高速増殖炉サイクル実用化研究開発
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カテゴリ: 第5回
1. はじめに
1 国家基幹技術である高速増殖炉サイクル技術の実用 化に向けて、日本原子力研究開発機構は「高速増殖炉 サイクル実用化研究開発」(Fast Reactor Cycle Technology Development Project、通称 FaCT プロジェク ト) を進めている。FaCT プロジェクトは、ナトリウム 冷却高速増殖炉、先進湿式法再処理及び簡素化ペレッ ト法燃料製造の組合せを主概念とし、その実用化に集 中した技術開発を行うものである。 - FaCT プロジェクトでは、主概念に係る革新的な技術 について、その採用可能性を判断できるところまで具 体化させ、開発目標・設計要求を満足する概念設計を 得ることを目標とし、2015 年に実証施設及び実用施設 の概念設計と実用化に向けた研究開発計画案を提示す ることを目的としている。
2. FRB に関する技術課題
「原子力分野の研究開発に関する委員会」における FS フェーズII の評価では、実用化に向けた研究開発の 進め方についても議論された。主概念とした混合酸化 物燃料ナトリウム冷却型高速増殖炉、先進湿式法再処連絡先:〒310-1393 茨城県東茨城郡大洗町成田町 4002、 電話: 029-267-4141理、簡素化ペレット法燃料製造の組合せは、開発目標 を満足するため様々な革新的な技術を採用しており、 今後解決すべき開発課題がある。このなかで混合酸化 物燃料ナトリウム冷却型高速増殖炉については 13 の 課題が挙げられている。以下では、これらの 13 課題の内、主な課題の概要を 述べる(Fig.1)。1配管短縮のための高クロム鋼開発 - 冷却系配管には、オーステナイト系ステンレス鋼に 比べ熱膨張率が低くかつ高強度である高クロム構造材 (改良 9Cr 鋼,12Cr 鋼)を使用して配管の短縮化を図 り、建設・保守コストの低減を目指している。現在ま でに基本的な材料開発と適用性判断は終了し、今後、 配管材・鍛造材・伝熱管材の製品形状ごとに、それぞ れの適用部位における最高使用温度を含む温度領域に おける長時間強度データ (10万時間以上)を蓄積して、 材料強度基準及び高温構造設計指針の整備を図る予定 である。 2冷却系2ループ化 | * 電気出力 150 万kWeで冷却系を2ループとし、ルー プ毎の機器の大型化およびシステムの簡素化を図るこ とにより、建設・保守コスト低減を目指している。2 ループ化に伴い、配管が大口径化して冷却材流速も増 大するが、配管系の破損に至るような振動や材料損耗308が発生しないことの確認のため、試験と解析による評 価を実施している。 3ポンプ組込型中間熱交換器 - 中間熱交換器にポンプを内蔵して、コンパクト化を 図っている。ポンプインペラの回転に伴う振動に対す る主熱交換器の伝熱管の耐性、長軸ポンプの安定性、 冷却材の伝熱部への均等な流入性などを、試験及び解 析により確認する必要がある。現在までに、1/4スケー ル振動試験で伝達特性データを取得し解析モデルを構 築した。今後、実証試験により、伝熱管磨耗量や流動 成立性などの確認を進めていく。 4原子炉容器のコンパクト化原子炉容器(RV)のコンパクト化に伴い、炉内ナト リウム流速が大きくなり、流動状況も複雑化すること から、RV 上部でのガス巻込みや水中渦の発生を防止す る構造、熱過渡緩和構造の確認、及び同評価技術の開 発を進めている。また、RV ホットベッセル構造の成立 性を詳細に吟味できる高温構造設計評価手法の開発や、 炉心槽径の増大抑制ための高性能 ZTH 遮蔽体の開発を 進めている。 5高燃焼度化に対応した炉心燃料高燃焼度の達成を目指して、耐スウェリング性と高 温強度を両立させた酸化物分散強化型被覆管の開発を 進めている。現在までに、酸化物分散強化型被覆管の 照射試験に着手するとともに、マイナアクチニド含有 燃料の照射試験準備を完了した。今後、高燃焼度・高 中性子照射量までの燃料・材料照射試験、過渡試験を信頼性向上に係る課題経済性に係る課題 (O建屋容積・物量の削減1配管短縮のための高クロム鋼の開発気発生10ナトリウム取扱技術8配管2重化によるNa漏洩対策と技術開発2システム簡素化のための冷却系2ループ化500◎直管2重伝熱管蒸気発生器の開発31次冷却系簡素化のためのポンプ組込型 中間熱交換器開発10保守、補修性を考慮したプラント設計と技術開発原子炉容器のコンパクト化安全性向上に係る課題(S)システム簡素化のための燃料取扱系の開発○炉心安全性の向上オールシール1受動的炉停止と自然循環による炉心冷却6物量削減と工期短縮のための格納容器 このSC造化(@炉心損傷時の再臨界回避技術●高燃焼度化による長期運転サイクルの実現 1高燃焼度化に対応した炉心燃料の開発○耐震性の向上 110大型炉の炉心耐震技術Fig. 1 Technical problems in a FBR plant進め性能評価を行う。 5直管2重伝熱管蒸気発生器の開発実用炉の大型蒸気発生器では、ナトリウム-水反応を 極力排除して稼働率を向上させる観点から、直管2重 管方式を採用することを考えている。大型化及び直管 2重管構造に伴う熱流動特性の評価、伝熱管での漏え い発生を早期に検出するリーク検出計開発、及び安全| 論理構築のためのナトリウム-水反応評価手法の高度 化などが課題である。 - 2010年には、革新技術の技術的実現性を評価し、不 確かさのある技術については代替技術との比較検討を 通じてその採否を判断する。その後、2015 年までには 実用炉概念の最適化とその成立根拠となるデータ類を 整備・提示していく計画である。 3.おわりに国家基幹技術の一つであるFBRサイクル技術の早期 実用化を目指して、今後、わが国の総力を傾注して開 発を推進していくうえでは、FaCT プロジェクトの成果 が極めて重要であり、これを計画通り達成することが、 その後の技術実証段階に進むために必須の条件である。 このため、日本原子力研究開発機構としては、国、電」 気事業者、メーカ、研究機関などの協力・支援を得て、 国際協力も有効活用しつつ、全力をあげて研究開発を 進める考えである。- 309 -
“ “高速増殖炉サイクル実用化研究開発“ “日本原子力研究開発機構,Japan Atomic Energy Agency
1 国家基幹技術である高速増殖炉サイクル技術の実用 化に向けて、日本原子力研究開発機構は「高速増殖炉 サイクル実用化研究開発」(Fast Reactor Cycle Technology Development Project、通称 FaCT プロジェク ト) を進めている。FaCT プロジェクトは、ナトリウム 冷却高速増殖炉、先進湿式法再処理及び簡素化ペレッ ト法燃料製造の組合せを主概念とし、その実用化に集 中した技術開発を行うものである。 - FaCT プロジェクトでは、主概念に係る革新的な技術 について、その採用可能性を判断できるところまで具 体化させ、開発目標・設計要求を満足する概念設計を 得ることを目標とし、2015 年に実証施設及び実用施設 の概念設計と実用化に向けた研究開発計画案を提示す ることを目的としている。
2. FRB に関する技術課題
「原子力分野の研究開発に関する委員会」における FS フェーズII の評価では、実用化に向けた研究開発の 進め方についても議論された。主概念とした混合酸化 物燃料ナトリウム冷却型高速増殖炉、先進湿式法再処連絡先:〒310-1393 茨城県東茨城郡大洗町成田町 4002、 電話: 029-267-4141理、簡素化ペレット法燃料製造の組合せは、開発目標 を満足するため様々な革新的な技術を採用しており、 今後解決すべき開発課題がある。このなかで混合酸化 物燃料ナトリウム冷却型高速増殖炉については 13 の 課題が挙げられている。以下では、これらの 13 課題の内、主な課題の概要を 述べる(Fig.1)。1配管短縮のための高クロム鋼開発 - 冷却系配管には、オーステナイト系ステンレス鋼に 比べ熱膨張率が低くかつ高強度である高クロム構造材 (改良 9Cr 鋼,12Cr 鋼)を使用して配管の短縮化を図 り、建設・保守コストの低減を目指している。現在ま でに基本的な材料開発と適用性判断は終了し、今後、 配管材・鍛造材・伝熱管材の製品形状ごとに、それぞ れの適用部位における最高使用温度を含む温度領域に おける長時間強度データ (10万時間以上)を蓄積して、 材料強度基準及び高温構造設計指針の整備を図る予定 である。 2冷却系2ループ化 | * 電気出力 150 万kWeで冷却系を2ループとし、ルー プ毎の機器の大型化およびシステムの簡素化を図るこ とにより、建設・保守コスト低減を目指している。2 ループ化に伴い、配管が大口径化して冷却材流速も増 大するが、配管系の破損に至るような振動や材料損耗308が発生しないことの確認のため、試験と解析による評 価を実施している。 3ポンプ組込型中間熱交換器 - 中間熱交換器にポンプを内蔵して、コンパクト化を 図っている。ポンプインペラの回転に伴う振動に対す る主熱交換器の伝熱管の耐性、長軸ポンプの安定性、 冷却材の伝熱部への均等な流入性などを、試験及び解 析により確認する必要がある。現在までに、1/4スケー ル振動試験で伝達特性データを取得し解析モデルを構 築した。今後、実証試験により、伝熱管磨耗量や流動 成立性などの確認を進めていく。 4原子炉容器のコンパクト化原子炉容器(RV)のコンパクト化に伴い、炉内ナト リウム流速が大きくなり、流動状況も複雑化すること から、RV 上部でのガス巻込みや水中渦の発生を防止す る構造、熱過渡緩和構造の確認、及び同評価技術の開 発を進めている。また、RV ホットベッセル構造の成立 性を詳細に吟味できる高温構造設計評価手法の開発や、 炉心槽径の増大抑制ための高性能 ZTH 遮蔽体の開発を 進めている。 5高燃焼度化に対応した炉心燃料高燃焼度の達成を目指して、耐スウェリング性と高 温強度を両立させた酸化物分散強化型被覆管の開発を 進めている。現在までに、酸化物分散強化型被覆管の 照射試験に着手するとともに、マイナアクチニド含有 燃料の照射試験準備を完了した。今後、高燃焼度・高 中性子照射量までの燃料・材料照射試験、過渡試験を信頼性向上に係る課題経済性に係る課題 (O建屋容積・物量の削減1配管短縮のための高クロム鋼の開発気発生10ナトリウム取扱技術8配管2重化によるNa漏洩対策と技術開発2システム簡素化のための冷却系2ループ化500◎直管2重伝熱管蒸気発生器の開発31次冷却系簡素化のためのポンプ組込型 中間熱交換器開発10保守、補修性を考慮したプラント設計と技術開発原子炉容器のコンパクト化安全性向上に係る課題(S)システム簡素化のための燃料取扱系の開発○炉心安全性の向上オールシール1受動的炉停止と自然循環による炉心冷却6物量削減と工期短縮のための格納容器 このSC造化(@炉心損傷時の再臨界回避技術●高燃焼度化による長期運転サイクルの実現 1高燃焼度化に対応した炉心燃料の開発○耐震性の向上 110大型炉の炉心耐震技術Fig. 1 Technical problems in a FBR plant進め性能評価を行う。 5直管2重伝熱管蒸気発生器の開発実用炉の大型蒸気発生器では、ナトリウム-水反応を 極力排除して稼働率を向上させる観点から、直管2重 管方式を採用することを考えている。大型化及び直管 2重管構造に伴う熱流動特性の評価、伝熱管での漏え い発生を早期に検出するリーク検出計開発、及び安全| 論理構築のためのナトリウム-水反応評価手法の高度 化などが課題である。 - 2010年には、革新技術の技術的実現性を評価し、不 確かさのある技術については代替技術との比較検討を 通じてその採否を判断する。その後、2015 年までには 実用炉概念の最適化とその成立根拠となるデータ類を 整備・提示していく計画である。 3.おわりに国家基幹技術の一つであるFBRサイクル技術の早期 実用化を目指して、今後、わが国の総力を傾注して開 発を推進していくうえでは、FaCT プロジェクトの成果 が極めて重要であり、これを計画通り達成することが、 その後の技術実証段階に進むために必須の条件である。 このため、日本原子力研究開発機構としては、国、電」 気事業者、メーカ、研究機関などの協力・支援を得て、 国際協力も有効活用しつつ、全力をあげて研究開発を 進める考えである。- 309 -
“ “高速増殖炉サイクル実用化研究開発“ “日本原子力研究開発機構,Japan Atomic Energy Agency