核融合実験炉ITER用ダイバータ受熱機器における非破壊検査技術の開発

公開日:
カテゴリ: 第5回
1. 緒言
ダイバータ開発は冷却管の性能や接合部の繰り返し加熱 2007年10月、日本を含む参加7極の承認を得てITER 条件における耐久性実証に重点をおいて進めてきた。 機構が発足し、仏カダラッシュにおいて国際熱核融合 建設が進められようとしている現在、品質保証の観点 実験炉 ITER の建設が進められている[1]。原子力機構からダイバータ製作上最も困難なアーマタイルと冷却 では ITER 建設へ向けて炉内機器の一つであるダイバー 管接合部に対して 2 種類(赤外熱画像法と超音波探傷 ータを製作する予定である。 ITER ダイバータは図1_法)の非破壊検査技術を開発し、実機ダイバータを炉内 に示すように真空容器下部にプラズマを閉じ込める磁に装填する前に接合部の健全性を調べる必要がある。 力線と交差するように設置されるため、炉内機器中で 本報では、ITER ダイバータ用の非破壊検査技術の開発 最も高い熱負荷を受ける機器である。そのため、図2_成果を報告するとともに今後の展開を紹介する。 に示すように銅合金(CuCrZr)製冷却管へ表面保護材と2. 接合不良の検出試験およびその検証 してアーマタイル(炭素系複合材 CFC やタングステン (W)製)を異種材料間で冶金的に接合した構造となって CFC アーマタイルを有する試験に対して、2 種類の検査手法、すなわち、赤外熱画像法と超音波探傷法 炉 ITER の建設が進められている[1]。原子力機構 ITER 建設へ向けて炉内機器の一つであるダイバ を製作する予定である。 ITER ダイバータは図1 機構が発足し、仏カダラッシュにおいて国際熱核融合 建設が進められようとし 実験炉 ITER の建設が進められている[1]。原子力機構からダイバータ製作上最 では ITER 建設へ向けて炉内機器の一つであるダイバ管接合部に対して 2 種 ータを製作する予定である。 ITER ダイバータは図1_法)の非破壊検査技術を に示すように真空容器下部にプラズマを閉じ込める磁に装填する前に接合部の 力線と交差するように設置されるため、炉内機器中で本報では、ITER ダイバー 最も高い熱負荷を受ける機器である。そのため、図2_成果を報告するとともに に示すように銅合金(CuCrZr)製冷却管へ表面保護材と2.接合不良の検出 してアーマタイル(炭素系複合材 CFC やタングステン (W)製)を異種材料間で冶金的に接合した構造となって CFC アーマタイルをの検査手法、すなわち、を適用し、接合欠陥サイ 力線と交差するように設置されるため、炉内機器中で 最も高い熱負荷を受ける機器である。そのため、図2 に示すように銅合金(CuCrZr)製冷却管へ表面保護材と してアーマタイル(炭素系複合材 CFC やタングステン (W)製)を異種材料間で冶金的に接合した構造となってを適用し、接合欠陥サイズを評価するとともに、加熱 試験および断面観察を行うことにより、検査の妥当性 を検証した。 2.1 ダイバータ試験体 図2 に本試験で使用したダイバータ試験体(TP-1,Particle and Heat Load from Plasma
JointCooing tubeTwinstrondSupportDivertorTable 2: Design specifications of ITER divertor | Surface heat flux 15-20 MW/m2 Armor material Carbon-fiber composite(CFC)Tungsten(W) Structural material Cu-alloy(CuCrZr) for cooling tube,SUS2161AFig.2 Concept geometryof ITER divertorMajor radius:6.2mzuiveno| Fig.2 Concept geometryof ITER divertor| Major radius:6.2mFig.1 Crosssection of ITER 受熱機器における非破壊検査技術の開発Table 2: Design specifications of ITER divertor Surface heat flux 15-20 MW/m2 Armor material | Carbon-fiber composite(CFC)Tungsten(W) Structural material Cu-alloy(CuCrZr) for cooling tube,SUS316L(N) | Coolant conditions Water, 100°C, 4MPa- 222 -556 Heated sideOutletAInletHOT FEM calc --- TILE%231◆--TILE%3 -- -- TILE%234Tile #35#4#2333#2 #1 B A Cooling tube Swirl tape (OFHC-Cu) 14 (SS)/ 21Normalized surf. Temp, T*iiiiiiiiiCFC monoblock (CX-20020)SOCooling tube (OFHC-Cu)0.2 LT(T*=0.95)MIYA(T*05) 02 46 8 10 12 14 16Time [sec]A-A sectionB-B section Fig.2 Details of divertor mock-upFig. 4 Non-dimensional surface temperature of tiles #1, #3 and #4 of TP-1 compared with FE analyses and definition ofthermal time constant, AtCooling waterFEM calc Tile%231 Tile #2Tile #3 Tile%234 Tile%25Results of TP-2““““““““““Fig.3 IR image of TP-1 at 4 s after start of cooling.Thermal time constant, At, [sec]をResults of TP-11EVE % 2.5mnmlTMTP-2)を示す。試験体には5個の CFC アーマタイル(東 洋炭素製 CX2002-U)を無酸素銅冷却管にロウ付けした ものである。アーマタイル接合表面の受熱面側には接 合欠陥が生じやすいように、窪み加工や剥離剤塗布をJoint Defect size [%] 施している。また、冷却管には取り外し可能なねじり Fig.5 Estimation of joint defect size of the monoblock armor テープを挿入している。このねじりテープは加熱試験 tiles of TP-1 and TP-2. Dotted lines in this figure are 時に冷却管の除熱性能を高めるために使用する。本試 examples of estimation of joint defect size in each tile of 験体を使用し、下記に説明する赤外熱画像法と超音波 TP-land TP-2 with interpolation of FE calculations. 探傷法による接合欠陥の検出試験および加熱試験を実後4秒における赤外熱画像を示す。冷却水の流れ方向 施した。から各タイル(1-5)を明確に識別できる。このようにし 2.2 赤外熱画像法による接合欠陥の検出て測定した表面温度変化を用いて接合欠陥を評価する 本手法ではダイバータの高い除熱特性に着目し、高 ため、冷却時の熱時定数と接合部の欠陥を仮定した数 温から冷却する際に生じる温度過渡状況をタイル表面 値解析との比較を行う。ここで熱時定数Aでは無次元温 温度を赤外カメラで測定することにより、接合部やタ 度 T*=(T-Tmin)/(Timex-Tmi.)(T:各時刻の表面温度、Tmar、 イルの欠陥を検出するものである。図2の試験体を90 Tin:冷却時の最高と最低温度)を用いて定義した。CFC 度の温水を用いて加熱し、定常状態に到達したのち、 の熱伝導率は室温で銅以上の非常に高い値であるため、 約 30 度の冷却水で冷却する。赤外熱画像は 30 フレーT*はタイル中心のみで評価した。T*の時間変化と2次 ム秒で保存され、解析に使用される。図3に冷却開始元熱伝導解析との比較を図4に示す。熱時定数△の定義はAr=(T*=0.95)- (T*=0.5)とした。ここで (T*)は Tab. 2: Joint defect size [%] estimated withT*が 0.95 から 0.5 まで冷却される時間である。このAT thermographic NDE.を各タイル毎に測定し、図5に示すように接合欠陥を仮 | Mock-up | Tile #1 | Tile #2 | Tile #3 | Tile #4 | Tile #5 | 定した数値解析結果と比較することにより接合欠陥をTP1 | 0.0 | 14.7 | 26.4 | 29.2 | 0.4 | 評価した。表2に本方法を用いて各タイルの接合欠陥を | TP2 | 19.0 | 22.5 | 22.5 | 25.5 | 4.6 | 評価した結果を示す。223Cooling tubeTP-1Tile #5Tile #4ンHeated side (180deg)Tile #233-コー90 IdegTile #2O degTile #16Cooling Tune 0 90 180 2703600-axis (deg] Figure 6: Mapping of the intensity of the ultrasonic signal after reflection at the joint inter face of the monoblocks and the copper cooling tube of TP-1. White region represents high-reflected signal region. 2.3 超音波探針法による接合欠陥の検出 * 本方法では超音波探触子を冷却管内部に挿入し、軸 高方向に移動させるとともに周方向に回転させ、接合 面における超音波の反射波強度を測定するものである。 探触子の共鳴周波数は 20MHz であり、探触子からの超 音波ビームが接合面より CFC側で焦点を結ぶように探 触子形状を設計した。超音波パルスの繰り返し周波数 は 1kHzであり、データ収集速度と同期させている。接 合面が冶金的に接合されている場合、超音波パルスの 反射強度はほとんど生じないものの、接合面に空隙な どがある場合、反射波強度が大きくなる。TP-1 を用い た測定結果を図6に示す。軸方向への探傷子の移動ス テップは 0.5mm および回転方向は加熱面を 180度とし て 0.5刻みで回転させ反射波強度測定したものである。 図中白色の箇所が反射波強度が高い領域で、黒色の部 分は低強度の領域である。タイル#3 と#4 において 180 度付近において接合欠陥が生じていることが分かる。 その大きさとして、約 15%(54)から 20%(72)であり、 赤外熱画像法で評価した欠陥サイズより小さいという 結果となった。 2.4 加熱試験上記の非破壊検査により接合欠陥を評価した試験体 を原子力機構にあるイオンビーム照射装置による ITER ダイバータ条件を模擬した高熱流束加熱試験をTP1-231(0.0%) TP1-%232(14.7%) TP 1-833(26.4%) TP1-8234(29.2%)TP2-%22(22.5%) TP2-E233(22.5%) T P2-44(25.5%)ASurf. Temp. with IR camera [°C]500 AugustruyukugrounturalIncident heat flux [MW/m2)Fig.7: Figure 6: Results of screening test on the mock-ups, TP-1 and TP-2. Percentages in the parentheses indicate the joint defect estimated with the thermographic NDE. Solid and dotted lines represents the results of FE calculation with assumption of the joint defect. Numerical values on the lines are joint defect size used in analyses. 行った。アーマタイルへの入射熱流束は 5、7.5、 10MW/m2(ピーク値)とし、加熱時間はほぼ試験体がほ ぼ定常となる 30秒とした。図7にタイル表面の最高温 度の測定値(各マーク)と接合欠陥を仮定した 2 次元熱 伝導解析結果との比較(実線および破線)を示す。たとえ ば、試験体 TP-1 のタイル#1 は接合欠陥のないもので あり、数値解析の値とよく一致している。また、赤外 熱画像法により接合欠陥サイズが 26-29%と評価され たタイル#3、#4 の表面温度は 25-30%の欠陥を仮定した 熱解析結果と良い一致を示している。このように赤外 熱画像法による接合欠陥サイズと加熱試験と数値解析 の結果と整合性が取れていることを確認することがで きた。また、加熱試験は 1000 サイクル繰り返し、接合 欠陥の有無にかかわらず、表面温度の上昇など接合部 の劣化がサイクル中生じないことを確認した。 2.5断面観察結果図8に実際の接合欠陥サイズを測定するため、試験 体(TP-1)アーマタイル(#1、#3 および#4)中央部(図 6 中の横破線)で切断した断面の観察結果を示す。超音波 探傷ではタイル#3、#4 は 180°付近に欠陥が存在し、反 対側の 0°では欠陥がなく良好な接合状態であるという 結果であり、断面観察でも同様な結果となった。一方、 タイル#1では断面観察により0°付近に空隙が生じてい ることがわかった。図6に示す超音波探傷の結果にお いてもタイル#1 の 0°(白枠の中)に反射強度の高い領域224が見られ、断面観察結果と一致している。しかし、加 熱面側からの赤外熱画像法では、このような欠陥を検 出することができないものの、加熱試験の結果から分 かるようにダイバータの除熱特性に大きな影響を与え るものではない。 断面観察から得られる欠陥サイズ を赤外画像法および超音波探傷法による結果と比較す ると、赤外画像法では約 1.3 倍、超音波探傷法では約 0.8 から 0.9倍、それぞれ、過大評価と過小評価してい ることがわかった。3. まとめと今後の計画同一のダイバータ試験体に2種類の非破壊検査方法 (赤外熱画像法および超音波探傷法)を適用し、アー マタイルと冷却管の冶金接合部の欠陥の検出試験を 行い、それぞれの検出性を評価した。ITER ダイバータの熱負荷条件に相当する 10MW/m2までの加熱試験を実施し、欠陥がある場合 の表面温度上昇が非破壊検査で得られた欠陥サイズ を元にした熱解析結果と良い一致を示し、検査方法 の妥当性を示した。 ・アーマタイルの断面観察を行い、超音波探傷では実際のサイズより小さめに、赤外熱画像法では大き めに評価する可能性があることを示した。 * 現在、ITER ダイバータの調達に向けて本報で試行し た赤外熱画像法を改良・発展させた装置の整備を原子 力機構内に進めている[3]。本装置では、温水および冷 水の温度差を大きくとり、より詳細なデータを取得す ることが可能であり、実機サイズダイバータを3本同 時に検査することが可能である。また、鏡を用いて表 面および側面(二面)も同時に計測することにより本報 で試行した赤外熱画像法では検知できなかった受熱面 以外の接合欠陥を検出することが可能である。参考文献[1] http://www.iter.org/index.htm [2] R. Tivey, M. Akiba, D. Driemeyer, I. Mazul, M. Merolaand M. Ulrickson, ““ITER R&D: Vacuum Vessel and In-Vessel Components: Divertor Cassette,” FusionEngineering Eng. and Des.ign, 55 (2001) 219-229. [3] 横山堅ニ、他5名、赤外熱画像を用いた核融合実験炉ダイバータ用非破壊検査装置の開発、日本保全 学会 第5回学術講演会、2008年7月、水戸225
“ “核融合実験炉 ITER 用ダイバータ受熱機器における非破壊検査技術の開発“ “江里 幸一郎,Koichiro EZATO,鈴木 哲,Satoshi SUZUKI,大楽 正幸,Masayuki DAIRAKU,横山 堅二,Kenji YOKOYAMA,秋場 真人,Masato AKIBA
著者検索
ボリューム検索
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (1)
解説記事 (0)
論文 (2)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (5)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)
論文 (0)
解説記事 (0)