微小スケール破壊解析による液滴衝撃エロージョンの評価
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カテゴリ: 第5回
1. 緒言
原子力プラント等の施設では、液滴が配管の内壁や タービン等の機器に衝突することで発生する液滴衝撃 エロージョンによる減肉が問題となる。しかしながら、 その減肉現象を精度よく評価する手法はなく、定期検 査時に目視検査や非破壊検査等を実施しているものの、 検査物量が多いことから、高コストの一因となってい る。 ・ こうした問題に対して、検査を実施する箇所を絞り 込み、検査物量の低減を図るためには、減肉事象の詳 細メカニズムの解明とメカニズムに基づくモデルによ る詳細評価手法の確立が不可欠である。こうしたメカニズムに基づくモデルによる詳細評価 手法として、配管壁や機器への衝突速度、衝突角度等 を定量的に求めることのできる流動数値解析による液 滴飛散評価手法と、その結果に基づく微小破壊解析に よる減肉量評価手法を組み合わせた評価手法を検討し た。本研究では後者について述べる。
2. 液滴衝撃エロージョンの減肉評価手法 2.1 既存評価法の検討 1 日本機械学会の『発電用設備規格 配管減肉管理に 関する規格』リでは、液滴衝撃エロージョンによる減 肉評価式として、Heymann による評価式2 と Sanchez による評価式を取り上げている。また、これ以外にも Heymann 則同様に複数の試験結果から評価式を提案し ているものに、Springer によるものがある。ここで は、これらの評価手法について検討する。(1) peA ここで、Cは減肉係数、pは液体の密度、m は蒸気 の質量流量、xは蒸気のクオリティ、V は衝突速度、F。 はエントレインメント率、F,はヒッティング係数、p は酸化皮膜硬さ、e は酸化皮膜の破壊に必要なひずみ、 A.は液滴が衝突する領域の面積としている。個々の液 滴を考慮せず、蒸気流量、クオリティ、エントレイン メント率から蒸気中の液滴量を求め、さらに形状ごと に異なるヒッティング係数をかけた分の液滴が衝突す るものとしている。Heymann 則はラウンドロビン試験のデータをまとめ たものであり、減肉体積と総衝突液滴体積の比である R, を以下の式により求める。40116.65log(R)= 4.8log(V) - log(NER)-16.65+ 0.67 log(d) + 0.57 J -0.22K (2) ここで、V は衝突速度、NERはエロージョン耐性であ り、材質の影響を基準材との比で求めたものである。d は液滴径、J=0(液滴衝撃の場合)orl(ジェットエ ロージョンの場合)、K=(衝突面が平面の場合) or 1(衝突面が曲面の場合)である。 - Springer則も複数の試験データをまとめたものであ り、こちらは液滴衝撃エロージョンを疲労破壊とのア ナロジーで定式化している。 a = 73.3x pdf(1-2v)p, C.V cos 0) *”) (3) | 406-1)ここで、p.、V、a、bはそれぞれ部材の密度、ポアソン比、引張強さ、疲労特性パラメータであり、d、p, 、 C、V、0はそれぞれ液滴の径、密度、液中での音速、 衝突速度、衝突角度である。 * 上記3評価則(及び破壊力学解析を用いた場合の評価法)の比較を Table-1 に示す。 * Sanchez 則では液滴径による影響を考慮せず、減肉 速度のみを求めて、潜伏期間を評価しない。また、材 料の影響として、酸化皮膜厚さや酸化皮膜破壊ひずみ 等、特殊な材料パラメータを用いており、任意の評価 対象材料について適用するのは困難である。a = 73.3 x 3.3J 1 - 2v)P, C,V cos | |・1406-1) Sこで、p、V、a、bはそれぞれ部材の密度、ポア解析手法n[個]入射個数n[個]発生 - 飛散Table-1 減肉評価法の比較 Sanchez則 Heymann)Springer則 蒸氣質量流量 m'rol [kg/h] (衝突液滴総体積)衝突個数 クオリティ(1-x) ジェットor液滴 エントレインメント率 F.. 液滴径液滴径 液滴密度液滴密度液中音速 散衝突速度衝突速度V (4.8 logV)衝突速度 ヒッティングファクタ 平面or曲面衝突角度 減肉係数 酸化皮膜厚さ 比較値(SUS316で1)材料密度 酸化皮膜破壊ひずみ引張強さ 衝突面積ポアソン比 疲労特性液滴径 液滴密度 液中音速 衝突速度 衝突角度K| shc pad減肉材料密度 弾性係数 ポアソン比 破壊靭性bめ]m““:減肉速度 (kg/h]|R.S.= 3減肉体積/衝突液滴総体積n:潜伏期間 [個]10:減肉率 [kg/個]In:潜伏期間 [個] Q:減肉率 [m/個]求める値一特徴設計向きだが、 現象によっては適用困難 Im's (1-x)F.で液滴量を評価 液滴径を用いない 潜伏期間を求めない試験データの整理 ジェットと液滴を包含 衝突液滴総体積を用いる 液滴径を用いる 潜伏期間を求める試験データの整理 減肉は疲労破壊でモデル化 衝突液滴個数を用いる 液滴径を用いる。 潜伏期間を求める流動解析と構造解析を用いて評価 液滴発生評価が確立していない 衝突液滴個数を用いる 液滴径を用いる」 潜伏期間が求まるHeymann 則では材料の影響を S, というパラメータとををリし、規準材(SUS316)の場合を1として、他の材料の 値を与えているが、これも当該文献にない任意の評価 対象材料について適用するのは困難である。 - Springer 則3は密度や引張強さ、ポアソン比等、任 意の評価対象材料に関して入手しやすいパラメータを 用いており、これら3則の中では使いやすいモデルを 考えられる。しかし、ラウンドロビン試験で取り上げ られていない材料や衝突回数範囲への拡張が可能かど うかは検討の必要がある。また、上記3則はいずれも経験則や試験則であり、 流動側詳細解析により得られた液滴の液滴径、衝突速 度、衝突角度を入力パラメータとするのが妥当かどう かについても検討の必要がある。以上のことから、本研究では、流動側詳細解析より 得られるパラメータを入力とする減肉評価の部分を弾 塑性破壊解析に置き換えることで、精度の向上を図る。2.2 微小スケール破壊解析 ・ ここでは、微小スケール破壊解析の概念について説明する。 * 本解析には、汎用弾塑性構造解析コードである ABAQUS を用いた。解析自体は弾塑性解析であり、荷重 ステップごとに塑性変形・塑性ひずみが残るため、累 積損傷現象を模擬することができる。 Fig. -1 に示すよ うに、不連続境界での結合力を節点の多点拘束により 模擬している。402非常に弱いバネ連続体き裂結合力8059非常に弱いバネ-------ーーーーーーーー連続体き裂合力衝撃圧[MPa]Fig.-1 微小スケール破壊解析モデルの概念10001.0E+041.0E+051.0E+06 1.0E+07 衝突回数[回]Fig. -3 外挿図荷重ステップごとに各結合点でのJ積分を計算し、 この値が破損クライテリアを越えた時点で、多点拘束 を書き換えて節点結合を解除する。これにより、微小 連続体の節点結合がすべて外れ、周囲から切り離され た場合、弱いバネによって系外へと排出することで剥 離を模擬する。* Fig. -4 に示すように、液滴径 120 | 材表面に垂直(= 90°)に衝突する 微小破壊モデルの表面 4 要素に対し、 撃圧に相当する表面圧力を、衝突速月 められる衝突時間で負荷する動解析を 程は静解析とし、負荷過程と除荷過 し、衝突回数が 5000回に達するか、 10MTさん回の地点に世古ILL3.液滴衝撃エロージョン解析ここでは、上記微小スケール破壊解析モデルを用い 荷重ステップごとに各結合点でのJ積分を計算し、 この値が破損クライテリアを越えた時点で、多点拘束 を書き換えて節点結合を解除する。これにより、微小 連続体の節点結合がすべて外れ、周囲から切り離され た場合、弱いバネによって系外へと排出することで剥 離を模擬する。ここでは、上記微小スケール破壊解析モデルを用い た液滴衝撃エロージョン解析を試みた。 3.1 解析条件本解析の比較対照として、Fig-2 に示す材料力学ハ ンドブック所載の試験データを用いた。衝突速度と衝撃圧の関係は水撃とのアナロジーによ り以下の式で求められる(Springer 則の項も参照)。この関係から Fig. -2 の縦軸を衝撃圧に換算し、外挿 したグラフを Fig.-3 に示す。 Fig. -3 から、約 3000回 の衝突で破損が生じる衝撃圧を求めると、500[MPa]程 度となる。 ンドブックリ所載の試験データを用いた。 - 衝突速度と衝撃圧の関係は水撃とのアナロジーによ り以下の式で求められる(Springer 則の項も参照)。120kmJL材料表面P = P,C,V cos0-4Fig. -4 液滴衝突概念図この関係から Fig. -2 の縦軸を衝撃圧に換算し、外挿 したグラフを Fig. -3 に示す。 Fig. -3 から、約 3000回 の衝突で破損が生じる衝撃圧を求めると、500[MPa]程 度となる。150。AAA衝突速度 [m/s]・純鉄1純鉄2 A アルミ1アルミ2 o軟鋼13.2 解析結果 | 次頁 Fig. -5 に各J積分計算点におけるJ積分値の 変化を示す(図の1区画は4要素で構成されている)。 図中、繰り返し衝突解析によって破壊クライテリアに 達した位置の数字は太字下線付きで示してある。J積分値は上辺に衝撃圧を受ける2つの要素におい て高い値を示し、衝突回数 3798 回(当初予想の 3000 回より+27%の衝突回数)でJ積分≧1/2×JIcのクラ イテリアに達した。第一層にあるが、直接衝撃圧を受 けない要素においては、点 1-1 (1) を除いては発生する J積分値は非常に低い値となっている。100■軟鋼250 1.0E+06100000001000000000100000000001.0E+08 1 衝突回数 [回]Fig.2 衝突回数と衝突速度の関係150・純鉄1 ●純鉄2100Ako0000MOTムアルミ1 ム アルミ2o軟鋼1■軟鋼25010000001000000001000000000101.0E+08, 衝突回数回]・純鉄1純鉄2アルミ1 ・アルミ2 ロ軟鋼1 ■軟鋼2 - - 純鉄(外挿) ー・ーアルミ(外市)・軟鋼(外挿)00 ト0 1.0E+03 1.0E+041 .0E+05 1.0E+061.0E+071.0E+08 1.0E+09 1.0E+10 | * Fig. -4 に示すように、液滴径 120 [um] の液滴が部」 材表面に垂直(B=90°)に衝突する場合を仮定した。 微小破壊モデルの表面 4 要素に対し、500 [MPa]の衝 撃圧に相当する表面圧力を、衝突速度と液滴径から求 められる衝突時間で負荷する動解析を行った。除荷過 程は静解析とし、負荷過程と除荷過程を1回の衝突と」 し、衝突回数が 5000回に達するか、剥離クライテリア 1/2×Jic(軟鋼の破壊靭性値 Jacとして 12 [kPa・m] を 使用)に到達するまでの解析を実施した。 値を示し、衝突回数 3798 回(当初予想の 3000 +27%の衝突回数)でJ積分≧1/2×Jacのクラ アに達した。第一層にあるが、直接衝撃圧を受 要素においては、点 1-1 (1)を除いては発生する - 403 -また、代表的な衝突回数における変形及び応力コン ター図を Fig. -6 に示す。これによると、衝突回数が増 えるに従い、部材表面が微小変形を起こしているのが 判る。 - 以上より、この条件で多数回の衝突解析を実施した 場合、3798 回の液滴衝突で表面の2要素が剥離すると いう結果となった。4.結言 1 汎用弾塑性構造解析コード ABAQUS を用いた微小破 壊解析モデルの、エロージョン解析への適用性を検討 した。 ・文献データと比較し、J積分値を用いた破壊クライ テリアを2通りに変化させて液滴衝撃を模擬した衝 撃圧を繰り返し与えた解析により、損傷が生じるま での衝突回数において、文献データ外挿値と比較し て+27%程度の誤差で予測することができた。 ・表面変位の分布では、要素の方向性依存によるもの と考えられる問題が生じた。要素形状の選択も含め た改良を検討する。荷重範囲60km材料表面X-1 (2) 1-2(-3 (2) 1-4 (230km1-1 (101/2 (2) 1-3/ 1-4 (2)1-1(1) 1-1(2) 1-2(1) 1-3(2) 1-4(1)(b) 372回J積分/JIC1-2(2) 1-4(2)1-3(1)10_500100030001500 2000 2500衝突回数、3500 / 14000 | 3798回(c) 3786回 Fig.-6 変形形状の例Fig.-5 解析結果現状では、実用的な計算時間で評価可能な衝突回数 は 10'回程度が上限であるが、実機減少では 107~10* 回程度の衝突回数を評価する必要があるため、計算 の加速を検討する。参考文献[1] 発電用設備規格 配管減肉管理に関する規格(2005年版)(増訂版)、JSME、2005. [2] Heymann, Frank J., CONCLUSIONS FROM THE ASTMINTERLABORATORY TEST PROGRAM WITH LIQUID IMPACT EROSION FACILITY, Proc 5th Int. Conf. Erosion byLiquid and Solid Impact, 1979, 20-1 to 20-10. [3] Springer, George S., Erosion by Liquid Impact,Scripta Publishing Co., 1976. [4] 材料力学ハンドブック、日本機械学会著、丸善。荷重範囲(a) 5回(c) 3786回 Fig.-6 変形形状の例404“ “?微小スケール破壊解析による液滴衝撃エロージョンの評価“ “北島 靖己,Yasumi KITAJIMA,萩原 剛,Tsuyoshi HAGIWARA,遠藤 哲央,Tetsuo ENDO,神保 雅一,Masakazu JIMBO
原子力プラント等の施設では、液滴が配管の内壁や タービン等の機器に衝突することで発生する液滴衝撃 エロージョンによる減肉が問題となる。しかしながら、 その減肉現象を精度よく評価する手法はなく、定期検 査時に目視検査や非破壊検査等を実施しているものの、 検査物量が多いことから、高コストの一因となってい る。 ・ こうした問題に対して、検査を実施する箇所を絞り 込み、検査物量の低減を図るためには、減肉事象の詳 細メカニズムの解明とメカニズムに基づくモデルによ る詳細評価手法の確立が不可欠である。こうしたメカニズムに基づくモデルによる詳細評価 手法として、配管壁や機器への衝突速度、衝突角度等 を定量的に求めることのできる流動数値解析による液 滴飛散評価手法と、その結果に基づく微小破壊解析に よる減肉量評価手法を組み合わせた評価手法を検討し た。本研究では後者について述べる。
2. 液滴衝撃エロージョンの減肉評価手法 2.1 既存評価法の検討 1 日本機械学会の『発電用設備規格 配管減肉管理に 関する規格』リでは、液滴衝撃エロージョンによる減 肉評価式として、Heymann による評価式2 と Sanchez による評価式を取り上げている。また、これ以外にも Heymann 則同様に複数の試験結果から評価式を提案し ているものに、Springer によるものがある。ここで は、これらの評価手法について検討する。(1) peA ここで、Cは減肉係数、pは液体の密度、m は蒸気 の質量流量、xは蒸気のクオリティ、V は衝突速度、F。 はエントレインメント率、F,はヒッティング係数、p は酸化皮膜硬さ、e は酸化皮膜の破壊に必要なひずみ、 A.は液滴が衝突する領域の面積としている。個々の液 滴を考慮せず、蒸気流量、クオリティ、エントレイン メント率から蒸気中の液滴量を求め、さらに形状ごと に異なるヒッティング係数をかけた分の液滴が衝突す るものとしている。Heymann 則はラウンドロビン試験のデータをまとめ たものであり、減肉体積と総衝突液滴体積の比である R, を以下の式により求める。40116.65log(R)= 4.8log(V) - log(NER)-16.65+ 0.67 log(d) + 0.57 J -0.22K (2) ここで、V は衝突速度、NERはエロージョン耐性であ り、材質の影響を基準材との比で求めたものである。d は液滴径、J=0(液滴衝撃の場合)orl(ジェットエ ロージョンの場合)、K=(衝突面が平面の場合) or 1(衝突面が曲面の場合)である。 - Springer則も複数の試験データをまとめたものであ り、こちらは液滴衝撃エロージョンを疲労破壊とのア ナロジーで定式化している。 a = 73.3x pdf(1-2v)p, C.V cos 0) *”) (3) | 406-1)ここで、p.、V、a、bはそれぞれ部材の密度、ポアソン比、引張強さ、疲労特性パラメータであり、d、p, 、 C、V、0はそれぞれ液滴の径、密度、液中での音速、 衝突速度、衝突角度である。 * 上記3評価則(及び破壊力学解析を用いた場合の評価法)の比較を Table-1 に示す。 * Sanchez 則では液滴径による影響を考慮せず、減肉 速度のみを求めて、潜伏期間を評価しない。また、材 料の影響として、酸化皮膜厚さや酸化皮膜破壊ひずみ 等、特殊な材料パラメータを用いており、任意の評価 対象材料について適用するのは困難である。a = 73.3 x 3.3J 1 - 2v)P, C,V cos | |・1406-1) Sこで、p、V、a、bはそれぞれ部材の密度、ポア解析手法n[個]入射個数n[個]発生 - 飛散Table-1 減肉評価法の比較 Sanchez則 Heymann)Springer則 蒸氣質量流量 m'rol [kg/h] (衝突液滴総体積)衝突個数 クオリティ(1-x) ジェットor液滴 エントレインメント率 F.. 液滴径液滴径 液滴密度液滴密度液中音速 散衝突速度衝突速度V (4.8 logV)衝突速度 ヒッティングファクタ 平面or曲面衝突角度 減肉係数 酸化皮膜厚さ 比較値(SUS316で1)材料密度 酸化皮膜破壊ひずみ引張強さ 衝突面積ポアソン比 疲労特性液滴径 液滴密度 液中音速 衝突速度 衝突角度K| shc pad減肉材料密度 弾性係数 ポアソン比 破壊靭性bめ]m““:減肉速度 (kg/h]|R.S.= 3減肉体積/衝突液滴総体積n:潜伏期間 [個]10:減肉率 [kg/個]In:潜伏期間 [個] Q:減肉率 [m/個]求める値一特徴設計向きだが、 現象によっては適用困難 Im's (1-x)F.で液滴量を評価 液滴径を用いない 潜伏期間を求めない試験データの整理 ジェットと液滴を包含 衝突液滴総体積を用いる 液滴径を用いる 潜伏期間を求める試験データの整理 減肉は疲労破壊でモデル化 衝突液滴個数を用いる 液滴径を用いる。 潜伏期間を求める流動解析と構造解析を用いて評価 液滴発生評価が確立していない 衝突液滴個数を用いる 液滴径を用いる」 潜伏期間が求まるHeymann 則では材料の影響を S, というパラメータとををリし、規準材(SUS316)の場合を1として、他の材料の 値を与えているが、これも当該文献にない任意の評価 対象材料について適用するのは困難である。 - Springer 則3は密度や引張強さ、ポアソン比等、任 意の評価対象材料に関して入手しやすいパラメータを 用いており、これら3則の中では使いやすいモデルを 考えられる。しかし、ラウンドロビン試験で取り上げ られていない材料や衝突回数範囲への拡張が可能かど うかは検討の必要がある。また、上記3則はいずれも経験則や試験則であり、 流動側詳細解析により得られた液滴の液滴径、衝突速 度、衝突角度を入力パラメータとするのが妥当かどう かについても検討の必要がある。以上のことから、本研究では、流動側詳細解析より 得られるパラメータを入力とする減肉評価の部分を弾 塑性破壊解析に置き換えることで、精度の向上を図る。2.2 微小スケール破壊解析 ・ ここでは、微小スケール破壊解析の概念について説明する。 * 本解析には、汎用弾塑性構造解析コードである ABAQUS を用いた。解析自体は弾塑性解析であり、荷重 ステップごとに塑性変形・塑性ひずみが残るため、累 積損傷現象を模擬することができる。 Fig. -1 に示すよ うに、不連続境界での結合力を節点の多点拘束により 模擬している。402非常に弱いバネ連続体き裂結合力8059非常に弱いバネ-------ーーーーーーーー連続体き裂合力衝撃圧[MPa]Fig.-1 微小スケール破壊解析モデルの概念10001.0E+041.0E+051.0E+06 1.0E+07 衝突回数[回]Fig. -3 外挿図荷重ステップごとに各結合点でのJ積分を計算し、 この値が破損クライテリアを越えた時点で、多点拘束 を書き換えて節点結合を解除する。これにより、微小 連続体の節点結合がすべて外れ、周囲から切り離され た場合、弱いバネによって系外へと排出することで剥 離を模擬する。* Fig. -4 に示すように、液滴径 120 | 材表面に垂直(= 90°)に衝突する 微小破壊モデルの表面 4 要素に対し、 撃圧に相当する表面圧力を、衝突速月 められる衝突時間で負荷する動解析を 程は静解析とし、負荷過程と除荷過 し、衝突回数が 5000回に達するか、 10MTさん回の地点に世古ILL3.液滴衝撃エロージョン解析ここでは、上記微小スケール破壊解析モデルを用い 荷重ステップごとに各結合点でのJ積分を計算し、 この値が破損クライテリアを越えた時点で、多点拘束 を書き換えて節点結合を解除する。これにより、微小 連続体の節点結合がすべて外れ、周囲から切り離され た場合、弱いバネによって系外へと排出することで剥 離を模擬する。ここでは、上記微小スケール破壊解析モデルを用い た液滴衝撃エロージョン解析を試みた。 3.1 解析条件本解析の比較対照として、Fig-2 に示す材料力学ハ ンドブック所載の試験データを用いた。衝突速度と衝撃圧の関係は水撃とのアナロジーによ り以下の式で求められる(Springer 則の項も参照)。この関係から Fig. -2 の縦軸を衝撃圧に換算し、外挿 したグラフを Fig.-3 に示す。 Fig. -3 から、約 3000回 の衝突で破損が生じる衝撃圧を求めると、500[MPa]程 度となる。 ンドブックリ所載の試験データを用いた。 - 衝突速度と衝撃圧の関係は水撃とのアナロジーによ り以下の式で求められる(Springer 則の項も参照)。120kmJL材料表面P = P,C,V cos0-4Fig. -4 液滴衝突概念図この関係から Fig. -2 の縦軸を衝撃圧に換算し、外挿 したグラフを Fig. -3 に示す。 Fig. -3 から、約 3000回 の衝突で破損が生じる衝撃圧を求めると、500[MPa]程 度となる。150。AAA衝突速度 [m/s]・純鉄1純鉄2 A アルミ1アルミ2 o軟鋼13.2 解析結果 | 次頁 Fig. -5 に各J積分計算点におけるJ積分値の 変化を示す(図の1区画は4要素で構成されている)。 図中、繰り返し衝突解析によって破壊クライテリアに 達した位置の数字は太字下線付きで示してある。J積分値は上辺に衝撃圧を受ける2つの要素におい て高い値を示し、衝突回数 3798 回(当初予想の 3000 回より+27%の衝突回数)でJ積分≧1/2×JIcのクラ イテリアに達した。第一層にあるが、直接衝撃圧を受 けない要素においては、点 1-1 (1) を除いては発生する J積分値は非常に低い値となっている。100■軟鋼250 1.0E+06100000001000000000100000000001.0E+08 1 衝突回数 [回]Fig.2 衝突回数と衝突速度の関係150・純鉄1 ●純鉄2100Ako0000MOTムアルミ1 ム アルミ2o軟鋼1■軟鋼25010000001000000001000000000101.0E+08, 衝突回数回]・純鉄1純鉄2アルミ1 ・アルミ2 ロ軟鋼1 ■軟鋼2 - - 純鉄(外挿) ー・ーアルミ(外市)・軟鋼(外挿)00 ト0 1.0E+03 1.0E+041 .0E+05 1.0E+061.0E+071.0E+08 1.0E+09 1.0E+10 | * Fig. -4 に示すように、液滴径 120 [um] の液滴が部」 材表面に垂直(B=90°)に衝突する場合を仮定した。 微小破壊モデルの表面 4 要素に対し、500 [MPa]の衝 撃圧に相当する表面圧力を、衝突速度と液滴径から求 められる衝突時間で負荷する動解析を行った。除荷過 程は静解析とし、負荷過程と除荷過程を1回の衝突と」 し、衝突回数が 5000回に達するか、剥離クライテリア 1/2×Jic(軟鋼の破壊靭性値 Jacとして 12 [kPa・m] を 使用)に到達するまでの解析を実施した。 値を示し、衝突回数 3798 回(当初予想の 3000 +27%の衝突回数)でJ積分≧1/2×Jacのクラ アに達した。第一層にあるが、直接衝撃圧を受 要素においては、点 1-1 (1)を除いては発生する - 403 -また、代表的な衝突回数における変形及び応力コン ター図を Fig. -6 に示す。これによると、衝突回数が増 えるに従い、部材表面が微小変形を起こしているのが 判る。 - 以上より、この条件で多数回の衝突解析を実施した 場合、3798 回の液滴衝突で表面の2要素が剥離すると いう結果となった。4.結言 1 汎用弾塑性構造解析コード ABAQUS を用いた微小破 壊解析モデルの、エロージョン解析への適用性を検討 した。 ・文献データと比較し、J積分値を用いた破壊クライ テリアを2通りに変化させて液滴衝撃を模擬した衝 撃圧を繰り返し与えた解析により、損傷が生じるま での衝突回数において、文献データ外挿値と比較し て+27%程度の誤差で予測することができた。 ・表面変位の分布では、要素の方向性依存によるもの と考えられる問題が生じた。要素形状の選択も含め た改良を検討する。荷重範囲60km材料表面X-1 (2) 1-2(-3 (2) 1-4 (230km1-1 (101/2 (2) 1-3/ 1-4 (2)1-1(1) 1-1(2) 1-2(1) 1-3(2) 1-4(1)(b) 372回J積分/JIC1-2(2) 1-4(2)1-3(1)10_500100030001500 2000 2500衝突回数、3500 / 14000 | 3798回(c) 3786回 Fig.-6 変形形状の例Fig.-5 解析結果現状では、実用的な計算時間で評価可能な衝突回数 は 10'回程度が上限であるが、実機減少では 107~10* 回程度の衝突回数を評価する必要があるため、計算 の加速を検討する。参考文献[1] 発電用設備規格 配管減肉管理に関する規格(2005年版)(増訂版)、JSME、2005. [2] Heymann, Frank J., CONCLUSIONS FROM THE ASTMINTERLABORATORY TEST PROGRAM WITH LIQUID IMPACT EROSION FACILITY, Proc 5th Int. Conf. Erosion byLiquid and Solid Impact, 1979, 20-1 to 20-10. [3] Springer, George S., Erosion by Liquid Impact,Scripta Publishing Co., 1976. [4] 材料力学ハンドブック、日本機械学会著、丸善。荷重範囲(a) 5回(c) 3786回 Fig.-6 変形形状の例404“ “?微小スケール破壊解析による液滴衝撃エロージョンの評価“ “北島 靖己,Yasumi KITAJIMA,萩原 剛,Tsuyoshi HAGIWARA,遠藤 哲央,Tetsuo ENDO,神保 雅一,Masakazu JIMBO