弾性波伝播解析のための3次元有限要素法における要素寸法および時間増分の設定方法の検討

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カテゴリ: 第5回
1. 緒言
原子力発電所には、直径約 40m の原子炉格納容器,連 続する構造物として扱う場合にその長さが数 10m 規模に なる配管系統など,種々の大型構造物がある.このよう な大型構造物の超音波を利用した非破壊検査には,検査 部位への接近性の制限などから,限られた位置からの遠 隔検査が必要となる.供用期間中検査としてなされてい る超音波探傷試験は,溶接部という局所的な部位を対象 としたものが主であり,これらに用いられるシステムの 大型構造物への適用は必ずしも適切ではないと考えられ る. 長距離範囲における超音波の伝播特性において材料 による減衰が支配的となるためである.そこで、大型構造物に適用可能なシステムへの要求条 件を明らかにするために,長距離範囲の材料減衰に対応 する,入力すべき超音波信号強度を定量的に評価するこ とを考えた.しかし,実規模サイズの試験体等による実 験評価は容易ではないことから,有限要素法を用いて解 析的に評価することとした.大規模な空間と時間を対象として,減衰の適切な評価 が可能な解析誤差の少ない伝播解析とするためには,時 間増分と要素寸法の適切な選定による,解の収束の確認 が必要である。これまで多くの弾性波の有限要素解析事例において, 金属材料や地盤,超音波や地震波など,多様な伝播媒体 と周波数域を対象に,それぞれの評価対象に応じて,解 析空間における要素分割,解析時間における時間増分が選定されている.Harumi は,鋼材の2次元解析に対して,要素寸法とし て対象とする弾性波の波長の 1/15 に相当する寸法を選定 し,要素寸法と弾性波の伝播速度から周期の 1/15 に相当 する時間増分を選定しているのを始め,黒木は,鋼材 3 次元解析を,弾性波の挙動を扱う上で十分細かい値とし て 1/40 波長で,三木は,鋼材の2次元解析を,弾性波の 挙動を扱う上で十分細かい値として 1/12 波長,1/20 周期 で,劉は,同じく鋼材の2次元解析を,波の特性を表す のに十分小さいとする 1/13 波長および入射波形を十分表 わせるとする 1/36 周期で解析を行った.また,Mirkhani は,鋼材の2次元解析において, Lord は, Al材の2次元 解析において, Arun は, グラファイト/エポキシ樹脂中 の2次元解析において,弾性波の波長または周期を基準 に選定している.また, Guan は, Al材2次元解析におい て,精度良い超音波伝播解析に適した時間増分として絶 対値で選定している.一方,地盤等における地震波の伝播等に対して,大槻 は,地震波の2次元解析において,波長に対して 1/10 の 要素寸法を選定し,地震波の伝播速度とから 1/12 周期を 時間増分として選定している. Ju は,地盤を対象とした 2次元および3次元解析において, Zhangは地震波の2次 元解析において,同様の方法で選定を行っている.さらに,伊藤は,A1材中の2次元解析において,解の 収束性と計算効率を考慮したとして,要素寸法として 0.06 波長を,要素寸法を伝播する時間の 0.3 を時間増分と して選定している.その他,Moser による鋼材中の弾性 波の2次元解析,Galdos による鋼材中の弾性波の2次元
解析,吉川による鋼材中の弾性波の2次元解析において, 解析結果の収束により要素寸法または時間増分の選定の 例がある. - 以上のように,解の安定性,解析結果の収束,弾性波 の性状の表現性などから,多くの事例で解析評価の目的 に沿った最適な条件がそれぞれ選定されたと考えられる. しかし,扱われている弾性波の波長に対する伝播距離の 比は数 100 程度であり,本研究が対象とするような大規 模構造物においては,扱う周波数によっては,さらに数 1000 の比となる.さらに,長距離域を対象とする解析を 適切に行うために,解の収束が得られるような要素寸法 と時間増分を選定する方法を検討した.誤差を評価する 際に解析結果の収束先としての解が明らかな等速直線運 動に相当する変位を解析モデルに与え解析するものであ る. 物体の等速直線運動においては本来生じることがな く,超音波受信信号としての計測対象であるひずみを定 量的に評価することによって,要素寸法と時間増分を選 定する方法である. 1以下,提案する方法とこれによる要素寸法と時間増分 の選定を示し,選定された条件による弾性波伝播解析例 によってその有用性を示す.2. 時間増分および要素寸法選定方法の提案超音波は,超音波探触子内部の圧電体からなる振動子 により送受信される.圧電体を用いた超音波探触子によ り得られる受信信号は、材料における探触子を設置した 部位におけるひずみを計測しているものと考えることが できる.したがって,弾性波伝播解析における時間増分 と要素寸法の選定においては,ひずみを評価することと した.弾性波の伝播を対象とした動的解析においては,適切 な要素分割と時間増分の設定が必要である. 要素および 時間増分を小さくしていった場合に得られる真の解ある いは理論解との差異により,評価選定することが考えら れるが,真の解または理論解が必ずしもあらかじめ分か っているわけではない.そこで,解が明らかな問題を解析し,得られた解を評 価することで,要素寸法と時間増分の選定を試みること とした.解が明らかな問題として,等速直線運動を考え た. 解析対象物が等速直線運動をなすような変位を与え, 解析結果を評価するものである. 連続体の等速直線運動は,その物体内のすべてにおいて,かつ,あらゆる時間において,変位が同じであるこ とである.このことから,物体内のすべてにおいて,ひ ずみは 0 であり,時間によっても変化せず一定となる. これを解析評価する際に注意すべきことは,実際のこれ らの現象が,位置および時間において連続的に生じてい ることである.連続体の等速直線運動の解析評価においては,連続体 である物体を分割した解析要素の節点毎に,時間増分の 時刻毎に,解を求めることとなる. 物体に等速直線運動 をなそうと,時間増分毎の時刻に,時間増分に一定増加 する変位が入力として与えられる.すなわち,Fig.1 に示 すように,時間において不連続に変位がステップ状に変 化する. 本来連続的に増加する変位とステップ状に変化 し時間増分において一定の変位との差が誤差となり,こ れが擾乱となって現れる.このことによって,本来生じ 得ないひずみが,解析結果に生じる.19/n |0. 01 0. 02.0 4.608.0 10.0 t/AtFig.1 Displacement with time increment for uniform motionさらに,連続体において連続的に生じる現象であって も,要素を立方体8節点とする1次要素で分割する場合 には,伝播方向に変位を入力した際の伝播方向における ひずみは、要素内の伝播方向において一定となる. この ことは,要素内で伝播方向に隣接する節点において,変 位は異なっていても, ひずみは同じとなる.このことは, 伝播方向における要素分割によって,変位とひずみの伝 播に差異が生じることを示している.選定方法の特徴は,その解が明らかな等速直線運動を 対象とし,時間および空間の離散化によって生じる誤差 に対して,等速直線運動においては本来生じることのな いひずみを指標としたことである. ・- 参考文献省略。250
“ “弾性波伝播解析のための3次元有限要素法における要素寸法および時間増分の設定方法の検討“ “石田 仁志,Hitoshi ISHIDA,飯井 俊行,Toshiyuki MESHII
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