濃縮ウラン溶解槽の遠隔検査装置の開発
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カテゴリ: 第5回
1.緒言
東海再処理施設の濃縮ウラン溶解槽(以下、「溶解槽」 という。)は、昭和 57 年4月に2基の溶解槽 R10、R11 のうち、R11 の溶接部にピンホールが発見され、昭和 58年2月にはR10の溶接部にもピンホールが発見され た。溶解槽は、図1に示すように、約 5cm にせん断さ れた使用済燃料を蒸気で加熱された硝酸により溶解す る装置である。このため、溶接部分に腐食がおこり、 ピンホールが発生したと考えられる。溶解槽は、再処 理施設の最重要機器の一つであるため、溶解槽を補修 し、復旧する必要があった。しかし、溶解槽は使用済 燃料を溶解することから、高放射線量下にあり、作業 スペースが狭いため、高放射線量下での耐久性、遠隔 操作性、耐食性、装置の小型化等を満足した遠隔補修・ 検査装置を開発する必要があった[1] [2]。溶解槽の補修は、肉盛溶接法を採用することとし、 ペリスコープ、研磨装置、溶接装置、染料浸透試験装 置、超音波試験装置、空中・水中兼用テレビ装置等の 遠隔補修・検査装置を開発し、作業目的毎に個々の装 置を使用する構成とした。本装置を用いて昭和 58 年に 肉盛補修溶接を実施し[3]、昭和 61 年には予防保全の観 点から、R10、R11 の他箇所の肉盛追加溶接を実施した。これ以降、溶解槽の健全性の確認を目的とした超音 波試験等の遠隔検査を、年1回定期的に実施すること となった。しかし、定期的な遠隔検査を考慮すると、狭いセル内で多数の装置を使用するため、操作が繁雑 になるほか、更新時の経済的負担が大きくなる。また、 装置の保守が困難な構造であることから、新たな装置 の開発が必要となった[4]。本報告では、昭和 60 年から 現在に至るまでの遠隔検査装置の開発について述べる。
使用済燃料 せん断片蒸気供給配管溶解槽溶解部図1 溶解槽概要図2. 遠隔検査装置の開発2.1 昭和 60年~平成元年における装置開発昭和 60年以前は 1.で述べた通り、作業目的毎に個々 の装置を交換して使用するため、以下の課題を有して いた。 (1) 狭いセル内で多数の装置を使用、交換するため、操 作が繁雑になる。129(2) 1回限りの補修・検査作業に使用することを前提に 設計・製作したため、使い捨てであり、経済的負担が 大きい。このため、操作性・保守性向上及び経済性向上の観 点から、装置の多機能化、装置の主要部分(昇降用モ ータ、探触子、照明ランプ、観察用鏡等)の遠隔交換 化の開発を進めた。開発した多機能型遠隔検査装置を 図2に示す[2] [4]。 多機能型遠隔検査装置は、昇降装置、 超音波検査装置、外観観察装置、発泡試験装置から構 成されている。また、検査により不具合を発見した場 合に、研磨、溶接、染料浸透試験、洗浄という一連の 補修ができるよう遠隔補修装置を備えている。これら の装置は、図3に示すように、溶解槽の上部に位置す る濃縮ウラン溶解槽装荷セルに設置され、作業目的に 応じて装置を遠隔交換する。 - 溶解槽の遠隔検査は、濃縮ウラン溶解槽装荷セル内 の溶解槽溶解部の上端に昇降装置をセットし、あらか じめ昇降装置と接続した各種検査装置を溶解槽溶解部 内に昇降させ、各種検査を行い、溶解槽の健全性を確 認している。これらセル内での作業は、すべて遠隔操 作によって行われる。遠隔操作は、セル外の操作区域 に設置した表示部、昇降装置制御盤、各種検査装置制 御盤により行われる。セル内の装置とセル外の制御盤 等はコンクリート遮へい壁を貫通するケーブル中継装 置を介してケーブル類で接続され、動力及び信号の伝 達が行われる。遠隔検査システムを図3に示す。各装置の概要 種類: 機能超音波検査肉厚測定葬降英靈外觀觀察写真、TVカメラ撮影発泡試験」漏洩確認研磨溶接の下地処理自動TIG溶接 溶接状況の観察 浸透液塗布、洗浄 現像処理染料浸透洗浄付着物除去換ドル」遠隔検査装置遠隔補修装置超音波 外觀觀察発泡研磨「溶接「洗浄試驗染料 浸透図2 多機能型遠隔検査装置の概要操作区域PEUTRATIVERSE 濃縮ウラン溶解槽装荷セル昇降装置 遠隔検査装置 /溶解部上端| 表示部」 昇降装置 制御盤 超音波検査装置制御盤 シンリリリリリリリリリイケーブル中継装置 コンクリート遮へい壁 -溶解槽溶解部 ・超音波検査装置溶解槽ト加熱ジャケット濃縮ウラン溶解セル図3 遠隔検査システム2.2 平成2年~現在までの装置改良 1. 本装置による遠隔検査は、平成2年から使用を開始 し、現在に至っている。一方、これまでの使用におい て不具合の発生及び課題が明らかとなった。 2.2.1 昇降装置の改良 - 昇降装置を図4に示す。昇降装置は、各種装置を接 続し、溶解槽溶解部内に昇降させる装置である。各種 装置と昇降装置は、2 本の昇降用ワイヤで接続され、 その昇降用ワイヤを2つの巻取りドラムで巻取り、巻 下げを行うことで昇降を可能としている。また、ケー ブル・ホース類を共用化し、パンタグラフ方式により ケーブル・ホース類を収納し、コンパクト化を図って いる。このうち、昇降用ワイヤ巻取りドラム部での不具合 が多く発生した。具体的には昇降用ワイヤの乱巻によ るものである。この不具合に対して、1ワイヤ乱巻検 知スイッチを設置し、ワイヤが乱巻した際に、巻取り ドラムが緊急停止することとした。2ワイヤ乱巻防止 用ガイドローラを設置し、ワイヤがスムーズにドラム 溝に入る構造とした。3ワイヤ緩み検知用リミットス イッチを設置し、ワイヤが緩んだ時に、巻取りドラム が緊急停止することとした等の改良を行った。130ワイヤ乱巻検知スイッチ 「ワイヤ乱巻きを検知し、巻取りドラムを 【緊急停止させる機能とした。ワイヤ乱巻防止用ガイドローラ(8個) 「ワイヤがスムーズにドラム溝に入るよう、 「ガイドする機能とした。ワイヤが乱巻の状態状態 VO昇降用ワイヤ巻取りドラム(O)YO WINDワイヤが緩んだ状態昇降用ワイヤワイヤ緩み検知用リミットスイッチ イワイヤ緩みを検知し、巻取りドラムを 緊急停止させる機能とした。図4 昇降装置の不具合に対する改良1また、昇降装置と各種装置の接続は、巻き出した昇 降用ワイヤを、遠隔操作するためのマニプレータを用 いて交換ヘッド側に接続するため、昇降用ワイヤが無 負荷となり、緩んで乱巻きになる可能性を有していた。 このため、マニプレータを使わずに、昇降用ワイヤに 負荷が掛かった状態で接続できるよう改良した。改良 点を図5に示す。スプリングを昇降用ワイヤへ挿入し、スプリングの 反発力により、昇降用ワイヤを巻き出した際にも、昇 降用ワイヤに負荷が掛かるようにした。また、昇降用 ワイヤ先端部をテーパ状に加工し、マニプレータを使 うことなく、交換ヘッド側のガイドに沿ってスムーズ に昇降用ワイヤが巻き出されるようにした。【改良前】昇降装置マニプレータを用いて 交換ヘッド側に接続交換ヘッド側【改良後】リングをスプリングの反発力により ワイヤに負荷が掛かる工したことで、 マニプレータを使わず、 ガイドに沿って、 スムーズに巻き出される。ガイド先端部を テーパ状に加工図5 昇降装置の課題に対する改良22.2.2 超音波検査装置の改良溶解槽は、昭和 52 年のホット試験開始以来30年以 上が経過し、溶解運転に伴い腐食が徐々に進行してき ている。 - 溶解槽の超音波検査では、水浸法(パルス反射法) により、溶解槽溶解部の肉厚を測定しているが、平成 8年頃から腐食により超音波パルスの反射波が散乱し、 測定できない箇所が増加してきた。このため、従来固定式であった探触子を可動式に改 良し、超音波パルスの散乱に追従できるようにした 。 改良点を図6に示す。 - 探触子は、2個のモータにより、上下及び左右方向 の動作を可能とし、可動範囲は、上下及び左右それぞ れ±5°とした。これにより、散乱した超音波パルスを 受信できるようにした。超音波検査装置Tann00探触子可動範囲 ・上下:±5° 左右:±5°探触子左右図6 超音波検査装置の改良131昭和 60 年から平成元年にかけて、溶解槽の検査 補修用の多機能型遠隔検査装置を開発した。これ。 より、狭いセル内での操作性、保守性が向上し、 済的負担が大幅に減少した。 3.結言1) 昭和 60 年から平成元年にかけて、溶解槽の検査・ 補修用の多機能型遠隔検査装置を開発した。これに より、狭いセル内での操作性、保守性が向上し、経 済的負担が大幅に減少した。 2) 1)の装置のうち、昇降装置及び超音波検査装置の改良を行った。昇降装置は、良好な結果を得ている。 1)の装置のうち、昇降装置及び超音波検査装置の改 良を行った。昇降装置は、良好な結果を得ている。 本装置で開発した技術は、二重管のような構造で内 側の肉厚を測定したい場合、探触子に接触媒質を直 接塗布できない場合、腐食環境にあって表面が粗く なった対象物を非接触でしか測定できない場合等、 人が容易にアクセスできない機器の検査への応用 が期待できる。 参考文献[1] 大谷吉No.53、 [2] 山村修におけ子力学 [3] 動燃事理部前動燃技 [4] 内藤誠 大谷吉邦、“溶解槽の遠隔補修について”、動燃技報、 No.53、資料番号 53-3(1985) 山村修、山本隆一、野村茂雄、“東海再処理工場 における保守技術開発に関する分析評価”、日本原 子力学会和文論文誌、Vol.6、No.4、pp.491-502(2007) 動燃事業?東海事業所再如理工場工務部保守課、如 理部前処理課、“再処理工程の運転-保守・補修”、 動燃技報、No.55、資料番号 55-13(1985) 内藤誠也、大森栄一、住谷昭洋、大高甲子男、 高橋啓三、“濃縮ウラン溶解槽の多機能型遠隔検 査・補修装置の開発(ID)““、日本原子力学会「1989 秋の大会要旨集」、(1989)- 132 -
“ “濃縮ウラン溶解槽の遠隔検査装置の開発“ “照沼 朋広,Tomohiro TERUNUMA,大関 達也,Tatsuya OOZEKI,福有 義裕,Yoshihiro FUKUARI
東海再処理施設の濃縮ウラン溶解槽(以下、「溶解槽」 という。)は、昭和 57 年4月に2基の溶解槽 R10、R11 のうち、R11 の溶接部にピンホールが発見され、昭和 58年2月にはR10の溶接部にもピンホールが発見され た。溶解槽は、図1に示すように、約 5cm にせん断さ れた使用済燃料を蒸気で加熱された硝酸により溶解す る装置である。このため、溶接部分に腐食がおこり、 ピンホールが発生したと考えられる。溶解槽は、再処 理施設の最重要機器の一つであるため、溶解槽を補修 し、復旧する必要があった。しかし、溶解槽は使用済 燃料を溶解することから、高放射線量下にあり、作業 スペースが狭いため、高放射線量下での耐久性、遠隔 操作性、耐食性、装置の小型化等を満足した遠隔補修・ 検査装置を開発する必要があった[1] [2]。溶解槽の補修は、肉盛溶接法を採用することとし、 ペリスコープ、研磨装置、溶接装置、染料浸透試験装 置、超音波試験装置、空中・水中兼用テレビ装置等の 遠隔補修・検査装置を開発し、作業目的毎に個々の装 置を使用する構成とした。本装置を用いて昭和 58 年に 肉盛補修溶接を実施し[3]、昭和 61 年には予防保全の観 点から、R10、R11 の他箇所の肉盛追加溶接を実施した。これ以降、溶解槽の健全性の確認を目的とした超音 波試験等の遠隔検査を、年1回定期的に実施すること となった。しかし、定期的な遠隔検査を考慮すると、狭いセル内で多数の装置を使用するため、操作が繁雑 になるほか、更新時の経済的負担が大きくなる。また、 装置の保守が困難な構造であることから、新たな装置 の開発が必要となった[4]。本報告では、昭和 60 年から 現在に至るまでの遠隔検査装置の開発について述べる。
使用済燃料 せん断片蒸気供給配管溶解槽溶解部図1 溶解槽概要図2. 遠隔検査装置の開発2.1 昭和 60年~平成元年における装置開発昭和 60年以前は 1.で述べた通り、作業目的毎に個々 の装置を交換して使用するため、以下の課題を有して いた。 (1) 狭いセル内で多数の装置を使用、交換するため、操 作が繁雑になる。129(2) 1回限りの補修・検査作業に使用することを前提に 設計・製作したため、使い捨てであり、経済的負担が 大きい。このため、操作性・保守性向上及び経済性向上の観 点から、装置の多機能化、装置の主要部分(昇降用モ ータ、探触子、照明ランプ、観察用鏡等)の遠隔交換 化の開発を進めた。開発した多機能型遠隔検査装置を 図2に示す[2] [4]。 多機能型遠隔検査装置は、昇降装置、 超音波検査装置、外観観察装置、発泡試験装置から構 成されている。また、検査により不具合を発見した場 合に、研磨、溶接、染料浸透試験、洗浄という一連の 補修ができるよう遠隔補修装置を備えている。これら の装置は、図3に示すように、溶解槽の上部に位置す る濃縮ウラン溶解槽装荷セルに設置され、作業目的に 応じて装置を遠隔交換する。 - 溶解槽の遠隔検査は、濃縮ウラン溶解槽装荷セル内 の溶解槽溶解部の上端に昇降装置をセットし、あらか じめ昇降装置と接続した各種検査装置を溶解槽溶解部 内に昇降させ、各種検査を行い、溶解槽の健全性を確 認している。これらセル内での作業は、すべて遠隔操 作によって行われる。遠隔操作は、セル外の操作区域 に設置した表示部、昇降装置制御盤、各種検査装置制 御盤により行われる。セル内の装置とセル外の制御盤 等はコンクリート遮へい壁を貫通するケーブル中継装 置を介してケーブル類で接続され、動力及び信号の伝 達が行われる。遠隔検査システムを図3に示す。各装置の概要 種類: 機能超音波検査肉厚測定葬降英靈外觀觀察写真、TVカメラ撮影発泡試験」漏洩確認研磨溶接の下地処理自動TIG溶接 溶接状況の観察 浸透液塗布、洗浄 現像処理染料浸透洗浄付着物除去換ドル」遠隔検査装置遠隔補修装置超音波 外觀觀察発泡研磨「溶接「洗浄試驗染料 浸透図2 多機能型遠隔検査装置の概要操作区域PEUTRATIVERSE 濃縮ウラン溶解槽装荷セル昇降装置 遠隔検査装置 /溶解部上端| 表示部」 昇降装置 制御盤 超音波検査装置制御盤 シンリリリリリリリリリイケーブル中継装置 コンクリート遮へい壁 -溶解槽溶解部 ・超音波検査装置溶解槽ト加熱ジャケット濃縮ウラン溶解セル図3 遠隔検査システム2.2 平成2年~現在までの装置改良 1. 本装置による遠隔検査は、平成2年から使用を開始 し、現在に至っている。一方、これまでの使用におい て不具合の発生及び課題が明らかとなった。 2.2.1 昇降装置の改良 - 昇降装置を図4に示す。昇降装置は、各種装置を接 続し、溶解槽溶解部内に昇降させる装置である。各種 装置と昇降装置は、2 本の昇降用ワイヤで接続され、 その昇降用ワイヤを2つの巻取りドラムで巻取り、巻 下げを行うことで昇降を可能としている。また、ケー ブル・ホース類を共用化し、パンタグラフ方式により ケーブル・ホース類を収納し、コンパクト化を図って いる。このうち、昇降用ワイヤ巻取りドラム部での不具合 が多く発生した。具体的には昇降用ワイヤの乱巻によ るものである。この不具合に対して、1ワイヤ乱巻検 知スイッチを設置し、ワイヤが乱巻した際に、巻取り ドラムが緊急停止することとした。2ワイヤ乱巻防止 用ガイドローラを設置し、ワイヤがスムーズにドラム 溝に入る構造とした。3ワイヤ緩み検知用リミットス イッチを設置し、ワイヤが緩んだ時に、巻取りドラム が緊急停止することとした等の改良を行った。130ワイヤ乱巻検知スイッチ 「ワイヤ乱巻きを検知し、巻取りドラムを 【緊急停止させる機能とした。ワイヤ乱巻防止用ガイドローラ(8個) 「ワイヤがスムーズにドラム溝に入るよう、 「ガイドする機能とした。ワイヤが乱巻の状態状態 VO昇降用ワイヤ巻取りドラム(O)YO WINDワイヤが緩んだ状態昇降用ワイヤワイヤ緩み検知用リミットスイッチ イワイヤ緩みを検知し、巻取りドラムを 緊急停止させる機能とした。図4 昇降装置の不具合に対する改良1また、昇降装置と各種装置の接続は、巻き出した昇 降用ワイヤを、遠隔操作するためのマニプレータを用 いて交換ヘッド側に接続するため、昇降用ワイヤが無 負荷となり、緩んで乱巻きになる可能性を有していた。 このため、マニプレータを使わずに、昇降用ワイヤに 負荷が掛かった状態で接続できるよう改良した。改良 点を図5に示す。スプリングを昇降用ワイヤへ挿入し、スプリングの 反発力により、昇降用ワイヤを巻き出した際にも、昇 降用ワイヤに負荷が掛かるようにした。また、昇降用 ワイヤ先端部をテーパ状に加工し、マニプレータを使 うことなく、交換ヘッド側のガイドに沿ってスムーズ に昇降用ワイヤが巻き出されるようにした。【改良前】昇降装置マニプレータを用いて 交換ヘッド側に接続交換ヘッド側【改良後】リングをスプリングの反発力により ワイヤに負荷が掛かる工したことで、 マニプレータを使わず、 ガイドに沿って、 スムーズに巻き出される。ガイド先端部を テーパ状に加工図5 昇降装置の課題に対する改良22.2.2 超音波検査装置の改良溶解槽は、昭和 52 年のホット試験開始以来30年以 上が経過し、溶解運転に伴い腐食が徐々に進行してき ている。 - 溶解槽の超音波検査では、水浸法(パルス反射法) により、溶解槽溶解部の肉厚を測定しているが、平成 8年頃から腐食により超音波パルスの反射波が散乱し、 測定できない箇所が増加してきた。このため、従来固定式であった探触子を可動式に改 良し、超音波パルスの散乱に追従できるようにした 。 改良点を図6に示す。 - 探触子は、2個のモータにより、上下及び左右方向 の動作を可能とし、可動範囲は、上下及び左右それぞ れ±5°とした。これにより、散乱した超音波パルスを 受信できるようにした。超音波検査装置Tann00探触子可動範囲 ・上下:±5° 左右:±5°探触子左右図6 超音波検査装置の改良131昭和 60 年から平成元年にかけて、溶解槽の検査 補修用の多機能型遠隔検査装置を開発した。これ。 より、狭いセル内での操作性、保守性が向上し、 済的負担が大幅に減少した。 3.結言1) 昭和 60 年から平成元年にかけて、溶解槽の検査・ 補修用の多機能型遠隔検査装置を開発した。これに より、狭いセル内での操作性、保守性が向上し、経 済的負担が大幅に減少した。 2) 1)の装置のうち、昇降装置及び超音波検査装置の改良を行った。昇降装置は、良好な結果を得ている。 1)の装置のうち、昇降装置及び超音波検査装置の改 良を行った。昇降装置は、良好な結果を得ている。 本装置で開発した技術は、二重管のような構造で内 側の肉厚を測定したい場合、探触子に接触媒質を直 接塗布できない場合、腐食環境にあって表面が粗く なった対象物を非接触でしか測定できない場合等、 人が容易にアクセスできない機器の検査への応用 が期待できる。 参考文献[1] 大谷吉No.53、 [2] 山村修におけ子力学 [3] 動燃事理部前動燃技 [4] 内藤誠 大谷吉邦、“溶解槽の遠隔補修について”、動燃技報、 No.53、資料番号 53-3(1985) 山村修、山本隆一、野村茂雄、“東海再処理工場 における保守技術開発に関する分析評価”、日本原 子力学会和文論文誌、Vol.6、No.4、pp.491-502(2007) 動燃事業?東海事業所再如理工場工務部保守課、如 理部前処理課、“再処理工程の運転-保守・補修”、 動燃技報、No.55、資料番号 55-13(1985) 内藤誠也、大森栄一、住谷昭洋、大高甲子男、 高橋啓三、“濃縮ウラン溶解槽の多機能型遠隔検 査・補修装置の開発(ID)““、日本原子力学会「1989 秋の大会要旨集」、(1989)- 132 -
“ “濃縮ウラン溶解槽の遠隔検査装置の開発“ “照沼 朋広,Tomohiro TERUNUMA,大関 達也,Tatsuya OOZEKI,福有 義裕,Yoshihiro FUKUARI