PWMを用いたセンサネットワークによるモニタリングシステムの検討
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カテゴリ: 第5回
1.緒言
また、大規模・複雑系システムの実装に際し、全体 原子力発電プラントにおいては現在、原子炉の稼働にセンサのネットワークを配線することは手間やコス 率と信頼性を高める観点から、保全手法としてこれまト面でのデメリットが考えられるだけでなく、状態監 での時間計画保全 TBM(Time Based Management)から視系が複雑化すると状態監視系が新たな故障を誘発す 新たな保全手法として状態監視保全、CBM(Condition_ることになりかね、これは安全面からも経済面からも Based Management)が提案され、CBM による保全手法 好ましくない。 の研究・開発が国内外で活発に行われている。しかし、 本研究では原子炉の状態監視の信頼性に焦点を これまで監視対象となるシステムの信頼性についてはあて、自己修復機能を付加しセンサネットワークシ 様々な議論され、研究対象とされてきたが、状態監視ステムを開発するとともに、ネットワークの簡素化 をするセンサ自体の信頼性を含めた状態監視技術の信を両立させることを目的とする。 頼性については活発に議論されてきたとは言えない。2. システム設計 安全性を考えた時にはセンサによる確実な故障検知が 要求され、原子炉の稼働率向上を考えた場合、故障の2-1. 自己修復機能 誤検知は大きな問題となるため確実なセンシングが要 本来、人工物が自身の故障箇所を完全に修復する自 求される。つまり”False negative““, ““False Positive““ 己修復機能を持つことが望ましいが、人工物が生命体 のどちらにも状態監視の信頼性が安全面、コスト面ののように増幅機能を持たない以上、そのようなシステ 両面から非常に重要になってくる。多数のセンサによムは現実的ではない。そこで本研究で提案するシステ って構成されるセンサネットワークにおいては、セン ムでは故障発生によるシステム全体への影響を最小限 サの故障がときにセンサネットワーク全体の致命的な にとどめ、全体としての機能を保持するものとする。 故障に発展する。しかし、原理的に故障を伴わない人状態監視センサはそれぞれ故障が発生するという前 工物は実現不可能なので、本研究では、センサの故障 提の元、各ユニットを監視するセンサをある一定の間 の発生を前提とした上で、故障に耐性のあるセンサネ 隔で複数設置し、ローカルなネットワークを組む。構 ットワークを実現することを考える。システムが故障成されたンサネットワークにおいて、各々のセンサが に耐性をもつためには、センサに故障が発生してもシ周囲のセンサとの整合性を確認することによって故障 ステム全体の機能を保持し続けることができる「自己 したセンサを検知し、故障箇所をネットワークから断線し、正常に動作しているセンサで補完することによってセンサネットワークの保全を実現できると考えた。 自己修復を実現するにあたって故障検知は最も重要
個別IDを持ったパルストレインをトークン・リング 型のネットワークにブロードキャストすることによっ て一つの信号線を介して、各センサの情報が他のノー ドに送られ、効率よくセンサネットワークを形成する ことが可能になる。sensorsensorsensorES sensorsensorsensor図2.リング型ネットワーク図2.リング型ネットワーク散型情報処理システム インによって伝送されたセンシング値を各 比較させることによって、2-2.で提唱した方 センサの整合性を確かめる。各センサモジ 合性を確認するための独立した情報処理部2-4. 自律分散型情報処理システム パルストレインによって伝送されたセンシング値を各 センサ間で比較させることによって、2-2.で提唱した方 法を用い、センサの整合性を確かめる。各センサモジ ュールは整合性を確認するための独立した情報処理部 (FPGA, ASIC)を持ち、自律分散型情報処理を行う[4][5]。各情報処理部は、近傍のセンサの信頼度を定量的に 判断し、信頼度の低いセンサをネットワークから排除 する。これによってネットワークの健全性が保たれ、 センサ故障に対して、耐性のあるシステムの実現が可 能となる。3.結言1) センサネットワークによる状態監視は CBM を実現する上で有効な手段と考える。 2) トラブルの誤検知である、False Negative, FalsePositive の両方が致命的な問題に繋がる原子炉の状 - 態監視において、センサの故障発生を前提としたシステムの設計が必要である。 3) 自己修復型有線ネットワークと無線ネットワーク を組み合わせることによって現状では実現が困難 であったタービン等の動的部分にも信頼性のある 状態監視システムを実装できると考える。 4) センサネットワークを形成する上で、センシング値 - 449をパルス幅情報に変換し、さらにノード識別情報を 持ったパルストレインにすることでセンサネット ワークを単一線を用いたリング型ネットワークに することが可能になる。 S) 状態監視の信頼性向上のためにモニタリングノー ドを増やすと同時に、ネットワークの簡易化すると いう相反する要素をパルス幅変調を用いたセンサ ネットワークによって実現できると考える。謝辞本研究は文部科学省科学研究費「グローバル COE プ ログラム 世界を先導する原子力教育研究イニシアチ ブ」事業に基づく支援を受けた調査研究成果の一部で ある。設計事例に挙げたチップ試作はいずれも東京大学大 規模集積システム設計教育研究センターを通し、 Cadence 社、Synopsys 社、Rohm 社 の協力で行われた ものである。本研究を支援いただいた上記の機関、団 体に深く感謝申し上げる。参考文献[1] 西田豊明: 「定性推論の諸相」,1993. [2] Y. Shimomura, S. Tanigawa , Y. Umeda, and T.Tomiyama, Development of Self-Maintenance Photocopiers. In AI Magagine, The American Association for Artificial Intelligence(AAAI), Vol.16,pp.41-53, No.4, 1995. [3] 坪井泰憲,下村芳樹: 「自己修復モジュールのための概念設計手法」,2004. [4] T.Fujiwara, K.Komatsu, H.Takahashi, M.Nakazawa,Y.Shimomura, ““Distributed Processing Sensor Network Based on Reliability Index and its Simulation““, WSEAS TRANSACTIONS on CIRCUITS and SYSTEMS, Issue6, Volume4,602-609 (2005) [5] 信頼度を導入したリコンフィギュラブル相互診断型センサネットワーク,電子情報通信学会リコン フィギャラブルシステム研究会予稿集, 2005450“ “PWM を用いたセンサネットワークによるモニタリングシステムの検討 “ “藤原 健,Takeshi FUJIWARA,高橋 浩之,Hiroyuki TAKAHASHI
また、大規模・複雑系システムの実装に際し、全体 原子力発電プラントにおいては現在、原子炉の稼働にセンサのネットワークを配線することは手間やコス 率と信頼性を高める観点から、保全手法としてこれまト面でのデメリットが考えられるだけでなく、状態監 での時間計画保全 TBM(Time Based Management)から視系が複雑化すると状態監視系が新たな故障を誘発す 新たな保全手法として状態監視保全、CBM(Condition_ることになりかね、これは安全面からも経済面からも Based Management)が提案され、CBM による保全手法 好ましくない。 の研究・開発が国内外で活発に行われている。しかし、 本研究では原子炉の状態監視の信頼性に焦点を これまで監視対象となるシステムの信頼性についてはあて、自己修復機能を付加しセンサネットワークシ 様々な議論され、研究対象とされてきたが、状態監視ステムを開発するとともに、ネットワークの簡素化 をするセンサ自体の信頼性を含めた状態監視技術の信を両立させることを目的とする。 頼性については活発に議論されてきたとは言えない。2. システム設計 安全性を考えた時にはセンサによる確実な故障検知が 要求され、原子炉の稼働率向上を考えた場合、故障の2-1. 自己修復機能 誤検知は大きな問題となるため確実なセンシングが要 本来、人工物が自身の故障箇所を完全に修復する自 求される。つまり”False negative““, ““False Positive““ 己修復機能を持つことが望ましいが、人工物が生命体 のどちらにも状態監視の信頼性が安全面、コスト面ののように増幅機能を持たない以上、そのようなシステ 両面から非常に重要になってくる。多数のセンサによムは現実的ではない。そこで本研究で提案するシステ って構成されるセンサネットワークにおいては、セン ムでは故障発生によるシステム全体への影響を最小限 サの故障がときにセンサネットワーク全体の致命的な にとどめ、全体としての機能を保持するものとする。 故障に発展する。しかし、原理的に故障を伴わない人状態監視センサはそれぞれ故障が発生するという前 工物は実現不可能なので、本研究では、センサの故障 提の元、各ユニットを監視するセンサをある一定の間 の発生を前提とした上で、故障に耐性のあるセンサネ 隔で複数設置し、ローカルなネットワークを組む。構 ットワークを実現することを考える。システムが故障成されたンサネットワークにおいて、各々のセンサが に耐性をもつためには、センサに故障が発生してもシ周囲のセンサとの整合性を確認することによって故障 ステム全体の機能を保持し続けることができる「自己 したセンサを検知し、故障箇所をネットワークから断線し、正常に動作しているセンサで補完することによってセンサネットワークの保全を実現できると考えた。 自己修復を実現するにあたって故障検知は最も重要
個別IDを持ったパルストレインをトークン・リング 型のネットワークにブロードキャストすることによっ て一つの信号線を介して、各センサの情報が他のノー ドに送られ、効率よくセンサネットワークを形成する ことが可能になる。sensorsensorsensorES sensorsensorsensor図2.リング型ネットワーク図2.リング型ネットワーク散型情報処理システム インによって伝送されたセンシング値を各 比較させることによって、2-2.で提唱した方 センサの整合性を確かめる。各センサモジ 合性を確認するための独立した情報処理部2-4. 自律分散型情報処理システム パルストレインによって伝送されたセンシング値を各 センサ間で比較させることによって、2-2.で提唱した方 法を用い、センサの整合性を確かめる。各センサモジ ュールは整合性を確認するための独立した情報処理部 (FPGA, ASIC)を持ち、自律分散型情報処理を行う[4][5]。各情報処理部は、近傍のセンサの信頼度を定量的に 判断し、信頼度の低いセンサをネットワークから排除 する。これによってネットワークの健全性が保たれ、 センサ故障に対して、耐性のあるシステムの実現が可 能となる。3.結言1) センサネットワークによる状態監視は CBM を実現する上で有効な手段と考える。 2) トラブルの誤検知である、False Negative, FalsePositive の両方が致命的な問題に繋がる原子炉の状 - 態監視において、センサの故障発生を前提としたシステムの設計が必要である。 3) 自己修復型有線ネットワークと無線ネットワーク を組み合わせることによって現状では実現が困難 であったタービン等の動的部分にも信頼性のある 状態監視システムを実装できると考える。 4) センサネットワークを形成する上で、センシング値 - 449をパルス幅情報に変換し、さらにノード識別情報を 持ったパルストレインにすることでセンサネット ワークを単一線を用いたリング型ネットワークに することが可能になる。 S) 状態監視の信頼性向上のためにモニタリングノー ドを増やすと同時に、ネットワークの簡易化すると いう相反する要素をパルス幅変調を用いたセンサ ネットワークによって実現できると考える。謝辞本研究は文部科学省科学研究費「グローバル COE プ ログラム 世界を先導する原子力教育研究イニシアチ ブ」事業に基づく支援を受けた調査研究成果の一部で ある。設計事例に挙げたチップ試作はいずれも東京大学大 規模集積システム設計教育研究センターを通し、 Cadence 社、Synopsys 社、Rohm 社 の協力で行われた ものである。本研究を支援いただいた上記の機関、団 体に深く感謝申し上げる。参考文献[1] 西田豊明: 「定性推論の諸相」,1993. [2] Y. Shimomura, S. Tanigawa , Y. Umeda, and T.Tomiyama, Development of Self-Maintenance Photocopiers. In AI Magagine, The American Association for Artificial Intelligence(AAAI), Vol.16,pp.41-53, No.4, 1995. [3] 坪井泰憲,下村芳樹: 「自己修復モジュールのための概念設計手法」,2004. [4] T.Fujiwara, K.Komatsu, H.Takahashi, M.Nakazawa,Y.Shimomura, ““Distributed Processing Sensor Network Based on Reliability Index and its Simulation““, WSEAS TRANSACTIONS on CIRCUITS and SYSTEMS, Issue6, Volume4,602-609 (2005) [5] 信頼度を導入したリコンフィギュラブル相互診断型センサネットワーク,電子情報通信学会リコン フィギャラブルシステム研究会予稿集, 2005450“ “PWM を用いたセンサネットワークによるモニタリングシステムの検討 “ “藤原 健,Takeshi FUJIWARA,高橋 浩之,Hiroyuki TAKAHASHI