閉塞枝配管における熱成層化現象解析
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カテゴリ: 第3回
1. 緒言
プラント配管内の温度の異なる 2 流体が接する個所 においては、流体の時間的な温度変動に伴い、配管構 造物に高サイクル熱疲労が生じる場合がある。このよ うな配管の高サイクル熱疲労に対しては、省令による 性能規定化に伴い日本機械学会から評価指針が示され り、実機プラントに適用される方向にある。 - 主管に枝管が接続され枝管端部が閉塞されている場 合、枝配管の接続面近傍では主流によって駆動された キャビティーフローが生じる。キャビティーフローの下の領域では壁面に沿って旋回する下降流と枝管中心 軸近傍を上昇する流れが実験で観察されており(例え ば[2])、枝管に浸入する流れによって主管と枝管の流体 に温度差がある場合、枝管に主管の温度が輸送され枝 管途中に熱成層面が形成される。このような複雑な流 れのメカニズム解明には実験と併用して、解析による 予測・評価手法の確立が望まれており、本研究ではま ず主管から枝管への浸入深さの評価手法を確立するこ とを目的とし3次元熱流体解析を実施した。
2.解析体系および解析手法図1に解析体系を示す。枝管は主管に直角に接続さ れ、鉛直下方に延びている。主管径、枝管径はそれぞ
れ 100mm、50mm とした3D。 - 解析手法を評価するステップは流れ場のみと温度場 を含む場合に分けて、1主管と枝管が等温の場合の浸 入深さ、2主管と枝管に温度差がある(非等温)場合 の浸入深さ(熱成層界面位置)を評価した。解析メッ シュ数は約 23 万であり、枝管部のメッシュは粘性底層 に解析格子を配置することを考慮して壁面近傍メッシ ュを作成した。D: 100mmMain Pipe Um [m/s]Tm[C]Thermal StratificationBranch Pipe T6 [C]d: 50mmFig. 1 Numerical Configuration3.解析結果(1)等温条件 主管の流速は 5[m/s]としり、流体は 25°Cの水とした (表1)。解析では2次精度離散化スキームを用い、高 レイノルズ数型の k-c モデル、低レイノルズ数型の k87,モデルや乱流モデルを適用しないケースを実施した。 図2に枝管中心軸における軸方向流速の一例として、 低レイノルズ数型 k- E による結果を示す。縦軸のプラ スが上昇流であり、枝管中心では主管との接続面近傍 のキャビティーフローを除き上昇流となっていること が分かる。浸入深さは約 18D である。Tablel Flow Condition (Tm=Tb) Um[m/s] [ Tm[°C] Tb[°C]25 | 25 0.15 0.10TTTTTTTTTT1111111I.. | HIAIIIIII III IIIIIII!!Velocity[m/s]105LLLLLLL-0.10 -0.15 120_ 5_ 10_ 15_ 20_ 25L/D Fig.2 Velocity distribution along branch pipe(2)非等温条件主管と枝管の温度差が 40°Cとなる条件の解析を実 施した。表2に熱流動条件を示す。Table2 Flow Condition (Tm >Tb) | Um[m/s] | Tm[C] | Tb[C]60 | 205図3に配管中心断面における温度分布を示す。枝管 を下降する竜巻状渦は枝管壁面に沿い、上昇流は配管 中心近傍に生じるので、枝管中心近傍の温度分布が低 くなっていることが分かる。図4に枝管壁面近傍の軸 方向温度分布を示す。浸入深さは約 15D 位置となって おり、文献による試験値 15.4D を良好に予測できて いる。また、等温条件の場合と比べて浮力の影響によ り浸入深さが小さくなっていることが分かる。4.結言(1)閉塞枝管に生じる渦の浸入深さを解析評価し、 枝管内に生じる旋回渦挙動を捉えることができた。 (2) 主管と枝管に温度差がある場合の解析結果は熱成層界面位置に関して、試験結果を良好に予測するこ とができた。また、浮力の影響によって渦の浸入深さ (熱成層界面位置)が温度差がない場合より小さくな ることが確認された。120Branch Pipeー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ーMain PipeThermal StratificationL/DBranch PipeFig.3 Temperature distribution--ト-----r--Temperature[°C]-ト--------10_ 5_ 10 15 20 25L/D Fig.4 Temperature distribution along branch pipe 参考文献 (1) 配管の高サイクル熱疲労に関する評価指針、日本機械学会、2003. [2] 中村・他4名、枝配管に起こる熱成層変動現象の実験と数値解析、Journal of the Institute of NuclearSafety System、Vol.9、2002、p.67-79. [3] 若松・他8名、滞留部の熱成層化による高サイクル熱疲労評価に関する研究 (1)、日本原子力学会 「2003年春の大会」、2003、p.50“ “閉塞枝配管における熱成層化現象解析“ “池田 浩,Hiroshi IKEDA,中田 耕太郎,Kotaro NAKADA,室伏 正,Tadashi MUROFUSHI
プラント配管内の温度の異なる 2 流体が接する個所 においては、流体の時間的な温度変動に伴い、配管構 造物に高サイクル熱疲労が生じる場合がある。このよ うな配管の高サイクル熱疲労に対しては、省令による 性能規定化に伴い日本機械学会から評価指針が示され り、実機プラントに適用される方向にある。 - 主管に枝管が接続され枝管端部が閉塞されている場 合、枝配管の接続面近傍では主流によって駆動された キャビティーフローが生じる。キャビティーフローの下の領域では壁面に沿って旋回する下降流と枝管中心 軸近傍を上昇する流れが実験で観察されており(例え ば[2])、枝管に浸入する流れによって主管と枝管の流体 に温度差がある場合、枝管に主管の温度が輸送され枝 管途中に熱成層面が形成される。このような複雑な流 れのメカニズム解明には実験と併用して、解析による 予測・評価手法の確立が望まれており、本研究ではま ず主管から枝管への浸入深さの評価手法を確立するこ とを目的とし3次元熱流体解析を実施した。
2.解析体系および解析手法図1に解析体系を示す。枝管は主管に直角に接続さ れ、鉛直下方に延びている。主管径、枝管径はそれぞ
れ 100mm、50mm とした3D。 - 解析手法を評価するステップは流れ場のみと温度場 を含む場合に分けて、1主管と枝管が等温の場合の浸 入深さ、2主管と枝管に温度差がある(非等温)場合 の浸入深さ(熱成層界面位置)を評価した。解析メッ シュ数は約 23 万であり、枝管部のメッシュは粘性底層 に解析格子を配置することを考慮して壁面近傍メッシ ュを作成した。D: 100mmMain Pipe Um [m/s]Tm[C]Thermal StratificationBranch Pipe T6 [C]d: 50mmFig. 1 Numerical Configuration3.解析結果(1)等温条件 主管の流速は 5[m/s]としり、流体は 25°Cの水とした (表1)。解析では2次精度離散化スキームを用い、高 レイノルズ数型の k-c モデル、低レイノルズ数型の k87,モデルや乱流モデルを適用しないケースを実施した。 図2に枝管中心軸における軸方向流速の一例として、 低レイノルズ数型 k- E による結果を示す。縦軸のプラ スが上昇流であり、枝管中心では主管との接続面近傍 のキャビティーフローを除き上昇流となっていること が分かる。浸入深さは約 18D である。Tablel Flow Condition (Tm=Tb) Um[m/s] [ Tm[°C] Tb[°C]25 | 25 0.15 0.10TTTTTTTTTT1111111I.. | HIAIIIIII III IIIIIII!!Velocity[m/s]105LLLLLLL-0.10 -0.15 120_ 5_ 10_ 15_ 20_ 25L/D Fig.2 Velocity distribution along branch pipe(2)非等温条件主管と枝管の温度差が 40°Cとなる条件の解析を実 施した。表2に熱流動条件を示す。Table2 Flow Condition (Tm >Tb) | Um[m/s] | Tm[C] | Tb[C]60 | 205図3に配管中心断面における温度分布を示す。枝管 を下降する竜巻状渦は枝管壁面に沿い、上昇流は配管 中心近傍に生じるので、枝管中心近傍の温度分布が低 くなっていることが分かる。図4に枝管壁面近傍の軸 方向温度分布を示す。浸入深さは約 15D 位置となって おり、文献による試験値 15.4D を良好に予測できて いる。また、等温条件の場合と比べて浮力の影響によ り浸入深さが小さくなっていることが分かる。4.結言(1)閉塞枝管に生じる渦の浸入深さを解析評価し、 枝管内に生じる旋回渦挙動を捉えることができた。 (2) 主管と枝管に温度差がある場合の解析結果は熱成層界面位置に関して、試験結果を良好に予測するこ とができた。また、浮力の影響によって渦の浸入深さ (熱成層界面位置)が温度差がない場合より小さくな ることが確認された。120Branch Pipeー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ーMain PipeThermal StratificationL/DBranch PipeFig.3 Temperature distribution--ト-----r--Temperature[°C]-ト--------10_ 5_ 10 15 20 25L/D Fig.4 Temperature distribution along branch pipe 参考文献 (1) 配管の高サイクル熱疲労に関する評価指針、日本機械学会、2003. [2] 中村・他4名、枝配管に起こる熱成層変動現象の実験と数値解析、Journal of the Institute of NuclearSafety System、Vol.9、2002、p.67-79. [3] 若松・他8名、滞留部の熱成層化による高サイクル熱疲労評価に関する研究 (1)、日本原子力学会 「2003年春の大会」、2003、p.50“ “閉塞枝配管における熱成層化現象解析“ “池田 浩,Hiroshi IKEDA,中田 耕太郎,Kotaro NAKADA,室伏 正,Tadashi MUROFUSHI