大型機器のリプレース工事における取扱技術
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カテゴリ: 第3回
1. 緒言
近年、既設発電プラントにおける補修工事の重要性 が増している。その背景には、安全性、信頼性を損な わずに経済性も考慮して機器を稼動させる考え方が認 められつつあることの他に、設備や機器の寿命に関す る計測技術の向上や補修技術の向上による効果も大き い。 - 当社が携わる補修工事の中でも、機器のリプレース 工事(取替え工事)は年々増加している。この工事の 特徴は、システム全体あるいは多くの機器群を一度に リニューアルするのではなく、継続使用が可能な領域 は残し、取替えるべき部分(単体の機器など)のみを 取替えることである。 - したがって工事期間中でも、リプレース機器の周囲 には継続して使用する機器が運転時の状態で据付けら れている。当然ながら工事の際にはこれらの周辺機器 を損傷させぬよう配慮する必要がある。 ・リプレース工事はプラントの新規建設工事と異なる 点が多く、その違いに配慮した工事用装置、治工具を 必要とする場合も多い。 1本報では補修工事の中でも最も手間のかかる工事の 1 つである大型機器のリプレースを、工事側の視点か ら取上げ、我々が開発した専用ツールとそれを用いた 工法について報告する。
術開発部、電Fig.1 工事フロco.jp2. リプレース工事の特徴- 大型機器の据付時における、プラントの新規建設の 場合と機器を取替えるリプレース工事の場合の違いに ついて Fig.1 の工事フローに沿って説明する。新規工事リプレース工事周辺養生周辺養生 -- --既設機器切離し (一次切断・分解)一切離し・分解工程| 二次切断・分解 -------+既設周辺 | 搬出 | 機器整備HUGLELO 1:0「新設機器受入新設機器受入搬出搬入工程搬入搬入据付け据付け試運転試運転周辺養生 ---------- 既設機器切離し (一次切断・分解)一切離し・分解工程ーーーーーー| 二次切断・分解 +----既設周辺 搬出 |機器整備新設機器受入搬出搬入工程搬入据付け試運転89Fig.1は上から下に作業の流れ、工程を示している。 左側には新規建設プラントにおける機器の搬入据付け 工事(以下、「新規工事」とする)の場合を示し、右側 には既設プラントの機器リプレース工事(以下「リプ レース工事」とする)の場合を示した。両工事とも、建屋は既設とし、その開口部から機器 を出し入れする場合を示している。新規工事においては、機器の据付け工事を円滑に行 えるよう、大型の機器から順次、整然と搬入され、据 付けられる。一方、リプレース工事においては、まず既設の機器 を系から切り離し(一次切断・分解)、サイズが大きく そのままでは搬出困難な機器はさらに二次切断・分解 を行い、これらを搬出する。続いてリプレースする新 設機器と接続する周辺の継続使用機器の取り合い部な どを現地で整備する。その後、リプレースする新設機 器を受け入れ、搬入し、据付けを行う。場合によって は分割して搬入し、組み立てながら据付ける。 * 搬入、据付けは前述した周辺の既設機器による作業 スペースの制限により、新規工事よりも多くの手間を 必要とする。 ・リプレース工事の工程を大きく分類すると、既設機 器の切断や分解を行う工程「切離し・分解工程」と、そ れらを搬出し、その後新設機器を搬入・据付けする工程 「搬出搬入工程」に分けられる。「切離し・分解工程」では、工場での製品製作や新規 工事とは異なった工法も多く、次の機会に紹介したい。 本報では、「搬出搬入工程」における工法、技術につい て紹介する。3.従来の工法3.1 コロ曳き工法 1. 発電プラントにおける大型機器・重量機器の建屋内 での運搬においては、従来からコロ曳き工法が主流で ある。この工法は、牽引用ウィンチの設置とコロ操作 のための広い搬出搬入エリアの確保が不可欠である。 方向転換やコロの調整時における要所要所でのジャッ キアップ作業も必須であり、手間がかかる工程となっ ている。 - コロ曳き工法はシンプルな用法と設備費が安い点で 優れ、新規工事のように干渉物が少なく、搬入スペー スも比較的広く取れる工事に対しては今なお適する現場も多い。 __ しかし、リプレース工事においては、コロ曳き工法 は多くの場合不適である。それは多くの場合コロ曳き に必要な広い作業エリアを確保することが難しいから である。新規工事では干渉位置の機器の設置時期を遅 らせることなどによりエリア確保は比較的容易である が、リプレース工事では干渉機器の仮撤去および再設 置を行わざるを得ず、工程の増加その他、多くの不利 益を生じるからである。3.2 従来型エアキャスタ工法 * コロ曳き工法に代わる工法の一つとして、エア浮上 装置(エアキャスタ)を利用した工法がある。エア浮 上装置とは、供給された圧縮エアを床面に噴きつけ、 機器を載せる台車ごと浮上させる搬出搬入装置のこと である。床面との縁が切れているため、移動に大きな 力を必要としないこと、コロ曳きと違い平面上の全て の方向に移動が可能であることがこの工法の大きな利 点である。 - 機器の搬出搬入にこの工法を適用する場合は、エア コンプレッサ、ヘッダ(エア分配器)、エア浮上装置、 走行装置(駆動装置)が必要となる。エアコンプレッサで圧縮エアを生成し、ヘッダを経 由してェア浮上装置にエアを分配する。一方、エア浮 上装置は機器の浮上機能のみを持つことから、これに 外力を与え、水平方向に機器を動かすために別に走行 装置を用いる。この課題は、従来は2台の走行装置を1セットとし て使用し、各々を操作員が操作しており、繊細な動作 に関しては迅速に必要な動きを得られないことがある ということや、走行装置各々に付けられたハンドルの 操作スペースが相応に必要であり、狭隘な場所では使 用できない例もあるということである。4. エアロキャリア工法- 以上の従来型エアキャスタ工法の課題を順次改善し てきた工法が現在大型機器のリプレース工事に適用し ている「エアロキャリア工法」である。これは制御機 器モジュールを備えたエアロキャリアシステムを採用 した工法であり、次に概要を説明する。904.1 装置構成 * エアロキャリアシステムは Fig.2 に示すように、エ アコンプレッサ、ヘッダ、ロードモジュール(エア浮 上部)、ドライブユニット(走行装置)、リモートコン トローラ、電源および制御ボックス、非常停止スイッ チで構成される。Fig.3 にエアロキャリアシステムの 取付け状況および主要構成装置単体の写真を示す。非常停止スイッチ(4個所)ドライブユニットドライブユニット、ド12リモートコント ロールボックス電源及び 制御ボックス(エアー分配器)AC100VFig.2 装置構成303310ロードモジュールドライブユニットFig.3 エアロキャリアシステムの取り付状況緊急時には非常停止スイッチを押すことで走行を停止させ、エアバック内のエアを放出し、着地させる。 コ々のリプレース機器への取付は次のように行う。搬するリプレース機器の形状、大きさ、質量から4.3 装置仕様 ードモジュールの数量を決め、その上に機器を載せ エアロキャリアシステムの仕様を Table 1 に示す。各々のリプレース機器への取付は次のように行う。 運搬するリプレース機器の形状、大きさ、質量から ロードモジュールの数量を決め、その上に機器を載せュールの数量を決め、その上に機器を載せ-91る。状況により、ロードモジュール同士の連結と荷台 を兼ねた載荷台と呼ばれる部材を介して機器を載せる 場合もある。2 台のドライブユニットを機器もしくは 載荷台に取り付ける。エアホース、電源ケーブル、制 御ケーブルを各構成機器間に接続する。4.2 作用および動作 - ロードモジュールは台座とそれに組付けられたエア バックから構成される。エアバックは下面に複数の開 口を有し、圧縮エアを通気すると開口からエアが噴出 し浮上力を得る。供給するエアの圧力を制御すること で数十mm の浮上量制御を行うことができる。ドライブユニットは内部にエアモータで駆動する出 し入れ可能な走行車輪を持つ。ロードモジュールとド ライブユニットの走行車輪は互いに同期しており、浮 上と同時に走行車輪が下面に出て走行面に接地し、微 勾配の下流への流れ(自然移動)を防止すると共に走 行状態とする。走行装置の座標を制御装置にあらかじ め入力することにより、走行車輪の軸を回転する装置 で車輪の動く方向を決め、各ドライブユニットに内蔵 された2個の車輪でFig.4に示す<1><2><3>など の各走行パターンを可能にする。ドライブユニット - ロードモジュール -左右移動取込口中心)ワイバーターン13Fig.4 走行パターンTable 1 エアロキャリアシステムの仕様01220×1220 寸法×高さ68mm/144mm 容量360kN(約 36tf)/台 ロード 揚程74mm モジュ摩擦係数 | 0.001~0.005 ールエア消費量 | 1.580m2/min 接続台数 |9台以下(目安) 自重 | 81kg/台 寸法01065×930×高さ 474mm ドライ走行速度 | 12m/min (max) ブユニ登坂能力 1.5% 質量500kg/台 「その他 | 床養生 「鋼板+アルミテープ(隙間)」ドライ ブュニ ット 4.4 運用例と効果このエアロキャリア工法による施工法は発電プラン トにおける質量 140t以下の機器の搬出搬入、移動、据 付け作業等数多くの実績がある。 1 運用例として、Fig.5 に給水加熱器の搬送時の状況、 Fig.6に復水器水室の搬送時の状況を示す。 * 本工法の効果は特に工期の短縮にある。 1. 本工法はリプレース工事特有の狭い経路での搬出搬 入に際し、必要最低限のスペースで工事を遂行できる 点で非常に優れ、それと共に最小高さが低く、かつ十 分な揚程を持つロードモジュールにより、据付け場所 でのオンベース(基礎の上に載せること)まで対応で きるものであることが多くの実績を残すことにつなが っている。Fig.5 給水加熱器の搬送時の状況Fig.5に示す機器を例にとると従来2日程度かけて運 搬した経路を本工法によれば約半分の工期で運搬が可 能となっている。IIコロードモジュール コドライブユニットFig.6 復水器水室の搬送時の状況5. 結言プラントの補修工事における機器のリプレースには 新規建設工事での機器据付けとは異なった、特に狭い スペースしかないという据付作業の難しさがある。リ プレース機器据付け場所および搬出搬入路周辺の既設 設備への影響を最小限にしつつ短期間で安全に機器を 移動させることである。 1. 本報では有用な施工技術の1つである「エアロキャ リア工法」による大型機器のリプレース工事を取上げ、 新規工事とは異なる補修工事の一例として紹介した。今後も発電設備においては安全性、信頼性、経済性 を両立した機能保全の立場から、必要十分な部分、機 器のみを交換するリプレース工事はさらに重要となる。 従来とは異なるこれらのリプレース工事に対応する工 事用装置・治工具に関しても、新規工事、工場設備とは 異なった視点での工法開発、装置開発がより必要とな ろう。参考文献山本好輝、 “大型機器リプレース工事での「エア ロキャリア工法」の採用”、 電気現場技術、 Vol.45, No.524、2006、 pp.39-43.“ “大型機器のリプレース工事における取扱技術“ “向山 素,Motoi MUKAIYAMA,山本 好輝,Yoshiteru YAMAMOTO
近年、既設発電プラントにおける補修工事の重要性 が増している。その背景には、安全性、信頼性を損な わずに経済性も考慮して機器を稼動させる考え方が認 められつつあることの他に、設備や機器の寿命に関す る計測技術の向上や補修技術の向上による効果も大き い。 - 当社が携わる補修工事の中でも、機器のリプレース 工事(取替え工事)は年々増加している。この工事の 特徴は、システム全体あるいは多くの機器群を一度に リニューアルするのではなく、継続使用が可能な領域 は残し、取替えるべき部分(単体の機器など)のみを 取替えることである。 - したがって工事期間中でも、リプレース機器の周囲 には継続して使用する機器が運転時の状態で据付けら れている。当然ながら工事の際にはこれらの周辺機器 を損傷させぬよう配慮する必要がある。 ・リプレース工事はプラントの新規建設工事と異なる 点が多く、その違いに配慮した工事用装置、治工具を 必要とする場合も多い。 1本報では補修工事の中でも最も手間のかかる工事の 1 つである大型機器のリプレースを、工事側の視点か ら取上げ、我々が開発した専用ツールとそれを用いた 工法について報告する。
術開発部、電Fig.1 工事フロco.jp2. リプレース工事の特徴- 大型機器の据付時における、プラントの新規建設の 場合と機器を取替えるリプレース工事の場合の違いに ついて Fig.1 の工事フローに沿って説明する。新規工事リプレース工事周辺養生周辺養生 -- --既設機器切離し (一次切断・分解)一切離し・分解工程| 二次切断・分解 -------+既設周辺 | 搬出 | 機器整備HUGLELO 1:0「新設機器受入新設機器受入搬出搬入工程搬入搬入据付け据付け試運転試運転周辺養生 ---------- 既設機器切離し (一次切断・分解)一切離し・分解工程ーーーーーー| 二次切断・分解 +----既設周辺 搬出 |機器整備新設機器受入搬出搬入工程搬入据付け試運転89Fig.1は上から下に作業の流れ、工程を示している。 左側には新規建設プラントにおける機器の搬入据付け 工事(以下、「新規工事」とする)の場合を示し、右側 には既設プラントの機器リプレース工事(以下「リプ レース工事」とする)の場合を示した。両工事とも、建屋は既設とし、その開口部から機器 を出し入れする場合を示している。新規工事においては、機器の据付け工事を円滑に行 えるよう、大型の機器から順次、整然と搬入され、据 付けられる。一方、リプレース工事においては、まず既設の機器 を系から切り離し(一次切断・分解)、サイズが大きく そのままでは搬出困難な機器はさらに二次切断・分解 を行い、これらを搬出する。続いてリプレースする新 設機器と接続する周辺の継続使用機器の取り合い部な どを現地で整備する。その後、リプレースする新設機 器を受け入れ、搬入し、据付けを行う。場合によって は分割して搬入し、組み立てながら据付ける。 * 搬入、据付けは前述した周辺の既設機器による作業 スペースの制限により、新規工事よりも多くの手間を 必要とする。 ・リプレース工事の工程を大きく分類すると、既設機 器の切断や分解を行う工程「切離し・分解工程」と、そ れらを搬出し、その後新設機器を搬入・据付けする工程 「搬出搬入工程」に分けられる。「切離し・分解工程」では、工場での製品製作や新規 工事とは異なった工法も多く、次の機会に紹介したい。 本報では、「搬出搬入工程」における工法、技術につい て紹介する。3.従来の工法3.1 コロ曳き工法 1. 発電プラントにおける大型機器・重量機器の建屋内 での運搬においては、従来からコロ曳き工法が主流で ある。この工法は、牽引用ウィンチの設置とコロ操作 のための広い搬出搬入エリアの確保が不可欠である。 方向転換やコロの調整時における要所要所でのジャッ キアップ作業も必須であり、手間がかかる工程となっ ている。 - コロ曳き工法はシンプルな用法と設備費が安い点で 優れ、新規工事のように干渉物が少なく、搬入スペー スも比較的広く取れる工事に対しては今なお適する現場も多い。 __ しかし、リプレース工事においては、コロ曳き工法 は多くの場合不適である。それは多くの場合コロ曳き に必要な広い作業エリアを確保することが難しいから である。新規工事では干渉位置の機器の設置時期を遅 らせることなどによりエリア確保は比較的容易である が、リプレース工事では干渉機器の仮撤去および再設 置を行わざるを得ず、工程の増加その他、多くの不利 益を生じるからである。3.2 従来型エアキャスタ工法 * コロ曳き工法に代わる工法の一つとして、エア浮上 装置(エアキャスタ)を利用した工法がある。エア浮 上装置とは、供給された圧縮エアを床面に噴きつけ、 機器を載せる台車ごと浮上させる搬出搬入装置のこと である。床面との縁が切れているため、移動に大きな 力を必要としないこと、コロ曳きと違い平面上の全て の方向に移動が可能であることがこの工法の大きな利 点である。 - 機器の搬出搬入にこの工法を適用する場合は、エア コンプレッサ、ヘッダ(エア分配器)、エア浮上装置、 走行装置(駆動装置)が必要となる。エアコンプレッサで圧縮エアを生成し、ヘッダを経 由してェア浮上装置にエアを分配する。一方、エア浮 上装置は機器の浮上機能のみを持つことから、これに 外力を与え、水平方向に機器を動かすために別に走行 装置を用いる。この課題は、従来は2台の走行装置を1セットとし て使用し、各々を操作員が操作しており、繊細な動作 に関しては迅速に必要な動きを得られないことがある ということや、走行装置各々に付けられたハンドルの 操作スペースが相応に必要であり、狭隘な場所では使 用できない例もあるということである。4. エアロキャリア工法- 以上の従来型エアキャスタ工法の課題を順次改善し てきた工法が現在大型機器のリプレース工事に適用し ている「エアロキャリア工法」である。これは制御機 器モジュールを備えたエアロキャリアシステムを採用 した工法であり、次に概要を説明する。904.1 装置構成 * エアロキャリアシステムは Fig.2 に示すように、エ アコンプレッサ、ヘッダ、ロードモジュール(エア浮 上部)、ドライブユニット(走行装置)、リモートコン トローラ、電源および制御ボックス、非常停止スイッ チで構成される。Fig.3 にエアロキャリアシステムの 取付け状況および主要構成装置単体の写真を示す。非常停止スイッチ(4個所)ドライブユニットドライブユニット、ド12リモートコント ロールボックス電源及び 制御ボックス(エアー分配器)AC100VFig.2 装置構成303310ロードモジュールドライブユニットFig.3 エアロキャリアシステムの取り付状況緊急時には非常停止スイッチを押すことで走行を停止させ、エアバック内のエアを放出し、着地させる。 コ々のリプレース機器への取付は次のように行う。搬するリプレース機器の形状、大きさ、質量から4.3 装置仕様 ードモジュールの数量を決め、その上に機器を載せ エアロキャリアシステムの仕様を Table 1 に示す。各々のリプレース機器への取付は次のように行う。 運搬するリプレース機器の形状、大きさ、質量から ロードモジュールの数量を決め、その上に機器を載せュールの数量を決め、その上に機器を載せ-91る。状況により、ロードモジュール同士の連結と荷台 を兼ねた載荷台と呼ばれる部材を介して機器を載せる 場合もある。2 台のドライブユニットを機器もしくは 載荷台に取り付ける。エアホース、電源ケーブル、制 御ケーブルを各構成機器間に接続する。4.2 作用および動作 - ロードモジュールは台座とそれに組付けられたエア バックから構成される。エアバックは下面に複数の開 口を有し、圧縮エアを通気すると開口からエアが噴出 し浮上力を得る。供給するエアの圧力を制御すること で数十mm の浮上量制御を行うことができる。ドライブユニットは内部にエアモータで駆動する出 し入れ可能な走行車輪を持つ。ロードモジュールとド ライブユニットの走行車輪は互いに同期しており、浮 上と同時に走行車輪が下面に出て走行面に接地し、微 勾配の下流への流れ(自然移動)を防止すると共に走 行状態とする。走行装置の座標を制御装置にあらかじ め入力することにより、走行車輪の軸を回転する装置 で車輪の動く方向を決め、各ドライブユニットに内蔵 された2個の車輪でFig.4に示す<1><2><3>など の各走行パターンを可能にする。ドライブユニット - ロードモジュール -左右移動取込口中心)ワイバーターン13Fig.4 走行パターンTable 1 エアロキャリアシステムの仕様01220×1220 寸法×高さ68mm/144mm 容量360kN(約 36tf)/台 ロード 揚程74mm モジュ摩擦係数 | 0.001~0.005 ールエア消費量 | 1.580m2/min 接続台数 |9台以下(目安) 自重 | 81kg/台 寸法01065×930×高さ 474mm ドライ走行速度 | 12m/min (max) ブユニ登坂能力 1.5% 質量500kg/台 「その他 | 床養生 「鋼板+アルミテープ(隙間)」ドライ ブュニ ット 4.4 運用例と効果このエアロキャリア工法による施工法は発電プラン トにおける質量 140t以下の機器の搬出搬入、移動、据 付け作業等数多くの実績がある。 1 運用例として、Fig.5 に給水加熱器の搬送時の状況、 Fig.6に復水器水室の搬送時の状況を示す。 * 本工法の効果は特に工期の短縮にある。 1. 本工法はリプレース工事特有の狭い経路での搬出搬 入に際し、必要最低限のスペースで工事を遂行できる 点で非常に優れ、それと共に最小高さが低く、かつ十 分な揚程を持つロードモジュールにより、据付け場所 でのオンベース(基礎の上に載せること)まで対応で きるものであることが多くの実績を残すことにつなが っている。Fig.5 給水加熱器の搬送時の状況Fig.5に示す機器を例にとると従来2日程度かけて運 搬した経路を本工法によれば約半分の工期で運搬が可 能となっている。IIコロードモジュール コドライブユニットFig.6 復水器水室の搬送時の状況5. 結言プラントの補修工事における機器のリプレースには 新規建設工事での機器据付けとは異なった、特に狭い スペースしかないという据付作業の難しさがある。リ プレース機器据付け場所および搬出搬入路周辺の既設 設備への影響を最小限にしつつ短期間で安全に機器を 移動させることである。 1. 本報では有用な施工技術の1つである「エアロキャ リア工法」による大型機器のリプレース工事を取上げ、 新規工事とは異なる補修工事の一例として紹介した。今後も発電設備においては安全性、信頼性、経済性 を両立した機能保全の立場から、必要十分な部分、機 器のみを交換するリプレース工事はさらに重要となる。 従来とは異なるこれらのリプレース工事に対応する工 事用装置・治工具に関しても、新規工事、工場設備とは 異なった視点での工法開発、装置開発がより必要とな ろう。参考文献山本好輝、 “大型機器リプレース工事での「エア ロキャリア工法」の採用”、 電気現場技術、 Vol.45, No.524、2006、 pp.39-43.“ “大型機器のリプレース工事における取扱技術“ “向山 素,Motoi MUKAIYAMA,山本 好輝,Yoshiteru YAMAMOTO