フェーズドアレイUTによる炉内配管への適用

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カテゴリ: 第5回
1.緒言
1近年、原子力プラントの主要な構造物において、 Core Spray)配管のティボックス(Fig.1 参照) 応力腐食割れ(SCC)の発生が報告され、構造物のでは、CS 配管と圧力容器(RPV) との隙間が狭 健全性評価のため点検の必要性が高まっている。 く、狭隘部探傷となり、通常のアレイ探触子では また、原子力プラントへの維持規格の導入により、その間隙を走行し、探傷することが難しい。 検出したき裂の長さや深さを高精度に測定することまた、ティボックスの溶接部は複雑形状を有す はプラントの健全性確保にとって極めて重要である。 る鞍型溶接部である。鞍型溶接部の探傷は、溶接 - 東芝では、早い段階から水浸フェーズドアレイ。 線に沿って走査する「溶接線倣い走査」と単純に UT 技術を BWR の炉内構造物の検査として導入、円周方向に走査する「単純走査」があげられる。 し[1]、シュラウド溶接部、CRD ハウジング/ス 「溶接線倣い走査」は、アレイ探触子から入射さ タブチューブ下部溶接部[2]など、実機適用を図るれる超音波ビームが常に溶接線に直交入射する とともに、シュラウドサポート溶接部などへの適 ため探傷性能は良好であるが、複雑走行のため走 用化[3]を進めてきた。特に水浸法は、複雑形状や 行装置の機構が複雑となり、探触子位置精度の低 溶接部など対象表面の凹凸や傾斜がある構造物 下が懸念される。一方、「単純走査」は、走行装 でも、探傷データから表面形状を計測して探傷条置の機構は単純であるが、アレイ探触子から入射 件を補正してサイジング評価を行うことなど適 される超音波ビームが一定方向のため、き裂に対 正な探傷、評価が可能となり、実機検査でその有して超音波ビームが直交入射しない場合があり、 効性を確認している。欠陥検出性の低下が懸念される。 炉内配管は、薄肉かつ複雑形状部が多く、狭隘 そこで、本報告では、狭隘部探傷用として開発 部の探傷では 100%の探傷領域をカバーすることした薄型アレイ探触子を CS 配管ティボックス試 が困難な場合もある。特に、コアスプレイ(CS: 験体に適用し、欠陥検出性、サイジング性につい
て検討した。特に、アレイ探触子の走行方法と探 傷性能について検討した。その結果、薄型アレイ 探触子で十分適用できることが確認され、CS 配 管に対する水浸フェーズドアレイ UT の有効性が 確認できたので報告する。2. 2. 試験方法 2.1 供試体、 -- 供試体は、試験体は、CS 配管ティボックス模擬 試験体(SUS304,150A) である。付与欠陥は、配管 内面に長さ 25mm~90mm、深さ 2.5mm~5mm 程 度の周方向疲労き裂である。2.2 試験方法 - 試験は、東芝製フェーズドアレイ UT 装置と薄 型アレイ探触子を用いた。その外観を Fig.2 に示 す。薄型アレイ探触子は、ポイントフォーカス型 のアレイ探触子(振動子寸法:0.8mm×10mm×64ch) である。探傷は、水没リニアアレイ探傷法にて実施 した。 - 薄型アレイ探触子を Fig.3 に示すように配管の軸 方向に平行に設置(水距離:20mm)し、周方向に 走査して探傷を行うが、走査方式としては、Fig.4 に示す1単純走査方式、2溶接線倣い模擬走査方式、 の2種類の走査方法で探傷を行った。Fig.4より、単純走査方式は、アレイ探触子の首 振り角度(Skew angle: a) を a=0度に設定して 配管円周方向に走査して探傷する方式である。 - 一方、溶接線倣い模擬走査方式は、「溶接線倣い走 査」を模擬した方法で、アレイ探触子の首振り角度 をa=0度、±10度に各々設定した状態で、3回走 査して探傷する方式である。 1次に、他の探傷条件として、屈折角は、対象が薄 肉配管(板厚 7.5mm) であるため、横波 45°で行い、 0.5 スキップ、1.5 スキップの探傷におけるき裂信号 を検出して長さおよび深さ測定を行った。探傷に当 たり、ビーム集束条件、使用振動子数などの探傷条 件は最適化を図っている。型溶接部RPVティボックスCSRT薄型アレイ探触子配管ギャップFig.1 CS pipingFig.2 Toshiba Phased Array UT Equipment& Thin-type Array probeThin-type array probeWelds1270180°90°1 GapScanning /////RPVFig.3 Inspection image of Phased Array UTon CS piping148Simple scanning patternScanning pattern with skew angleScan directionScan directionWeldisWelds100JTQCrackCrackThin-type Array probeThin-type Array probeQ: Skew angle (a = 0 deg )a: Skew angle ( + ,0)Fig.4 Scanning pattern of CS piping specimen4.試験結果および考察4.1 単純走査方式の探傷 - 周方向き裂に対する探傷画像の代表例を Fig.5 に示す。Fig.5 (2)は探傷平面画像 (C スコープ画像) で、鞍型溶接線の指示が明瞭に認められている。ま た、き裂は図中の矢印で示すようにき裂 F1~F5 の すべてのき裂を検出できている。Fig.5(1)はき裂 F4 の探傷断面画像 (B スコープ画像)であり、直射 (0.5 スキップ)と 1.5 回反射(1.5 スキップ)に同じき 裂からの信号(コーナエコー)が検出されている。これらのき裂信号から長さ測定を行った。長さは、 ノイズレベルの評価(信号消失長さ)と DAC20% 指示長さの両方で評価した。なお、DAC 曲線は、対 比試験片 (150A 配管)の内外面に深さ 0.5mm スリ ットを付与した欠陥を対比欠陥として作成した。 Fig.6 に長さ測定結果をまとめて示す。図より、消 失長さは、誤差平均9.0mm、RMS 誤差 13.1mm、 また、DAC20%指示長さは、誤差平均5.1mm、RMS 誤差 10.8mm であり、いずれの結果もASME Code Sec.XI Appendix VIII の合格基準であるRMS 誤差 19.1mm と比較して良好な精度で長さサイジングが できた。なお、誤差平均がプラスの誤差を有してい る原因は、配管溶接部が鞍型溶接部であり、き裂の 進展方向に対して必ずしも超音波ビームが直交入射 しないこと、超音波ビームが配管に入射するときに 配管の曲率の影響で横方向に広がりをもつことなど があげられる。(1) B-scan imageF4 (330deg)Thin-type array probeTsurfaceCrack indication(1.5 skip)(2) C-scan imageOdegWeld90degF1 (120deg)F2 (180deg)180deg““180degF3 (240deg) |UT beam270deg- F4 (330deg)」F5 (Odeg)380deg Fig.5 Inspection image of CS piping UTFig.7 に端部エコー法を用いた深さサイジング結 果を示す。いずれのき裂も深さ測定(今回対象とし たき裂深さは 2.5mm 以上)が可能であり、図より、 誤差平均 0.7mm、RMS 誤差 1.2mm であり、ASME Code Sec.XI Appendix VIII の合格基準である RMS誤差3.2mm と比較して良好な精度で深さサイ ジングができた。149Evaluation : Noise level (1) Evaluation : Noise level(2) Evaluation : Noise levelCore Spray Piping (Tee-Box)Core Spray Piping (Tee-Box)Core Spray Piping (Tee-Box)Average error: 9.0mm RMS error : 13.1 mmAverage error: 5.1 mm HRMS error :10.8mmAverage error : 0.7 mm RMS error :1.2mmCrack Length by PAUT (mm)Crack Length by PAUT (mm)Crack Depth by PAUT (mm)19.1mm19.1mm+3.2mmEvaluation : Noise LevelEvaluation : DAC 20%10_2040 60 80 100 120 140 Actual Length (mm)1020406080100 120 140Actual Length (mm)10246_8_10 12Actual Depth (mm)Fig.6Crack length sizing results on CS piping specimenFig.7 Crack depth sizing resultson CS piping specimen(1) B-scan imageThin-type array probeF3 (240deg)Crack indication(1.5 skip)(2) C-scan image OdegWeldodeg,weld4.2 溶接線倣い模擬走査方式の探傷 の結果であり、Fig.8 (2)の C スコープ画像からき 裂 F3 からの指示が明瞭に認められ、さらに単純走 査の検出信号に比べ大きな振幅で検出されている。 また、単純走査の結果と同様、鞍型溶接線の指示も 明瞭に認められている。Fig.8(1)は、き裂 F3 の B スコープ画像であり、直射(0.5 スキップ)と1.5 回反射(1.5 スキップ)に同じき裂からの信号(コ ーナエコー)が検出されている。次に、首振り角Q=+10 度の探傷に加えて、a= -10度, 0度の探傷の計3条件の結果を総合的に評 4.2 溶接線倣い模擬走査方式の探傷周方向き裂に対する探傷画像の代表例を Fig.8 に示す。Fig.8は、首振り角 a =+10 度の条件で の結果であり、Fig.8 (2)の C スコープ画像からき 裂 F3 からの指示が明瞭に認められ、さらに単純走 査の検出信号に比べ大きな振幅で検出されている。 また、単純走査の結果と同様、鞍型溶接線の指示も 明瞭に認められている。Fig.8(1)は、き裂 F3のB スコープ画像であり、直射(0.5 スキップ)と 1.5 回反射(1.5 スキップ)に同じき裂からの信号(コ ーナエコー)が検出されている。 1次に、首振り角Q=+10 度の探傷に加えて、a= -10度,0度の探傷の計3条件の結果を総合的に評 価して長さ測定を行った。その結果を Fig.9にまと めて示す。図より、消失長さは、誤差平均 12.5mm、 RMS 誤差 13.3mm、また、Fig.10 に示す DAC20% 指示長さは、誤差平均8.8mm、RMS 誤差 10.0mm| であり、いずれの結果も ASME Code Sec.XI Appendix VIII の合格基準である RMS 誤差 19.1mm と比較して良好な精度で長さサイジングがノーーいはーい.。(2) C-scan image OdegWeldUT beam90deg180degF3 (240deg)270deg次に、首振り角 a =+10 度の探傷に加えて、Q= -10度, 0度の探傷の計3条件の結果を総合的に評 価して長さ測定を行った。その結果を Fig.9 にまと めて示す。図より、消失長さは、誤差平均12.5mm、 RMS 誤差 13.3mm、また、Fig.10 に示すDAC20% 指示長さは、誤差平均 8.8mm、RMS 誤差 10.0mm であり、いずれの結果も ASME Code Sec.XI Appendix VIII の合格基準であるRMS 誤差 19.1mm と比較して良好な精度で長さサイジングが できた。ここで、本結果と単純走査での結果 (Fig.5) と比 較するとほぼ同様な誤差評価であった。従って、きここで、本結果と単純走査での結果 (Fig.5) と比 較するとほぼ同様な誤差評価であった。従って、き 裂長さが 25mm 以上(本報告での対象き裂)あれば、 溶接線倣い模擬走査方式の探傷を行わずに単純走査 のみの探傷で長さ評価を適正に行える可能性が高い ことが分かった。380degFig.8 Inspection image of CS piping UT- 150 - 5.結言原子力プラント BWR 炉内薄肉配管の主要機器 であるコアスプレイ配管のティボックス試験体(疲 労き裂付与)に対して、狭隘部探傷用として開発し た薄型アレイ探触子を適用した結果、き裂長さ及び き裂深さが良好な精度で測定できた。また、鞍型溶 接部の探傷として、アレイ探触子を配管の円周方向 に単純走査する単純走査方式での探傷と、溶接線に 沿って走査する溶接線倣い走査を模擬した溶接線倣 い模擬走査方式での探傷を実施した結果、長さ 25mm 以上のき裂に対しては、ほぼ同等の精度で長 さ評価が可能であったことから、単純な機構の走行 装置で欠陥検出、長さおよび深さサイジングが適正 に行える見通しが得られた。以上の結果から、コア スプレイ配管に対する水浸フェーズドアレイ UT 法 の有効性が確認できた。参考文献 [1] 平澤、長井、古村、村上、高林、櫻井:日本非破壊検査協会「平成第9年度秋季大会講演会概要集」, 1997, P.21-24 [2] T. Hirasawa et al. : 3rd EPRI Phased arrayseminar, 2003 [3] 平澤、長井、村上、湯口、大坪、成瀬:日本保全学会「第4回学術講演会要旨集」,2007, P.67-71Core Spray Piping (Tee-Box)Average error: 12.5mm HRMS error : 13.3mmCrack Length by PAUT (mm)+19.1mmEvaluation: Noise Level |10204060 80 100 120 140Actual Length (mm)Fig.9 Crack length sizing resultson CS piping specimen (Evaluation:Noize level)Core Spray Piping (Tee-Box)Average error: 8.8mm RMS error :10.0mmCrack Length by PAUT (mm)19.1mmEvaluation : DAC 20%10_2040 60 80 100 120 140Actual Length (mm)Fig.10 Crack length sizing results Fig.10 Crack length sizing resultson CS piping specimen (Evaluation:DAC20%)151
“ “?フェーズドアレイ UT による炉内配管への適用“ “平澤 泰治,Taiji HIRASAWA,湯口 康弘,Yasuhiro YUGUCHI,村上 功治,Koji MURAKAMI,大坪 徹,Tooru OOTSUBO,成瀬 克彦,Katsuhiko NARUSE
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