パルスECT法による肉厚および導電率測定のシミュレーション

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カテゴリ: 第5回
1.緒言
そこで、パルス ECT 法が研究されている[1, 2]。 渦電流探傷とは、交流電流を流した励磁コイルを パルス ECT は渦電流探傷の1つであるが、図1に示 金属に近接させ、金属内部に誘起された渦電流の変されるパルス状の励磁電流を用いているため、パル 化を鎖交磁束量の変化として検出して、探傷を行うスECT と呼ばれている。その励磁方式は式1に記述 方法である。その励磁電流は単一周波数、或いは、される。 多重周波数の連続的な正弦波である。渦電流の導体(1) 内部の浸透は、励磁周波数、被検体の導電率及び透tot(1) は、励磁周波数、被検体の導電率及び透 退に反比例する浸透深さで左右される。パルス電流の周期はTであり、励磁電流 16は16時 励磁周波数が高いほど、或いは、被検体点で切断され、試験体内部に渦電流が誘起される。 び透磁率が高いほど、浸透深さが浅くな励磁電流を切断された以降、渦電流は減衰しながら、 角、或いは、高導電率、高透磁率の材料 ユする場合、渦電流を材料内部深く浸透被検体内部に浸透していく。 開発する必要がある。パルス ECT で誘起される渦電流の周波数帯域は 広く、試験体の深くまで浸透できるため、近年、様々 な非破壊検査および非破壊評価分野、たとえば、欠 陥の検出、コーティング厚さおよび被検体厚さの測 定、導電率の測定などに注目されているが、パルスECT 法の原理の理解や信号の解析方法の検討、およ Tび欠陥の同定などを行うためには、パルス ECT の測 (a) 理想的な場合、定方法の開発のほかに、定量的な解析・シミュレー ションが必要である[3, 4]。* I() = lot tor)図 4 の上段中央のコンター図は B」 が 1.x10“T に なるまでの時間 (B, ) を示している。コンター図は導 電率の上昇及び被検体厚さの増加に伴って、B, にな るまでの時間が長くなることを示している。173(C) ある特定時刻 12 ( 12 > lo.)の信号値 B. (12) -- 時刻 1, = 1.×10秒の信号 B, の対数値を図4の上段 右側のコンター図に示した。以上に示した“直接的な'特徴量のほかに、Bz の時間変化曲線のから得られる“非直接的な'特徴 量についても検討した。即ち図3に示した結果から、 信号 B, と時間tの関係をいずれも対数で表わした曲 線は2次曲線で近似できることが分かるため、y と x をそれぞれ log10(B) 及び Log10(1) と表示する と、以下の2次元近似ができる、_y = cxr + C2X + C3-6ここで、c、 (i=1,2,3) は2次近似曲線の係数である。 この様にして求めた。 及び のコンター図を図4の 下段左側と下段中央示にそれぞれ示す。また、信号 B, の 時間に伴う変化波形にFFT 変 化を行う際に得られるFFT変換係数の第1次係数を ICと表わして、そのコンター図を図4の下段右側 に示した。y3.2 被検体厚さ及び導電率の推定図4に示した“直接的な”及び“非直接的な'特 徴量のコンター図は、被検体厚さ及び導電率は簡単 な特徴パラメータではモデリング困難であることを 示している。 * 他方、非パラメータ化アプローチは様々なパラメパラメータ化アプローチは様々なパラメBZTx 101(日)日くもる11.421.431.41 1.2Conductivit/MS/M)3.2314.01.391.00.6A2177/12/1211520 Thickness(mm)Thickness(mm)10_ 1520 Thickness(mm)fftc.0.0211.4 8-1.5 11.2 -21900/01/09 0:21:36Conductivity (ms/m)1.0,|-2.5 10.8計0.011-3.5で300.610 111520 Thickness(mm)10_1520 Thickness(mm)10_1520 Thickness(mm)図 4. 各特徴量のコンター表示ータでのモデリングが困難なケースに有効であるこ とが文献に示されている[5, 6]。 そこで本研究では 非パラメータ化アプローチの一種である SBM 法 (similarity-based method) を用いて、パルス ECT 信 号の特徴量から被検体の厚さ及び導電率を推定する ことを試みた。 - SBM 法を利用するためには、データベースを構築 して、学習させる必要がある。学習させるデータセ ットの入力は多次元特徴量とそれに対応する被検体 厚さと導電率である。すなわち、データセットは入 力特徴量セットX と出力マトリクス Y で構築さ れる。 Xv = [(B.), B, (1), Chu, C2, , C,, , fiCor], (i=1,N) Yo =[d, o](7) ここで、t(Br), B, (t2)Chi, C2;,CS, , SiCo, はそれぞ れ節 3.1 に説明された直接的及び非直接的な特徴量 であり、d,o,は被検体の厚さ及び導電率である。 Nは学習データセットに含まれるケース数である。 本研究の学習データセットは前節のシミュレーショ ン結果を用いて構築しているため、5段階の厚さ及 び6種類の導電率を併せて、計30ケースがある。 Xは計測信号から得られた特徴量セット、Yest は Xes に対応する被検体の厚さ及び導電率である。 Yesは以下の SBM 計算式でXから推定値できる。タ174ThicknessConductivityestimated (mm)estimated (MS/m)1015 true (mm)true (MS/m)図 5 SBM 法による被検体厚さ及び導電率の推定結果図5Yes! =Yr.wで、w は重み関数であり、以下の様に表せる。(ノード)-11Yes? = Yr . W-8ここで、w は重み関数であり、以下の様に表せる。11-9n = (x Tex,y) ' * (X, R Xess) = MI-'*A_-10符号のは類似計算であることを表しており、二つの データセットUとVの類似度は以下の式で計算でき る。(ノールの2UeV=-11e22以上のSBM アプローチを用いて、あるパルス ECT のシミュレーション信号から、それに対応する被検 体の厚さ及び導電率を推定した。 図5は、その推定 結果と真値の対応関係を示したものであり、横軸と 縦軸はそれぞれ真値及び推定値を表わす。導電率は 1.0 MS/m、板厚さはそれぞれ7、9、及び 11mm であ り、推定値と真値がほぼ一致していることが分かる。この結果から、パルス ECT 信号の特徴量選定の適 切性が示され、また SBM 法が被検体厚さ及び導電 率推定へ適用可能であることが示された。4、結言* 本研究では、パルス ECT 法の過渡現象のシミュレ ーションを3次元有限要素法を用いて行い、時間と ともに変化するパルス ECT 信号の計算ができた。更に、その信号から特徴量を抽出して、SBM 法と組 み合わせて、被検体の厚さと導電率を同定した。同 定結果と真値の対応関係から、導電率推定が可能で あること、および通常の定常電流で励磁する ECT 法 では困難な比較的厚い被検体の厚さ測定へのパルス ECT 法の適用性がされた。 今後、このシミュレー ション解析とともに実験的な取り組みも行い、従来 の ECT 法では困難な比較的深い領域の欠陥検査に も取り組んでゆく予定である。謝辞SBM 法のご指導を頂いた会津大学兼本先生に謝意 を表します。参考文献[1] S. K. Burke, G. R. Hugo, and D. J. Harrison, “Transienteddy-current NDE for hidden corrosion in multilayer structure”, Revieq of Progress in Quantitativenondestructive evaluation, vol 17, pp. 307-314, 1998. [2] C. C. Tai, J. H. Rose and J. C. Moulder, “Thickness andconductivity of metallic layers from pulsed eddy-current measurements”, Rev. Sci. Instrument.67(11), pp. 3965-3972, November 1996. [3] J. Bowler, “Pulsed eddy-current response to aconducting half-space““, IEEE Trans. Mag, Vol. 33, pp.2258-2264, May 1997. [4] “S. K. Burke, G. R. Hugo, and J. C. Moulder,“Short-time behavior inpulsed eddy current nondestructive evaluation”, Review of Progress in Quantitative Nondestructive Evaluation, vol 18, pp.485-492, 1999. [5] S. Wegerich, “Condition based monitoring usingnonparametric similarity based modeling”, Proceedingof the 3rd conference of Japan Society of Maintenology, * pp. 308-313,2006. [6] S. Kanemoto, W. Cheng, I. Komura, “Depth sizing ofcomplex shape cracks using ECT signals”, presented on the 13th Intl. Symposium on Applied Electromagnetic and Mechanics, East Lansing, MI, USA, 2007.175
“ “パルス ECT 法による肉厚および導電率測定のシミュレーション“ “程 衛英,Weiying CHENG,古村 一朗,Ichiro KOMURA
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