東海再処理施設における設備保全管理支援システム(TORMASS)の開発
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カテゴリ: 第5回
1.緒言
Support System)の開発を開始した。 東海再処理施設(TRP: Tokai Reprocessing Plant) TORMASS は、(1) TRP の主要な機器の仕様,保全履歴 は、原子炉から取り出した使用済み燃料を機械的及び 等の機器管理システム, (2) 点検、検査の周期管理する 化学的に処理を行い、プルトニウムとウランを回収すための点検・検査周期管理システム,(3)機器等の故障 る施設である。1971 年から使用済み燃料の貯蔵、せん。 診断に必要なデータ提供を行い、予防保全に資する保 断、溶解、分離等の主要施設である分離精製工場、廃 全技術管理システム, (4)機器等の図面情報を登録、保 棄物処理場の建設を開始した。TRP は、廃棄物処理施 全等の必要時に提供するイメージ情報管理システム、 設、貯蔵施設等の施設数が徐々に増加していき、試運 といった広範な保全支援機能を有している。 転を開始した時期には数施設であったが、2008年には、 また、TRP の施設数、機器数の増加に伴い、取扱う 約 60 施設となった。データの項目数、量ともに膨大になってきた。 これに伴い、機器数も増え、機器の故障件数も増加 1985 年から、年度毎に回転機器類、計装設備のプロ して行った。故障機器の保全件数は、1975 年には、約 グラム設計、プログラミング等の開発、システム設計 330 件程度であったものが、1983 年には、約 2,000件の実証、セル内機器、せん断処理工程機器のプログラ 数まで増加した。また、1982 年、1983年には、ウラン ム設計、プログラミング等の開発、システム設計の実 溶解槽の微小貫通の故障が相次いで発生し、長期に渡証と段階的に開発を実施し、全てのプログラム作成が り運転が停止した。1992 年に完了した。その後、大型計算機からパーソナ これを契機に故障した設備を補修する事後保全では、 ルコンピュータ(PC)によるシステムへ移行し、約 復旧に多大な時間と労力を費やし、長期安定安全運転 24,000 件の設備登録、約 261,000 件の保全履歴データ に影響を及ぼすとの認識から、設備保全の重要性が高を蓄積しつつ、今日、統計的な解析を行えるまで発展 まった。してきた。本報では、TORMASS の開発、保全解析評価 1984年に運転中の故障の発生を未然に防止する為のへの応用について述べる。 予防保全を主体とするため、「設備保全管理支援システ連絡先:清水 和幸、〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村] 2. TORMASSの開発 松 4-33、日本原子力研究開発機構 核燃料サイクル研究TORMASS を開発した当時は、PC が出始めた頃であり、 所 再処理技術開発センター 施設管理部 施設管理課、日本語が扱える性能の良いものはなかった。 - 345 - 数まで増加した。また、1982 年、1983年には、ウラン 溶解槽の微小貫通の故障が相次いで発生し、長期に渡 り運転が停止した。これを契機に故障した設備を補修する事後保全では、 復旧に多大な時間と労力を費やし、長期安定安全運転 に影響を及ぼすとの認識から、設備保全の重要性が高 まった。[1]1984年に運転中の故障の発生を未然に防止する為の 予防保全を主体とするため、「設備保全管理支援システ
松 4-33、日本原子力研究開発機構 核燃料サイクル研究 | 所 再処理技術開発センター 施設管理部 施設管理課、 | 電話: 029-282-1111、e-mail:shimizu.kazuyuki@jaea.go.jp 全技術管理システム, (4) 機器等の図面情報を入 全等の必要時に提供するイメージ情報管理シオ といった広範な保全支援機能を有している。また、TRP の施設数、機器数の増加に伴い、 データの項目数、量ともに膨大になってきた。 データの項目数、量ともに膨大になってきた1985 年から、年度毎に回転機器類、計装設備のプロ グラム設計、プログラミング等の開発、システム設計 の実証、セル内機器、せん断処理工程機器のプログラ ム設計、プログラミング等の開発、システム設計の実 - 345 -また、取扱うデータの項目数、量ともに膨大であっ たことから、大型計算機を使用するシステム構築にな った。その後、PC の開発普及に伴い、2001 年に大型計 算機から PC によるシステムへと移行した。TORMASS の 概念図を図1に示す。現在、TORMASS は、以下の(1)~(4) に示す機能を有 しており、保全解析等に利用している。機器管理システム」TORMASSO機器の仕様登録 ○機器の保全履歴登録 ○機器管理台帳の帳票出力点検・検査周期管理システム○機器管理システムに登録さ れた機器の点検、検査の周期 管理表を作成保全技術管理システムイメージ情報管理システムO機器管理システムに登録さ れた故障件数、現象、原因、 処置等の保全履歴から、表や グラフを出力○機器の詳細図面出力 ○保全内容を記録した保全伝票出力 ○機器の外観写真図1 TORMASS の概念図(1) 機器管理システムTRP の主要なセル内機器、せん断処理工程機器、 回転機器類等の機器の設置・稼働開始から廃棄まで のライフサイクルの中で、その機器の仕様、機器の 保全履歴、運転履歴の蓄積の管理を行っている。図 2 に TRP の送・排風機の保全履歴シートの例を示す。保全履歴シートには、保全した機器の名称を示す 「機器番号」,予防保全・事後保全の形態を示す「保 全形態」,保全作業が完了した年月日を西暦で示す 「完了日」,保全作業件名を示す「作業件名」,故障 解析の結果、保全周期の変更等を示した「対策」,保 全を行った背景、詳細な保全内容を示した「コメン ト」等の情報が記載され、履歴を確認できる。コメント|機器番号保全形、完成日 | | 作業件名 対策 | 26 13 |本 | twstra A気コクのベアリングジャ本ブロワーの施設がより具音発生の為、ベアリングの交換を実見した。同ブーリーも早用していた、 202014年後保全基準の変更ベアリングのおりによるベアリングの音の為、分解点検し、ベアリング等の和えさ、1転子 107K11保全 Jummints気ブロワーの能「気ブロワーの女定運転確保と保全管理に万全を守る為、点検個(交換 及び出し等)を実感は、やん。お気ブロワーの安定江転保と保全管理に万全を計る為、点検整備(受変 107K11 F5月保全 気ブロワーの機能及び売出し等)を起。結果、。 1307K13Hは全 (20気ブロワーの補修気ブロワーの安定運転理と保全管理に万全を計る為点検整備(及び売出し等)を実。結果、具郡るし、 | 2007K15 | HA%totsuna)|気ブロワーの修人気ブロワーの定 理と保全管理に万全を計る為点検空信(受交送 及び応、出計事)を実施。結果、移し、 1307216 全 0m ブロワーの修「お気ブロワーの女定転用と保全管理に万全る為点検信(受交及び出る性等)を実能、結果、具るし、 350K30HH保全 |気ブロワーのAブロワーの女定理と保全管理に万全なる為点検(交換及び定出し等)を実。結果、具おし。 350K304保全 | nam プロワーの能強気ブロワーの女定1転用と保全管引に万全をする為、点検受交換 及び売出し等)を実能、結果、具やうし。図2 保全履歴シートの例(2) 点検・検査周期管理システム点検、検査等の定期的な保全について、その周期 と点検、整備の登録を行い、保全周期表を作成する。 この保全周期表を確認することにより、保全を実施 する。図3に熱交換器の周期管理シートの例を示す。 周期管理シートには、熱交換器毎の「機器番号」・ 「機器名称」,関係法令に基づく月例・年次検査,自 主管理に基づく点検整備の実施時期が登録され、周 期管理を確認できる。2007年度(平成19年度) 機番 機器名称|4月|5月|6月|7月|8月|9月|10月|11月12月|1月|2月|3月] [182H20 |横置多管式液体加熱器 182H30 |横置多管式液体加熱器 272AC128 エアハンドリング 272AC129 エアハンドリング 282H50 加熱器 | ||0|ol ????????? 282H70 「熱交換器 282H71 「熱交換器 3424781 | ウォーターチリングユニット|o|o|ololorololorolomoto] 3425782 ウォーターチリングユニット|0|00000000000] [342491 チラーユニット 1000000000000] 口定期年次検査O定期月例検査△整備図3 周期管理シートの例(3)保全技術管理システム「機器管理システム」に登録された機器の保全履 歴、機器の運転履歴等のデータを使用し、分かりや すい表やデータを保全員に提供する。提供されたデ ータをもとに、保全員は、各ポンプ、ブロワ等の故 障解析、劣化度評価等の設備診断を実施する。図 4 にブロワ軸受故障の保全データシートの例を示す。保全データシートには、「機器管理システム」に 登録されているブロワ軸受故障の原因であった磨耗, 損傷,潤滑不良等の件数を年度毎に検索し、グラフ に示すことができる。 [2]件数口磨耗 國損傷 ロその他(潤滑不良等)198319851905/06/091905/06/1119911905/06/151995L6616661 |1905/06/23ブロワ軸受故障の原因別発生件数図4 保全データシートの例346(4) イメージ情報管理システム保全に係わる各機器の詳細図面(施工図、完成図、 建家図、配管図)等、「イメージ情報」を提供する。 図5に送・排風機のイメージ情報シートの例を示す。に送・排風機故障の原因別割合をまた、軸受故障の原因別割合を 96%、損傷 4%であった。解析結 ほとんどが磨耗であった。図 6.2 割合を示す。磨耗は、ほぼ潤滑不良からくる 油膜管理を改善することで、軸受BTSUmmerイオンクレームのなのか。 DaB] CGにはコファイル)ッパーウエームサールのコンぷ0 「blalalax12 Islatistmlaw mean19/OMINIOR]a.13東roup コン300図5 イメージ情報シートの例図5 イメージ情報シートの例軸受故障: 93%3. TORMASSの保全解析評価への応用図 6.1 送・排風機故障の原因別割合損傷:45TRP では、突発的な機器の故障を防止するとともに 機器の信頼性を確保するため、保全の計画(Plan)、保 全の実施(Do)、保全結果の評価(Check)、保全の改善 (Action) の PDCA サイクルを品質保証に取り入れ活動 している。品質保証活動おいては、保全の最適化を考TRP では、突発的な機器の故障を防止すると 機器の信頼性を確保するため、保全の計画(Pla 全の実施(Do)、保全結果の評価(Check)、保全(4) イメージ情報管理システム保全に係わる各機器の詳細図面(施工図、完成図、 建家図、配管図)等、「イメージ情報」を提供する。 図5に送・排風機のイメージ情報シートの例を示す。に送・排風機故障の原因別割合を示す。また、軸受故障の原因別割合を解析した結果、磨耗 96%、損傷 4%であった。解析結果から、軸受故障の ほとんどが磨耗であった。図 6.2 に軸受故障の原因別 割合を示す。磨耗は、ほぼ潤滑不良からくるものであり、軸受の 油膜管理を改善することで、軸受故障が低減された。BATTRetterplala) | 日に日に日) Poin laud 8.09バランス不良:7%adshion Dial, 東honeコンまとめはい!図5 イメージ情報シートの例軸受故障: 93%図 6.1 送・排風機故障の原因別割合損傷:4%3. TORMASSの保全解析評価への応用 * TRP では、突発的な機器の故障を防止するとともに 機器の信頼性を確保するため、保全の計画(Plan)、保 全の実施(Do)、保全結果の評価(Check)、保全の改善(Action) の PDCA サイクルを品質保証に取り入れ活動 している。品質保証活動おいては、保全の最適化を考 慮した活動が求められる。 *保全の最適化を行ううえでは、過去の保全履歴の解 析評価を行い、その結果を保全活動の PDCA サイクルに 反映することが重要である。 * このため、TORMASS の「機器管理システム」に登録 された機器の保全履歴等のデータを使用した、機器の 故障解析の評価を実施している。以下にその応用例を 示す。磨耗: 96%図 6.2 軸受故障の原因別割合3.1 故障解析の評価3.2 発生率の評価 TRP は、放射性物質を閉じ込める目的から施設内を 13.1 で示した軸受の油膜管理の改善効果を評価する 負圧管理している。ため、故障解析評価で使用した TORMASS のデータから このため、負圧を維持・管理するために重要な機器 総軸受個数に対する年間の軸受故障件数の発生率を次 である送・排風機における故障原因と発生件数につい式により算出した。 て解析した。 1980 年~2002 年までの故障した件数は、111 件であ年間の軸受故障件数(件) り、その内訳は、軸受故障 103 件、バランス不良 8件発生率(件/個)=総軸受個数(個) であった。解析結果から、軸受故障が 93%と、送・排風機の故 障の要因は軸受によるものがほとんどであった。図 6.1- 347 - 保全の最適化を行ううえでは、過去の保全履歴の解 析評価を行い、その結果を保全活動の PDCA サイクルに 反映することが重要である。このため、TORMASS の「機器管理システム」 された機器の保全履歴等のデータを使用した、 故障解析の評価を実施している。以下にその応 示す。 故障解析の評価 は、放射性物質を閉じ込める目的から施設内をこのため、負圧を維持・管理するために重要な機器 である送・排風機における故障原因と発生件数につい て解析した。解析結果から、軸受故障が 93%と、送・排風機の故 障の要因は軸受によるものがほとんどであった。図6.1 に送・排風機故障の原因別割合を示す。また、軸受故障の原因別割合を解析した結果、磨耗 96%、損傷 4%であった。解析結果から、軸受故障の ほとんどが磨耗であった。図 6.2 に軸受故障の原因別 割合を示す。磨耗は、ほぼ潤滑不良からくるものであり、軸受の 油膜管理を改善することで、軸受故障が低減された。バランス不良:7%軸受故障: 93%3.2 発生率の評価」3.1 で示した軸受の油膜管理の改善効果を評価する ため、故障解析評価で使用した TORMASS のデータから 総軸受個数に対する年間の軸受故障件数の発生率を次 - 347 -表1 軸受の油膜管理の改善前(発生率) 「発生年「軸受故障|総軸受個数「発生率(件/個) 1980)268 198131210.006410256 1982376 0.0159574471 19833761 0.005319149 198440010.01|| 19854241 0.004716981 19864481 0.008928571 1987448 1988448 198948410.010330579 199015281 0.009469697 19915281 0.0056818181 1992560人 0.003571429 19935600.005357143 19945601 0.0017857141 19955601 0.0428571431 19965601 0.001785714 1997)5601 0.0035714291 1998560 0.005357143 19995601 0.0446428571 20005601 0.008928571 20015600.005357143 20025600.0017857141 平均発生率(件/個) 平均発生率(件/個)=0.00917 表2 軸受の油膜管理の改善後(発生率)|0|26|24|24|0055323-1-9|1|2|3|7530.00917発生年「軸受故障|総軸受個数 「発生率(件/個) 2003|5600.0071428577 20045600.003571429 2005 120560 20065600.003571429 2007560] 平均発生率(件/個) | 0.00286 平均発生率(件/個)=0.00286表1に軸受の油膜管理の改善前,表2に改善後の発 生率を示す。このように発生率を算出することで、保 全効果を定量的に把握することが可能となった。4.結言TORMASS の機能である機器管理システム,保全技術 管理システム,点検・検査周期管理システム, イメー ジ情報管理システムには、約 24,000 件の機器仕様,約 261,000 件の保全履歴が登録されている。この登録された情報を基に故障頻度,故障原因を整 理・分析することで、保全方法の周期,妥当性の評価 の実施や、過去の保全履歴、詳細図面が容易に確認で管理システム,点検・検査周期管理システム, イメー ジ情報管理システムには、約 24,000 件の機器仕様,約 261,000 件の保全履歴が登録されている。この登録された情報を基に故障頻度,故障原因を整 理・分析することで、保全方法の周期,妥当性の評価 の実施や、過去の保全履歴、詳細図面が容易に確認で きることなど、保全の迅速化に寄与している。参考文献[1] 秋山孝夫、岩崎省吾、“東海再処理工場の言い管理““、 公開資料 TN8410 91-030(1991) [2] 鋤柄光二、伊波慎一、“東海再処理施設 30 [1] 秋山孝夫、岩崎省吾、“東海再処理工場の設備保全 - 管理““、 公開資料 TN8410 91-030(1991) [2] 鋤柄光二、伊波慎一、“東海再処理施設 30 年の歩みと今後の展望-保全技術管理支援システムの運 -用-““、日本原子力学会「2006年秋の大会」(2006) | - 348 -“ “?東海再処理施設における設備保全管理支援システム(TORMASS)の開発 “ “清水 和幸,Kazuyuki SHIMIZU,冨田 恒夫,Tsuneo TOMITA,酒井 克己,Katsumi SAKAI
Support System)の開発を開始した。 東海再処理施設(TRP: Tokai Reprocessing Plant) TORMASS は、(1) TRP の主要な機器の仕様,保全履歴 は、原子炉から取り出した使用済み燃料を機械的及び 等の機器管理システム, (2) 点検、検査の周期管理する 化学的に処理を行い、プルトニウムとウランを回収すための点検・検査周期管理システム,(3)機器等の故障 る施設である。1971 年から使用済み燃料の貯蔵、せん。 診断に必要なデータ提供を行い、予防保全に資する保 断、溶解、分離等の主要施設である分離精製工場、廃 全技術管理システム, (4)機器等の図面情報を登録、保 棄物処理場の建設を開始した。TRP は、廃棄物処理施 全等の必要時に提供するイメージ情報管理システム、 設、貯蔵施設等の施設数が徐々に増加していき、試運 といった広範な保全支援機能を有している。 転を開始した時期には数施設であったが、2008年には、 また、TRP の施設数、機器数の増加に伴い、取扱う 約 60 施設となった。データの項目数、量ともに膨大になってきた。 これに伴い、機器数も増え、機器の故障件数も増加 1985 年から、年度毎に回転機器類、計装設備のプロ して行った。故障機器の保全件数は、1975 年には、約 グラム設計、プログラミング等の開発、システム設計 330 件程度であったものが、1983 年には、約 2,000件の実証、セル内機器、せん断処理工程機器のプログラ 数まで増加した。また、1982 年、1983年には、ウラン ム設計、プログラミング等の開発、システム設計の実 溶解槽の微小貫通の故障が相次いで発生し、長期に渡証と段階的に開発を実施し、全てのプログラム作成が り運転が停止した。1992 年に完了した。その後、大型計算機からパーソナ これを契機に故障した設備を補修する事後保全では、 ルコンピュータ(PC)によるシステムへ移行し、約 復旧に多大な時間と労力を費やし、長期安定安全運転 24,000 件の設備登録、約 261,000 件の保全履歴データ に影響を及ぼすとの認識から、設備保全の重要性が高を蓄積しつつ、今日、統計的な解析を行えるまで発展 まった。してきた。本報では、TORMASS の開発、保全解析評価 1984年に運転中の故障の発生を未然に防止する為のへの応用について述べる。 予防保全を主体とするため、「設備保全管理支援システ連絡先:清水 和幸、〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村] 2. TORMASSの開発 松 4-33、日本原子力研究開発機構 核燃料サイクル研究TORMASS を開発した当時は、PC が出始めた頃であり、 所 再処理技術開発センター 施設管理部 施設管理課、日本語が扱える性能の良いものはなかった。 - 345 - 数まで増加した。また、1982 年、1983年には、ウラン 溶解槽の微小貫通の故障が相次いで発生し、長期に渡 り運転が停止した。これを契機に故障した設備を補修する事後保全では、 復旧に多大な時間と労力を費やし、長期安定安全運転 に影響を及ぼすとの認識から、設備保全の重要性が高 まった。[1]1984年に運転中の故障の発生を未然に防止する為の 予防保全を主体とするため、「設備保全管理支援システ
松 4-33、日本原子力研究開発機構 核燃料サイクル研究 | 所 再処理技術開発センター 施設管理部 施設管理課、 | 電話: 029-282-1111、e-mail:shimizu.kazuyuki@jaea.go.jp 全技術管理システム, (4) 機器等の図面情報を入 全等の必要時に提供するイメージ情報管理シオ といった広範な保全支援機能を有している。また、TRP の施設数、機器数の増加に伴い、 データの項目数、量ともに膨大になってきた。 データの項目数、量ともに膨大になってきた1985 年から、年度毎に回転機器類、計装設備のプロ グラム設計、プログラミング等の開発、システム設計 の実証、セル内機器、せん断処理工程機器のプログラ ム設計、プログラミング等の開発、システム設計の実 - 345 -また、取扱うデータの項目数、量ともに膨大であっ たことから、大型計算機を使用するシステム構築にな った。その後、PC の開発普及に伴い、2001 年に大型計 算機から PC によるシステムへと移行した。TORMASS の 概念図を図1に示す。現在、TORMASS は、以下の(1)~(4) に示す機能を有 しており、保全解析等に利用している。機器管理システム」TORMASSO機器の仕様登録 ○機器の保全履歴登録 ○機器管理台帳の帳票出力点検・検査周期管理システム○機器管理システムに登録さ れた機器の点検、検査の周期 管理表を作成保全技術管理システムイメージ情報管理システムO機器管理システムに登録さ れた故障件数、現象、原因、 処置等の保全履歴から、表や グラフを出力○機器の詳細図面出力 ○保全内容を記録した保全伝票出力 ○機器の外観写真図1 TORMASS の概念図(1) 機器管理システムTRP の主要なセル内機器、せん断処理工程機器、 回転機器類等の機器の設置・稼働開始から廃棄まで のライフサイクルの中で、その機器の仕様、機器の 保全履歴、運転履歴の蓄積の管理を行っている。図 2 に TRP の送・排風機の保全履歴シートの例を示す。保全履歴シートには、保全した機器の名称を示す 「機器番号」,予防保全・事後保全の形態を示す「保 全形態」,保全作業が完了した年月日を西暦で示す 「完了日」,保全作業件名を示す「作業件名」,故障 解析の結果、保全周期の変更等を示した「対策」,保 全を行った背景、詳細な保全内容を示した「コメン ト」等の情報が記載され、履歴を確認できる。コメント|機器番号保全形、完成日 | | 作業件名 対策 | 26 13 |本 | twstra A気コクのベアリングジャ本ブロワーの施設がより具音発生の為、ベアリングの交換を実見した。同ブーリーも早用していた、 202014年後保全基準の変更ベアリングのおりによるベアリングの音の為、分解点検し、ベアリング等の和えさ、1転子 107K11保全 Jummints気ブロワーの能「気ブロワーの女定運転確保と保全管理に万全を守る為、点検個(交換 及び出し等)を実感は、やん。お気ブロワーの安定江転保と保全管理に万全を計る為、点検整備(受変 107K11 F5月保全 気ブロワーの機能及び売出し等)を起。結果、。 1307K13Hは全 (20気ブロワーの補修気ブロワーの安定運転理と保全管理に万全を計る為点検整備(及び売出し等)を実。結果、具郡るし、 | 2007K15 | HA%totsuna)|気ブロワーの修人気ブロワーの定 理と保全管理に万全を計る為点検空信(受交送 及び応、出計事)を実施。結果、移し、 1307216 全 0m ブロワーの修「お気ブロワーの女定転用と保全管理に万全る為点検信(受交及び出る性等)を実能、結果、具るし、 350K30HH保全 |気ブロワーのAブロワーの女定理と保全管理に万全なる為点検(交換及び定出し等)を実。結果、具おし。 350K304保全 | nam プロワーの能強気ブロワーの女定1転用と保全管引に万全をする為、点検受交換 及び売出し等)を実能、結果、具やうし。図2 保全履歴シートの例(2) 点検・検査周期管理システム点検、検査等の定期的な保全について、その周期 と点検、整備の登録を行い、保全周期表を作成する。 この保全周期表を確認することにより、保全を実施 する。図3に熱交換器の周期管理シートの例を示す。 周期管理シートには、熱交換器毎の「機器番号」・ 「機器名称」,関係法令に基づく月例・年次検査,自 主管理に基づく点検整備の実施時期が登録され、周 期管理を確認できる。2007年度(平成19年度) 機番 機器名称|4月|5月|6月|7月|8月|9月|10月|11月12月|1月|2月|3月] [182H20 |横置多管式液体加熱器 182H30 |横置多管式液体加熱器 272AC128 エアハンドリング 272AC129 エアハンドリング 282H50 加熱器 | ||0|ol ????????? 282H70 「熱交換器 282H71 「熱交換器 3424781 | ウォーターチリングユニット|o|o|ololorololorolomoto] 3425782 ウォーターチリングユニット|0|00000000000] [342491 チラーユニット 1000000000000] 口定期年次検査O定期月例検査△整備図3 周期管理シートの例(3)保全技術管理システム「機器管理システム」に登録された機器の保全履 歴、機器の運転履歴等のデータを使用し、分かりや すい表やデータを保全員に提供する。提供されたデ ータをもとに、保全員は、各ポンプ、ブロワ等の故 障解析、劣化度評価等の設備診断を実施する。図 4 にブロワ軸受故障の保全データシートの例を示す。保全データシートには、「機器管理システム」に 登録されているブロワ軸受故障の原因であった磨耗, 損傷,潤滑不良等の件数を年度毎に検索し、グラフ に示すことができる。 [2]件数口磨耗 國損傷 ロその他(潤滑不良等)198319851905/06/091905/06/1119911905/06/151995L6616661 |1905/06/23ブロワ軸受故障の原因別発生件数図4 保全データシートの例346(4) イメージ情報管理システム保全に係わる各機器の詳細図面(施工図、完成図、 建家図、配管図)等、「イメージ情報」を提供する。 図5に送・排風機のイメージ情報シートの例を示す。に送・排風機故障の原因別割合をまた、軸受故障の原因別割合を 96%、損傷 4%であった。解析結 ほとんどが磨耗であった。図 6.2 割合を示す。磨耗は、ほぼ潤滑不良からくる 油膜管理を改善することで、軸受BTSUmmerイオンクレームのなのか。 DaB] CGにはコファイル)ッパーウエームサールのコンぷ0 「blalalax12 Islatistmlaw mean19/OMINIOR]a.13東roup コン300図5 イメージ情報シートの例図5 イメージ情報シートの例軸受故障: 93%3. TORMASSの保全解析評価への応用図 6.1 送・排風機故障の原因別割合損傷:45TRP では、突発的な機器の故障を防止するとともに 機器の信頼性を確保するため、保全の計画(Plan)、保 全の実施(Do)、保全結果の評価(Check)、保全の改善 (Action) の PDCA サイクルを品質保証に取り入れ活動 している。品質保証活動おいては、保全の最適化を考TRP では、突発的な機器の故障を防止すると 機器の信頼性を確保するため、保全の計画(Pla 全の実施(Do)、保全結果の評価(Check)、保全(4) イメージ情報管理システム保全に係わる各機器の詳細図面(施工図、完成図、 建家図、配管図)等、「イメージ情報」を提供する。 図5に送・排風機のイメージ情報シートの例を示す。に送・排風機故障の原因別割合を示す。また、軸受故障の原因別割合を解析した結果、磨耗 96%、損傷 4%であった。解析結果から、軸受故障の ほとんどが磨耗であった。図 6.2 に軸受故障の原因別 割合を示す。磨耗は、ほぼ潤滑不良からくるものであり、軸受の 油膜管理を改善することで、軸受故障が低減された。BATTRetterplala) | 日に日に日) Poin laud 8.09バランス不良:7%adshion Dial, 東honeコンまとめはい!図5 イメージ情報シートの例軸受故障: 93%図 6.1 送・排風機故障の原因別割合損傷:4%3. TORMASSの保全解析評価への応用 * TRP では、突発的な機器の故障を防止するとともに 機器の信頼性を確保するため、保全の計画(Plan)、保 全の実施(Do)、保全結果の評価(Check)、保全の改善(Action) の PDCA サイクルを品質保証に取り入れ活動 している。品質保証活動おいては、保全の最適化を考 慮した活動が求められる。 *保全の最適化を行ううえでは、過去の保全履歴の解 析評価を行い、その結果を保全活動の PDCA サイクルに 反映することが重要である。 * このため、TORMASS の「機器管理システム」に登録 された機器の保全履歴等のデータを使用した、機器の 故障解析の評価を実施している。以下にその応用例を 示す。磨耗: 96%図 6.2 軸受故障の原因別割合3.1 故障解析の評価3.2 発生率の評価 TRP は、放射性物質を閉じ込める目的から施設内を 13.1 で示した軸受の油膜管理の改善効果を評価する 負圧管理している。ため、故障解析評価で使用した TORMASS のデータから このため、負圧を維持・管理するために重要な機器 総軸受個数に対する年間の軸受故障件数の発生率を次 である送・排風機における故障原因と発生件数につい式により算出した。 て解析した。 1980 年~2002 年までの故障した件数は、111 件であ年間の軸受故障件数(件) り、その内訳は、軸受故障 103 件、バランス不良 8件発生率(件/個)=総軸受個数(個) であった。解析結果から、軸受故障が 93%と、送・排風機の故 障の要因は軸受によるものがほとんどであった。図 6.1- 347 - 保全の最適化を行ううえでは、過去の保全履歴の解 析評価を行い、その結果を保全活動の PDCA サイクルに 反映することが重要である。このため、TORMASS の「機器管理システム」 された機器の保全履歴等のデータを使用した、 故障解析の評価を実施している。以下にその応 示す。 故障解析の評価 は、放射性物質を閉じ込める目的から施設内をこのため、負圧を維持・管理するために重要な機器 である送・排風機における故障原因と発生件数につい て解析した。解析結果から、軸受故障が 93%と、送・排風機の故 障の要因は軸受によるものがほとんどであった。図6.1 に送・排風機故障の原因別割合を示す。また、軸受故障の原因別割合を解析した結果、磨耗 96%、損傷 4%であった。解析結果から、軸受故障の ほとんどが磨耗であった。図 6.2 に軸受故障の原因別 割合を示す。磨耗は、ほぼ潤滑不良からくるものであり、軸受の 油膜管理を改善することで、軸受故障が低減された。バランス不良:7%軸受故障: 93%3.2 発生率の評価」3.1 で示した軸受の油膜管理の改善効果を評価する ため、故障解析評価で使用した TORMASS のデータから 総軸受個数に対する年間の軸受故障件数の発生率を次 - 347 -表1 軸受の油膜管理の改善前(発生率) 「発生年「軸受故障|総軸受個数「発生率(件/個) 1980)268 198131210.006410256 1982376 0.0159574471 19833761 0.005319149 198440010.01|| 19854241 0.004716981 19864481 0.008928571 1987448 1988448 198948410.010330579 199015281 0.009469697 19915281 0.0056818181 1992560人 0.003571429 19935600.005357143 19945601 0.0017857141 19955601 0.0428571431 19965601 0.001785714 1997)5601 0.0035714291 1998560 0.005357143 19995601 0.0446428571 20005601 0.008928571 20015600.005357143 20025600.0017857141 平均発生率(件/個) 平均発生率(件/個)=0.00917 表2 軸受の油膜管理の改善後(発生率)|0|26|24|24|0055323-1-9|1|2|3|7530.00917発生年「軸受故障|総軸受個数 「発生率(件/個) 2003|5600.0071428577 20045600.003571429 2005 120560 20065600.003571429 2007560] 平均発生率(件/個) | 0.00286 平均発生率(件/個)=0.00286表1に軸受の油膜管理の改善前,表2に改善後の発 生率を示す。このように発生率を算出することで、保 全効果を定量的に把握することが可能となった。4.結言TORMASS の機能である機器管理システム,保全技術 管理システム,点検・検査周期管理システム, イメー ジ情報管理システムには、約 24,000 件の機器仕様,約 261,000 件の保全履歴が登録されている。この登録された情報を基に故障頻度,故障原因を整 理・分析することで、保全方法の周期,妥当性の評価 の実施や、過去の保全履歴、詳細図面が容易に確認で管理システム,点検・検査周期管理システム, イメー ジ情報管理システムには、約 24,000 件の機器仕様,約 261,000 件の保全履歴が登録されている。この登録された情報を基に故障頻度,故障原因を整 理・分析することで、保全方法の周期,妥当性の評価 の実施や、過去の保全履歴、詳細図面が容易に確認で きることなど、保全の迅速化に寄与している。参考文献[1] 秋山孝夫、岩崎省吾、“東海再処理工場の言い管理““、 公開資料 TN8410 91-030(1991) [2] 鋤柄光二、伊波慎一、“東海再処理施設 30 [1] 秋山孝夫、岩崎省吾、“東海再処理工場の設備保全 - 管理““、 公開資料 TN8410 91-030(1991) [2] 鋤柄光二、伊波慎一、“東海再処理施設 30 年の歩みと今後の展望-保全技術管理支援システムの運 -用-““、日本原子力学会「2006年秋の大会」(2006) | - 348 -“ “?東海再処理施設における設備保全管理支援システム(TORMASS)の開発 “ “清水 和幸,Kazuyuki SHIMIZU,冨田 恒夫,Tsuneo TOMITA,酒井 克己,Katsumi SAKAI