事業者の根本原因分析実施内容を規制当局が評価するガイドライン
公開日:
カテゴリ: 第5回
1.ガイドライン制定の背景
. 1 総合資源エネルギー調査会 原子力安全・保安部 故・ 会「検査の在り方に関する検討会」の審議を踏まえ二次 てまとめられた原子力安全・保安院の報告書「原子の統 力発電施設に対する検査制度の改善について」(平成 原 18年9月)において、現行の原子力発電所の検査制くに 度の課題として、以下のことが示されている。 して 「3.事業者による不適合是正の徹底日本の原子力発電施設におけるトラブル件数を 一プラント当たりでみると、この25年間で一貫して 減少傾向にある。しかし、人的過誤に起因する事故・ トラブル件数の全件数に占める割合は、減少傾向に はない(図-1参照)。人的過誤の中には、組織要因 あるいは安全文化・組織風土の劣化を背景としてい るものがみられる。 1 総合資源エネルギー調査会 原子力安全・保安部 会「検査の在り方に関する検討会」の審議を踏まえ てまとめられた原子力安全・保安院の報告書「原子 力発電施設に対する検査制度の改善について」(平成 18年9月)において、現行の原子力発電所の検査制 度の課題として、以下のことが示されている。 「3. 事業者による不適合是正の徹底日本の原子力発電施設におけるトラブル件数を 一プラント当たりでみると、この25年間で一貫して 減少傾向にある。しかし、人的過誤に起因する事故・」 トラブル件数の全件数に占める割合は、減少傾向に はない(図-1参照)。人的過誤の中には、組織要因 あるいは安全文化・組織風土の劣化を背景としてい るものがみられる。 * 実際に、保安検査及び定期安全管理審査で指摘し た結果をみると、マニュアル上の欠落、設備の故障、 作業員の不注意といった表面的、すなわち、顕在化 した事象の指摘にとどまり、事業者による組織要因 を中心とする根本的な原因(以下「根本原因」とい います。)を分析する活動は十分には行われていませ組織要因ある り発生した事 んでした。また、1990年代後半以降、組織要因ある いは安全文化・組織風土の劣化により発生した事 故・トラブルが顕在化してきています。美浜3号機 二次系配管破損事故の背景には、事業者の安全文化」 の綻びがあったことが指摘されています。 * 原子力発電施設の安全確保水準を更に高めてい くには、このような要因による不適合の是正を徹底 していくことが課題となっています。」 くには、こ していくこ
当たりの報告件数 ●一人的過割合(%) 一形人的合(%))
図-1 稼動基数当たりの法律・通達対象事象の報告件数 と、報告件数の占める人的過誤事象の割合の経年変化 上記の課題を踏まえて、同報告書では、以下の3 種のガイドラインの整備を求めている。 1 人的過誤等の直接要因に対する事業者の評価・改善状況を評価する指針の整備 図-1 稼動基数当たりの法律・通達対象事象の報告件数 と、報告件数の占める人的過誤事象の割合の経年変化 上記の課題を踏まえて、同報告書では、以下の3 のガイドラインの整備を求めている。 人的過誤等の直接要因に対する事業者の評価・ 改善状況を評価する指針の整備
2 根本原因分析のためのガイドライン等の整備 3 安全文化・組織風土の劣化防止のためのガイドラインの整備 * このうち、2については、具体的に以下のように 記述されている。 「事故・トラブルの誘因となる組織要因に対しては、 人的過誤等の直接要因とは異なり、その性質上、事 業者における不適合是正のための取組みは十分には 行われにくい状況にあります。しかし、組織要因に よる不適合については、根本的な要因の分析を踏ま えた是正を行わなければ、事故やトラブルの再発を 防ぐことは困難です。また、根本的な要因分析の結 果を他に水平展開することにより、同様のトラブル を未然に防止することが可能となります。こうした 根本原因分析を促進する有力な手段が品質保証活動 の充実です。このため、事業者による根本原因分析 を実効的なものにする観点から、品質保証規格の体 系の中で、根本原因分析の対象となる事象の抽出に 係る考え方など事業者が活用できるガイドラインを 整備していくことが必要です。国としては、学協会 等に対し、こうしたガイドラインの整備を求めると ともに、事業者の根本原因分析の実施内容を確認・ 評価するための指針を策定することが必要です。」以上の要求を受け、独立行政法人原子力安全基盤 機構(以下「JNES」と略す)では、事業者の根本原 因分析の実施内容を確認・評価するための指針(ガ イドライン)の検討を開始した。2. ガイドラインの検討・制定* 最初に、「根本原因分析に対する国の要求事項(以 下「国の要求事項」と略す)」が、2007年1月 25 日 に実施された総合資源エネルギー調査会 原子力安 全・保安部会 原子炉安全小委員会 第5回安全管理 技術評価 WG(以下「安全管理技術評価 WG」と略 す) において決議された。「国の要求事項」は「事業 者の保安活動において、最低限遵守しなければなら ない内容を規制上明確にするために、規制当局が定 めるもの」として制定され、「根本原因分析に対する 要求事項を具体化にすることによって、事業者にお いては、不適合事象の再発防止、未然防止のための 具体的な取り組みが可能となり、原子力安全のより一層の確保を促すことができる一方、規制当局にと っては公平かつ客観的な検査を行うための判断基準 となる」と位置付けられている。具体的には、以下の4項目である。 11 根本原因分析の実施にあたっては、分析主体の中立性、分析結果の客観性及び分析方法の 論理性が確保されることを確実にすること。 安全に重大な影響を与える事象については、 適切な是正処置及び予防処置を行い、再発防 止を確実にするため、その事象ごとに根本原 因分析を実施すること。 3 安全に重大な影響を与える事象以外の事象にあっては、是正処置を講じた後、蓄積されて いる不適合等に関するデータを分析し、起こ りうる不適合の発生を防止する予防処置を講 ずるため、必要に応じて、根本原因分析を実施すること。 4是正処置及び予防処置は、根本原因分析結果に対応した適切なものであり、又、具体的な 実施計画を明確にし、確実に実施すること。 「国の要求事項」の決議の際に参考として提示さ れた根本原因分析の実施手順を図-2に示す。SNEY 根本原因分析の導入について(参考)規当局が確認・ 評価するための ガイドライン直接原因分析の安全に重大な影を与える事象 「安全に係わる重大な事故 | 安室運反(反107) 豊根本原因分析(I)2行以外の本是正処置!根本原因分析 ・ガイドラインデータの分析「それ自身は安全上大ではないが、 類似性/発としての問題が在している「 可能性がある予防処置ではではーーーーーー 図-2 根本原因分析の実施手順根本原因分析の実施に係る法的根拠としては、 2007年8月9日公布(2007年12月14日施行)の「実用 発電用原子炉の設置、運転等に関する規則」及び「研 究開発段階にある発電の用に供する原子炉の設置、 運転等に関する規則」の一部を改正する省令の中で、 (保安活動の改善) 第七条の三の七第一項二号に「生 じるおそれのある不適合を防止するための予防に関 する処置に関する手順(第十九条の十七第一項各号13に掲げる事故故障等の事象その他が発生した根本的 な原因を究明するために行う分析(以下「根本原因 分析」という。)の手順を含む。)を確立して行うこ と。」と、また(保安規定) 第十六条第一項十九号に 「原子炉施設の品質保証に関すること(根本原因分 析の方法及びこれを実施するための体制を含む)。」 と、それぞれ明記された。その後、JNES の中に設置した「安全規制におけ る原子力安全文化(組織風土の劣化防止) 検討会」 におけるガイドラインの検討結果を国の安全管理技 術評価 WG 及び同 WG 品質保証サブ WG に提示し て審議され、書面投票を経て 2007年8月27日に実 施された第12回安全管理技術評価 WGにおいて「事 業者の根本原因分析実施内容を規制当局が評価する ガイドライン(以下「ガイドライン」と略す)」が承 認された。そして、「国の要求事項」及び「ガイドライン」 の内容を受けて、民間規格として日本電気協会の 「JEAG4121-2005「2007年追補版2」の附属書「根 本原因分析のガイド」(以下「JEAG4121 追補版2」 と略す)」が 2007年 12月5日に制定された。また、2007年12月14日に原子力安全・保安院か ら「事業者の根本原因分析実施内容を規制当局が評 価するガイドラインについて(NISA-166c-07-10)」 が発出され、「ガイドライン」が事業者に周知された。3. ガイドラインの内容「ガイドライン」は、その目的の中でも述べている ように、「事業者が実施した根本原因分析とその分析 結果に基づく是正処置及び予防処置が妥当であるこ とを(規制当局が) 確認する視点について示したも の」である。以下にガイドラインの内容について簡 単に示す。. 1 ガイドラインの構成と特徴 「ガイドライン」の章立ては以下の通りである。 1.序論 2.目的 3.用語の定義 4.事業者の実施した根本原因分析を規制当局が確認する視点 * 4. 1 一般要件を確認する視点4.2 根本原因分析の対象となる事象の抽出 - , が妥当であることを確認する視点 4.3 根本原因分析に先立つ直接原因分析内容を確認する視点」 4.4 事業者が実施した根本原因分析のプロセス及び結果を確認する視点 4.5 是正処置及び予防処置が妥当であることを確認する視点 5. ガイドラインの見直し (参考資料)根本原因分析における組織要因の視点章立てに示したように、「1.序論」という章が あることに特徴がある。「1.序論」の中で、適用に おいて十分な配慮が必要な4項目を以下のように強 調している。 1 根本原因分析が国の要求事項を満足してい るか否か判断するとともに、根本原因分析 の手法、プロセス、結果などについて事業 者の改善活動を更に促す観点から評価すること。 2 ガイドラインの記載内容に疑問が生じた場 合は、文言に細かくこだわるのではなく、 根本原因分析の趣旨に照らして柔軟に対応すること。 3 事業者の取組の確認に際しては、常に事業 者との議論を活発に行い、事業者の採用し た分析手法や考え方についてはその多様性 を受け入れること。 不適合を引き起こした人の行動には、思い 込み、間違った判断、確認不足等の負の要 因の他に、労働環境改善、効率改善、コス トダウンの追及等の正の効果を期待した行 動の行き過ぎによる負の効果(影響)が存 在しうることも十分に認識しておくこと。* 3.2 用語の定義の明確化「ガイドライン」内で用いる用語を明確に定義し た。これらの用語の定義は、「JEAG4121 追補版2」 でも全く同じ定義が用いられ統一を図った。これは、 「根本原因分析」や「組織要因」という用語が、事 業者等によって様々な意味に用いられていることを 鑑み、事業者と規制当局の間で明確に相互理解する ことを意図したものである。主要な用語の定義は以14下の通りである。 ●根本原因分析:直接原因分析を踏まえて、組 織要因を分析し、マネジメントシステムを改 善する処置をとること。 (注)一般的には技術的要因を分析することも含まれるが、技術的に既知であ るにもかかわらず適切に組織的な対 応がとられていないために発生して いる事故・故障が多いことを考慮し、このように定義する。 ・組織要因:直接要因を未然に防止することが できなかった組織活動に係る要素の集合体。3.3 根本原因分析の実施基準根本原因分析の実施基準としては、「2. ガイド ラインの検討・制定」に示した「国の要求事項」の 2、3項を引用している。根本原因分析実施に当た っての実質的な実施基準は事業者が「JEAG4121 追 補版2」に従って作成する「根本原因分析実施手順 書」等の規定に明記され、発生した事象もしくは事 象群に対する根本原因分析の実施の要否は基本的に は事業者が決定する。3.4 根本原因分析のプロセス及び結果を確認す・ るための3つの視点 「2. ガイドラインの検討・制定」に示した「国 の要求事項」のO項を受けて、根本原因分析のプロ セス及び結果を確認するための視点として、大きく 以下の3点を設定した。1 分析主体の中立性を確認する視点 2 分析結果の客観性を確認する視点 3 分析方法の論理性を確認する視点 以下でそれぞれの視点の概要を述べる。 また、全般的な注意事項として、視点の提示に先 立って、「以下の記載内容は、一律に全項目を適用す るのではなく、分析結果及び事業者のマネジメント システムから見た、各項目の重要度に応じて適用す る視点及びその深さを判断すること。」ということを 明記し、事象の原子力安全に対する重要度を考慮し て視点を適用する必要性を示している。1 分析主体の中立性を確認する視点 分析が的確に実施されるためには、分析を実施する主体が分析対象事象に関係した部門に対し て中立的な立場にあることや、分析を実施したこ とによって処遇上の不利益を被る恐れがないこ とが求められる。また、組織要因を抽出する観点 からは、経営層に対するインタビューが必要とな る場合も考えられる。それらを考慮し、以下の4 点の視点を設定した。 (1) 分析を実施する主体は、当該事象に直接関与した部門以外で構成されていること。(2) 必要なデータに対するアクセス権限を与えられていること。又、経営層や関連部 門に対するインタビュー等の調査を実施できること。 (3) 根本原因分析及びその結果によって、分析を行った者が処遇上の不利益を被ることがないよう保証されていること。 (4) 根本原因分析を主導する者は、発電所の保安活動等の実務経験を有するか又は 理解していること、及び根本原因分析に係る教育訓練を受けていること。 分析を行った者、分析を実施する主体、分析を主 導する者の間の関係の例を図-3に示す。分析を実施する主体当該事象に直接関与した部門以外の者分析を主導する者1発電所の保安活動等の実務経験を有するか又は理解している者及び 2根本原因分析に係る教育訓練を受けている者分析を行った者図-3:分析を行った者等の間の関係の例2 分析結果の客観性を確認する視点 国に報告された法令対象事象の報告書の中に は、第3者には理解しにくいような記載内容とな っているものも見受けられるため、「(4) 分析の 結果が第三者に分かるように整理されているこ15と。」として、以下の4点の視点を設定している。 (i)事象や問題点の内容の中で、関与した組織・個人が匿名的に識別されて、取られた行 動等が具体的に記述されていること。但し識 別に対し特別な配慮が必要な場合を除く。 (注) 「匿名的な識別」とは、組織における責任・権限・役割に基づく識別である。 同一の責任・権限・役割を持つ者が複 数人いる場合には、A、B等の記号を用いて識別する。 (i)問題点が明確にされ、具体的にかつ可能な限り定量的に記述されていること。 (ii)問題点に対応した組織要因が明確にされ、具体的に記述されていること。 (iv) 組織要因に対応した対策が明確にされ、* 具体的に記述されていること。 それぞれの視点については、具体的な例を記載 して、理解を容易にしている。(ili)の例を以下 に示す。 例:「標準を作るしくみが不適切」、「エラー防 止活動が不足」という抽象的な記述でなく、 「点検・保全計画についてはメーカ任せにな っており、事業者として、内容の重要度に応 じて必要なレビューを行うしくみがなかっ た」、「発電所としてエラー防止の重要性を認 識していたが、作業実施前に起こり得るエラ ーの洗い出し・評価のための活動を推進して いなかった」のように具体的に記述されてい ること。3 分析方法の論理性を確認する視点 - 原因分析手法として、幾つかの手法が一般的に 知られている。「ガイドライン」では、どの手法 をどのような事象に対して適用するかというこ とは事業者に任されているという立場を取るが、 根本原因分析によって組織要因が的確にかつ抜 け落ちなく抽出されることを確実にするために、 用いられている手法や分析の考え方を確認する 視点として、以下の6点の視点を設定している。 (1) 報告された事象に応じて、根本原因分析が組織要因とその因果関係の視点を考慮 した体系的な分析(注)となっていること。-2-3(注)体系的な分析とは、類似の要因による事故を防止する上で重要となる要因が 抜け落ちないよう、一定の枠組みに基 づいて要因を洗い出し、結果に対する 影響の大きさに基づいて絞り込むことを指す。 (2) 必要に応じ、様々な視点から事象、データ、調査結果等の横断的な分析が実施さ れ、共通の要因が探求されていること。 マネジメントシステムの不適切さを改善 するのに必要な深さまで分析されていること。 (4) 必要に応じ、過去の是正処置及び予防処置の不適切さについて検討されていること。 (5) 必要に応じ、当該事象発生前後の変化及び変更による差異の要因が分析されていること。 (6) 必要に応じ、事象の発生あるいは人的過誤を防ぐために、障壁が無かったのか、 障壁が失われていたのか、障壁が機能し ていなかったのかの分析が行われていること。このうち、(3) はいわゆる「ストップルール」 であり、分析の深さが浅いところで止まってしま ったり、逆に不必要に拡大していったりすること を防止している。また、(2)及び(4)~(6) は全て「必要に応じ」と冒頭に記載し、視点を全 ての事象に一律に適用せず、必要性を判断するこ とを求めている。-63.5 JOFL の開発 - 前述の「3.48分析方法の論理性を確認する視 点」の説明の中で示したように、事業者は様々な根 本原因分析手法を採用して分析を実施することが予 想される。「ガイドライン」を用いて事業者が実施し た根本原因分析結果を規制当局が確認するに当たっ ての参考とすることを目的として、「JNES 組織要因 表(JNES Organizational Factors List: JOFL)」を開発 した。16JOFL は、JNES が継続的に検討・開発を行ってき た、安全文化の阻害要因としての組織要因を同定す るための「組織信頼性モデル(OR モデル)」と、総合 的な視点から安全文化の脆弱性を明確化するための 「安全文化評価支援ツール(SCEST)」の評価項目を 統合し、それに基づいて組織要因評価項目を再設定 して原案を作成した。さらにその原案に対して、原 子力安全・保安院が実施した具体的事例への適用の 試行結果を受けて、最終的に「6個の大分類項目、 63個の中・小分類項目、137項目の視点とその確認 のための質問」から構成される「リファレンスリス ト」として体系化した。このうち6個の大分類項目については、「ガイドラ イン」の「参考資料:根本原因分析における組織要 因の視点」に、「1. 外部環境要因、2.組織心理要 因、3.経営管理要因、4. 中間管理要因、5.集 団要因、6.個人要因」として記載している。3.6 是正処置・予防処置が妥当であることを確認する観点 国に報告された法令対象事象の報告書には、是正 処置の内容は記載されているものの、その実施スケ ジュールや、特に処置の効果の測定・評価やそれら に基づくフォローについては記載されていないもの が多い。適切な処置が実施されなければ、事象の再 発を防止することは難しいことから、是正処置・予 防処置が妥当であることを確認する視点として、以 下の5点を設定した。 (1) 根本原因分析に対応した是正処置及び予防処置が策定されていること。なお、処置を講 じない場合には、その根拠が明確にされてい ること。 是正処置及び予防処置の効果の評価が行わ れ、類似の直接要因のうちどの範囲までが防 止できるのか明確になっていること。 是正処置及び予防処置が及ぼすと考えられ る副作用についての評価が行われているこ-2と。-4是正処置及び予防処置の具体的な実施計画 (体制、スケジュール、リソース、フォローの仕方、実効性の評価方法、優先順位等)が 明確になっており、関係職員に納得して受容され、かつ実行可能であること。 (5) 是正処置及び予防処置の水平展開の必要性及び適用範囲が検討されていること。 根本原因分析が、予防処置の立案・実施による「未 然防止」を目的の一つとしていることから、(2) で は類似の直接要因を防止できる範囲を検討すること を求め、また(5) では水平展開の適用範囲を検討 することを求めている。4. ガイドラインの今後の運用「ガイドライン」では「5.ガイドラインの見直 し」という章を独立して設定し、そこには「本ガイ ドラインは、今後の実際の活用の中で新たな知見を 入れつつ不断に見直すこととする。」と記載している。 これは、本「ガイドライン」が根本原因分析の事例 が少ない現状を基に作成されたものであることを意 識したものであり、平成 20 年度以降に実際に事業者 が実施した根本原因分析実施内容の確認を実施する 中で得られた知見や事業者と規制当局の間のコミュ ニケーション内容を反映して、適宜「ガイドライン」 の見直しを実施していくことを予定している。参考文献[1](独)原子力安全基盤機構・規格基準部、安全文化評価手法(実施解説書)”、JNES-SS レポート・JNES-SS-0616、2006 [2] 原子力安全・保安院、“原子力発電施設に対する検査制度の改善について”、2006 [31 (独)原子力安全基盤機構・規格基準部、07基比報一0003“原子力安全文化の組織内醸成と定着化の基盤整備”、2007 [4] 牧野眞臣、“人的過誤事象の人的要因分析結果と根本原因分析ガイドラインの整備”、電気学会研究会資料 NE-07-8、2007 [5] 原子力安全・保安院、NISA-166c-07-10 “事業者の ““根本原因分析実施内容を規制当局が評価するガイ ドラインについて”、2007
“ “事業者の根本原因分析実施内容を規制当局が評価するガイドライン“ “畑 孝也,Takaya HATA,牧野 眞臣,Maomi MAKINO,小坂 淳彦,Atsuhiko KOSAKA
. 1 総合資源エネルギー調査会 原子力安全・保安部 故・ 会「検査の在り方に関する検討会」の審議を踏まえ二次 てまとめられた原子力安全・保安院の報告書「原子の統 力発電施設に対する検査制度の改善について」(平成 原 18年9月)において、現行の原子力発電所の検査制くに 度の課題として、以下のことが示されている。 して 「3.事業者による不適合是正の徹底日本の原子力発電施設におけるトラブル件数を 一プラント当たりでみると、この25年間で一貫して 減少傾向にある。しかし、人的過誤に起因する事故・ トラブル件数の全件数に占める割合は、減少傾向に はない(図-1参照)。人的過誤の中には、組織要因 あるいは安全文化・組織風土の劣化を背景としてい るものがみられる。 1 総合資源エネルギー調査会 原子力安全・保安部 会「検査の在り方に関する検討会」の審議を踏まえ てまとめられた原子力安全・保安院の報告書「原子 力発電施設に対する検査制度の改善について」(平成 18年9月)において、現行の原子力発電所の検査制 度の課題として、以下のことが示されている。 「3. 事業者による不適合是正の徹底日本の原子力発電施設におけるトラブル件数を 一プラント当たりでみると、この25年間で一貫して 減少傾向にある。しかし、人的過誤に起因する事故・」 トラブル件数の全件数に占める割合は、減少傾向に はない(図-1参照)。人的過誤の中には、組織要因 あるいは安全文化・組織風土の劣化を背景としてい るものがみられる。 * 実際に、保安検査及び定期安全管理審査で指摘し た結果をみると、マニュアル上の欠落、設備の故障、 作業員の不注意といった表面的、すなわち、顕在化 した事象の指摘にとどまり、事業者による組織要因 を中心とする根本的な原因(以下「根本原因」とい います。)を分析する活動は十分には行われていませ組織要因ある り発生した事 んでした。また、1990年代後半以降、組織要因ある いは安全文化・組織風土の劣化により発生した事 故・トラブルが顕在化してきています。美浜3号機 二次系配管破損事故の背景には、事業者の安全文化」 の綻びがあったことが指摘されています。 * 原子力発電施設の安全確保水準を更に高めてい くには、このような要因による不適合の是正を徹底 していくことが課題となっています。」 くには、こ していくこ
当たりの報告件数 ●一人的過割合(%) 一形人的合(%))
図-1 稼動基数当たりの法律・通達対象事象の報告件数 と、報告件数の占める人的過誤事象の割合の経年変化 上記の課題を踏まえて、同報告書では、以下の3 種のガイドラインの整備を求めている。 1 人的過誤等の直接要因に対する事業者の評価・改善状況を評価する指針の整備 図-1 稼動基数当たりの法律・通達対象事象の報告件数 と、報告件数の占める人的過誤事象の割合の経年変化 上記の課題を踏まえて、同報告書では、以下の3 のガイドラインの整備を求めている。 人的過誤等の直接要因に対する事業者の評価・ 改善状況を評価する指針の整備
2 根本原因分析のためのガイドライン等の整備 3 安全文化・組織風土の劣化防止のためのガイドラインの整備 * このうち、2については、具体的に以下のように 記述されている。 「事故・トラブルの誘因となる組織要因に対しては、 人的過誤等の直接要因とは異なり、その性質上、事 業者における不適合是正のための取組みは十分には 行われにくい状況にあります。しかし、組織要因に よる不適合については、根本的な要因の分析を踏ま えた是正を行わなければ、事故やトラブルの再発を 防ぐことは困難です。また、根本的な要因分析の結 果を他に水平展開することにより、同様のトラブル を未然に防止することが可能となります。こうした 根本原因分析を促進する有力な手段が品質保証活動 の充実です。このため、事業者による根本原因分析 を実効的なものにする観点から、品質保証規格の体 系の中で、根本原因分析の対象となる事象の抽出に 係る考え方など事業者が活用できるガイドラインを 整備していくことが必要です。国としては、学協会 等に対し、こうしたガイドラインの整備を求めると ともに、事業者の根本原因分析の実施内容を確認・ 評価するための指針を策定することが必要です。」以上の要求を受け、独立行政法人原子力安全基盤 機構(以下「JNES」と略す)では、事業者の根本原 因分析の実施内容を確認・評価するための指針(ガ イドライン)の検討を開始した。2. ガイドラインの検討・制定* 最初に、「根本原因分析に対する国の要求事項(以 下「国の要求事項」と略す)」が、2007年1月 25 日 に実施された総合資源エネルギー調査会 原子力安 全・保安部会 原子炉安全小委員会 第5回安全管理 技術評価 WG(以下「安全管理技術評価 WG」と略 す) において決議された。「国の要求事項」は「事業 者の保安活動において、最低限遵守しなければなら ない内容を規制上明確にするために、規制当局が定 めるもの」として制定され、「根本原因分析に対する 要求事項を具体化にすることによって、事業者にお いては、不適合事象の再発防止、未然防止のための 具体的な取り組みが可能となり、原子力安全のより一層の確保を促すことができる一方、規制当局にと っては公平かつ客観的な検査を行うための判断基準 となる」と位置付けられている。具体的には、以下の4項目である。 11 根本原因分析の実施にあたっては、分析主体の中立性、分析結果の客観性及び分析方法の 論理性が確保されることを確実にすること。 安全に重大な影響を与える事象については、 適切な是正処置及び予防処置を行い、再発防 止を確実にするため、その事象ごとに根本原 因分析を実施すること。 3 安全に重大な影響を与える事象以外の事象にあっては、是正処置を講じた後、蓄積されて いる不適合等に関するデータを分析し、起こ りうる不適合の発生を防止する予防処置を講 ずるため、必要に応じて、根本原因分析を実施すること。 4是正処置及び予防処置は、根本原因分析結果に対応した適切なものであり、又、具体的な 実施計画を明確にし、確実に実施すること。 「国の要求事項」の決議の際に参考として提示さ れた根本原因分析の実施手順を図-2に示す。SNEY 根本原因分析の導入について(参考)規当局が確認・ 評価するための ガイドライン直接原因分析の安全に重大な影を与える事象 「安全に係わる重大な事故 | 安室運反(反107) 豊根本原因分析(I)2行以外の本是正処置!根本原因分析 ・ガイドラインデータの分析「それ自身は安全上大ではないが、 類似性/発としての問題が在している「 可能性がある予防処置ではではーーーーーー 図-2 根本原因分析の実施手順根本原因分析の実施に係る法的根拠としては、 2007年8月9日公布(2007年12月14日施行)の「実用 発電用原子炉の設置、運転等に関する規則」及び「研 究開発段階にある発電の用に供する原子炉の設置、 運転等に関する規則」の一部を改正する省令の中で、 (保安活動の改善) 第七条の三の七第一項二号に「生 じるおそれのある不適合を防止するための予防に関 する処置に関する手順(第十九条の十七第一項各号13に掲げる事故故障等の事象その他が発生した根本的 な原因を究明するために行う分析(以下「根本原因 分析」という。)の手順を含む。)を確立して行うこ と。」と、また(保安規定) 第十六条第一項十九号に 「原子炉施設の品質保証に関すること(根本原因分 析の方法及びこれを実施するための体制を含む)。」 と、それぞれ明記された。その後、JNES の中に設置した「安全規制におけ る原子力安全文化(組織風土の劣化防止) 検討会」 におけるガイドラインの検討結果を国の安全管理技 術評価 WG 及び同 WG 品質保証サブ WG に提示し て審議され、書面投票を経て 2007年8月27日に実 施された第12回安全管理技術評価 WGにおいて「事 業者の根本原因分析実施内容を規制当局が評価する ガイドライン(以下「ガイドライン」と略す)」が承 認された。そして、「国の要求事項」及び「ガイドライン」 の内容を受けて、民間規格として日本電気協会の 「JEAG4121-2005「2007年追補版2」の附属書「根 本原因分析のガイド」(以下「JEAG4121 追補版2」 と略す)」が 2007年 12月5日に制定された。また、2007年12月14日に原子力安全・保安院か ら「事業者の根本原因分析実施内容を規制当局が評 価するガイドラインについて(NISA-166c-07-10)」 が発出され、「ガイドライン」が事業者に周知された。3. ガイドラインの内容「ガイドライン」は、その目的の中でも述べている ように、「事業者が実施した根本原因分析とその分析 結果に基づく是正処置及び予防処置が妥当であるこ とを(規制当局が) 確認する視点について示したも の」である。以下にガイドラインの内容について簡 単に示す。. 1 ガイドラインの構成と特徴 「ガイドライン」の章立ては以下の通りである。 1.序論 2.目的 3.用語の定義 4.事業者の実施した根本原因分析を規制当局が確認する視点 * 4. 1 一般要件を確認する視点4.2 根本原因分析の対象となる事象の抽出 - , が妥当であることを確認する視点 4.3 根本原因分析に先立つ直接原因分析内容を確認する視点」 4.4 事業者が実施した根本原因分析のプロセス及び結果を確認する視点 4.5 是正処置及び予防処置が妥当であることを確認する視点 5. ガイドラインの見直し (参考資料)根本原因分析における組織要因の視点章立てに示したように、「1.序論」という章が あることに特徴がある。「1.序論」の中で、適用に おいて十分な配慮が必要な4項目を以下のように強 調している。 1 根本原因分析が国の要求事項を満足してい るか否か判断するとともに、根本原因分析 の手法、プロセス、結果などについて事業 者の改善活動を更に促す観点から評価すること。 2 ガイドラインの記載内容に疑問が生じた場 合は、文言に細かくこだわるのではなく、 根本原因分析の趣旨に照らして柔軟に対応すること。 3 事業者の取組の確認に際しては、常に事業 者との議論を活発に行い、事業者の採用し た分析手法や考え方についてはその多様性 を受け入れること。 不適合を引き起こした人の行動には、思い 込み、間違った判断、確認不足等の負の要 因の他に、労働環境改善、効率改善、コス トダウンの追及等の正の効果を期待した行 動の行き過ぎによる負の効果(影響)が存 在しうることも十分に認識しておくこと。* 3.2 用語の定義の明確化「ガイドライン」内で用いる用語を明確に定義し た。これらの用語の定義は、「JEAG4121 追補版2」 でも全く同じ定義が用いられ統一を図った。これは、 「根本原因分析」や「組織要因」という用語が、事 業者等によって様々な意味に用いられていることを 鑑み、事業者と規制当局の間で明確に相互理解する ことを意図したものである。主要な用語の定義は以14下の通りである。 ●根本原因分析:直接原因分析を踏まえて、組 織要因を分析し、マネジメントシステムを改 善する処置をとること。 (注)一般的には技術的要因を分析することも含まれるが、技術的に既知であ るにもかかわらず適切に組織的な対 応がとられていないために発生して いる事故・故障が多いことを考慮し、このように定義する。 ・組織要因:直接要因を未然に防止することが できなかった組織活動に係る要素の集合体。3.3 根本原因分析の実施基準根本原因分析の実施基準としては、「2. ガイド ラインの検討・制定」に示した「国の要求事項」の 2、3項を引用している。根本原因分析実施に当た っての実質的な実施基準は事業者が「JEAG4121 追 補版2」に従って作成する「根本原因分析実施手順 書」等の規定に明記され、発生した事象もしくは事 象群に対する根本原因分析の実施の要否は基本的に は事業者が決定する。3.4 根本原因分析のプロセス及び結果を確認す・ るための3つの視点 「2. ガイドラインの検討・制定」に示した「国 の要求事項」のO項を受けて、根本原因分析のプロ セス及び結果を確認するための視点として、大きく 以下の3点を設定した。1 分析主体の中立性を確認する視点 2 分析結果の客観性を確認する視点 3 分析方法の論理性を確認する視点 以下でそれぞれの視点の概要を述べる。 また、全般的な注意事項として、視点の提示に先 立って、「以下の記載内容は、一律に全項目を適用す るのではなく、分析結果及び事業者のマネジメント システムから見た、各項目の重要度に応じて適用す る視点及びその深さを判断すること。」ということを 明記し、事象の原子力安全に対する重要度を考慮し て視点を適用する必要性を示している。1 分析主体の中立性を確認する視点 分析が的確に実施されるためには、分析を実施する主体が分析対象事象に関係した部門に対し て中立的な立場にあることや、分析を実施したこ とによって処遇上の不利益を被る恐れがないこ とが求められる。また、組織要因を抽出する観点 からは、経営層に対するインタビューが必要とな る場合も考えられる。それらを考慮し、以下の4 点の視点を設定した。 (1) 分析を実施する主体は、当該事象に直接関与した部門以外で構成されていること。(2) 必要なデータに対するアクセス権限を与えられていること。又、経営層や関連部 門に対するインタビュー等の調査を実施できること。 (3) 根本原因分析及びその結果によって、分析を行った者が処遇上の不利益を被ることがないよう保証されていること。 (4) 根本原因分析を主導する者は、発電所の保安活動等の実務経験を有するか又は 理解していること、及び根本原因分析に係る教育訓練を受けていること。 分析を行った者、分析を実施する主体、分析を主 導する者の間の関係の例を図-3に示す。分析を実施する主体当該事象に直接関与した部門以外の者分析を主導する者1発電所の保安活動等の実務経験を有するか又は理解している者及び 2根本原因分析に係る教育訓練を受けている者分析を行った者図-3:分析を行った者等の間の関係の例2 分析結果の客観性を確認する視点 国に報告された法令対象事象の報告書の中に は、第3者には理解しにくいような記載内容とな っているものも見受けられるため、「(4) 分析の 結果が第三者に分かるように整理されているこ15と。」として、以下の4点の視点を設定している。 (i)事象や問題点の内容の中で、関与した組織・個人が匿名的に識別されて、取られた行 動等が具体的に記述されていること。但し識 別に対し特別な配慮が必要な場合を除く。 (注) 「匿名的な識別」とは、組織における責任・権限・役割に基づく識別である。 同一の責任・権限・役割を持つ者が複 数人いる場合には、A、B等の記号を用いて識別する。 (i)問題点が明確にされ、具体的にかつ可能な限り定量的に記述されていること。 (ii)問題点に対応した組織要因が明確にされ、具体的に記述されていること。 (iv) 組織要因に対応した対策が明確にされ、* 具体的に記述されていること。 それぞれの視点については、具体的な例を記載 して、理解を容易にしている。(ili)の例を以下 に示す。 例:「標準を作るしくみが不適切」、「エラー防 止活動が不足」という抽象的な記述でなく、 「点検・保全計画についてはメーカ任せにな っており、事業者として、内容の重要度に応 じて必要なレビューを行うしくみがなかっ た」、「発電所としてエラー防止の重要性を認 識していたが、作業実施前に起こり得るエラ ーの洗い出し・評価のための活動を推進して いなかった」のように具体的に記述されてい ること。3 分析方法の論理性を確認する視点 - 原因分析手法として、幾つかの手法が一般的に 知られている。「ガイドライン」では、どの手法 をどのような事象に対して適用するかというこ とは事業者に任されているという立場を取るが、 根本原因分析によって組織要因が的確にかつ抜 け落ちなく抽出されることを確実にするために、 用いられている手法や分析の考え方を確認する 視点として、以下の6点の視点を設定している。 (1) 報告された事象に応じて、根本原因分析が組織要因とその因果関係の視点を考慮 した体系的な分析(注)となっていること。-2-3(注)体系的な分析とは、類似の要因による事故を防止する上で重要となる要因が 抜け落ちないよう、一定の枠組みに基 づいて要因を洗い出し、結果に対する 影響の大きさに基づいて絞り込むことを指す。 (2) 必要に応じ、様々な視点から事象、データ、調査結果等の横断的な分析が実施さ れ、共通の要因が探求されていること。 マネジメントシステムの不適切さを改善 するのに必要な深さまで分析されていること。 (4) 必要に応じ、過去の是正処置及び予防処置の不適切さについて検討されていること。 (5) 必要に応じ、当該事象発生前後の変化及び変更による差異の要因が分析されていること。 (6) 必要に応じ、事象の発生あるいは人的過誤を防ぐために、障壁が無かったのか、 障壁が失われていたのか、障壁が機能し ていなかったのかの分析が行われていること。このうち、(3) はいわゆる「ストップルール」 であり、分析の深さが浅いところで止まってしま ったり、逆に不必要に拡大していったりすること を防止している。また、(2)及び(4)~(6) は全て「必要に応じ」と冒頭に記載し、視点を全 ての事象に一律に適用せず、必要性を判断するこ とを求めている。-63.5 JOFL の開発 - 前述の「3.48分析方法の論理性を確認する視 点」の説明の中で示したように、事業者は様々な根 本原因分析手法を採用して分析を実施することが予 想される。「ガイドライン」を用いて事業者が実施し た根本原因分析結果を規制当局が確認するに当たっ ての参考とすることを目的として、「JNES 組織要因 表(JNES Organizational Factors List: JOFL)」を開発 した。16JOFL は、JNES が継続的に検討・開発を行ってき た、安全文化の阻害要因としての組織要因を同定す るための「組織信頼性モデル(OR モデル)」と、総合 的な視点から安全文化の脆弱性を明確化するための 「安全文化評価支援ツール(SCEST)」の評価項目を 統合し、それに基づいて組織要因評価項目を再設定 して原案を作成した。さらにその原案に対して、原 子力安全・保安院が実施した具体的事例への適用の 試行結果を受けて、最終的に「6個の大分類項目、 63個の中・小分類項目、137項目の視点とその確認 のための質問」から構成される「リファレンスリス ト」として体系化した。このうち6個の大分類項目については、「ガイドラ イン」の「参考資料:根本原因分析における組織要 因の視点」に、「1. 外部環境要因、2.組織心理要 因、3.経営管理要因、4. 中間管理要因、5.集 団要因、6.個人要因」として記載している。3.6 是正処置・予防処置が妥当であることを確認する観点 国に報告された法令対象事象の報告書には、是正 処置の内容は記載されているものの、その実施スケ ジュールや、特に処置の効果の測定・評価やそれら に基づくフォローについては記載されていないもの が多い。適切な処置が実施されなければ、事象の再 発を防止することは難しいことから、是正処置・予 防処置が妥当であることを確認する視点として、以 下の5点を設定した。 (1) 根本原因分析に対応した是正処置及び予防処置が策定されていること。なお、処置を講 じない場合には、その根拠が明確にされてい ること。 是正処置及び予防処置の効果の評価が行わ れ、類似の直接要因のうちどの範囲までが防 止できるのか明確になっていること。 是正処置及び予防処置が及ぼすと考えられ る副作用についての評価が行われているこ-2と。-4是正処置及び予防処置の具体的な実施計画 (体制、スケジュール、リソース、フォローの仕方、実効性の評価方法、優先順位等)が 明確になっており、関係職員に納得して受容され、かつ実行可能であること。 (5) 是正処置及び予防処置の水平展開の必要性及び適用範囲が検討されていること。 根本原因分析が、予防処置の立案・実施による「未 然防止」を目的の一つとしていることから、(2) で は類似の直接要因を防止できる範囲を検討すること を求め、また(5) では水平展開の適用範囲を検討 することを求めている。4. ガイドラインの今後の運用「ガイドライン」では「5.ガイドラインの見直 し」という章を独立して設定し、そこには「本ガイ ドラインは、今後の実際の活用の中で新たな知見を 入れつつ不断に見直すこととする。」と記載している。 これは、本「ガイドライン」が根本原因分析の事例 が少ない現状を基に作成されたものであることを意 識したものであり、平成 20 年度以降に実際に事業者 が実施した根本原因分析実施内容の確認を実施する 中で得られた知見や事業者と規制当局の間のコミュ ニケーション内容を反映して、適宜「ガイドライン」 の見直しを実施していくことを予定している。参考文献[1](独)原子力安全基盤機構・規格基準部、安全文化評価手法(実施解説書)”、JNES-SS レポート・JNES-SS-0616、2006 [2] 原子力安全・保安院、“原子力発電施設に対する検査制度の改善について”、2006 [31 (独)原子力安全基盤機構・規格基準部、07基比報一0003“原子力安全文化の組織内醸成と定着化の基盤整備”、2007 [4] 牧野眞臣、“人的過誤事象の人的要因分析結果と根本原因分析ガイドラインの整備”、電気学会研究会資料 NE-07-8、2007 [5] 原子力安全・保安院、NISA-166c-07-10 “事業者の ““根本原因分析実施内容を規制当局が評価するガイ ドラインについて”、2007
“ “事業者の根本原因分析実施内容を規制当局が評価するガイドライン“ “畑 孝也,Takaya HATA,牧野 眞臣,Maomi MAKINO,小坂 淳彦,Atsuhiko KOSAKA