水冷却固体増殖テストブランケットモジュールの安全評価方針

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カテゴリ: 第5回
1. 緒言
現在、JAEA で水冷却固体増殖増倍型のテストブランケ ットモジュール(WCSB TBM)の設計が進行中である。 これは、ITER の真空容器環境中に将来の核融合ブランケ ットと同じ構造を持つ TBMを設置して、本物の核融合炉 環境下での核融合ブランケットの実証試験を行うもので ある。設計作業に並行して WCSB TBM の安全評価が行 われており、本報ではその評価方針を明らかにすると共 に、予備的評価を行う。 2. 代表事象TBM の安全評価方針としては、まずは包絡性を重視し た評価を優先する。Fig.1 に TBM の模式図を示す。 TBM 本体及び付属機器 系統 (共通フレーム及びバックサイドシールド、冷却系、 パージガス循環系)に対して故障モード影響解析 (FMEA)を実施し、安全上評価が必要な事象を選定し た。さらに、これらの事象の中で他の事象に包絡されな い事象を代表事象として選定した。これらの代表事象は、 (I)放射性物質(RI)の放出、(II)加圧、(II)加熱、の3つ の代表事象グループに分類された。代表事象グループ毎 に安全評価を行う。
3. RIの放出に関する代表事象グループ本グループとして以下の代表事象が挙げられる。 (a)真空容器(VV)内 RI インベントリー(最大 1.2kg の トリチウム及び最大数百 kg の Be、C、W の放射化ダスト) 放出 (b)パージガス内 RI インベントリー(最大 1mg のトリチ ウム)放出 (c)冷却系内 RIインベントリー(最大 3g のトリチウム及」 び最大5gの放射化腐食性生物(ACP) ※1) 放出(a)については、ITER 本体の設計事象に同等の事象があ るため、その結果を引用すると、環境への放出 RI は最大 0.25g トリチウム及び最大 0.15g 放射化ダストと評価され た。(b)、(c)については、保守的に全量放出を仮定して評 価した。いずれの事象についても、ITER の放出ガイドラ インである 5g トリチウム及び 50g 放射化ダストを下回る ことが確認された。 ※1: ITER の寿命中運転を続けた場合の最終濃度4. 加圧に関する代表事象グループ1. 本グループでは、通常運転時 15MPa である冷却系の圧 力境界の破断に伴い、冷却系に隣接する区画の加圧事象 を扱う。対象となる区画として、(a)TBM 箱構造、(b)真空 容器(容積 1,000m2、設計圧力 200kPa)、(c)ポートセル (容 積 150m2、設計圧力 140kPa)、(d)HTS ボールト(容積321,000m2、設計圧力 120kPa) 、が挙げられる。このうち(a)は TBM の箱構造に対して冷却系の通常時 運転圧力である 15MPaの耐圧性能を持たせることで対処 する。(b)、(c)、(d)については TRAC-PF1 コードを用いて 簡易的な圧力挙動解析を実施し、設計圧力の大幅な超過 がないことを確認した。5. 加熱に関する代表事象グループTBM の温度上昇事象を考える上で、冷却材の水と中性 子増倍材の Be ペブルの化学反応に関して、特に留意する 必要がある。この反応は発熱反応で、反応率が温度に対 して指数関数的に増加する。このため高温で反応が生じ た場合、反応が活性化し温度が急上昇する潜在的危険性 がある。 - FMEA の結果から、本グループに属する代表事象とし て、(a)プラズマ運転中 TBM 冷却喪失、(b)プラズマ運転 中TBM 内への冷却材浸入、(c)TBM 内冷却材浸入後の外 部電源喪失、の3つを選定した。 (a)プラズマ運転中 TBM 冷却失プラズマ運転中に TBMの冷却が完全喪失し、その後もプラズマ運転を継続 した場合を想定する。第一壁温度が Be アーマータイルの 融点 1278°Cに達すると、Be が溶融し、多量の不純物混入 によりプラズマが停止する。プラズマ停止後は自然放熱 により時間とともに温度は低下し、事象は終息する。こ の状況でも冷却管が破断しないような設計を行えば、冷 却喪失時に従属的に冷却材が TBM 内に浸入しBe-水化学 反応が活性化する事態が避けられる。この際、第一壁部 分の冷却管構造材温度は約 1200°C以上の状態が 100 秒ほ ど持続される。構造材がこの温度で持たないようであれ ば、第一壁温度がより低い状態でプラズマが停止するよ うな措置が必要となる。 (b)プラズマ運転中の TBM 内冷却材浸入プラズマ運 転中に TBM 内部の冷却管が破断して、冷却材が TBM 内 部に浸入、充満した場合を想定する。TBM 内部の Be ペ ブルと浸入した冷却材の水による化学反応の熱負荷が新 たに加わる。冷却系は稼動を継続するものと想定する。 温度解析の結果は、冷却材浸入前と比較して各部の温度 は全く変化が見られなかった。通常運転時の Be 温度 (高々600°C以下)では、化学反応熱は核発熱よりも数桁 小さいためと考えられる。冷却材が TBM 内に浸入し Be水化学反応が発生した場合でも、冷却系が稼動を継続す る限り TBM の温度上昇及び化学反応の活性化が避けられる。(c)TBM 内冷却材浸入後の外部電源喪失 (6)の事象後 に外部電源喪失が発生した場合には、プラズマ運転が停 止すると共に、冷却系もまた稼動を停止する。TBM の崩 壊熱は、熱放射により TBM から対向する遮へいブランケ ット、及び後方遮蔽体を介してポート等の構造物に自然 放熱される。温度解析の結果は、プラズマ運転停止と同 時に TBM 各部の温度は下降し、100,000 秒後には 400~ 470°Cの範囲でなだらかな温度分布となり、事象は収束す6結言TBM の安全評価上考慮すべき代表事象を、RI 放出、加 圧、加熱の 3 グループに分類し、グループ毎に評価を行 った。 ・ RI 放出の最大量はトリチウム 0.25g 及び放射化ダスト 0.15gと、ITER 放出ガイドラインを下回る値と見 積もられる。 TBM箱構造の加圧への対処として、箱構造に 15MPa の耐圧性能を持たせる。その他の区画の加圧に関し ては、TRAC-PF1 解析により設計圧力の大幅な超過 のないことを確認した。 加熱に関しては、(i)TBM冷却喪失及び温度上昇時に、 従属的に冷却材が TBM 内部に浸入しないような設 計とすること、(ii)TBM 内冷却材浸入時に、従属的に 冷却系が停止しないような設計とすること、を満足 することで、TBM 外箱構造の健全性が維持されるこ とを確認した。
“ “水冷却固体増殖テストブランケットモジュールの安全評価方針“ “鶴 大悟,Daigo TSURU,榎枝 幹男,Mikio ENOEDA,秋場 真人,Masato AKIBA
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