連成解析による気液二相流中構造物の振動・腐食評価手法の開発-4 乱流に起因する質量移行係数の評価

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カテゴリ: 第5回
1. 緒言
配管の破損箇所は、第4低圧給水加熱器から脱気器 へ行く二系統(A・B 系統)ある復水配管のうち、A 系 軽水炉発電プラントにおいて、高温高圧の冷却水が。 統復水配管のオリフィス下流近傍である。概要を以下 構造材などに接すると腐食に係る様々な現象を引き起の図1に示す。(参考文献[1]参照) * 軽水炉発電プラントにおいて、高温高圧の冷却水が 構造材などに接すると腐食に係る様々な現象を引き起 こす。本研究は腐食関連の事象のなかでも特に流れ加 られている PWR 給水系配管オリフィス部周辺での腐 食環境の評価を目的に、配管内冷却水の 3 次元流動解 析を行った。さらに、FACとの強い相関が報告されて いる配管表面近傍での乱流エネルギー分布を求め、相 関式を用いて配管壁面からの物質移動係数の算出を試evaluate a turbulence energy and a mass transfer coefficient at pipe surface whichfficient空に配管の破損箇所は、第4低圧給水加熱器から脱気器 1. 緒言へ行く二系統(A・B 系統)ある復水配管のうち、A 系 * 軽水炉発電プラントにおいて、高温高圧の冷却水が統復水配管のオリフィス下流近傍である。概要を以下 構造材などに接すると腐食に係る様々な現象を引き起の図1に示す。(参考文献[1]参照) こす。本研究は腐食関連の事象のなかでも特に流れ加 速型腐食(FAC)に注目し、FAC の発生部位として知美浜発電所3号機二次系配管 られている PWR 給水系配管オリフィス部周辺での腐 オリフィス周辺の様子。・流体速度 :u%3D 2.2m/s 食環境の評価を目的に、配管内冷却水の 3 次元流動解・管の直径 :D%3D0.54m 析を行った。さらに、FAC との強い相関が報告されて ・オリフィス径:d%3D0.34m・水の物性値 いる配管表面近傍での乱流エネルギー分布を求め、相(0.93MPa、140°C) 関式を用いて配管壁面からの物質移動係数の算出を試密度 p(=926.2kg/m2)動粘性係数 平成16年8月9日に発生した関西電力株式会社美浜(≒0.2×10-6m/s) 発電所3号機の二次系配管の破損事故を念頭に、破損 箇所となったオリフィス周辺部の形状および冷却水物破損?所 性値を模擬するように解析条件を設定した。
2. 評価手法 2.1 解析手順 軽水炉発電プラント全体に亘って3次元流動解析を
美浜発電所3号機二次系配管 Orifice オリフィス周辺の様子。 ・流体速度 :u%3D 2.2m/s ・管の直径 :D%3D0.54m ・オリフィス径:d=30.34m ・水の物性値 (0.93MPa、140°C)密度 p(=926.2kg/m2) 動粘性係数 v(≒0.2×10-6m/s)破損箇所図1 解析対象- 414 -行うことは計算コストが膨大になり現実的ではない。図2に示すように、システム全体を RELAPS などの 1 次元流動解析コードで計算し、注目する箇所につい て、エネルギー総合工学研究所原子力工学センター所 有の3次元流動解析コード PLASHY を用いた 2,3 次元 流動解析を行う。局所計算III 1 3次元 k-EL局所計算3次元 k- ?流速、温度・乱流エネルギー ・物質移行係数局所計算し 軸対称2次元k- ?RELAP5によるシステム全体の 流速、温度)__境界条件抽出1次元計算図2 1~3次元流動計算コードを用いた計算手順 2.2 乱流モデル注目している系では濃度境界層厚さは約20 μmと見 積もれる。濃度境界層約 20 μm の物質移行を高精度に 解析するためには乱流モデルに、LES を用いる必要が あるが、LES を用いた計算は計算コストが膨大になる。 実用的な運用を目指すには k-モデルを用いた解析が 望ましいが、格子幅に制限があり十分な細かさでの解 析ができない。本解析の条件で k- モデルを用いた場 合には壁から最近接格子点までの距離は~mm 程度に なる。更に壁に接近した位置での速度は壁関数などを 用いて求めることになる。 2.3 質量移行係数 - 質量移行係数 hmは、スタントン数 St と流速 U との 関係式 h = St.U(1) を用いて求める。スタントン数 St は、LES モデルを用 いた解析では Deissler の相関則(参考文献[3,41参照)m = St = 0.079 SSc -3/4でスタントン数をモデル化し、k-E モデルを用いた解析では、Ichikawa の方法(参考文献[5]参照)(3) + P/Spr, を用いてスタントン数をモデル化した。ただし、St%3DS%3DPr1900/01/13P%3D9.01Pr = 0.9 Pr = ““ = 112 (140°C H20) US :摩擦速度(m/s) Sc_ : シュミット 数(-): プラントル 数(-) : 乱流プラントル数 (-) : 動粘性係数(m2/s) : 温度拡散率 (m2/s):粘性係数 (Pa・s)」 Ti,j :せん断応力 でW_ :壁面におけるTij 2.4 LES モデルとk-E モデルによる計算の比較k-モデルを用いた解析の有効性を確かめるためオ リフィス周辺直管部において LES を用いた解析結果と 比較し、2 つのモデル間の差を見た。LES モデルを用 いた計算から得られた約 8.0 秒間の非定常解を時間平 均したものと k- モデルを用いた計算で求めた定常解 と比較した。 - 再付着点の位置は LES モデルでオリフィス後方 1.08m の位置にあり、k-cモデルでは 0.9m であった。 質量移行係数を比較した結果、最大値が LES で 3.346 × 10°m/s 、k- E で 3.43×102 m/s であった(約 2.5%の 差)。また、平均値は LES で 1.43 × 102 [m/s]、k- で 1.575 × 10 [m/s] (約 9.2%の差)であり、オリフィス下 流における物質移行係数の解析では k- Eモデルが十分 実用的であるといえた。 3. オリフィス周辺の3次元流動解析前節の結果を受け k-モデルを用いた流動解析を行 った。図3に示す体系を用いて表1に示す解析条件で 3次元流動解析を行った。オリフィス流入時に流れの3 次元構造を持たせるためにオリフィス上流に曲り管を 配し、さらに流入時に旋回成分(主流成分の 25%の大 きさで時計回りの旋回成分)を与えた。1901/02/18表1 主な解析条件 格子分割| 53×53×269 (3 次元 BFC) | | 壁面近接格子点距離 0.001m 入口 流入速度(主流成分) | u=2.2m/s 乱流エネルギー | k=0.0726m2/s 乱流エネルギー散逸率 | c=0.08522m/s2 出口自由流出 壁面速度?数則 乱流モデルk-Eモデル(※) (※) k-E モデル係数 | C |C2 | CGIClok la clar | | 1.44 | 1.92 | 0.0 | 0.09 | 1.3 | 1.0 | 1.0 |1470 |1913/09/081913/09/081904/01/09ople/1913/09/08オリフィス部分曲り管断面オリフィス図5 計算体系図6および図7に、PLASHY で求められたオリフィ ス下流部での 3 次元質量移行係数の分布を示す。本図 ではオリフィス下流域での再循環領域で高い乱流エネ ルギーが発生し、質量移行係数が大きくなるため、局 所的な流動条件により FAC が加速される。謝辞本発表は経済産業省の提案公募事業「革新的実用原子 力技術開発費補助事業」“連成解析による気液二相流中構造部物の振動・腐食評価手法の開発”において開発 した平成19年度成果の一部である。30度3.5E-03 3.0E-0345度再付着位置090度0.0025オリフィス位置2.00231481481481E-03135度壁近傍の乱流エネルギー(m2/s2)180度0乱 1.0E-03 商 5.0E-04| 壁 0.0E+00入り口からの距離(m) 図6 オリフィス下流 3次元乱流エネルギー分布3.49537037037037E-03再付着位置0オリフィス位置0.00252.00231481481481E-03物質移行係数(m/s)1.50462962962963E-039.9537037037037E-04\5,0E-040入り口からの距離(m) 図7 オリフィス下流3次元質量移行係数分布参考文献[1] 「美浜発電所3号機二次系配管破損調査(流況解析)報告書」 平成16年 12月 13 日 (独)原子力安全基盤機構 日本原子力研究所 [2] 「腐食センターニュース No.032」 (2004 年 12月1日) [3] R. G. Deissler, ““Analysis of Turbulent Heat Transfer,Mass Transfer, and Friction in Smooth Tubes at High Prandtl and Schmidt Number““, NACA Reports, 1210,1955 [4] K. Asano, ““Mass transfer. From fundamentals to modernindustrial applications““, WILEY-VCH Verlag GmbH &Co. KGaA, 2006 [5] N.Ichikawa. et.al. ““Precise Evaluation of CorrosionEnvironments of Structural Materials under Complex Water Flow Condition, (I) Estimation of Corrosion Potentials in Reactor Pressure Vessel Bottom of BWRs““, Journal of NUCLEAR SCIENCE and TECHNOLOGY, Vol. 40, No. 8, p. 583-590 (August 200)1901/02/19“ “連成解析による気液二相流中構造物の振動・腐食評価手法の開発-4乱流に起因する質量移行係数の評価“ “上原 靖,Yasushi UEHARA,内田 俊介,Shunsuke UCHIDA,内藤 正則,Masanori NAITOH,白川 典幸,Noriyuki SHIRAKAWA,王 盛,Sheng WANG
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