東海再処理施設における回転機器類の保全技術開発Ⅰ-回転機器構成部品の故障解析-
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カテゴリ: 第5回
1. 緒言
東海再処理施設は、1977年にホット試験を開始し、1981 年の操業から今までに大型機器の腐食故障、機械故障 など、多くの故障を経験してきた。東海再処理施設で は、このような故障の未然防止及び設備の信頼性を確 保するため、保全の品質保証活動を推進するとともに、 保全に係る経済性を考慮した保全の最適化を目指した 活動を行なっている。保全の最適化を図るうえでは、保全実績の解析及び 評価を行い、その結果を保全活動へ反映することにし ている。この保全実績の情報を収集するシステムとし て 、1985 年に設備保全管理支援システム TORMASS(Tokai Reprocessing Plant Maintenance Support System)を導入し、施設設備の情報とともに、保全実績 データの登録を行なっている。保全実績データは、こ れまでに約 261,000 件が登録されている)。今回、TORMASSに登録されている保全実績データ 連絡先:堂村 和幸 | 〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松 4-33 日本原子力研究開発機構 東海研究開発センター | e-mail: domura.kazuyuki@jaea.go.jpから、分離精製工場の換気系統のブロアの故障履歴を 抽出し、構成部品に対し統計的な信頼度解析を行った。 - 分離精製工場は、再処理施設の主工程を内包してい る重要な施設であり、またブロアは動的に閉じ込め機 能を担うものであるため、信頼度解析を行なうことは、 施設の安全性を評価するうえで重要である。 本報告では、これらの評価結果について報告する。
2. 再処理施設における換気系統
2.1 換気系統について * 換気系統は、図1に示すように屋外から施設内に空 気を取り込む系統を給気系統、この取り込んだ空気を 主排気筒より排出する系統を排気系統と区分している。また、図2に示すように再処理施設の施設は、内部 を放射線量、放射性物質による汚染の恐れの度合い等 により、低いほうからグリーン区域、アンバー区域、 レッド区域に区分される。この区分に応じて、グリー ン区域からアンバー区域、アンバー区域からレッド区 域へと空気が流れるように圧力差を設けており、負圧 として管理している。 - 換気系統は、この負圧を維持すること、区分毎に系 統分けされたブロアを設置して空気の流れを作り、建349家入口、出口側はフィルタを設け放射性物質のろ過す ること等により、施設の閉じ込め機能を確保している。アンバー系ブロア この、ダンパー 給気ブロア (A1,A2)(C1~C4)にもな排気フィルタ 給気フィルタ主排気筒 洗浄塔レッド1系ブロア(D1~D3) 入気BUクー号, LH ニードロー「レッド2系ブロア (E1~E3)Cara19935993入気-DOPOT1日2回の給気系統 | 750mLグリーン系ブロア (B1,B2)檀類換気 系統よりで・予備系統※1グリーン区域排気系統 ※2アンバー区域」 (※3レッド区域図1 換気系統概要(施設外) (施設内)入気をつレッド区域アンバー区域グリーン区域 図2 施設内の空気の流れの概念2.2 換気系統の安全機能ブロアは、動的な機器であり、しかも通年運転を行 うことから、摺動部の磨耗故障などが発生する。この ため、これらの故障に際して、閉じ込め機能が損なわ れないように、ブロアは複数台設置されており、常用 のブロアに故障が発生した際には、故障信号により、 自動で予備機に切り替わる制御機能となっている。2.3 ブロアの構成部品 東海再処理施設に設置されている主なブロアは、図 3 に示すように V ベルト駆動形であり、ブロア本体及 び電動機に大別され、軸受などの部品により構成され ている。ケーシングプーリ側軸受 シャフト 反プーリ側軸受 11.1、Vベルト羽根車におい Vベルト一反プーリ側軸受サンコイルブロア本体電動機 プーリプーリ側軸受図3 ブロアの構成3.信頼度解析の方法TORMASSの約30年間における保全実績データの故障履歴をもとに、故障率などの信頼度解析を行った。 ここで信頼度とは、機器単体又はシステムが偶発的に 故障することなく、1 年間稼動することのできる信頼 性の尺度である。3.1 構成部品の信頼度解析方法TORMASS の約 261,000 件の保全実績データのうち、 対象とする故障は、定期的な点検及び検査の間の通常 運転中に、ブロアの構成部品の偶発的な故障であり、 その故障の進展により機能低下に繋がる可能性のある ものを抽出する。この抽出された結果をもとに、次の 公式により各部品の故障率(1)、故障までの平均時間 MTTF(Mean Time To Failure)及び1年間()の信頼度 Rp( を求めるCM。入 - 故障件数 / 稼動年数(件年) MTTF - 総稼動年数 / 故障件数(年/件)RP (t)=et3.2 ブロアの信頼度解析方法ブロアとしての信頼度 Rs()は、構成される各部品の うち、一つの部品の故障がブロアとしての機能を失わ せることから、図4に示すような直列システムとなり、 その積により成り立つ53)。なお、総稼働時間は、修復 時間を除いた平均故障間隔 MTBF(Mean Time Before Failure)を用い、ブロアの信頼度 Re(を求める。ブロア3構成部品 --------ブロアの信頼度R (t)=Rp ? Rpx““ ・Rpn図4 ブロアの信頼度ブロック3.3 給気系統の信頼度解析方法 - 給気系統のブロアは、通常2台が常時並列運転され、 1 台が故障した場合でも、施設全体のブロアの運転台 数を少なく制限する機能により、残りの1台の運転に より閉じ込め機能が確保される。従って、2 台が同時 に故障した場合に給気系統としての機能が失われるこ とから、並列冗長システムでの信頼度 R (となる。 このため、1番目のブロアの信頼度を Ras(t) とし、次の 公式により給気系統の信頼度 Row (0)を求める。なお、 制御機能の信頼度 R.は、その機能は定期的な検査など により確認されているが、計装品などの偶発的故障を 考慮し、0.99 と仮定する。 350RN () = {1-II (1- Rai (0) }R,3.4 排気系統の信頼度解析方法 - グリーン系などの排気系統のブロアは、各系統とも 予備機を有し、運転中のブロアが故障した場合には予 備機が自動的に運転される。このため、運転中のブロ ア故障率を入り、待機中のブロアの故障率を入。として 次の公式により、1 年間tの排気系統の信頼度 Rex (t) を求める。また、制御機能の信頼度 Rs については、 給気系統と同様の考えから 0.99 とする。なお、図1に 示すレッド2系のブロア E3 は異常時のみ運転のため、 故障履歴がないことから解析対象より除く。Rex (1) = e1:故障率が時間とともに減少する、初期故障。 m=1 :故障率が時間によって変化しない。 m<1:故障率が時間とともに増加する、劣化故障。表1 給気系統ブロア構成部品の故障状況給氣系統 ブロアA1ブロアA2 HTTF 故率入信頼度HTTF 故障率入信頼度 主要部の構成部品一故障件数““ (年1件) (件/年) RO故障件数(年/件) (件/年) (0) ケーシング 1 25.04.0E-020.96125.04.0E-020.961 羽根車 1 25.04.0E-02 0.96125.04.0E-02 0.961 シャフト 0_ - - -10 - - IVプーリ 25.04.0E-020.96125.04.0E-02 0.961 Vベルト 6.3 1.6E-01 0.8528. 3 1.2E-01 0.887軸受部ブロア本体 | 電動機 「付属品プーリ 軸受部 コイル 防振ゴム ボルト 架台254.0E-02 0.961※25年間(1975年~1999年)の故障件数10給気系10イン1累積ハザード値 H(t)a給気系 > アンバー系レッド2系 0 レッド1系 ーアンバー系 ーレッド1系 ー・給気系・レッド2系 レーグリーン系.こい1故障が集中0.01100001000001000000時間(hr) 図5 各系統のブロアの故障分布状況4.2 ブロア及び系統の信頼度結果表2は、3.2 の方法により図1に示す給気及び排気 系統の各ブロア単体の信頼度 Re (t)、また 3.3 の方法に より給気系統の信頼度 RN ()及び 3.4 の方法により排 気系統の信頼度 Rex (t)を求めたものである。ブロア単 体の信頼度 RR (0は、ブロア C1 及び D3 が他ブロアに比 ベ低いことが確認できる。また、給気及び排気系統の 信頼度 RN (t)、Rex (Oは 0.931 以上であった。表2 ブロアの信頼度信頼度 ブロア単体系統 給気:Rw(t) #5: Rex (t)系統名 | 区域名 機器名Rg(t)給氛0.931A1 A2 B1 B2グリーン0.952アンバー0.999C3 C40.756 0.756 0.785 0.785 0.545 0.922 0.785 0.960 0.741 0.741 0.657 0.726 0.787排気D1レッド1D20.953D3レッド2E1 E20.9311900/12/165. 信頼度解析の評価- 表1に示す給気系統のブロアを例とした構成部品の 信頼度 R, ()は、0.851 以上であり、表2に示すブロア 単体の信頼度 RR(0)は、構成部品の信頼度の積により求 めることから、小さくなる。しかし、系統としてブロ アの予備機を設けるなどによって、信頼度 RN (t)、Rex ()は、0.931 以上と大きくなる。従って、閉じ込め機 能が安定的に担保されていると考える。また、東海再処理施設の分離精製工場のブロア構成 部品の故障は、図 5 の故障分布により、経年的な劣化 事象が主であると推定でき、現状の状態監視保全に加 え、100,000 時間を目安に分解整備を行う、時間基準 保全を行うことが最適であると考える。保全を行うことが最適であると考える。7.結言6.保全活動の妥当性評価TORMASS保全実績データによるブロアの構成部品の統計的な 信頼度解析による評価を行い、閉じ込め機能を担保す るうえで、日頃の保全活動により、信頼度を保ってい ることが確認できた。しかし、原子力施設として信頼 度を限りなく1に近づけるため、ブロアの駆動部であ り摩耗、亀裂などが発生しやすい軸受部及び V ベルト について、次の管理を行うとともに、構成部品の故障 時の修復率の向上化を図っている。6.1 軸受部の管理 - 軸受部の潤滑は、摩耗による故障を低下させ、寿命 を延命するために適切に行う必要がある。このため、 設備診断技術において振動法による定期的な簡易測定 に加え、軸受に油膜状態を測定するショックパルス法 の導入を図っている。また、グリース注入形の軸受部 について、人的注入に頼らないグリース注入のオート 化を試行している。6.2 Vベルトの管理Vベルトは経年的にゆるみが発生し、定期的にVベ ルトの張り調整及び点検を行っても剥離、亀裂などに 進展することを経験している。このため、教育等によ り運転員の日常巡視点検における五感力の向上に努め た。その成果として、5年前の保全件数が年間平均 20件に対し、近年では年間平均 40 件とVベルトの張り状 態監視による予防的処置が増加している。6.3 ブロアの修復率の向上 -- 修復率とは、故障件数に対する修復時間で表される が修復作業に至るまでの時間も必要であり、約10年前 までブロアの構成部品の交換は外注を主としており、 そのため部品調達及び契約手続きなどに時間がかかり、 修復までに2週間以上を要した。このため、近年では 品質管理を図りつつ、技術力の向上により修復作業の 自主化、予備品の保有・管理により1週間以内の修復が 可能となり、修復率が向上されている。また、修復作 業の自主化により、保全コスト削減につながっている。TORMASS により、1975 年から 2007年までの約 30 年 間で蓄積された保全実績データ約 261,000 件をもとに、 分離精製工場の閉じ込め機能を確保するために重要で あるブロアについて、構成部品の故障履歴から偶発的 故障を抽出し、信頼度解析による評価を行った。本評 価により、ブロア及び給気系統などの各系統は、高い 信頼度を示し、安定的に運転されているが、100,000 時間を目安に時間基準保全を行うことが最適である。参考文献[1] 鋤柄光二他「東海再処理施設 30 年の歩みと今後の展望一保全技術管理支援システムの運用一」 日本原子力学会(2006 年秋の大会) [2] 中村泰三、榊原哲「やさしく学べる信頼性手法」日科技連(2004) [3] 日本保全学会編集委員会 保全講座タスクチーム「保全を数理的に考える」日本保全学会 保全学Vol6,No1,2007 [4] 岡芳明「原子力発電施設における確率論的安全評価の基礎と応用」産業技術(2005)352“ “?東海再処理施設における回転機器類の保全技術開発 I回転機器構成部品の故障解析“ “堂村 和幸,Kazuyuki DOUMURA,大久保 俊純,Tosizumi OHKUBO,伊波 慎一,Shinichi INAMI
東海再処理施設は、1977年にホット試験を開始し、1981 年の操業から今までに大型機器の腐食故障、機械故障 など、多くの故障を経験してきた。東海再処理施設で は、このような故障の未然防止及び設備の信頼性を確 保するため、保全の品質保証活動を推進するとともに、 保全に係る経済性を考慮した保全の最適化を目指した 活動を行なっている。保全の最適化を図るうえでは、保全実績の解析及び 評価を行い、その結果を保全活動へ反映することにし ている。この保全実績の情報を収集するシステムとし て 、1985 年に設備保全管理支援システム TORMASS(Tokai Reprocessing Plant Maintenance Support System)を導入し、施設設備の情報とともに、保全実績 データの登録を行なっている。保全実績データは、こ れまでに約 261,000 件が登録されている)。今回、TORMASSに登録されている保全実績データ 連絡先:堂村 和幸 | 〒319-1194 茨城県那珂郡東海村村松 4-33 日本原子力研究開発機構 東海研究開発センター | e-mail: domura.kazuyuki@jaea.go.jpから、分離精製工場の換気系統のブロアの故障履歴を 抽出し、構成部品に対し統計的な信頼度解析を行った。 - 分離精製工場は、再処理施設の主工程を内包してい る重要な施設であり、またブロアは動的に閉じ込め機 能を担うものであるため、信頼度解析を行なうことは、 施設の安全性を評価するうえで重要である。 本報告では、これらの評価結果について報告する。
2. 再処理施設における換気系統
2.1 換気系統について * 換気系統は、図1に示すように屋外から施設内に空 気を取り込む系統を給気系統、この取り込んだ空気を 主排気筒より排出する系統を排気系統と区分している。また、図2に示すように再処理施設の施設は、内部 を放射線量、放射性物質による汚染の恐れの度合い等 により、低いほうからグリーン区域、アンバー区域、 レッド区域に区分される。この区分に応じて、グリー ン区域からアンバー区域、アンバー区域からレッド区 域へと空気が流れるように圧力差を設けており、負圧 として管理している。 - 換気系統は、この負圧を維持すること、区分毎に系 統分けされたブロアを設置して空気の流れを作り、建349家入口、出口側はフィルタを設け放射性物質のろ過す ること等により、施設の閉じ込め機能を確保している。アンバー系ブロア この、ダンパー 給気ブロア (A1,A2)(C1~C4)にもな排気フィルタ 給気フィルタ主排気筒 洗浄塔レッド1系ブロア(D1~D3) 入気BUクー号, LH ニードロー「レッド2系ブロア (E1~E3)Cara19935993入気-DOPOT1日2回の給気系統 | 750mLグリーン系ブロア (B1,B2)檀類換気 系統よりで・予備系統※1グリーン区域排気系統 ※2アンバー区域」 (※3レッド区域図1 換気系統概要(施設外) (施設内)入気をつレッド区域アンバー区域グリーン区域 図2 施設内の空気の流れの概念2.2 換気系統の安全機能ブロアは、動的な機器であり、しかも通年運転を行 うことから、摺動部の磨耗故障などが発生する。この ため、これらの故障に際して、閉じ込め機能が損なわ れないように、ブロアは複数台設置されており、常用 のブロアに故障が発生した際には、故障信号により、 自動で予備機に切り替わる制御機能となっている。2.3 ブロアの構成部品 東海再処理施設に設置されている主なブロアは、図 3 に示すように V ベルト駆動形であり、ブロア本体及 び電動機に大別され、軸受などの部品により構成され ている。ケーシングプーリ側軸受 シャフト 反プーリ側軸受 11.1、Vベルト羽根車におい Vベルト一反プーリ側軸受サンコイルブロア本体電動機 プーリプーリ側軸受図3 ブロアの構成3.信頼度解析の方法TORMASSの約30年間における保全実績データの故障履歴をもとに、故障率などの信頼度解析を行った。 ここで信頼度とは、機器単体又はシステムが偶発的に 故障することなく、1 年間稼動することのできる信頼 性の尺度である。3.1 構成部品の信頼度解析方法TORMASS の約 261,000 件の保全実績データのうち、 対象とする故障は、定期的な点検及び検査の間の通常 運転中に、ブロアの構成部品の偶発的な故障であり、 その故障の進展により機能低下に繋がる可能性のある ものを抽出する。この抽出された結果をもとに、次の 公式により各部品の故障率(1)、故障までの平均時間 MTTF(Mean Time To Failure)及び1年間()の信頼度 Rp( を求めるCM。入 - 故障件数 / 稼動年数(件年) MTTF - 総稼動年数 / 故障件数(年/件)RP (t)=et3.2 ブロアの信頼度解析方法ブロアとしての信頼度 Rs()は、構成される各部品の うち、一つの部品の故障がブロアとしての機能を失わ せることから、図4に示すような直列システムとなり、 その積により成り立つ53)。なお、総稼働時間は、修復 時間を除いた平均故障間隔 MTBF(Mean Time Before Failure)を用い、ブロアの信頼度 Re(を求める。ブロア3構成部品 --------ブロアの信頼度R (t)=Rp ? Rpx““ ・Rpn図4 ブロアの信頼度ブロック3.3 給気系統の信頼度解析方法 - 給気系統のブロアは、通常2台が常時並列運転され、 1 台が故障した場合でも、施設全体のブロアの運転台 数を少なく制限する機能により、残りの1台の運転に より閉じ込め機能が確保される。従って、2 台が同時 に故障した場合に給気系統としての機能が失われるこ とから、並列冗長システムでの信頼度 R (となる。 このため、1番目のブロアの信頼度を Ras(t) とし、次の 公式により給気系統の信頼度 Row (0)を求める。なお、 制御機能の信頼度 R.は、その機能は定期的な検査など により確認されているが、計装品などの偶発的故障を 考慮し、0.99 と仮定する。 350RN () = {1-II (1- Rai (0) }R,3.4 排気系統の信頼度解析方法 - グリーン系などの排気系統のブロアは、各系統とも 予備機を有し、運転中のブロアが故障した場合には予 備機が自動的に運転される。このため、運転中のブロ ア故障率を入り、待機中のブロアの故障率を入。として 次の公式により、1 年間tの排気系統の信頼度 Rex (t) を求める。また、制御機能の信頼度 Rs については、 給気系統と同様の考えから 0.99 とする。なお、図1に 示すレッド2系のブロア E3 は異常時のみ運転のため、 故障履歴がないことから解析対象より除く。Rex (1) = e1:故障率が時間とともに減少する、初期故障。 m=1 :故障率が時間によって変化しない。 m<1:故障率が時間とともに増加する、劣化故障。表1 給気系統ブロア構成部品の故障状況給氣系統 ブロアA1ブロアA2 HTTF 故率入信頼度HTTF 故障率入信頼度 主要部の構成部品一故障件数““ (年1件) (件/年) RO故障件数(年/件) (件/年) (0) ケーシング 1 25.04.0E-020.96125.04.0E-020.961 羽根車 1 25.04.0E-02 0.96125.04.0E-02 0.961 シャフト 0_ - - -10 - - IVプーリ 25.04.0E-020.96125.04.0E-02 0.961 Vベルト 6.3 1.6E-01 0.8528. 3 1.2E-01 0.887軸受部ブロア本体 | 電動機 「付属品プーリ 軸受部 コイル 防振ゴム ボルト 架台254.0E-02 0.961※25年間(1975年~1999年)の故障件数10給気系10イン1累積ハザード値 H(t)a給気系 > アンバー系レッド2系 0 レッド1系 ーアンバー系 ーレッド1系 ー・給気系・レッド2系 レーグリーン系.こい1故障が集中0.01100001000001000000時間(hr) 図5 各系統のブロアの故障分布状況4.2 ブロア及び系統の信頼度結果表2は、3.2 の方法により図1に示す給気及び排気 系統の各ブロア単体の信頼度 Re (t)、また 3.3 の方法に より給気系統の信頼度 RN ()及び 3.4 の方法により排 気系統の信頼度 Rex (t)を求めたものである。ブロア単 体の信頼度 RR (0は、ブロア C1 及び D3 が他ブロアに比 ベ低いことが確認できる。また、給気及び排気系統の 信頼度 RN (t)、Rex (Oは 0.931 以上であった。表2 ブロアの信頼度信頼度 ブロア単体系統 給気:Rw(t) #5: Rex (t)系統名 | 区域名 機器名Rg(t)給氛0.931A1 A2 B1 B2グリーン0.952アンバー0.999C3 C40.756 0.756 0.785 0.785 0.545 0.922 0.785 0.960 0.741 0.741 0.657 0.726 0.787排気D1レッド1D20.953D3レッド2E1 E20.9311900/12/165. 信頼度解析の評価- 表1に示す給気系統のブロアを例とした構成部品の 信頼度 R, ()は、0.851 以上であり、表2に示すブロア 単体の信頼度 RR(0)は、構成部品の信頼度の積により求 めることから、小さくなる。しかし、系統としてブロ アの予備機を設けるなどによって、信頼度 RN (t)、Rex ()は、0.931 以上と大きくなる。従って、閉じ込め機 能が安定的に担保されていると考える。また、東海再処理施設の分離精製工場のブロア構成 部品の故障は、図 5 の故障分布により、経年的な劣化 事象が主であると推定でき、現状の状態監視保全に加 え、100,000 時間を目安に分解整備を行う、時間基準 保全を行うことが最適であると考える。保全を行うことが最適であると考える。7.結言6.保全活動の妥当性評価TORMASS保全実績データによるブロアの構成部品の統計的な 信頼度解析による評価を行い、閉じ込め機能を担保す るうえで、日頃の保全活動により、信頼度を保ってい ることが確認できた。しかし、原子力施設として信頼 度を限りなく1に近づけるため、ブロアの駆動部であ り摩耗、亀裂などが発生しやすい軸受部及び V ベルト について、次の管理を行うとともに、構成部品の故障 時の修復率の向上化を図っている。6.1 軸受部の管理 - 軸受部の潤滑は、摩耗による故障を低下させ、寿命 を延命するために適切に行う必要がある。このため、 設備診断技術において振動法による定期的な簡易測定 に加え、軸受に油膜状態を測定するショックパルス法 の導入を図っている。また、グリース注入形の軸受部 について、人的注入に頼らないグリース注入のオート 化を試行している。6.2 Vベルトの管理Vベルトは経年的にゆるみが発生し、定期的にVベ ルトの張り調整及び点検を行っても剥離、亀裂などに 進展することを経験している。このため、教育等によ り運転員の日常巡視点検における五感力の向上に努め た。その成果として、5年前の保全件数が年間平均 20件に対し、近年では年間平均 40 件とVベルトの張り状 態監視による予防的処置が増加している。6.3 ブロアの修復率の向上 -- 修復率とは、故障件数に対する修復時間で表される が修復作業に至るまでの時間も必要であり、約10年前 までブロアの構成部品の交換は外注を主としており、 そのため部品調達及び契約手続きなどに時間がかかり、 修復までに2週間以上を要した。このため、近年では 品質管理を図りつつ、技術力の向上により修復作業の 自主化、予備品の保有・管理により1週間以内の修復が 可能となり、修復率が向上されている。また、修復作 業の自主化により、保全コスト削減につながっている。TORMASS により、1975 年から 2007年までの約 30 年 間で蓄積された保全実績データ約 261,000 件をもとに、 分離精製工場の閉じ込め機能を確保するために重要で あるブロアについて、構成部品の故障履歴から偶発的 故障を抽出し、信頼度解析による評価を行った。本評 価により、ブロア及び給気系統などの各系統は、高い 信頼度を示し、安定的に運転されているが、100,000 時間を目安に時間基準保全を行うことが最適である。参考文献[1] 鋤柄光二他「東海再処理施設 30 年の歩みと今後の展望一保全技術管理支援システムの運用一」 日本原子力学会(2006 年秋の大会) [2] 中村泰三、榊原哲「やさしく学べる信頼性手法」日科技連(2004) [3] 日本保全学会編集委員会 保全講座タスクチーム「保全を数理的に考える」日本保全学会 保全学Vol6,No1,2007 [4] 岡芳明「原子力発電施設における確率論的安全評価の基礎と応用」産業技術(2005)352“ “?東海再処理施設における回転機器類の保全技術開発 I回転機器構成部品の故障解析“ “堂村 和幸,Kazuyuki DOUMURA,大久保 俊純,Tosizumi OHKUBO,伊波 慎一,Shinichi INAMI