JMTR原子炉建家及び排気筒の健全性調査

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カテゴリ: 第5回
1. はじめに
JMTR (Japan Materials Testing Reactor、熱出力 50MW)は、2005 年 10 月に策定された原子力機構の 中期計画において、「廃止の準備を行う施設」として 位置づけられたが、代替機能の確保に留意するととも に、ユーザーコミュニティーの意見を聴取しつつ、適 切な廃止の方法と時期を検討することが中期計画に 付記されたため、2005年 11月に原子力機構外の利用 者を集めたJMTR 利用検討委員会を設置して、我が国 における材料試験用原子炉のあり方等について検討 を行った。この結果、JMTR を改修し、2030 年頃まで 有効利用すべきであると提言された(2006年4月)。 さらに、2006年7月には文部科学省科学技術審議会 研究計画・評価委員会の「原子力の研究開発に関する 推進方策」において、JMTR は「必要な更新を行い活 用していくことを検討すべきである」と記された。JMTR は、第 165 サイクルの運転完了(2006年8月) をもって一旦停止したが、その後、総合科学技術会議 において「JMTR の改修と再稼働を着実に実施すべし」 との評価を受け(2006年 10 月)。JMTR を原子力の基
盤技術を支える原子炉と位置づけ、2011 年度再稼動を 目指し、2007 年度から改修を開始した「リ。再稼動後、JMTR は約 20 年間の長期にわたり運転し ていく計画であるが、二次冷却計系配管の長期使用を 確実にするためには、改修期間中に配管内面の観察、 分析、評価を行い、今後の保全計画を策定するための 基礎データを取得する必要がある。そのため、本報で は、そのための二次冷却系配管の調査を行った。2. 二次冷却系統JMTR の二次冷却系統511456)は、原子炉運転中に炉 心内で発生した熱を一次冷却系統から熱交換器を介し て受け、それを冷却塔から大気に放散するためのもの で、冷却塔、循環ポンプ、補助ポンプ、主配管などか ら構成されている。Fig.1 に二次冷却系統フロー図を示す。二次冷却水 (約 3900 m2/h)が受けた熱は、主熱交換 器胴側を上向流で出たのち、直径 750mmの配管(以 下、750A 配管、という)を通って分岐した後、直径 450mm の配管(以下、450A 配管、という)を経由し て、冷却塔上部から落下し、空気と向流接触することにより大気中に放散する。冷却された二次冷却水は冷 却塔下部のボンド、ポンプ室建屋地下ポンド、循環ポ ンプ、750A 配管を経て主熱交換器に戻る。to.mataFig.1 二次冷却系統フロー図Fig.1 二次冷却系統フ二次冷却系配管は、JMTR 建設当時(1968年)から 使用しているものであり、その主な仕様を Table 1 に示 す。主要な構成材料は炭素鋼であり、配管内面にはコ ールタールエナメル及びタールエポキシ塗料により防 食及び防錆塗装を施すことにより、長期にわたる使用 を考慮している。 Tablel 二次冷却系配管主要仕様 構成部材SS400 (SS41) 呼称/厚さ750A/10t、450A/8t 設計圧力0.49MPa 設計温度60°C750A/コールタールエナメル 配管内面ライニング450A/タールエポキシ塗料(1) ポンプ室配管部冷却ファンへ補助ポンプからポンプからV23-18V23-10 ・V23-20 ・ V23-21 ・V23-22 ・V22-23V23-1 (×7) ・V23-2 (x1) ・V23-3 (X2)V23-4 (x3) V23-5 (X4) ・ V23- (X5) ・V23-17(X6) ・V23-15 (X)123-17 (X8) 123-54 (27)(24) (Z5) (26) (Z1) (22) (23)1)バイパスラインストライン| (2) トレンチ配管1(給水配管)| (3) トレンチ配管2(戻り配管)| (4) 給水ヘッダ部及び戻りヘッダ部交換当から 交換へFig.2 二次系配管内面調査の配管位置図- 198 -3.調査 3.1調査方法二次系配管内面調査の配管位置図を Fig.2 に示す。調 査に先立ち、二次冷却系配管内の水を抜き、その後、マンホール及び配管ヘッダ部を解放した。 1一次冷却系配管の外側については、日常点検等により、腐食等が発生しておらず健全性が確認されている ため、調査範囲は、二次冷却系主配管の 750A 及び 450A 配管内側ライニングを対象とした。 - 調査は、配管内面の錆、ライニングの割れ(クラッ ク)、剥がれ、ふくれ等に着目して、目視により実施し た。750A 配管については、作業員が実際に配管内に入 りこみ、調査を行い、450A 配管については目視および 目視できない箇所についてはファイバースコープによ り調査を行った。なお、調査にあたっては、二次冷却 系主配管の構成・配置を考慮し、次のように調査領域 を分けた。 (1) ポンプ室配管部 (2) トレンチ配管1(給水配管) (3) トレンチ配管2(戻り配管) (4) 給水ヘッダ部及び戻りヘッダ部3.2調査結果 (1) ポンプ室配管部 1 750A 配管の内側ライニングについては、配管側面の クラックは少なかったが、底面については、大小のふ くれ、形状の異なるクラックが多数確認された。Fig.3 に代表的な配管内底面のふくれ部を示す。側面のクラ ックが少なかった理由としては、コールタールエナメ ルの上にタールエポキシ塗料が再塗装されたためと考 えられる。 1450A 配管については、内面ライニングの全面に著しい錆、ふくれが確認された。配管自体の腐食について は軽微なものであった。Fig.4 に 450A 配管内面の一例 を示す。溶接部には、錆コブから腐食に進行していた ものがあった。これは、1968 年設置当時に現地で塗装 した際に、十分な下地処理または塗膜の確保ができて いなかったためであると考えられる。Fig.3 750A 配管内底面のふくれ部Fig.4 450A 配管内全面に広がる錆、ふくれ(2) トレンチ配管1(給水配管)この部分は 750A 配管であり、目視確認の結果、内 側ライニングには全面に大小のクラックがあり、配管 下面部のクラックには錆も見られた。更に大小のふく れも見られ、その中は水分を含み、錆ている状況であ った(Fig.5)。Fig.5 配管内のクラック(3) トレンチ配管部2(戻り配管) * この部分は、750A 配管であり、目視確認の結果、内 側ライニングには、全面に大小にクラック、ふくれが あり、ライニングが剥離している箇所も多数確認され た。クラックについては、その深さが素地にまで達し ているものも見られた。ふくれについては、水分を含 み、錆ている状況であった。これは、塗膜が劣化して いる状況である。配管内の深いクラックを Fig.6に示す。Fig.6 配管内の深いクラックの例 (4) 給水ヘッダ部及び戻りヘッダ部給水ヘッダ部及び戻りヘッダ部の 750A 配管につい ては、450A 配管との接続部周辺に錆、ふくれが見られ たが、クラックは発生していなかった。代表的な状態 をFig.7 に示す。給水ヘッダ部及び戻りヘッダ部の 450A 配管につい ては、ふくれ、錆が著しく、一部では孔食が見られた。 特に給水ヘッダの3本の配管は、戻りヘッダの3本の 配管よりも塗膜欠陥が著しかった(Fig.8)。Fig.7 給水ヘッダ接続部錆、ふくれ部199- Fig.8 戻りヘッダ内部の錆4.考察二次冷却系統主配管のこれまでの保全活動”につい ては、トレンチ内に敷設された主配管外表面の一部に、 コンクリート成分を含む雨水の滴下による腐食が進行 したため、1998 年度にその一部を更新した。主配管内 面のライニング点検は、過去に 1983 年度及び 1985年 度に実施され、その際には、一部塗装も行った。更に 2004 年度には、主配管の肉厚測定を実施し、減肉の無 いことを確認している。今回の調査結果をまとめると、次の通りである。 (1)二次冷却系配管のライニング全面にクラックが発生 していた理由としては、配管内面ライニングとして、 コールタールエナメルの上に二液性のタールエポキ シ樹脂塗料を塗装したことが挙げられる。これは、 タールエポキシ樹脂が常温硬化型の主剤と硬化材から成型される二液性溶剤型エポキシ樹脂であり、主 * 剤によりコールタールエナメルが溶解し、柔らかい塗膜形成となり、その上に硬化型樹脂が形成したた - めに、クラックを誘発する原因となった可能性があるからである。 (2)配管内面ライニングの状況としては、塗膜下に錆が発生しており、機能低下が著しいことが確認された。 (3)配管内面(地金の部分)に減肉は認められず、現在 は軽度の腐食状態である。以上の結果から、二次冷却系配管は、1985 年の補修以 降、2007 年までの約 22 年間の使用において、減肉な どの配管自体の劣化は生じておらず、適切な保守管理 が行われてきたといえる。5. まとめ今回の二次冷却系配管の調査の結果、配管のライニ ングの劣化は確認されたが、配管自体の腐食はほとん ど発生しておらず、配管としての機能は十分に維持さ れてきたといえる。この結果から、JMTR 再稼動後においても、これま でのような保守管理を継続することにより、JMTR の 利用ニーズがあるとされた 2030 年頃までの利用に対 して、配管としての機能を維持し続けることの見通し を得た。今後は今回の調査結果をもとに、具体的な二次冷却 系配管の保全計画を策定する予定である。参考文献[1] 出雲寛互、長尾美春、新見素二、河村弘、: “JMTR改修の全体概要”、UTNL-R0466(2008) [2] 塙善雄、出雲寛互、深作秋富、長尾美春、河村弘:JMTR 二次冷却系統 配管 の 健全性調査JAEA-Review 2008-023 [3] 材料試験炉部原子炉第1課私信、(1986) [4] 日本原子力研究所大洗研究所原子炉施設設置変更許可申請書(完本) (2001) [5] JMTR project : ““conceptual design of the JapanMaterial Testing Reactor”, JAERI1056,(1964) [6] 材料試験炉部: “JMTR 照射ハンドブック““,JAERI-M 94-023(1994) [7] 日本原子力研究所大洗研究所材料試験炉部:“施設定期評価 (初回) 報告書(JMTR 原子炉施設)、(2004)200
“ “JMTR 二次冷却系配管の保全計画策定のための予備調査“ “花川 裕規,Hiroki HANAKAWA,塙 善雄,Yoshio HANAWA,出雲 寛互,Hironobu IZUMO,深作 秋富,Akitomi FUKASAKU,長尾 美春,Yoshiharu NAGAO,宮澤 正孝,Masataka MIYAZAWA,新見 素人,Motoji NIIMI
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