曲がり管で発生する二次流れの配管合流部における高サイクル熱疲労への影響
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カテゴリ: 第3回
1.緒言
* 原子力、火力発電所、また工場などのプラントに おいて、異なる温度の二流体が合流する部位は多く 存在する。二流体が合流する領域では非定常の不安 定な温度揺らぎが生じるため、その揺らぎが壁面に 伝播することで構造材は熱膨張・収縮を繰り返し、 高サイクルの熱疲労を受ける。温度揺らぎの振幅、 変動周期によっては構造材に亀裂が生じ、最悪の場」 合冷却水が漏洩する。高サイクル熱疲労が原因と考 えられる事故例としては敦賀発電所2号機の一次冷 却水漏洩事故、ベンチマーク問題として取り上げら れたフランス高速原型炉フェニックスの二次冷却水ベンド内で発生する二次流れにより壁面近傍の温度変動が、90度ベンドを有さない場合に比べて激しく 原子力、火力発電所、また工場などのプラントに なることが確認されている。 おいて、異なる温度の二流体が合流する部位は多く しかしがら過去の研究では主に口径比、流速比を 存在する。二流体が合流する領域では非定常の不安 パラメーターとし、ほとんどの場合において90度ベ 定な温度揺らぎが生じるため、その揺らぎが壁面にンドからT字配管合流部までの距離が固定されてい 伝播することで構造材は熱膨張・収縮を繰り返し、 る。ところが二次流れはベンド通過後もより下流域 高サイクルの熱疲労を受ける。温度揺らぎの振幅、 まで残存することが過去の研究により明らかにされ 変動周期によっては構造材に亀裂が生じ、最悪の場 ており[41、すなわちベンドからT字配管合流部まで 合冷却水が漏洩する。高サイクル熱疲労が原因と考 の距離が流体混合特性および合流部下流側の壁面温 えられる事故例としては敦賀発電所2号機の一次冷度特性に強く影響すると考えられる。 却水漏洩事故、ベンチマーク問題として取り上げら そこで本研究では曲率半径比 C-1.41 の 90度ベン れたフランス高速原型炉フェニックスの二次冷却水 ドを用いた体系下において、ベンド出口からT字配 漏洩事故などが上げられる。管合流部までの距離が配管合流部の壁面温度変動特 *以上のことを踏まえ、様々な研究機関において T 性へ与える影響を評価することを目的とする。 字配管合流部での流体混合に関する研究が実施され ている。特に枝配管、主配管の口径比、枝流流速、 主流流速の流速比をパラメーターとして、合流部下
2. 試験部および実験条件 流領域での壁面温度ゆらぎ特性、PIV による流動可 2.1 試験部 視化、数値解析を用いた詳細な混合メカニズムの予 本研究では 90 度ベンド出口から枝配管設置位置 測などが実施されている[1][2][3]。 そして実際のプラ までの距離Lをパラメーターとする。枝配管が設置 ントで多々見られる上流側に 90 度ベンドが設置さされた全長 324mm(=3D)のT字試験部と、何も設置 れたT字配管合流体系でも、口径比や流速比をパラ されていない全長 108mm(=1DP)と 324mm(=3Dm)の2 メーターとした実験や数値解析が実施されており、 本のエクステンションパイプの並び替えにより 90
一度ベンド出口から La=108mm(=1Dr), 216mm(=2DP), 連絡先:小原啓、〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字 れたフランス高速原型炉フェニックスの二次冷却水 漏洩事故などが上げられる。以上のことを踏まえ、様々な研究機関において T 字配管合流部での流体混合に関する研究が実施され ている。特に枝配管、主配管の口径比、枝流流速、 主流流速の流速比をパラメーターとして、合流部下 流領域での壁面温度ゆらぎ特性、PIV による流動可 視化、数値解析を用いた詳細な混合メカニズムの予 測などが実施されている[1][2][3]。 そして実際のプラ ントで多々見られる上流側に 90 度ベンドが設置さ れたT字配管合流体系でも、口径比や流速比をパラ メーターとした実験や数値解析が実施されており、予ラさラ連絡先:小原啓、〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字 青葉 6-6-01-2、東北大学大学院工学研究科量子エネル ギー工学専攻、電話: 022-795-7906、 e-mail:hoha@karma.qse.tohoku.ac.jp ベンド内で発生する二次流れにより壁面近傍の温度 変動が、90度ベンドを有さない場合に比べて激しく なることが確認されている。 _ しかしがら過去の研究では主に口径比、流速比を パラメーターとし、ほとんどの場合において90度べ ンドからT字配管合流部までの距離が固定されてい る。ところが二次流れはベンド通過後もより下流域 まで残存することが過去の研究により明らかにされ ており [4]、すなわちベンドからT字配管合流部まで の距離が流体混合特性および合流部下流側の壁面温 度特性に強く影響すると考えられる。そこで本研究では曲率半径比 C=1.41 の90度ベン ドを用いた体系下において、ベンド出口からT字配 管合流部までの距離が配管合流部の壁面温度変動特 性へ与える影響を評価することを目的とする。 * 本研究では 90 度ベンド出口から枝配管設置位置 までの距離Lをパラメーターとする。枝配管が設置 された全長 324mm(=3D)のT字試験部と、何も設置 されていない全長 108mm(=1D)と 324mm(=3Dm)の2 本のエクステンションパイプの並び替えにより 90 度ベンド出口から La=108mm(=1D.), 216mm(=2D), 432mm (-4D)の位置に枝配管を配置する。枝配管設 置位置の様子を Fig.1 に示す。 - 82 -1Dm%3D108[mm]枝流 (To%3D400°C)12-21[mm] 日L=340mL-210mL=2Dm 主流 (Tm%3D20[°C])Lb=1DmL-2Dom Lb=4Dm Fig.1 T-junction location in test section熱電対は温度変動の応答性を考慮し直径0.1mm の 非被服型 K 型熱電対を用い、サンプリング周波数 60Hz で 36000点(600sec)計測する。熱電対は配管壁 面から 1mm のところに設置する。これは壁面の温度 を直接計測するのではなく、粘性低層よりも外側の 温度を計測することで流体から壁面への熱輸送を評 価するためである。熱電対設置位置の様子を Fig.2 に示す。枝配管内径上部を原点とし、周方向にx軸、 主流下流方向にz軸を取る。x軸、z軸の座標は枝配 管の内径 D-(-21mm)で規格化されており、x 軸は -2
* 原子力、火力発電所、また工場などのプラントに おいて、異なる温度の二流体が合流する部位は多く 存在する。二流体が合流する領域では非定常の不安 定な温度揺らぎが生じるため、その揺らぎが壁面に 伝播することで構造材は熱膨張・収縮を繰り返し、 高サイクルの熱疲労を受ける。温度揺らぎの振幅、 変動周期によっては構造材に亀裂が生じ、最悪の場」 合冷却水が漏洩する。高サイクル熱疲労が原因と考 えられる事故例としては敦賀発電所2号機の一次冷 却水漏洩事故、ベンチマーク問題として取り上げら れたフランス高速原型炉フェニックスの二次冷却水ベンド内で発生する二次流れにより壁面近傍の温度変動が、90度ベンドを有さない場合に比べて激しく 原子力、火力発電所、また工場などのプラントに なることが確認されている。 おいて、異なる温度の二流体が合流する部位は多く しかしがら過去の研究では主に口径比、流速比を 存在する。二流体が合流する領域では非定常の不安 パラメーターとし、ほとんどの場合において90度ベ 定な温度揺らぎが生じるため、その揺らぎが壁面にンドからT字配管合流部までの距離が固定されてい 伝播することで構造材は熱膨張・収縮を繰り返し、 る。ところが二次流れはベンド通過後もより下流域 高サイクルの熱疲労を受ける。温度揺らぎの振幅、 まで残存することが過去の研究により明らかにされ 変動周期によっては構造材に亀裂が生じ、最悪の場 ており[41、すなわちベンドからT字配管合流部まで 合冷却水が漏洩する。高サイクル熱疲労が原因と考 の距離が流体混合特性および合流部下流側の壁面温 えられる事故例としては敦賀発電所2号機の一次冷度特性に強く影響すると考えられる。 却水漏洩事故、ベンチマーク問題として取り上げら そこで本研究では曲率半径比 C-1.41 の 90度ベン れたフランス高速原型炉フェニックスの二次冷却水 ドを用いた体系下において、ベンド出口からT字配 漏洩事故などが上げられる。管合流部までの距離が配管合流部の壁面温度変動特 *以上のことを踏まえ、様々な研究機関において T 性へ与える影響を評価することを目的とする。 字配管合流部での流体混合に関する研究が実施され ている。特に枝配管、主配管の口径比、枝流流速、 主流流速の流速比をパラメーターとして、合流部下
2. 試験部および実験条件 流領域での壁面温度ゆらぎ特性、PIV による流動可 2.1 試験部 視化、数値解析を用いた詳細な混合メカニズムの予 本研究では 90 度ベンド出口から枝配管設置位置 測などが実施されている[1][2][3]。 そして実際のプラ までの距離Lをパラメーターとする。枝配管が設置 ントで多々見られる上流側に 90 度ベンドが設置さされた全長 324mm(=3D)のT字試験部と、何も設置 れたT字配管合流体系でも、口径比や流速比をパラ されていない全長 108mm(=1DP)と 324mm(=3Dm)の2 メーターとした実験や数値解析が実施されており、 本のエクステンションパイプの並び替えにより 90
一度ベンド出口から La=108mm(=1Dr), 216mm(=2DP), 連絡先:小原啓、〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字 れたフランス高速原型炉フェニックスの二次冷却水 漏洩事故などが上げられる。以上のことを踏まえ、様々な研究機関において T 字配管合流部での流体混合に関する研究が実施され ている。特に枝配管、主配管の口径比、枝流流速、 主流流速の流速比をパラメーターとして、合流部下 流領域での壁面温度ゆらぎ特性、PIV による流動可 視化、数値解析を用いた詳細な混合メカニズムの予 測などが実施されている[1][2][3]。 そして実際のプラ ントで多々見られる上流側に 90 度ベンドが設置さ れたT字配管合流体系でも、口径比や流速比をパラ メーターとした実験や数値解析が実施されており、予ラさラ連絡先:小原啓、〒980-8579 宮城県仙台市青葉区荒巻字 青葉 6-6-01-2、東北大学大学院工学研究科量子エネル ギー工学専攻、電話: 022-795-7906、 e-mail:hoha@karma.qse.tohoku.ac.jp ベンド内で発生する二次流れにより壁面近傍の温度 変動が、90度ベンドを有さない場合に比べて激しく なることが確認されている。 _ しかしがら過去の研究では主に口径比、流速比を パラメーターとし、ほとんどの場合において90度べ ンドからT字配管合流部までの距離が固定されてい る。ところが二次流れはベンド通過後もより下流域 まで残存することが過去の研究により明らかにされ ており [4]、すなわちベンドからT字配管合流部まで の距離が流体混合特性および合流部下流側の壁面温 度特性に強く影響すると考えられる。そこで本研究では曲率半径比 C=1.41 の90度ベン ドを用いた体系下において、ベンド出口からT字配 管合流部までの距離が配管合流部の壁面温度変動特 性へ与える影響を評価することを目的とする。 * 本研究では 90 度ベンド出口から枝配管設置位置 までの距離Lをパラメーターとする。枝配管が設置 された全長 324mm(=3D)のT字試験部と、何も設置 されていない全長 108mm(=1D)と 324mm(=3Dm)の2 本のエクステンションパイプの並び替えにより 90 度ベンド出口から La=108mm(=1D.), 216mm(=2D), 432mm (-4D)の位置に枝配管を配置する。枝配管設 置位置の様子を Fig.1 に示す。 - 82 -1Dm%3D108[mm]枝流 (To%3D400°C)12-21[mm] 日L=340mL-210mL=2Dm 主流 (Tm%3D20[°C])Lb=1DmL-2Dom Lb=4Dm Fig.1 T-junction location in test section熱電対は温度変動の応答性を考慮し直径0.1mm の 非被服型 K 型熱電対を用い、サンプリング周波数 60Hz で 36000点(600sec)計測する。熱電対は配管壁 面から 1mm のところに設置する。これは壁面の温度 を直接計測するのではなく、粘性低層よりも外側の 温度を計測することで流体から壁面への熱輸送を評 価するためである。熱電対設置位置の様子を Fig.2 に示す。枝配管内径上部を原点とし、周方向にx軸、 主流下流方向にz軸を取る。x軸、z軸の座標は枝配 管の内径 D-(-21mm)で規格化されており、x 軸は -2