸法は 150×30×25mm である。Pick UP Coil1Pick UP Coil2SpecimenWeldSignal Coil1-Coil2Fig6. Schematic views of Welding Bead Sensors 開発したビードセンサを用いて、ビード位置検出性(位 置検出範囲、精度、リフトオフの影響)を確認した結 果、ビード中心位置から目標の土35mm の範囲では、ビ ード位置と検出信号の間にはビード幅に依存しない良好な直線関係があり、リフトオフが無い場合±1.0mm の精度でビード位置の検出が可能な見通しが得られた。 またリフトオフ 1mm に対しては±3.5mm の精度が得ら れる見通しを得た。200°Cの電気炉内にビードセンサを 置いた静的環境下において 300 時間、ビードセンサに 駆動用ソレノイドを取り付け、溶接部を有する試験板 の上で動作させた動的環境下で 120 時間の試験を実施 し、実機と同等の条件下で問題なく動作することを確 認した。 ・押付力の一定化:RV-GV 間の隙間は、据付誤差や熱 膨張差などにより一定でない(300mm15mm)。その場 合でも、一定の押付力で検査機を保持し、安定した制 御性を維持することが重要である。SKS 機は垂直配置 の押付けばねを採用したが、新型機では隙間が変化し ても押付け力の変化が少ない台形配置を採用した。4.体積検査「もんじゅ」ではナトリウムを冷却材としているた め,水系カプラントが使えないことから、超音波探傷 装置として非接触式の電磁超音波探触子(以下 EMAT: Electromagnetic Acoustic Transducer) & 13. SKS 機の EMAT は、磁石配置が Fig7 の PPM (Periodic Permanent Magnet) 構造であるが、約 1.4倍の磁束密度 が得られる Halbach 構造 (Fig8 上面)を新たに開発し た。Halbach 構造 EMAT を送受信器として使うことによ り2倍の感度向上となる。yLUCKNSNSNSXISNS nsnis| 來來 Fig7. PPM Magnets Structure and Magnet FieldHea_19 NNNIST MAMANX「世界旅1 LSNINS SNNS SN$ N N$ $NLis N S N IS NISN 18:M:58Fig8. Halbach Magnets Structure and Magnet Field SKS 機は、送受信にそれぞれ別の EMAT を用いた二探 触子型であったが、一探触子型を採用することで、探 触子をより軽量化できる。しかし、一探触子型は、検 査対象の金属表面と探触子のコイルの間で渦電流の共 振現象を生じ、欠陥から反射した超音波エコーがこの 共振波形の中に埋もれて見えなくなるため適切な信号 処理が必要である。検討した新信号処理法は、欠陥と 探傷機を結ぶ同軸線上で、超音波の波長の 1/2 波長分 ずらした位置で得られたふたつの信号を差分する方法378である。これにより、共振波形は同じ位相を持つので 差し引きにより0となり、欠陥信号は 1/2 波長分ずれ た位相を持つので差引くことにより2倍の強度の波形 が得られた。また、一探触子法の開発により、重量は 二探触子 EMAT の 1/4 となった。今後、新型 EMAT を検 査機に搭載予定である。5.検査支援システム検査時に操作員が確保できる視野は、目視装置から の映像による接写状態の狭い範囲の視野に限られてい る。操作員は、この視野と操作画面の情報をもとに複 雑な操作を行う。そこで、操作員訓練を目的に原子炉 容器廻りを3Dモデル化した上で、実機システムを模 擬した入力装置及び操作画面からの操作指令により検 査機が動作し目視装置の模擬映像を出力する3Dシミ ュレーションソフトを開発した(Fig9)。4.16666666666667E-02Fig9. New control screen and imitated a camera image前方視野後方視野 Fig10. Indication of inspection machine positionand details view screen また、検査における一連の操作を対話型でシミュレ ーションできる機能を実装したことから検査機や周辺 装置を動作させない状態で一連の操作を効率よく習熟 することが可能となった。検査時における操作支援としては、3Dシミュレー ションソフトに実機システムとの通信機能を追加し、 検査機の位置・姿勢情報をもとに検査機動作に合わせ た詳細視野を提供する機能を整備した (Fig10) 。また、 この機能は、故障等により目視装置の映像が途絶えた 場合の仮想視野を提供する。6.まとめ汎用 CCD カメラを用いても高温・高放射線環境下で 検査可能な検査装置を開発した。各種要素部品を軽量 化することで、検査機重量を 47kg から 34kg に減し、 タイヤへの負担を軽減することで交換頻度を下げるこ とが可能となった。今後は、新型 EMAT を搭載し、体積 検査性能向上を図る。操作訓練については、今後予定されている 1/2 セク タのモックアップを用いた検査機の操作性確認試験結 果を反映し、より実操作に近い3Dシミュレーション ソフトとして整備する。また、操作支援機能では、検 査機走行時の障害物検知や常に監視が必要なセンサ値 の監視機能強化を予定している。本システムを活用す ることにより訓練期間の短縮、検査の効率化、高性能 化が期待できる。参考文献 [1] H. Rindo, N. Mitabe, K. Ara, K. Nagai, M. Otaka,1993.3, “Research and development on In-service inspection system for reactor vessel of FBRs”, 2nd International comference on nuclear engineering(ASME ICONE2) [2] Xu, Y., Tagawa, A., Ueda, M., Yamashita, T., Ohtsuka, Y.,Osafune, K. and Nishikawa, M., 2003, “Development of SH wave electromagnetic acoustic transducer (EMAT),” 3rd International Conference on Non-Destructive Testing, October 15th to 17th, 2003,Crete, Greece, pp. 285-29 [3] 徐陽,山下卓哉,“原子炉容器廻り ISI 検査装置の開発-高磁場配置型 EMAT の開発一““, サイクル 機構技報, Vol.23, No.4, pp.13-22 (2004)379“ “もんじゅ」原子炉容器 ISI システムの開発“ “田川 明広,Akihiro TAGAWA,岡本 久彦,Hisahiko OKAMOTO,上田 雅司,Masashi UEDA,山下 卓哉,Takuya YAMASHITA
1 高速増殖原型炉「もんじゅ」では、安全上重要な 器に対し、供用期間中検査(ISI : In-service aspection) を実施する計画である。原子炉容器 (RV : eactor Vessel) はプラント最重要機器の一つであり、 ■連続漏洩監視と目視検査を行う。また、冷却材の凍防止のため、検査時の温度は約 200°Cに維持され、 ご射線環境は約 10Sv/hr と、温度、放射線レベルとも 高い。 検査機は、ゴンドラに載せオペレーティングフロア に設置された検査機挿入装置を使って支持筒内を降ろ」れ、案内管内に達した後はゴンドラを出て自走し、 ■ と GV 間の約 300mm の隙間に挿入される、ばねの突 張り力とタイヤ摩擦力で自重を支え、遠隔操作で垂 走行させて検査を行う。平成4年の総合機能試験(以 = SKS)で使用した SKS 検査装置 (Figl)により目視 ミータを取得し、目標性能を満たした。また、R&D と って体積検査も実施している。本報では、さらに性能 上を図るために次世代装置開発 (Fig2) を行なった ーで報告する。
2. 目視検査現有検査装置では、Fiber Scope(以下、FS)を用い に RV 表面のナトリウム漏洩痕跡を確認する。FS は耐 熱性・耐放射線性に優れているが解像度が低くまた折 員し易い。新型機では、Fig3 に示す冷却システムを開 発し、FS の代りに汎用 CCD カメラを用いることとした。 CD カメラについては耐放射線試験、耐熱試験、シス テム試験を行い、使用限界を確認した。Fig4 は、耐放射線試験時に取得したカメラ画像であ る。カメラの使用温度 70°C、30 年間運転後のノミナル 女射線線量率値である 3.5Sv/hr の環境下で、140hr の 母性を確認した。検査時間は、SKS の実績で約 110hr (100%検査)であることから、汎用 CCD カメラでも、 令却により、検査環境下で利用できることがわかった。Adiabatic Expansion Hot Gas CODCold N2 Gas Cold Gas Cold Gas VartoVortex TubeHeatingCCD? ? ?Insulation caseInsulation tubeFig3. Cooling System for CCD Camera 3.5Svihr 70°C No1 Camera No2 Camera No3 CameraBefore testAfter 40hrs Change happens Total dose 140SvAfter 140hrsTotal dose 490SvFig4. Irradiation test at High temp. for CCD (75C,3.5Sv/hr).- 376 -また、酸素濃度と湿度を「もんじゅ」と同条件とした 場合のナトリウムの視認性試験を実施し、CCD カメラ を用いて漏洩痕の識別が可能であることを確認した (Fig5)。Fig5.Sodium leak test for CCD (Initial Specimen color L: Silver, R: Dark Brown) (0.2%O/ Vo, Dew point 13°C, Sodium 0.2mg, Surface 450°C)3. 要素部品の開発検査機軽量化のための要素部品の開発を行なった。 耐久性は、200°C、200hr 連続使用を目標とした。 ・ブラシレスDCモータ:検査機には、駆動用、ステ アリング用、補助輪押付用など各種のモータが搭載さ れている。SKS 機は AC インダクションモータを用いた が、新しく開発するモータは小型軽量化の観点から、 ブラシレス DC サーボモータを開発した。また、回転子 には高温でも減磁の少ないサマリウムコバルトを用い た。更に、SKS 機は機械式ブレーキを搭載していたが、 サーボモータをブレーキ代わりとすることで、ブレー キが不要となり更なる軽量化が図られた。開発したモ ータは、GV 側タイヤの駆動用 (SKS 機口70, 1.36kg⇒開 発機D52, 0.54kg)、RV 側タイヤの駆動用・ステアリ ング用(SKS 機口60, 1.22kg⇒開発機口39, 0.42kg) と 50%以下の重量減となった。また、回転角度は、モー タに直結した高温用レゾルバから検出することとした。 ・ステッピングモータ:検査機の目視装置には CCD カ メラを用いるが、焦点距離と検査視野確保の関係から、 カメラ画像は鏡を使って反射映像として捕らえる。そ のために、被検体を捉えるカメラと鏡を回転させるモ ータが必要である。SKS 機は、AC インダクションマイ クロモータを用いていたが、ブレーキがなくとも回転 位置の保持が可能で、位置検出器を用いずともオープ ン制御可能であるために小型軽量化可能なステッピン グモータを開発した。モータの大きさは、ロ42×40mm、 280g である。200°C、200hr の耐久試験により問題なく 使えることを確認した。 ・レゾルバ : 検査機には、モータの回転角や検査装置の姿勢を検出する角度センサが必要である。 SKS 機は、角度検出にシンクロ発振器(平19×45mm, 52g)を用いていた。しかし、回転軸が長いために、シ ャフト曲がり、軸受損傷などのトラブルが発生した。 この不具合を解消するために、角度検出性能に優れ、 回転軸の短いレゾルバを採用し、高温で使用できるブ ラシレスレゾルバ (125.4×22mm, 46g)を開発した。 これにより、シンクロ発信器に比べ堅牢性が増した。 また、モータ回転数を SKS 機ではタコジェネレータで 検出したが、レゾルバで検出することで検査装置の速 度制御性も向上した。レゾルバは、検査装置の角度検 出(ヨー、ロール、ピッチ)やステアリングモータの 角度検出等にも用いた。 ・タイヤ:検査機には、2 種類のタイヤが搭載されて いる。RV 側はステンレス製の金属タイヤで GV 側は検 査機の自重を支えるためゴム製タイヤとして摩擦係数 を確保している。タイヤの破損や性能低下は、検査機 の制御性の低下や破損に繋がるため、タイヤを健全な 状態で維持することが重要である。 SKS 機では、耐久性の不足により頻繁にタイヤ交換を 行う必要があった。そこで、タイヤの堅牢性を高め、 交換頻度を低減することを目的とした。タイヤの材質 としてシリコンゴムとフッ素ゴムを用いて試験を実施 した。その結果、フッ素ゴムを採用した。また、タイ ヤ径を大きくする(直径を 107mm⇒150mm)ことで耐磨 耗性を向上した。耐久性を確認するために、10Sv/hr, 200hr の照射試験を行い摩擦係数に変化ないことを確 認した。さらに、検査機の走行面には炉外計装配管な ど乗り越えが必要な段差があるため、走行面に障害物 を模擬した高温での障害物乗り越え性や耐摩耗性の試 験を実施し、十分な耐久性を有することを確認した。 ・ハーモニックドライブ TM: 検査機は、駆動用モータ のトルクを上げるために減速機を用いている。 SKS 機では、平板ギアを用いていたが、減速比が大き いため多段構造となり、重量増となっていた。一方、 ハーモニックドライブ TWは高減速比を得ることができ るが、多段構造ではないため軽量化が可能である。し かし、通常のハーモニックドライブ TWは、樹脂を使用 している部分があり高温では使用できない。そこで、 樹脂部を金属に改良した後、200°Cで本来の機能を発揮 できる最適な潤滑材の選定を行い、200°Cで200hr の耐 久試験により性能を確認した。また、ハーモニックド ライブ TM を用いて減速比を大きくすることで、セルフ377ロックが期待できるため、検査機駆動用のサーボモー タの電源喪失時にブレーキが開放されても安全性が確 保できる。 ・ランプ: FS は、長さが 50mであり光の減衰が大きい ため強い光源が必要であった。そのため、ハロゲンラ ンプに大電流を流し照度を上げていたが、大電流を流 すことによるランプの耐久性の低下とギラツキ(ハレ ーション)の発生による視認性の低下が課題であった。 目視装置として CCD カメラを採用することで、ランプ の光量を低減するとともに照明角度を調整し、ハレー ションの防止と耐久性向上を図った。ランプは、色の 再現性の良い白熱球を採用した。200°Cでの耐久試験を 行った結果、200hr 後の照度低下は 17%であり、画像 取得に影響はないことを確認した。 ・ビードセンサ : 原子炉容器は、オーステナイト系ス テンレス鋼の円筒を溶接でつないだ構造になっており、 検査はこの溶接を対象に実施される。このため、検査 機は溶接の位置を検出する渦電流式のビードセンサを 持つ。SKS 機は溶接を捉えるために機械式のスキャン 機構を持っていたが、軽量化のためスキャン機構を使 わない固定式のビードセンサの開発を行なった。 原子炉容器の溶接線幅は約 10mm であるため、ビードセ ンサの位置検出範囲を35mm に設定し、ビード幅 15mm の溶接に対して±2.5mmの検出精度を目標に開発した。 ビードセンサの形式は差動コイル合成式渦電流方式 (同軸コイル型) を採用し、センサを構成するコイルの 寸法、コイルの巻き数、コイルの組み合わせ方法等を 検討した。差動コイル合成式渦電流方式は、二つのコ イル間の電位差を使ってビード位置を検出するもので、 二つのコイルが接するセンサの中心部分は直線性が高 いが、センサ端部では直線性が低下する。このため、 コイルを多段化して検出領域の直線性を確保した (Fig6)。試作したビードセンサの寸法は 150×30×25mm である。Pick UP Coil1Pick UP Coil2SpecimenWeldSignal Coil1-Coil2Fig6. Schematic views of Welding Bead Sensors 開発したビードセンサを用いて、ビード位置検出性(位 置検出範囲、精度、リフトオフの影響)を確認した結 果、ビード中心位置から目標の土35mm の範囲では、ビ ード位置と検出信号の間にはビード幅に依存しない良好な直線関係があり、リフトオフが無い場合±1.0mm の精度でビード位置の検出が可能な見通しが得られた。 またリフトオフ 1mm に対しては±3.5mm の精度が得ら れる見通しを得た。200°Cの電気炉内にビードセンサを 置いた静的環境下において 300 時間、ビードセンサに 駆動用ソレノイドを取り付け、溶接部を有する試験板 の上で動作させた動的環境下で 120 時間の試験を実施 し、実機と同等の条件下で問題なく動作することを確 認した。 ・押付力の一定化:RV-GV 間の隙間は、据付誤差や熱 膨張差などにより一定でない(300mm15mm)。その場 合でも、一定の押付力で検査機を保持し、安定した制 御性を維持することが重要である。SKS 機は垂直配置 の押付けばねを採用したが、新型機では隙間が変化し ても押付け力の変化が少ない台形配置を採用した。4.体積検査「もんじゅ」ではナトリウムを冷却材としているた め,水系カプラントが使えないことから、超音波探傷 装置として非接触式の電磁超音波探触子(以下 EMAT: Electromagnetic Acoustic Transducer) & 13. SKS 機の EMAT は、磁石配置が Fig7 の PPM (Periodic Permanent Magnet) 構造であるが、約 1.4倍の磁束密度 が得られる Halbach 構造 (Fig8 上面)を新たに開発し た。Halbach 構造 EMAT を送受信器として使うことによ り2倍の感度向上となる。yLUCKNSNSNSXISNS nsnis| 來來 Fig7. PPM Magnets Structure and Magnet FieldHea_19 NNNIST MAMANX「世界旅1 LSNINS SNNS SN$ N N$ $NLis N S N IS NISN 18:M:58Fig8. Halbach Magnets Structure and Magnet Field SKS 機は、送受信にそれぞれ別の EMAT を用いた二探 触子型であったが、一探触子型を採用することで、探 触子をより軽量化できる。しかし、一探触子型は、検 査対象の金属表面と探触子のコイルの間で渦電流の共 振現象を生じ、欠陥から反射した超音波エコーがこの 共振波形の中に埋もれて見えなくなるため適切な信号 処理が必要である。検討した新信号処理法は、欠陥と 探傷機を結ぶ同軸線上で、超音波の波長の 1/2 波長分 ずらした位置で得られたふたつの信号を差分する方法378である。これにより、共振波形は同じ位相を持つので 差し引きにより0となり、欠陥信号は 1/2 波長分ずれ た位相を持つので差引くことにより2倍の強度の波形 が得られた。また、一探触子法の開発により、重量は 二探触子 EMAT の 1/4 となった。今後、新型 EMAT を検 査機に搭載予定である。5.検査支援システム検査時に操作員が確保できる視野は、目視装置から の映像による接写状態の狭い範囲の視野に限られてい る。操作員は、この視野と操作画面の情報をもとに複 雑な操作を行う。そこで、操作員訓練を目的に原子炉 容器廻りを3Dモデル化した上で、実機システムを模 擬した入力装置及び操作画面からの操作指令により検 査機が動作し目視装置の模擬映像を出力する3Dシミ ュレーションソフトを開発した(Fig9)。4.16666666666667E-02Fig9. New control screen and imitated a camera image前方視野後方視野 Fig10. Indication of inspection machine positionand details view screen また、検査における一連の操作を対話型でシミュレ ーションできる機能を実装したことから検査機や周辺 装置を動作させない状態で一連の操作を効率よく習熟 することが可能となった。検査時における操作支援としては、3Dシミュレー ションソフトに実機システムとの通信機能を追加し、 検査機の位置・姿勢情報をもとに検査機動作に合わせ た詳細視野を提供する機能を整備した (Fig10) 。また、 この機能は、故障等により目視装置の映像が途絶えた 場合の仮想視野を提供する。6.まとめ汎用 CCD カメラを用いても高温・高放射線環境下で 検査可能な検査装置を開発した。各種要素部品を軽量 化することで、検査機重量を 47kg から 34kg に減し、 タイヤへの負担を軽減することで交換頻度を下げるこ とが可能となった。今後は、新型 EMAT を搭載し、体積 検査性能向上を図る。操作訓練については、今後予定されている 1/2 セク タのモックアップを用いた検査機の操作性確認試験結 果を反映し、より実操作に近い3Dシミュレーション ソフトとして整備する。また、操作支援機能では、検 査機走行時の障害物検知や常に監視が必要なセンサ値 の監視機能強化を予定している。本システムを活用す ることにより訓練期間の短縮、検査の効率化、高性能 化が期待できる。参考文献 [1] H. Rindo, N. Mitabe, K. Ara, K. Nagai, M. Otaka,1993.3, “Research and development on In-service inspection system for reactor vessel of FBRs”, 2nd International comference on nuclear engineering(ASME ICONE2) [2] Xu, Y., Tagawa, A., Ueda, M., Yamashita, T., Ohtsuka, Y.,Osafune, K. and Nishikawa, M., 2003, “Development of SH wave electromagnetic acoustic transducer (EMAT),” 3rd International Conference on Non-Destructive Testing, October 15th to 17th, 2003,Crete, Greece, pp. 285-29 [3] 徐陽,山下卓哉,“原子炉容器廻り ISI 検査装置の開発-高磁場配置型 EMAT の開発一““, サイクル 機構技報, Vol.23, No.4, pp.13-22 (2004)379“ “もんじゅ」原子炉容器 ISI システムの開発“ “田川 明広,Akihiro TAGAWA,岡本 久彦,Hisahiko OKAMOTO,上田 雅司,Masashi UEDA,山下 卓哉,Takuya YAMASHITA