短期点検のための保全・検査技術

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カテゴリ: 第5回
1.緒言
プラント稼働率向上のため、定期検査の工期短縮が 求められている。一方で、原子力発電プラントにおけ る応力腐食割れ事象(SCC)の損傷事例の発生及び維 持規格、新検査制度の導入に伴い、プラントの保全、 補修、検査に係わる負荷は高まっている。これら必要 となる保守作業を確実に、短時間で遂行するためには、 クリチカル作業を分析し、1連続作業でしか実現でき ない最小の作業単位と、2それ以外の非クリチカルで も実施できる作業に分割する必要がある。そして、こ れらの作業は、クリチカル作業を優先して、それ以外 の作業を相互に干渉しないように並行作業を計画する ことが重要となる。また、これらの分割された個々の 作業を短縮するのも極めて重要な取り組みである。そこで、本発表では、沸騰水型原子炉(BWR)向けの 炉内作業の並行作業化の取り組みとして、Westinghouse 社で独自に開発され、これまで米国で Fig. 1 に示すよ うなジェットポンプ、炉心スプレイ(CS)配管といっ た原子炉圧力容器(RPV)内部の炉内構造物の目視検査 (VT) に適用されてきた燃料交換中目視検査装置を示 すとともに、同様に、VT の各プロセスにおける検査員 による判定を助け、時間短縮を図ると共に、映像記録 の保存、保管された映像の分析に活用できる超解像度 目視検査システムを報告する。
2. 燃料交換中目視検査装置欧米においては、炉内点検などの炉内保全工事は、 定期検査工程の短縮のため、燃料交換等の炉内作業と 並行で行われている。この燃料交換中目視検査装置は、 Double Up Inspection ToolMあるいは DUITTMの名称で、 米国Westinghouse 社で BWR向けに開発されたものであ る。本節では、この装置の特徴、効果、適用実績を報 告する。2.1 特徴この装置は、検査対象部位をジェットポンプ、CS 配 管、給水スパージャといった圧力容器内面近傍に据付 けられた炉内構造物及びシュラウド上部胴内側の CS スパージャとして、シュラウド上に仮設されたレール に沿って全周走行する台車部とマスト式マニピュレー タで構成されている。炉内に装置を設置後、附属の監 視カメラによる作業監視の下、完全遠隔操作で目視検 査を実施することができる。(Fig. 1 参照)このため、炉内設置後の操作は、必ずしも炉上部に 作業員が立つ必要なく、数名の操作員で装置を操縦し、 VT を行う。また、レールを使用することによって、シ ュラウド超音波探傷装置などの別の炉内点検及び炉内 作業と並行して作業を行うことができる。給水スパージャーRPV \戸心スプレイ CSIを語るレールコストニピュレータシュラウドレール入台車部Fig. 1DUITTM tool.2.2 効果本装置を導入することにより、以下の効果を得るこ とができる。 ・クリチカル時間を2~4日削減することができる。 ・高品質の点検映像を提供することができる。 ・設置後の操作の人工を削減することができる。 ・他の炉内作業に干渉せずに並行作業が容易である。ReactorIn-Vereel Monterancein-Vessel MaintenanceFuel ShuffleO'casserblyRector ABeamblyrsteam Dryer)ManualWICore Shroud and/or Vessel UTCavity Platform Activities (Jet Pump ond RR Suction Nozzle Plugs Manual IvoSteam DryerDUITCore Shroud and/or Vessel UT (DUIT In-Vessel Visual InspectionscorankCarity Platfomi Acovities (Jet Pump and RR Suction Nozzie PlugoMusion2~4日短縮Fig. 2 Effectiveness of DUITTM2.3 適用実績 1. 本装置は、米国内の 800 MWe 級及び 1,100 MWe 級 BWR のジェットポンプ、CS 配管、給水スパージャの 目視点検に適用された実績を有する。以下に、各々の BWR プラントでの従来型のマニュアル操作による目 視検査での想定時間に対する時間削減効果を示す。Table 1 Field ExperienceNPP SiteYearBrunswick2004 Brunswick 2006 Nine Mile Point | 2006 Brunswick2007 Columbia2007 Brunswick 2008Critical Time Saving 66 hours 72 hours 60 hours Off Critical Off CriticalOff Critical3. 超解像度目視検査システム維持規格に基づいて、多くの炉内構造物で遠隔操作 による VT が適用されている。ところが、インディケー ションの判定のためには、カメラを接近させる、カメ ラの方向を変更する、カメラを静止させるという操作 が求められ、インディケーションの判定を含め、作業 時間に大きな影響を与えていた。本節では、この超解 像度目視検査システム(超解像度 VT)の原理と試験結 果に基づく導入効果を報告する。3.1 原理 - 超解像度は、元画像の解像度を超える画像を生成す る画像処理である。つまり、動画像中の複数フレーム のみを利用し、それ以外の情報の追加及び画像の加工 を行わず、画像の解像度を向上させるものである。 ・ まず、カメラの揺れや移動に伴い動画中の各フレー ム画像に相対的な位置の変位が生じるが、これを一画 素以下の分解能で計測する。次に、Fig.3 に示すように、 原画像の画素分解能以上の超解像度グリッド上に再配 置する。そして、その超解像度グリッド上に再配置し た複数フレームの輝度の重複から、細分化された画素 毎の輝度に対して統計処理を行って、より空間分解能 が高い静止画を生成する。frame 1 フレーム画像 2frame 2- 超解像度グリッドFig. 3Principal of Super Resolution314 3.2 試験方法 超解像度 VT の適用効果を明らかとするため、本シ」 3.2 試験方法超解像度 VT の適用効果を明らかとするため、本 ステムを用いた場合の性能評価試験を行った。試験り Fig.4 に示す構成で行われ、38 万画素アナログ CCD メラ、8mm 固定焦点レンズが用いられた。ASME Sec. XI の目視試験方法の規定のうち VT-1 験では、1.1 mm 高さの小文字のアルファベットに対験では、1.1 mm 高さの小文字のアルファベットに対す る視認性が求められている[2]。この試験方法に従って、 撮影距離(WD)とカメラの走査速度が視認性に与え る影響を定量的に評価した。この試験での効果の定量 化の指標として、試験者が正しく判読した文字数の割 合(可読率)を評価した。まず、カメラ距離(WD) の影響を評価するため、対象面からカメラのレンズ表 面までの距離を 75mm~200mm の範囲で3名の試験員 による可読率の測定試験を行った。また、カメラの動 作速度の影響を調査するため、XY ステージにて被試 験体を一定速度で走行させたときの可読率も同様に評原画像試験方法 写像度 VT の適用効果を明らかとするため、本シ ムを用いた場合の性能評価試験を行った。試験は、 こ示す構成で行われ、38 万画素アナログ CCDカ 8mm 固定焦点レンズが用いられた。 ME Sec. XI の目視試験方法の規定のうち VT-1 試 は、1.1 mm 高さの小文字のアルファベットに対す 忍性が求められている[2]。この試験方法に従って、 巨離(WD)とカメラの走査速度が視認性に与え 響を定量的に評価した。この試験での効果の定量 音標として、試験者が正しく判読した文字数の割 可読率)を評価した。まず、カメラ距離(WD) 響を評価するため、対象面からカメラのレンズ表 での距離を 75mm~200mm の範囲で3名の試験員 る可読率の測定試験を行った。また、カメラの動 度の影響を調査するため、XY ステージにて被試 を一定速度で走行させたときの可読率も同様に評超解像度化Fig.5Super Resolution of VT-1 CharactersCCD カメラ原映像を (間接目視可読率(%)WD・等倍動画 ーローキャプチャ画像-3倍超解像度試驗用紙50751900/06/23200100 125 1 50撮影距離WD(mm)PCFig.6XY ステージSuper Resolution of VT-1 Characters (Scanning Speed: 10 mm/s)超解像度画像を間接目視Fig.4Test configurationー・等倍動画 ーローキャプチャ画像3倍超解像度可読率(%)試驗結果 5.5 に超解像度処理前後の映像とFig.6 及び Fig.7 に 撮影距離と視認性の試験結果、走査速度と視認性 験結果を示す。この結果から、カメラ距離が離れ ・あるいは、カメラの相対速度が比較的大きくて 従来の VT 画像と比較して、視認性の低下を抑制 ることが分かった。15_10_1520 25走査速度 (mm/sec)Fig. 7Super Resolution of VT-1 Characters (Work Distance: 20 mm)- 315 -- 315 -間を削減することができる。また、将来、日本国内 において、燃料交換中の検査作業が実現する可能性 がある。 超解像度画像処理方法は、一般に使用されている目 視検査装置を使用して、炉内流動、装置の操作によ るカメラが静止しない状況下において、解像度が高 い映像が得られる。このため、従来の VT よりも遠 4.結言1) DUITTMツールは、BWR の炉内構造物の VT 作業時 間を削減することができる。また、将来、日本国内 において、燃料交換中の検査作業が実現する可能性がある。 2) 超解像度画像処理方法は、一般に使用されている目視検査装置を使用して、炉内流動、装置の操作によ るカメラが静止しない状況下において、解像度が高 い映像が得られる。このため、従来の VT よりも遠 距離から及びカメラを移動させた状況でも品質の 高い VT を実現できる。 3) 今後、アクセス性及び検査性の観点から、日本国内の原子力発電プラントへの適用性を検討し、実用化 を目指す。 佐藤美徳 他,“超解像度を用いた炉内目視検査”、 日本非破壊検査協会 平成20年度春季大会講演 概要集、東京、2008、pp. 205-208. 2007 ASME Boiler & Pressure Vessel Code XI RULES 参考文献[1] 佐藤美徳 他,“超解像度を用いた炉内目視検査”、日本非破壊検査協会 平成20年度春季大会講演概要集、東京、2008、pp. 205-208. [2] 2007 ASME Boiler & Pressure Vessel Code XI RULESFOR INSERVICE INSPECTION OF NUCLEAR POWER PLANT COMPONENTS, 2007 Edition, July 1, 2007Double Up Inspection ToolTM & U DUITTM * * * Westinghouse Electric Company の登録商標である。 - 316 -
“ “?短期定検のための保全・検査技術“ “湯口 康弘,Yasuhiro YUGUCHI,安達 弘幸,Hiroyuki ADACHI,佐藤 美徳,Yoshinori SATOH
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