オンサイト非破壊検査用可搬型950keV XバンドライナックX線源

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カテゴリ: 第5回
1. 緒言
ライダー用に開発されたXバンドライナック技術の医療応用・産業応用などに期待が高まっている. X バン 原子力・火力発電所の寿命延長に伴い,そのメンテドライナックは小型で従来のX線管よりも高エネルギ ナンスが重要な課題となっている. 原子力発電所ではのX線発生が可能であるため、可搬型非破壊検査装 原子力圧力容器および炉内構造物の亀裂や保温材付配置の適用範囲を大きく広げられると期待されている. 管の減肉検査、石油化学コンビナートでは保温材下の 配管外部腐食検査などには検査に伴う莫大な費用が発
2. 装置概要 生している.
そこで,我々はライナックを使った可搬型X線非破本研究で開発している非破壊検査用可搬型 950 keV 壊検査装置を開発している. ライナックはX線管より 9.4GHz X バンドライナック X線源は, 工業製品の非破 も高エネルギーの電子ビームを発生するので高エネル壊検査用のX線源であり,従来のライナックシステム ギーのX線での検査が可能になる. このため,原子炉よりも格段に小型化した可搬型装置を目指している. 圧力容器や金属配管などの金属部分の検査が可能にな 具体的には、加速管の周波数をXライナック(9.4 GHz) る.にすることで加速管自体を小型化し,またマイクロ波 - ライナックの分野では,近年,電子加速にX バンド 源に低電力(250kW)のマグネトロンを使用すること 周波数帯の高周波(Radio Frequency: RF)を使用する加で,冷却装置や電源も小型にする. この装置の完成予 速方式に注目が集まっている.Xバンド周波数帯の RF_ 想図を図1に示す. を使用した場合,従来多く使われた S バンド周波数帯 本装置では、高周波を使いライナックで電子ビームを による電子加速よりも高電場が得られ,加速効率の向。 加速し, ビームを金属ターゲットに当て制動放射X線 上や装置の小型化が見込まれる.このため、リニアコを発生させる.高周波加速を用いているため,静電場
加速であるX線管よりも高いエネルギーのX線を発生 することができる。図1 装置完成予想図図2にシステムの体系図を示す.本システムはマグ ネトロン, サーキュレータ, 高圧電源, パルスモジュレ ータ, 20 kV 熱電子銃, X バンドライナックなどから なり,これら全体をスーツケース 2つ分のサイズまで 小さくすることを最終目標としている。 - 本装置はパルスマグネトロンを使用して 9.4 GHz の 高周波を発生させサーキュレータを通し定在波型 APS 空洞のライナックに高周波を投入する. サーキュレー タに取り付けているダミーロードはウォーターロード を採用する.電子源は 20 kV の熱電子銃を使い,400 mA の電子ビームをパルスで発生させる.電子銃から発生 された電子ビームを加速管で950keVまで加速し、金属 ターゲットに当て制動放射X線を発生させる. 発生 X 線のパルス幅は約 2 usec である.繰り返しは 500 pps であり,X線の線量は 0.2 Gy/min@lm を見込んでいる. 空間分解能は 1 mm を目指している.この装置では高 周波源にマグネトロンを採用しているがマグネトロン は自励発振であるため温度などの条件によって周波数HeaterPower SupplyTuneMagnetronHVMagnetron250kW RF windowDummy LoadCirculatorGun HVRF ILIAFC (auto frequency controller)RF windowX-ray20kV ElectronGunAccelerating TubeTarget and Collimator図2 システム概略が変化する可能性がある.このような周波数変化を補 償するために AFC(Automatic Frequency Controller)を搭 載している.3.加速管の設計・製作1. 本研究のシステムでは, マグネトロンからの RF パ ワーが 250kW しかなく、効率よく電子を加速させるラ イナック構造が求められた.加速管の設計は計算ュー F SUPERFISH BO LUGPT(General Particle Tracer) & い,加速管構造は元/2 モード定在波型の APS (Alternative Periodic Structure)空洞を採用した.しかしながら, シミ ュレーションの結果, 元/2 モードの空洞だけを使っても 950keV まではビームを加速できないということがわ かった.これは,電子ビームが低速度の領域で加速位相に電 子が乗らないということに起因していることが判明し た.これは,電子の初期速度はB= 0.27 (ここでロ =v/c, c: 光速, v:電子速度 )であるのに対して,空洞はB = 0.4 の空洞から始まっているためである. 本来ならより狭 い空洞を作製し,電子の速度と空洞の波長を合わせて やらなければならないが,X バンドの空洞が非常に小 さな空洞になってしまうため工作限界により元/2 モー ドではB=0.4 が限界であった.そこで, 加速管の低速度領域では元モード空洞を採用 することにした. 元モード空洞は結合空洞がない分だけ 1セルを小さく作ることができる.このようにして, 最初の3セルは元モード空洞,後半は元/2 モード空洞と いう加速管を設計することができた.図3 電子銃と RF 窓を溶接した加速管写真 この加速管の GPT による電子加速シミュレーショ ンでは, 約 20%(80 mA)の電子が 800 keV 以上に加速さ れ,そのスポットサイズは2 mm 程であるという結果 が得られた。452このように,加速管の設計を行い,加速空洞を KEK にて作製した.作製された加速管は共振周波数,Q値, 軸上電場を測定し,設計値と一致していることが確か められている.図3は電子銃と RF 窓を溶接して完成 した加速管の写真である.4.電子ビーム測定試験* 電子ビーム測定は,ビーム電流, ビームエネルギー スペクトル, スポットサイズについて測定を行った.ビーム電流測定では,加速管から出射されたビーム をファラデーカップで受けて電流を測定した.その結 果, 約 60mA のビーム電流であることが確かめられた. このときのオシロスコープ波形を図4に示す.ビーム電流波形を測定したときに図4の加速電流波 形のようなビーム振動を観測した.これは,通常の加 速管では起こらないことであり,現在原因を究明中で ある....(射 RF...くイオンクレームなのかH RFin電子銃電流を「加速電流““5.00mVOS1.00mView1400nm\2,500S/SI 1日1,20000us10kpointsG1-5.00mV]水10020071[14:08:50図4 ビーム電流波形電子ビームエネルギースペクトル測定試験は,電子 ビームに磁場を印加し運動エネルギーによる曲率の違 いに起因する軌道の差異により電子ビームのエネルギ ースペクトルを測定する方法を用いた. これは,加速 管から出てきたビームを電磁石を用いて曲げ, ビーム ライン下流で電流ピックアップ用の金属端子により特 定のエネルギーを持ったビーム電流を検出する. この ときの測定体系図を図5に示す. * エネルギースペクトルの測定結果を図6に示す.測 一定では,目標とする 950 keV 付近にピークが観測でき たので、エネルギーとしてはほぼ仕様を満たしている と言える.ただし,電流量はシミュレーション結果よGate valveSlit (1.5mm)H18.2Acc. tubeSlit (2mm) and Current pickupR266680図5 ビームエネルギースペクトル測定体11.2350300Charge [pc]0_0. 20 .406 0.8 Energy [MeV]11.2図6 ビームエネルギースペクトル測定結果りも少ないことが分かり,また,高エネルギービーム でもビーム振動が観測された.このため, X 線撮影で はフォトン数を稼ぐため照射時間が長くしないと画像 が得られない可能性があることが分かった. 1 X線撮影を行う上で,分解能を左右する重要なパラ メータである電子ビームスポットサイズの測定も行っ た.これは、スクリーンモニタの中のアルミナ蛍光板 にビームを当てその発光によりビームサイズを測定す るというものである.スクリーンモニタにはアルミナ蛍光板が取り付けら れており,それを上下に動かすことによりビームをア ルミナ蛍光板に当ててその発光を CCD カメラで撮影 し,ビームサイズを確認する. ビームライン上流側ス クリーンモニタは加速管出口から 220 mm の位置に, 下流側のスクリーンモニタは 460 mm の位置に設置した.この測定よりビームサイズは FWHM で上流側 2.46 mm, 下流側 3.74 mm であった.この結果から,加速管 出口でのビームサイズを試算すると,1.10 mm 以上, 1.95 mm 以下になる.これより, シミュレーション結 果のスポットサイズ 2 mm は達成されていると考えて いる. 1. 電子ビーム測定においては,電流量は低いものの設453計値である 950keV 付近のビームエネルギーが得られ ていることが分かった.さらに,スポットサイズもシ ミュレーションと一致する 2mm 程度であることも確 認できた. 目標とするスポットサイズ 1mm は今後追加 する集束マグネットにより達成されるであろうと考え ている。5. X線発生および撮影試験ビーム測定試験を終えたあとに, ビーム測定用のビ ームラインを取り外し,加速管に金属ターゲットを取 り付けた.これで, X 線を照射できる体系にすること ができた.まず, X 線線量測定を行った.測定は, X 線線量測 定チェンバーをX線発生点から 50 cm の点におき, パ ルス繰り返しを5pps にして測定を行った.その結果, 0.3 mGy/min のX線が観測された.これを定格の 500 pps に換算すると 30mGy/min であり,発生点から1m の場合は, 7.5 mGy/min@1m である.目標としている 値は 0.2 Gy/min@1m であるので,測定された X 線量は かなり低いといえる. これは、ビーム電流が少ないた めであると考えられる.次に, X 線スポットサイズ測定を行った.これは、 ピンホール法を使い光源サイズを求める方法で,1mm 厚の鉛板に直径 0.5mm の穴を開けて X 線撮影を行い, 撮影できた X線の像から光源サイズを判断した.その 結果,X線スポットサイズは 2.5mm と測定できた.50mm図7 シンチレータを用いた画像取得SUS ボルトとX線テストチャート X 線撮影試験は、シンチレータを使った撮影とイメ ージングプレートを使った撮影を行った. シンチレー タを用いたイメージングは CaF2 シンチレータを冷却 CCD カメラで撮影した. この画像を図7に示す.また,イメージングプレートを使った撮影結果を図8に示す.図8 イメージングプレートを使った撮影(ドライヤー)6.結論本研究では, 9.4 GHz X バンドライナックを用いた非 破壊検査用小型X線源の開発を行い,電子ビーム測定 を終えて, X 線撮影試験を行った. 本装置は、電子ビ ーム測定の結果,加速電流量が設計値に達成しておら ず, X 線線量も目標値には達成していない。ただし, 電子ビームは 950 keV に達しているのでX線撮影試験 では,積算時間を多くとることで画像取得に成功して いる.今後は,電流量改善のために加速管の再設計を 行い,2号機を作成する予定である. 1. 本装置が完成すれば高エネルギーX 線を用いたオン サイト非破壊検査が,原子炉圧力容器や石油化学コン ビナート配管で行えるようになり,検査の信頼性向上, 短時間化が可能になる.[1] T. Yamamoto, et al., Eighth IEEE InternationalVacuum Electronics Conference (IVEC2007), Kitakyushu, 2007, 21.6 [2] T. Natsui, et al., Proc. of PACO7 June25-29, 2007,Albuquerque, New Mexico, THPMN031 [3] 夏井拓也, 他, 物理学会 2007年秋季大会, 21pZG-12, - 北海道, 2007年9月21日-24 日 [4] 山本智彦, 他, 「可搬型 X-band Linac X 線源を用いた X 線撮像試験」日本原子力学会 2007 年秋の年 会, 北九州国際会議場他, 2007 年9月 27 日-29 日454“ “オンサイト非破壊検査用可搬型 950keV X バンドライナック X 線源“ “夏井 拓也,Takuya NATSUI,山本 智彦,Tomohiko YAMAMOTO,坂本 文人,Fumito SAKAMOTO,谷口 善洋,Yoshihiro TANIGUCHI,田口 博基,Hiroki TAGUCHI,遊佐 訓孝,Noritaka YUSA,上坂 充,Mitsuru UESAKA,福田 茂樹,Shigeki FUKUDA,明本 光生,Mitsuo AKEMOTO,田辺 英二,Eiji TANABE,森田 成基,Seiki MORITA
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