スマートアレイプローブの開発
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カテゴリ: 第5回
1. 緒言
加圧水型原子力発電所(PWR プラント)内の蒸気発 生器 (SG) 伝熱管の供用期間中検査は渦流探傷(ECT) で行われており、通常ボビン型プローブが使用されて いる。当社では次世代定期検査用プローブとして、き ず検出能及び分解能を向上させたアレイ型プローブ 「Xプローブ」を海外メーカーと共同で 1998年に開発 した[1]-[6]。これはパンケーキコイルを円周方向に 16 個、軸方向に3段の計 48 個配置したもので、プローブ ヘッド内部の ASIC により励磁/検出コイルを順次選 択して管の全周を網羅する。Fig. 1にXプローブの検 出原理を示す。本プローブは一度の走査で軸方向きず 検出モード(軸モード)、周方向きず検出モード(周モ ード)の両データを採取できる。また EPRI(米国電力 研究所)の認証を取得しており、他の伝熱管サイズに も展開されていることから、米国・カナダを中心に詳 細検査用プローブとして広く使われている[7],[8]。 国内 においても 2003 年に(財) 発電設備技術検査協会によ る確性試験において技術的な妥当性について確認され ており、(社)日本電気協会 電気技術指針 JEAG4208-2005 に新型プローブとして追加記載されている。しかしながら、X プローブは軸モード・周モード各々 伝熱管一周あたり 32 チャンネルと高分解能であるも のの、周モードはC列のデータと B列のデータ間にギ ャップがあり、データ解析時の煩雑さから実質 16 チャ ンネルとして使われることが多い。それ故にチャンネ ル間の感度低下が若干あるのが実状である。
SwitchingSwitchingRow CB ARow CB AAxial mode : 32 ch. Circ. mode : 16 ch.Circ. mode : 16 ch.Transmitters e Receivers for axial modeO Receivers for circ. mode Fig. 1 Detection Principle of X-probe251本研究では、数値解析結果を基に周方向きず検出能 及び分解能を大幅に改善したスマートアレイプローブ を開発・製作し、様々な性能評価を行った。2. スマートアレイプローブの開発と特長 2.1 要 - スマートアレイプローブはXプローブとコイル配置 はほぼ同等ながら励磁・検出コイルの組み合わせを見 直すことにより、周モード 32 チャンネルを同一円周上 に配置し、周方向きず検出能及び分解能を大幅に向上 させたプローブである。Fig. 2 にスマートアレイプロー ブの検出原理を示す。一般に励磁・検出コイルペアと きず方向が一致しないときず検出感度は低下するが[9]、 Fig. 2 に示すコイルペアを選択することによりコイル 同士が従来よりも若干近付くため、結果として感度は 僅かながら向上する。なお、軸モードはXプローブと 同様だが、こちらもコイル同士を若干近付けることに より感度向上を図っている。ASwitchingQopeaTransmitters Receivers for axial mode Receivers for circ, modeRowCBAAxial mode : 32 ch.Circ. mode : 32 ch. Fig. 2 Detection Principle of Smart Array Probe2.2 特長 スマートアレイプローブの特長を以下に示す。 第一に、周モードのチャンネル数が倍増したことに より分解能が上がり、チャンネル間の感度低下量が緩 和された点である。Fig. 3 に両プローブの外面周方向 EDM ノッチ信号の数値解析結果を示す。数値解析は変 形磁気ベクトルポテンシャル(Ar)法に辺要素有限要 素法を適用したコードを使用した[10]。 この結果からX プローブではピーク感度に対する最小感度が 66%だっNumerical modelingfor Smart Array ProbeOuter circ. EDM notch5mm Widos Depth -40%Coil groupTube material Inconel690Conductivity 1.0 X 106/2m Relative Permiability 1.0メントのみX-ProbeSmart Array ProbeMaximumsensitivityWONWONSBSYNOSAKAKU110.660.85MinimumsensitivityWarRelative amplitude [%]-0- X-probeSmart Array Probe10 -30 -20 -10_ 0_ 10 20 30Circ. Position [deg] Fig. 3 Sensitivity variation (Circ. mode @300kHz)たものが、スマートアレイプローブでは 85%と大幅に 改善されている。信号の感度変動量が小さい故、感度 による評価精度も向上していると言える。 - 第二に、周モードの 32 チャンネル全てが同一円周上 に存在するため、軸方向位置の補正が不要となった点 である。 X プローブは周モードのデータ間にギャップ が存在するため、32 チャンネルとして使用するには 方向位置の補正が必要となる。それに対してスマート アレイプローブは軸モード同様、軸方向位置の補正が 全く不要である。Fig. 4 に両プローブによる校正試験片 の探傷結果を示す。 X プローブの波形に対しては線形 補正を実施しているが、僅かなプローブの速度変化等 によってデータにずれが生じているのがわかる。これ はデータ解析に影響を与える恐れがある。 1第三に、励磁・検出コイルを若干近付けることによ り、軸モード・周モードともにきずに対する感度が向252X-Probe After axial position correction 258.75TSPSUS405Outer grooveWidth 5mm Depth 20%mismatching2012イラストやマンシン!1125Smart Array Probe No axial position correction1419125ネイビー100TRIBERmatchingFig. 4Calibration tube signals (Circ. mode @300kHz)X-ProbeSmart Array ProbeInner axial EDM notch1270Calibrated7.19Vamplitude 5.77 VOuter circ. EDM notch270\270Calibrated amplitude 4.04 V4.26V Notch size : Length 5mm, Width 0.2mm, Depth 40%Fig. 5 EDM notch signals (@ 300kHz)上した点である。Fig.5に両プローブの内面軸及び外面 周方向 EDM ノッチの探傷結果を示す。軸モードで約 1.25 倍、周モードで約1.05倍感度が向上している。ノ イズレベルはほぼ同等であることから SN 比も向上し ており、これは微小なきずを検出できる可能性が高く なっていることを示唆している。 - 第四に、軸方向ピッチを細かく探傷できる点である。 伝熱管一周のデータを採取するのにXプローブではチ ャンネル間の干渉を避けるために多くの時間を要する が、スマートアレイプローブでは干渉の懸念がないた め、その 2/3 の時間で済む。従って同一時間の間に単 純計算で 1.5 倍細かくデータを採取することが可能である。もしくは軸方向ピッチを変更せずに 1.5 倍の速 度でプローブを走査することが可能である。 - 第五に、回路構造が比較的単純である点である。X プローブは励磁/検出共用のコイルがあるために回路 構成が複雑であり、かつ多チャンネルの特殊なマルチ プレクサが必要である。一方スマートアレイプローブ は励磁/検出コイルが明確に分かれているので回路構 成が比較的単純である。また市販の小型マルチプレク サが利用でき、そのままプローブヘッド内に格納する ことが可能である。 - 第六に、きず信号波形がXプローブと同等である点 である。これはデータ解析時に各種信号に対する従来 の知見がそのまま踏襲できるということで重要である。 Fig. 6 に両プローブによる校正試験片の探傷結果を示 す。 X プローブでは拡管境界信号(リフトオフ信号) を位相校正に、外面全周溝信号を感度校正に使用する が、スマートアレイプローブも波形はほぼ同じである ことから同様の校正方法が適用可能である。また、他 のきず信号についても、Fig.5 に示す様に感度には差が あるものの波形は同等であり、従来の解析手法がその まま適用可能である。Smart Array ProbeX-Probe Expansion transition for phase calibrationAxial modeCirc.mode270、180Outer groove for sensitivity calibrationAxial modec. mode10n180Outer groove size : Width 5mm, Depth 20% Fig. 6 Calibration tube signals (@ 300kHz)2533. 実機模擬 SCC 試験片の探傷結果 - 実際に製作したスマートアレイプローブを使用 して、人工の応力腐食割れを付与した試験片(SCC 試験片)のきず検出性確認試験を行った。SCC試験 片はインコネル 600 製の伝熱管に、きず方向に応じ た応力を付加した状態で腐食液に浸漬することによ り製作した。また拡管部及び拡管境界部 SCC を模擬 した試験片は応力を付加する前に拡管加工を施し、 探傷時には炭素鋼製の模擬管板を装着して探傷を行 った。Fig. 7 に試験体系を示す。探傷には米国 Westinghouse 社製のプッシャー一体型探傷器である OMNI-200 を使用した。この探傷器は時分割探傷及 び多周波同時探傷が可能であり、今回スマートアレ イプローブでの探傷を行うにあたり、Westinghouse 社と共同でプローブアダプタを開発した。またデー タ解析には自社開発の解析ソフトウェアを使用した。 - 探傷後、SCC 試験片を破壊してきず形状を確認し た。Fig.8に試験結果を示す。最も浅いきずである、 最大深さ 29%(約 0.37mm)の拡管境界部内面軸方 向 SCC を含め、通常ボビン型プローブでは検出が困 難である拡管部及び拡管境界部の SCC についても 有効であることを確認できた。4.結言1) 軸方向きずのみならず周方向きずに対しても高い - 検出能及び分解能を持ったスマートアレイプローブを、数値解析結果を基に開発・製作した。 2) スマートアレイプローブは既存の X プローブを上 一回る特長を多数有していることを、性能評価試験を通して実証した。 3) SCC 試験片を製作し、その検出性について調べたと - ころ、十分な検出能を有していることを確認した。参考文献[1] G. Lafontaine, F. Hardy, R. Samson, “New GenerationECT Array Probe and System as High Speed Alternative to Rotating Probes”, 18th Annual EPRI SteamGenerator NDE Workshop, 1999 [2] Y. Harada, K. Maeda, J. Shimone, Y. Kishi, “The Resultsof Comparative Tests for a New High Performance Multi Array Probe”, 18th Annual EPRI Steam GeneratorStraight section Expansion transition Expansion section with TS400mm/secSmart Array ProbeEddy current instrument(OMNI-200)HubPC for data analysis PC for data server EWS for inspectionFig. 7 Equipments for SCC detection exam.Smart Array ProbeDestructive test result Axial modeInner axial SCC on straight section 300kHzMax. depth 36% Length 13.9mm20Inner axial SCC on expansion transitionAxial mode 300kHz多Max. depth 29% Length 17.6mmAxial mode 300kHzInner axial SCC on expansion section with TSMax. depth 34% Length 3.8mmCirc.mode 100kHzOuter circ. SCC on expansion transitionMax. depth 66%Length 5.9mm Artificial SCC signals and destructive test resultsFig. 8NDE Workshop, 1999 [3] Y. Harada, K. Maeda, J. Shimone, Y. Kishi, “FieldExperience and Detectability Test of High Performance ECT Array X-probe in Japan““, 19th Annual EPRI SteamGenerator NDE Workshop, 2000 [4] K. Maeda, Y. Harada, J. Shimone, Y. Kishi, “New HighPerformance ECT Array Probe for Steam Generator254Tubes”, 2nd International Conference on NDE in Relation to Structural Integrity for Nuclear andPressurized Components, 2000 [5] Y. Nagata, H. Sumikura, Y. Harada, R. Murakami,“Automated Inspection and Analysis System for High Performance ECT Array (X) Probe”, 21st Annual EPRISteam Generator NDE Workshop, 2002 [6] T. Matsunaga, T. Sera, K. Maeda, J. Shimone, Y. Nagata,S. Ninomiya, R. Katsumata, H. Izumida, Y. Harada, R. Murakami, “Demonstration of X-probe including Row 1 U-bend probe in Japan”, 22nd Annual EPRI SteamGenerator NDE Workshop, 2003 [7] J. Renaud, C. Fogal, M. Klatt, F. Hardy, G. Lafontaine,“The Year in Review ? Qualification and Field Trial Experiences form the Fall 2000/Spring 2001 InspectionSeasons”, 20th Annual EPRI Steam Generator NDEWorkshop, 2001 [8] G. Lafontaine, M. Klatt, J. Renaud, F. Hardy, C. Fogal,“X-probe Steam Generator Inspection Device““, 3rd International Conference on NDE in Relation to Structural Integrity for Nuclear and PressurizedComponents, 2001_1 [9] L.S. Obrutsky, B. Lepine, J. Lu, R. Cassidy and J. Carter,“Eddy Current Technology for Heat Exchanger and Steam Generator Tube Inspection”, Proceedings of the16th World Conference in Nondestructive Testing, 2004 [10] 福冨 広幸、高木 敏行、谷 順二、下根 純理、原田 豊、“辺要素有限要素法による電磁界数値解析 法の開発と渦流探傷試験への応用”、東北大学流体 科学研究所報告 第8巻、1997、pp.91-105.255
“ “?スマートアレイプローブの開発“ “前田 功太郎,K. MAEDA,下根 純理,J. SHIMONE,布子 章,A. NUNOKO,赤川 純一,J. AKAGAWA,永田 泰章,Y. NAGATA,泉田 博幸,H. IZUMIDA,原田 豊,Y. HARADA
加圧水型原子力発電所(PWR プラント)内の蒸気発 生器 (SG) 伝熱管の供用期間中検査は渦流探傷(ECT) で行われており、通常ボビン型プローブが使用されて いる。当社では次世代定期検査用プローブとして、き ず検出能及び分解能を向上させたアレイ型プローブ 「Xプローブ」を海外メーカーと共同で 1998年に開発 した[1]-[6]。これはパンケーキコイルを円周方向に 16 個、軸方向に3段の計 48 個配置したもので、プローブ ヘッド内部の ASIC により励磁/検出コイルを順次選 択して管の全周を網羅する。Fig. 1にXプローブの検 出原理を示す。本プローブは一度の走査で軸方向きず 検出モード(軸モード)、周方向きず検出モード(周モ ード)の両データを採取できる。また EPRI(米国電力 研究所)の認証を取得しており、他の伝熱管サイズに も展開されていることから、米国・カナダを中心に詳 細検査用プローブとして広く使われている[7],[8]。 国内 においても 2003 年に(財) 発電設備技術検査協会によ る確性試験において技術的な妥当性について確認され ており、(社)日本電気協会 電気技術指針 JEAG4208-2005 に新型プローブとして追加記載されている。しかしながら、X プローブは軸モード・周モード各々 伝熱管一周あたり 32 チャンネルと高分解能であるも のの、周モードはC列のデータと B列のデータ間にギ ャップがあり、データ解析時の煩雑さから実質 16 チャ ンネルとして使われることが多い。それ故にチャンネ ル間の感度低下が若干あるのが実状である。
SwitchingSwitchingRow CB ARow CB AAxial mode : 32 ch. Circ. mode : 16 ch.Circ. mode : 16 ch.Transmitters e Receivers for axial modeO Receivers for circ. mode Fig. 1 Detection Principle of X-probe251本研究では、数値解析結果を基に周方向きず検出能 及び分解能を大幅に改善したスマートアレイプローブ を開発・製作し、様々な性能評価を行った。2. スマートアレイプローブの開発と特長 2.1 要 - スマートアレイプローブはXプローブとコイル配置 はほぼ同等ながら励磁・検出コイルの組み合わせを見 直すことにより、周モード 32 チャンネルを同一円周上 に配置し、周方向きず検出能及び分解能を大幅に向上 させたプローブである。Fig. 2 にスマートアレイプロー ブの検出原理を示す。一般に励磁・検出コイルペアと きず方向が一致しないときず検出感度は低下するが[9]、 Fig. 2 に示すコイルペアを選択することによりコイル 同士が従来よりも若干近付くため、結果として感度は 僅かながら向上する。なお、軸モードはXプローブと 同様だが、こちらもコイル同士を若干近付けることに より感度向上を図っている。ASwitchingQopeaTransmitters Receivers for axial mode Receivers for circ, modeRowCBAAxial mode : 32 ch.Circ. mode : 32 ch. Fig. 2 Detection Principle of Smart Array Probe2.2 特長 スマートアレイプローブの特長を以下に示す。 第一に、周モードのチャンネル数が倍増したことに より分解能が上がり、チャンネル間の感度低下量が緩 和された点である。Fig. 3 に両プローブの外面周方向 EDM ノッチ信号の数値解析結果を示す。数値解析は変 形磁気ベクトルポテンシャル(Ar)法に辺要素有限要 素法を適用したコードを使用した[10]。 この結果からX プローブではピーク感度に対する最小感度が 66%だっNumerical modelingfor Smart Array ProbeOuter circ. EDM notch5mm Widos Depth -40%Coil groupTube material Inconel690Conductivity 1.0 X 106/2m Relative Permiability 1.0メントのみX-ProbeSmart Array ProbeMaximumsensitivityWONWONSBSYNOSAKAKU110.660.85MinimumsensitivityWarRelative amplitude [%]-0- X-probeSmart Array Probe10 -30 -20 -10_ 0_ 10 20 30Circ. Position [deg] Fig. 3 Sensitivity variation (Circ. mode @300kHz)たものが、スマートアレイプローブでは 85%と大幅に 改善されている。信号の感度変動量が小さい故、感度 による評価精度も向上していると言える。 - 第二に、周モードの 32 チャンネル全てが同一円周上 に存在するため、軸方向位置の補正が不要となった点 である。 X プローブは周モードのデータ間にギャップ が存在するため、32 チャンネルとして使用するには 方向位置の補正が必要となる。それに対してスマート アレイプローブは軸モード同様、軸方向位置の補正が 全く不要である。Fig. 4 に両プローブによる校正試験片 の探傷結果を示す。 X プローブの波形に対しては線形 補正を実施しているが、僅かなプローブの速度変化等 によってデータにずれが生じているのがわかる。これ はデータ解析に影響を与える恐れがある。 1第三に、励磁・検出コイルを若干近付けることによ り、軸モード・周モードともにきずに対する感度が向252X-Probe After axial position correction 258.75TSPSUS405Outer grooveWidth 5mm Depth 20%mismatching2012イラストやマンシン!1125Smart Array Probe No axial position correction1419125ネイビー100TRIBERmatchingFig. 4Calibration tube signals (Circ. mode @300kHz)X-ProbeSmart Array ProbeInner axial EDM notch1270Calibrated7.19Vamplitude 5.77 VOuter circ. EDM notch270\270Calibrated amplitude 4.04 V4.26V Notch size : Length 5mm, Width 0.2mm, Depth 40%Fig. 5 EDM notch signals (@ 300kHz)上した点である。Fig.5に両プローブの内面軸及び外面 周方向 EDM ノッチの探傷結果を示す。軸モードで約 1.25 倍、周モードで約1.05倍感度が向上している。ノ イズレベルはほぼ同等であることから SN 比も向上し ており、これは微小なきずを検出できる可能性が高く なっていることを示唆している。 - 第四に、軸方向ピッチを細かく探傷できる点である。 伝熱管一周のデータを採取するのにXプローブではチ ャンネル間の干渉を避けるために多くの時間を要する が、スマートアレイプローブでは干渉の懸念がないた め、その 2/3 の時間で済む。従って同一時間の間に単 純計算で 1.5 倍細かくデータを採取することが可能である。もしくは軸方向ピッチを変更せずに 1.5 倍の速 度でプローブを走査することが可能である。 - 第五に、回路構造が比較的単純である点である。X プローブは励磁/検出共用のコイルがあるために回路 構成が複雑であり、かつ多チャンネルの特殊なマルチ プレクサが必要である。一方スマートアレイプローブ は励磁/検出コイルが明確に分かれているので回路構 成が比較的単純である。また市販の小型マルチプレク サが利用でき、そのままプローブヘッド内に格納する ことが可能である。 - 第六に、きず信号波形がXプローブと同等である点 である。これはデータ解析時に各種信号に対する従来 の知見がそのまま踏襲できるということで重要である。 Fig. 6 に両プローブによる校正試験片の探傷結果を示 す。 X プローブでは拡管境界信号(リフトオフ信号) を位相校正に、外面全周溝信号を感度校正に使用する が、スマートアレイプローブも波形はほぼ同じである ことから同様の校正方法が適用可能である。また、他 のきず信号についても、Fig.5 に示す様に感度には差が あるものの波形は同等であり、従来の解析手法がその まま適用可能である。Smart Array ProbeX-Probe Expansion transition for phase calibrationAxial modeCirc.mode270、180Outer groove for sensitivity calibrationAxial modec. mode10n180Outer groove size : Width 5mm, Depth 20% Fig. 6 Calibration tube signals (@ 300kHz)2533. 実機模擬 SCC 試験片の探傷結果 - 実際に製作したスマートアレイプローブを使用 して、人工の応力腐食割れを付与した試験片(SCC 試験片)のきず検出性確認試験を行った。SCC試験 片はインコネル 600 製の伝熱管に、きず方向に応じ た応力を付加した状態で腐食液に浸漬することによ り製作した。また拡管部及び拡管境界部 SCC を模擬 した試験片は応力を付加する前に拡管加工を施し、 探傷時には炭素鋼製の模擬管板を装着して探傷を行 った。Fig. 7 に試験体系を示す。探傷には米国 Westinghouse 社製のプッシャー一体型探傷器である OMNI-200 を使用した。この探傷器は時分割探傷及 び多周波同時探傷が可能であり、今回スマートアレ イプローブでの探傷を行うにあたり、Westinghouse 社と共同でプローブアダプタを開発した。またデー タ解析には自社開発の解析ソフトウェアを使用した。 - 探傷後、SCC 試験片を破壊してきず形状を確認し た。Fig.8に試験結果を示す。最も浅いきずである、 最大深さ 29%(約 0.37mm)の拡管境界部内面軸方 向 SCC を含め、通常ボビン型プローブでは検出が困 難である拡管部及び拡管境界部の SCC についても 有効であることを確認できた。4.結言1) 軸方向きずのみならず周方向きずに対しても高い - 検出能及び分解能を持ったスマートアレイプローブを、数値解析結果を基に開発・製作した。 2) スマートアレイプローブは既存の X プローブを上 一回る特長を多数有していることを、性能評価試験を通して実証した。 3) SCC 試験片を製作し、その検出性について調べたと - ころ、十分な検出能を有していることを確認した。参考文献[1] G. Lafontaine, F. Hardy, R. Samson, “New GenerationECT Array Probe and System as High Speed Alternative to Rotating Probes”, 18th Annual EPRI SteamGenerator NDE Workshop, 1999 [2] Y. Harada, K. Maeda, J. Shimone, Y. Kishi, “The Resultsof Comparative Tests for a New High Performance Multi Array Probe”, 18th Annual EPRI Steam GeneratorStraight section Expansion transition Expansion section with TS400mm/secSmart Array ProbeEddy current instrument(OMNI-200)HubPC for data analysis PC for data server EWS for inspectionFig. 7 Equipments for SCC detection exam.Smart Array ProbeDestructive test result Axial modeInner axial SCC on straight section 300kHzMax. depth 36% Length 13.9mm20Inner axial SCC on expansion transitionAxial mode 300kHz多Max. depth 29% Length 17.6mmAxial mode 300kHzInner axial SCC on expansion section with TSMax. depth 34% Length 3.8mmCirc.mode 100kHzOuter circ. SCC on expansion transitionMax. depth 66%Length 5.9mm Artificial SCC signals and destructive test resultsFig. 8NDE Workshop, 1999 [3] Y. Harada, K. Maeda, J. Shimone, Y. Kishi, “FieldExperience and Detectability Test of High Performance ECT Array X-probe in Japan““, 19th Annual EPRI SteamGenerator NDE Workshop, 2000 [4] K. Maeda, Y. Harada, J. Shimone, Y. Kishi, “New HighPerformance ECT Array Probe for Steam Generator254Tubes”, 2nd International Conference on NDE in Relation to Structural Integrity for Nuclear andPressurized Components, 2000 [5] Y. Nagata, H. Sumikura, Y. Harada, R. Murakami,“Automated Inspection and Analysis System for High Performance ECT Array (X) Probe”, 21st Annual EPRISteam Generator NDE Workshop, 2002 [6] T. Matsunaga, T. Sera, K. Maeda, J. Shimone, Y. Nagata,S. Ninomiya, R. Katsumata, H. Izumida, Y. Harada, R. Murakami, “Demonstration of X-probe including Row 1 U-bend probe in Japan”, 22nd Annual EPRI SteamGenerator NDE Workshop, 2003 [7] J. Renaud, C. Fogal, M. Klatt, F. Hardy, G. Lafontaine,“The Year in Review ? Qualification and Field Trial Experiences form the Fall 2000/Spring 2001 InspectionSeasons”, 20th Annual EPRI Steam Generator NDEWorkshop, 2001 [8] G. Lafontaine, M. Klatt, J. Renaud, F. Hardy, C. Fogal,“X-probe Steam Generator Inspection Device““, 3rd International Conference on NDE in Relation to Structural Integrity for Nuclear and PressurizedComponents, 2001_1 [9] L.S. Obrutsky, B. Lepine, J. Lu, R. Cassidy and J. Carter,“Eddy Current Technology for Heat Exchanger and Steam Generator Tube Inspection”, Proceedings of the16th World Conference in Nondestructive Testing, 2004 [10] 福冨 広幸、高木 敏行、谷 順二、下根 純理、原田 豊、“辺要素有限要素法による電磁界数値解析 法の開発と渦流探傷試験への応用”、東北大学流体 科学研究所報告 第8巻、1997、pp.91-105.255
“ “?スマートアレイプローブの開発“ “前田 功太郎,K. MAEDA,下根 純理,J. SHIMONE,布子 章,A. NUNOKO,赤川 純一,J. AKAGAWA,永田 泰章,Y. NAGATA,泉田 博幸,H. IZUMIDA,原田 豊,Y. HARADA