電磁診断技術による異物混入ベアリングの挙動測定

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カテゴリ: 第5回
1. 緒言
1. 電力自由化を迎え、発電設備の保守業務は、設備の 信頼性維持と経済性の同時追求が求められており、保 全方式も TBM(Time Based Maintenance:時間基準保全) に CBM(Condition Based Maintenance: 状態監視保全) を複合させるなど、最適な保全方式が検討されている。 * 最適な保全方式を実施するためには、設備の劣化状 態を的確に把握できる設備診断技術が必要である。現 在、原子力発電所を含む原子力施設の保守現場では、 振動測定による機器の異常診断法が導入されつつある。 振動測定による機器監視は長い歴史を持っており、そ のデータベースは膨大な量が蓄積され、カテゴリ化さ れており、言わば、成熟した技術である。しかしなが ら、回転機器を対象とした振動測定では、複数の回転 体・欠陥が存在した場合の診断が困難であること、ま た、部位によっては振動測定データに異常状態が反映 されない場合もある。等の課題に対して解決に限界が あると認識されている。そのため、これらの課題を解 決できる回転機器に対する新たな状態監視技術の開発 が望まれている。
回転機器に対する新たな状態監視技術として、電磁 診断技術が挙げられる!!!。特に、回転機器の主要な劣化がベアリングであるこ 連絡先:萱田良、〒110-0008 東京都台東区池之端 2-7-17 、株式会社 IIU 、電 話: 03-5814-5350 、 kayata@iiu.co.jpと考慮すると、ベアリングの新たな劣化診断技術とし て電磁診断技術が適していると考えられる。 1. 本研究は、電磁診断技術の劣化診断への適用の一環 として実施されたもので、電磁診断技術をベアリング に適用した場合について検討したものである。回転機 の不具合事象として挙げられる異物の混入したベアリ ングを対象としたものである。異物の混入はベアリン グの耐荷重性能を低下させ寿命を短くする原因となる。 本研究では、異物を混入させたベアリングの挙動を電 磁診断技術を用いて測定し、異物の粒径と電磁信号と の関係を明らかにすることを目的とする。2.原理導電体が静磁場を横切ることによって導電体表面に渦電流静磁場うか磁石Fig.1 測定原理462Fig.2 ベアリング外観及びセの10磁石コイル (500 ターン)直径10mm 高さ15mm 表面磁束密度530mT Fig.3 センサ外観及びセンサ仕様 二流が発生する。回転機器に外部より静磁場が加えのコイルからなる。センサに使用した永久磁石は直径 っている場合、ベアリングなどの回転体においても10mm、高さ 15mm、表面磁束密度は 530mT であり、層に渦電流が発生する。この渦電流は回転体の振動や 回転体のブレによって変化するので、この渦電流の変 化を磁場センサで捉えることで回転機の状態を診断すセンサ45mmンサ取り付け位置コイル (500 ターン) 試驗条件 ングへの異物混入を模擬するための実験方法 三度、粒径の違う研磨剤(炭化ケイ素)を複数 Table 1 に纏めて示す。Table 1 炭化ケイ素の粒度と粒径 粒度粒径 11 #400約 0.03mm #200約 0.065mm- 463 -った。 ング(潤滑剤は注入されてい以下の3種類の測定を行った。 1) 不具合の無いベアリング(潤滑剤は注入されてい2) ベアリング用の潤滑剤 10 に対し粒度#400 の炭化ケイ素1の割合で混ぜ合わせたものを混入したベアリング 3) ベアリング用の潤滑剤10に対し粒度#200 の炭化ケイ素1の割合で混ぜ合わせたものを混入したベ アリング3.3 測定結果Fig.4 に測定条件1の測定結果を示す。不具合の無い 状態のベアリングでは 0Hz~1kHz の周波数成分の振幅 の積分値の値(以下 OHz~1kHz の積分値)は 0.8~0.9V で変化も小さく 1kHz~10kHzの周波数成分の振幅の積7164| 1kHz~10kHzの周波数成分振幅の積分値1kHz~10kHzの周波数成分振幅の積分値0.54Signalinjeubis.........0Hz~1kHzの周波数成分振幅の積分値。0Hz~1kHzの周波数成分振幅の積分値0.24..........000 2010203040500 Time(n?n;30 140 Timelinin)Fig.4 測定結果1(Grease)Fig.5 測定結果 2(#400)1kHz~10kHzの周波数成分振幅の積分値WeusOHz~1kHzの周波数成分振幅の積分値10''““ ““““' Time(min)““'““soFig.6 測定結果 3(#200)り分値(以下 1kHz~10kHz の積分値)も 0.33V で変化は 小さい。Fig.5 に粒度#400(粒径約 0.03mm)の炭化ケ イ素を混入させたベアリングの測定結果を示す。OHz ~1kHz の積分値は約 0.1V と不具合の無いベアリング の測定結果と比較して微小ながら上昇している。1kHz ~10kHz の積分値は測定開始直後に 0.45V を示し、そ の後徐々に減少し 0.35V 付近に収束している。混入さ せた炭化ケイ素がベアリングの転動体との接触により 測定開始直後は高い値を示し、その後徐々に炭化ケイ 素が転動体軌道面の外側に退けられていると思われる。 - Fig.6 に粒度#200(粒径 0.065mm)の炭化ケイ素を混 入させたベアリングの測定結果を示す。0Hz~1kHz の 積分値は約 0.1V と他の測定と比較しても変化が小さ い。1kHz~10kHz の積分値は測定開始直後に約 0.65V を示し、その後約 0.39V に収束している。1kHz~10kHzイ702326543%23400 Grease0.6043-5541Signal(V)45180.404-10354....10301020140501 Time min)Fig.7 各測定条件比較(1kHz~10kHz)4642320.1%23400 -- Grease0.09S0.06Signal(1)600720064......ンンーーーーー904TH1130 Timetmin)Fig.8 各測定条件比較(3kHz~4kHz)の積分値に関しては Fig.5 の測定結果と同様の変化を 示しているが、全体的に値は大きくなっている。Fig.7 に各測定条件での 1kHz~10kHz の積分値の変 化を比較したものを示す。不具合の無い状態のベアリ ングの測定結果と比較して炭化ケイ素を混入した場合 の測定結果は共に大きな値を示し、粒径が大きくなる ほど値も大きくなっており、粒径と信号の強度に相関 を見出すことが出来る。 - Fig.8 に 3kHz~4kHz の周波数成分の振幅の積分値の 値(以下 3kHz~4kHz の積分値)の時間変化を Fig.9 に 9kHz~10kHz の周波数成分の振幅の積分値の値(以下 9kHz~10kHz の積分値)の時間変化を示す。先に解析し た 1kHz~10kHz の積分値を詳細に解析した結果、 3kHz~4kHz の積分値と 9kHz~10kHz の積分値が特に混 入した炭化ケイ素の粒径と信号強度の関係を反映して いることが確認できた。4.まとめ実験および解析の検討結果をまとめると、以下のよ うになる。 ・1kHz~10kHz の周波数帯域に注目して信号処理する ことにより、異物混入の異常を検出できるだけでは なく異物の粒径の大きさも特定できる。 ・ベアリングの1次の固有振動数である 3kHz~4kHz と2次の固有振動数である9kHz~10kHzの周波数帯 域の振幅の変化が大きい。 ・ベアリングに異物が混入するとベアリングの転動体 と異物が衝突する。その時に電磁センサの作る静磁0.0741#23200 #400 Grease61054Signali0.02414Time minFig.9 各測定条件比較(9kHz~10kHz)て捕らえeN場中を通過する転動体の挙動を電磁信号として捕らえ ることができる。 - 以上より、異物の混入した場合のベアリングの状態 を診断に電磁診断技術を適用できる見通しを得た。参考文献 [1]黄皓宇,宮健三,遊佐訓孝,小阪大吾,回転体異常の電磁検出,日本非破壊検査協会第 10 回表面探傷シンポジ ウム,東京都城南地域中小企業振興センター,2007/01/25-26. [2]小坂大吾、黄皓宇、遊佐訓孝、回転機器の電磁非破壊評価手法の検討 、日本保全学会第4回学術講演会、福井大学、2007/07/02-03. [3] Daigo Kosaka, Haoyu Huang, Noritaka Yusa and KenzoMiya. Electromagnetic nondestructive evaluation of rotatingblades. The 13th International Symposium on Applied Electromagnetics and Mechanics, MichiganState University, USA, 2007/09/09-12. [4] Daigo Kosaka, Haoyu Huang, Noritaka Yusa and KenzoMiya. Electromagnetic nondestructive evaluation of rotatingblades. Science and Technology of Maintenance (Under review)465“ “?電磁診断技術による異物混入ベアリングの挙動測定“ “萱田 良,Ryo KAYATA,黄 皓宇,Haoyu HUANG,遊佐 訓孝,Noritaka YUSA
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