高速炉高温構造物の健全性モニタリングのための耐熱FBGセンサの開発

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カテゴリ: 第5回
1.緒言
原子力発電プラント等においては、安全性を確保す。 ると同時により高度な信頼性を維持するために、時間 基準保全(TBM)だけではなく、予防保全あるいは予 知保全の導入が求められている。特に環境・エネルギ 一問題の観点から、原子力発電設備の稼働率向上、長 寿命化は重要な課題であり、安全・安定運転を支える 保全技術発展への期待は大きいといえる。軽水炉発電 プラントではすでに保全の高度化への取組みが始まっ ている。今後、新検査制度が導入されると、リスク情 報の活用や状態監視技術の積極的活用が重点事項のひ とつであることから、このような動きはますます加速 されるものと考えられる。ただし、現在の発電用原子 炉施設の保守管理においては、動的機器の振動監視な どは既に行われているが、静的機器に対しては運転温 度、流量の情報を用いて機器・配管等に発生する応力 を計算、評価するシステムによる状態監視が一部のプ ラントで行われている程度である。高速増殖炉は将来 の実用化を目指して開発段階にあるが、実用化に際し てはより合理的な保全実施計画が求められると考えら れるし、またこの要求に応えられなければ競争力を失 うことに繋がると考えられる。このような背景から、筆者らは予防保全技術開発の ひとつとしてリスクベース保全手法の検討を実施して いるところであり、高速増殖炉の主要機器を対象とし
て定性的リスクマトリックスの試評価を行い”、さら にリスク低減方策を検討している。運転状態において 機器・配管等に発生するひずみを長期にわたって測 定・監視する合理的な手段があれば、着目する機器・ 配管の経験するひずみを継続的に測定でき、状態監視 のみならず、予防保全、リスク低減の観点からきわめ て有効な手段となる。機器・配管のひずみを測定・監視する方法としては、 平成 17 年度福井県における高経年化調査研究会にお いて調査されている。長期的な連続モニタを考える と、光ファイバーを利用する方法が有望である。着目 する部位が予め決まっていて、局所的なひずみを捕ら えるには FBG(Fiber Bragg Grating) センサが効果的と 考えられる。土木建築分野では FBG センサにより温 度・ひずみを測定し構造健全性を監視する「構造ヘル スモニタリング」が実用化されている。原子力発電 所の保全の高度化研究を行った「原子力発電プラン ト・フレキシブルメンテナンスシステム(FMS)」開発 プロジェクトにおいてもプロセス量多地点計測センサ に FBG を採用し、漏洩箇所の同定に用いるシステムを 示している。しかしながら、高速炉機器・配管のひ ずみモニタ用として FBG を実用化するためには高温 での耐久性、耐放射線性が十分でなければならない。 光ファイバーそのものについては 600°C以上の使用に 耐えられる製品が出ているが、局部的な温度・ひずみ 測定が出来る FBG は常温(100°C程度)用のものしか製品化されておらず、海外の一部の研究室において 600°C以上での使用を可能とする FBG が研究されてい る段階である15110)。そこで本研究開発では、高温・放射線環境下で使用」 可能な FBG を開発し、高速炉プラントの機器・配管の 構造健全性モニタリングシステムのひずみセンサとし て適用できることを実証することを目的とし、その第 1 段階として、耐熱性向上のためにフェムト秒レーザ ーを使用した光ファイバーへの格子加工を試み、加熱 試験を行い、FBG の耐熱性向上の可能性検討を行った。2. FBG センサの利点と現状2.1 保全におけるリスク低減方策 ・リスクは「破損の起こり易さ」と「被害の大きさ」 の積で求められるため、「破損の起こり易さ」と「被害 の大きさ」のどちらかまたは両方を小さくすることで リスクを低減できる。高リスクと評価された部位に対 してリスクを下げる方法としては以下の対策が考えら れている7)。 ○破損の起こり易さを低減する対策 ・ より精密な検査の実施 ・ 負荷のかからない条件での運転 ・ オンラインモニタリングの実施 ・ 検査間隔の変更」 ○被害の大きさを低減する対策 ・ オンラインモニタリングの実施 *被害の拡大防止設備の設置「精密な検査」は信頼性向上、損傷の正確な把握に、 「負荷のかからない条件での運転」は安全裕度の向上に、 「検査間隔の変更(短縮)」は異常の早期発見に、「被害の 拡大防止設備」は文字通り被害拡大抑制に、また、「オ ンラインモニタリング」は異常の早期発見、さらにそれ による適切な処置につながると言える。また、オンラ インモニタリングは運転を止める必要がない、つまり 稼働率を低下させずにすむという利点がある。ただし、 高速増殖炉の機器センサに適用するためには、600°C近 くの高温と放射線環境下での耐性が求められる。 2.2 オンラインモニタリングセンサとしての FBG と高温適用の課題本研究においては、オンラインモニタリングに有効 なセンサとして、電磁気的ノイズの影響を受けない、 耐久性が比較的高い、コンパクトであり遠隔・集中監NO視が容易であるなどの優れた特性から光ファイバーセ ンサ、とりわけ局所的な温度、ひずみを精度良く捉え ることができるとされる FBG に着目した。 - FBG は、ビル、橋、航空機の翼、石油パイプライン 等に貼り付け巡らせることにより、ひずみ、温度など を連続的に測定し構造物の健全性を診断する構造ヘル スモニタリングシステムのセンサとして実用化が進め られている)。高速炉の放射線環境下での FBG 適用研 究としては高速実験炉「常陽」における1次冷却系配管 サポートの変位・振動測定があり、積算線量約 7× 10“Gy においても健全性が維持されたとの報告がある 181。しかし、一般産業界で実用の域にある FBG は専ら 常温での使用を対象としており、600°C近い高速炉の高 温機器での適用は困難である。これは、一般の FBG が Ultra-Violet(UV) レーザーで光ファイバー中に高屈折 率の繰返し構造(BG)を形成しているために高温におい てこの構造が著しく劣化するという本質的な問題によ る。 1高温での使用を目的とした FBG に関しては、カナダの CRC やイギリスの ASTON 大学などから研究報告が 発表されている?(10)。CRC カナダは 2006 年5月、 Measurement Science and Technology に 1,000°C耐熱試験 に関する論文を発表し、広報誌に高温センサに適した FBG 製造法を開発したと紹介している。本論文の FBG は Infrared(IR) レーザーで製作されている。上記 論文発表に先立ち、2003年には120-fs レーザーで300°C、 2 週間、2004 年には 950°Cまでの試験について Optics | Letters 等に公表している。フェムト秒レーザーはそのパルス幅が 1015秒台で光 のエネルギーが超短時間に凝縮されているため、バル ス先端で高いピークパワーを稼ぐことが出来る。この ためガラスを傷つけることなく屈折率変化部を書き込 むことが可能であることから熱的に安定と考えられて おり、耐熱性の飛躍的向上の可能性がある。 2.3 耐熱 FBG のグレーティング作製技術耐熱 FBG のグレーティング作製には CRC、ASTON 大ともフェムト秒レーザーを使用している。CRC は- 一般の FBG 作製に用いられている位相マスクを使用し ているのに対し、ASTON 大は PbP(point-by-point)法 を用いている。他に一般の FBG 作製では干渉露光法が 用いられているが、この方法を用いた耐熱 FBG の報告 は見当たらない。2007年9月にカナダで開催された米 国光科学会主催の国際会議(BGPP) において発表され134た最新情報12||151を元に、パルスエネルギー5J 以下で 書き込む PbP 法が有望との方針を得たことから本研究 では、フェムト秒レーザーによる PbP 法で格子加工を 行い、耐熱 FBG を作製することとした。3. フェムト秒レーザーによる格子加工3.1 FBG 模擬加工はじめに、光ファイバーの材料である石英ガラスへ フェムト秒レーザーで屈折率変化を起こせることを確 認するため、まず石英ガラスの板状試料に対してフェ ムト秒レーザーを用いて非熱加工を行った。 - 加工に使用したフェムト秒レーザーは Clark 社 CPA-10 である。パルスエネルギーは 40山、繰り返し 10Hz、パルス幅 100 フェムト秒の光を用いた。加工点 の間隔は Sum、列の間隔 10um で 2mm 角の回折格子を 石英ガラス板に作製した。Fig.1 の位相差写真において、 レーザーパルス1ショットで加工された加工点が縦方」 向に sum 間隔の列となり、これが 10um 間隔で規則的 に並んでいる。10umFig. 1 The phase microscope image of periodic refractiveindex structure in the silica glass次に UV 樹脂被覆を持つ光ファイバーへの BG 構造 の書き込みを行った。光ファイバーのコア径は約 10um、 外皮は 250um、加工に持いた光強度は約 25 である。 上記実験で使用した板状試料と異なり、光ファイバー 等の円筒試料では光の入射面が曲面となり、内部観察 及び加工のための集光が困難である。この問題を回避 すべく、光ファイバーの周囲を屈折率:n=1.516の屈折 率整合液で充填し、観察及び加工を行う光の入射方向 にはカバーガラスにて平行面を作り出した後にレーザ ー加工を行った。 - Fig.2 に加工後の光ファイバーの位相差顕微鏡像を 示す。当初光ファイバーの深さ方向に対して、加工点 が中心からずれるという問題が発生した。この原因は観察を行う可視光と加工を行う光の波長(800nm)の 相違により顕微鏡の色収差が発生し、観察光と加工光 の焦点位置が異なる点にあった。そこで、コア内にレ ーザーが集光している時に光ファイバー端で白色光が 計測されることを利用し、深さ方向についてもコア内 に加工できるようにした。cladFBG structurecoreFig.2 The phase microscope image of FBG structure in theoptical fiber製作した試作 FBG の反射波長スペクトルを測定し た結果を Fig.3 に示す。反射波長約 1540nm の目標に対 して、1538nm に反射率-23dB 程度の FBG 構造が計測 され、ほぼ設計どおりの FBG 構造を加工できることが 確認できた。No.3、2004. [16] “3.3 耐放射線ファイバによる放射線計測”、JAERI-Conf 98-011. [17]“光ファイバを用いた高速炉プラントの温度分布測定方法の評価““、JNC TY9400 2000-001. [18]“光ファイバブラッググレーティングによる原子 - 炉計装の研究”、JNC TY9400 2004-008. [19] “Packaging of Surface Relief Fiber Bragg Gratings foruse as Strain Sensors at High Temperature”, Proc. of SPIE, Vol.6167, 2006.138
“ “高速炉高温構造物の健全性モニタリングのための耐熱 FBG センサの開発“ “増住 考志,Takashi MASUZUMI,月森 和之,Kazuyuki TSUKIMORI,島田 幸洋,Yukihiro SHIMADA,西村 昭彦,Akihiko NISHIMURA
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