電磁超音波法による減肉の定量評価
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カテゴリ: 第5回
1. 緒言
タンクや配管などの構造物の減肉管理技術は、高経 年化するプラントの保全に欠かせないものである。減 肉管理には状態監視保全の観点から、常時監視、定量 的な評価などが求められている。これらの用途には圧 電素子を用いた超音波探傷技術が用いられている。こ の手法は学問的に体系づけられており、十分な信号強 度を持つことから減肉管理において広く用いられてい る。しかし状態監視の観点において、センサと被測定 物とを接触させる必要があり、また運転中高温になる 構造物の検査にはセンサの特性上、圧電素子を用いる ことができないため、圧電素子に代わる高温環境に適 用可能な技術が求められている。そこで注目されているのが電磁超音波探触子 (Electro Magnetic Acoustic Transducer : EMAT)である [1~9]。 EMAT は静磁場を作る磁石と、超音波の送受信 に用いるコイルから構成されている。圧電素子と比較 して高温環境に強く、非接触で計測が可能であり、コ イルに流す電流を制御することが容易であることから より定量的な減肉管理技術として期待されている。一 一方で、EMAT は電磁場と超音波の変換を送信、受信時 に行うこと、圧電素子と比較して信号強度が低く、ま たセンサの面積が大きいことから、減肉形状の測定において分解能が十分ではない。よって逆問題的手法な どを用いた減肉形状測定技術の開発が求められている。そこで、ステンレスの平板の裏面に加工した半楕円 形状の模擬減肉を対象に、逆問題的手法を用いた減肉 形状診断を視野に入れ、これに必要となる電磁場解析 と振動解析を組み合わせたシミュレータの構築を行っ た。本稿では最初に、シミュレータによる数値実験結 果と実際の測定である研究室実験結果との比較をし、 作成した検査シミュレータの性能を評価する。次に減 肉形状の推定結果と、センサの大きさの関係について 議論する。
2. シミュレータの性能評価
2.1 試験体およびセンサ形状検査対象とする減肉試験体を Fig. 1 に示す。厚さ 15mm の SUS304 にワイヤ放電により半楕円形状の模 擬減肉を加工している。長径(減肉半径)、短径(減肉高 さ)をパラメータとした試験体を作成し、そのアスペク ト比(長径/短径)による信号の波形の変化を計測した。 シミュレーション実験および研究室実験に用いたセン サの形状を Fig. 2 に示す。100200Corrosion height100Corrosion radius200100Corrosion radius Fig. 1 Test Sample466EMATmagnetcoil30mm2mm 22mmSensor positionTest sampleHeight20mmRadiusFig. 2 Dimensions of EMATFig. 3 Experimental Method0.04 0.020.04 , 0.02amplitude10amplitude-0.02 -0.04-0.02 -0.040_10_ 20time (Jus)303 010_ 20time (Jus) (c) Sensor position 16mm(d) Sensor position 30mm.0.04 0.020.04 0.02.tudeamplitude10mmmmanne-0.02 -0.04-0.04-----------------EMATmagnetcoil30mm52mm 22mmSensor positionTest sampleHeight20mmRadiusFig. 2 Dimensions of EMATFig. 3 Experimental Method0.040.040.020.02amplitudeamplitude[ -0.02 -0.04 1102030time (pls) (d) Sensor position 30mm 0.04 0.0210 -0.02 -0.04 1102030time (us)(c) Sensor position 16mm0.04 0.02amplitudeamplitude言 -0.02-0.02-0.04 -------------- -n akan men noen . 1102030tine (Jus)-0.0410_10_ 20 30time (118)(b) Sensor position 10mm.(a) Sensor position 0mmFig. 4 Numerical simulation results15x102×2×19.33x10-3 - 3215[m/s]2.2 シミュレーション実験結果 * 本シミュレーションでは Fig. 3 に示すように、セン サを減肉面と反対側の試験体表面上で減肉に対して水 平に移動させ、減肉とセンサの位置を変化させながら 測定した。減肉とセンサ、それぞれの中心が重なった。 位置を 0[mm]として減肉中心とセンサ中心の距離をセ ンサ位置としている。励磁パルスは 2[MHz]、2 パルス とした。 1 構築したシミュレータの測定結果を Fig. 4 に示す。 センサが減肉と重なると急激にエコー高さが小さくな っていることが確認できる。 * エコー間隔(Time of Flight : TOF)は 9.3[us] であり、 これより超音波の伝播速度を求めると以下のようにな る。一方、理論上の超音波の伝播する速度は 3196[m/s]であ り、シミュレーション結果は音速の観点からは十分な 精度を持っていることが確認できる。これにより Fig. 4(a)のセンサ位置 30[mm]の測定結果からは9.5[us]付近 にエコーが確認でき、Fig. 4(d)のセンサ位置 [mm]の 7.5[us]付近に最初のエコーが確認できることから、求 めた音速を考慮すると本シミュレータは板厚 15[mm] に対する減肉高さ 5[mm]を評価しているといえる。し かし、センサ位置が減肉中心付近にない時、その位置 における減肉高さを評価できるほど TOF の変化を確 認することができず、現時点では減肉半径 15[mm]、減 肉高さ 5[mm]の試験体において、TOF の変化から減肉- 467 - * 本シミュレーションでは Fig. 3 に示すように、セン サを減肉面と反対側の試験体表面上で減肉に対して水 平に移動させ、減肉とセンサの位置を変化させながらEMATSensor positionTest sampleHeightRadius 理論上の超音波の伝播する速度は 3196[m/s]であ シミュレーション結果は音速の観点からは十分な 精度を持っていることが確認できる。これにより Fig. 4(a)のセンサ位置30[mm]の測定結果からは9.5[us]付近 にエコーが確認でき、Fig. 4(d)のセンサ位置 0[mm]の 7.5[us]付近に最初のエコーが確認できることから、求 めた音速を考慮すると本シミュレータは板厚 15[mm] に対する減肉高さ 5[mm]を評価しているといえる。し めた音速を考慮すると本シミュレータは板厚 15[mm] に対する減肉高さ 5[mm]を評価しているといえる。し かし、センサ位置が減肉中心付近にない時、その位置 における減肉高さを評価できるほど TOF の変化を確 - 467 -OscillscopeRPR-400000o0g0oooo0000Auto stageEMATSample AFig. 5 Experimental setup10modeamplitude(v310_1020 30time (ils)4050-- ----------------...1 110_20304050time (Jus)(d) Sensor position 30mm(c) Sensor position 16mmamplitude(17)TE-500_10 20 30 40 5010_ 10 20 30 40 time (lls)time (ils) (b) Sensor position 10mm(a) Sensor position Omm Fig. 6 Experimental results (Corrosion radius is 15mm)-SimulationEx|を測定することは、困難であることがシミュレーDas Tatz ことがシミュレー- Simulation 0.06???Ex0.05はシミュレーショ - 研究室実験シス 同様に、パルス電voltage (Vpp)形状を測定することは、困難であることがシミュレー ションから確認できる。2.3 研究室実験結果との比較 1 研究室実験に用いたセンサの形状はシミュレーショ ン実験に用いた Fig. 2 と同じである。研究室実験シス テムを Fig. 5に示す。励磁パルスも同様に、パルス電 源発生装置によってセンサのコイルに 800[Vpp]、 2[MHz]、2 パルスを印加している。センサの移動は自 動テーブルを用いて位置ずれによる誤差の混入を軽減 した。測定結果を Fig.6に示す。 15[us]付近まで、コイルに 印加しているバースト波の影響と思われる直流成分が 存在するため、最初の底面エコーを確認することがで きない。またシミュレーション結果と比較してエコー 幅が大きく、現時点で TOF から減肉高さを測定するこ とは困難である。 シミュレーション結果と研究室実験結果の 20[us]amplitude(1)amplitude(1)unurationvoltage (Vpp)1 0 _ 5_ 10 15 20 25 30sensor position (mm) Fig. 7 Comparison between experimental result andnumerical simulation result付近のエコー高さに着目し、まとめた結果を Fig. 7に 示す。センサが減肉に近づくにつれ、エコー高さが同 様に減少していることが確認できる。468time of fright (us)echo (p-p)12corrosion height (mm) Fig. 8 Tendency of TOF (Corrosion radius is 15mm)246corrosion height (mm) Fig. 9 Tendency of echo (Corrosion radius is 15mm)24corrosion height (mm) Fig. 8 Tendency of TOF (Corrosion radius is 15mm)3. 減肉形状の推定減肉中央においては減肉高さに応じたエコーを確認 できることから、センサ位置を O[mm]、減肉半径を 15[mm]で固定して、減肉高さの異なる(1~10[mm])シ ミュレーションを実施した。減肉高さごとに TOF をま とめた結果を Fig. 8に示す。減肉高さに応じてほぼ比 例して TOF が変化していることが確認できる。なお、 6[mm]以上はエコーを確認できなかった。 - Fig.9に示すように、減肉のアスペクト比 (減肉高さ 「減肉半径)が大きいほどエコー高さが小さくなるこ とから、アスペクト比が大きいほど減肉高さの評価が 難しくなる。センサの性能向上要件の一つとして、減 肉高さを測定可能なアスペクト比の向上は重要である。4結構築したシミュレータは研究室実験と同様の傾向 を示したことから、有用性の確認ができた。一方で研 究室実験の分解能が十分ではなく、改良の余地がある。 - シミュレーション実験から、減肉高さの測定を試み たが、測定できる範囲が減肉のアスペクト比に支配さ れることが確認できた。EMAT のコイル径の影響も考 えられることから、今後は研究室実験の分解能を向上 させるとともに、構築したシミュレータを用いて、逆 問題的手法を取り入れた減肉形状診断手法について検 討を行う。謝辞本研究は「平成 19年度高経年化対策強化基盤整備事 業」において実施した研究である。参考文献[1] R. Thompson, “Physical Principles of Measurementswith EMAT Transducers”, W.P. Mason, (ed.), Physical Acoustics, Vol.19, Academic Press, New York, pp.157-200, 1990 [2] Allen, D.R. and Martin, R., “Measuring boiler tubewall thickness in thermal power plants using electromagnetic acoustic transducers (EMATS)” AEREReport 11653, 1985 [3] Smith, B.J., Martin, R. and Holt, R.P., “The use ofEMATs for wall thickness measurements on corroded pipes” Proc 6th Int Conf on NDT Methods, Strasbourg,p. 49, 1986 [4] BOETTGER W, SCHNEIDER H, WEINGARTEN W,“Prototype EMAT system for tube inspection with guided ultrasonic waves““, Nucl Eng Des, Vol.102, No.3,pp.369-376, 1987 [5] HU J K, ZHANG Q L, HUTCHINS D A, “Directionalcharacteristics of electromagnetic acoustic transducers”,Ultrasonics, Vol.26 No.1 pp.5-13, 1988 [6] COAKLEY K J, CLARK A V, HEHMAN CS,“Empirical Modeling of Electromagnetic AccousticTransducer Data”, PB Rep, p.24, ,1999.08 [7] KAWASHIMA K, “Very High Frequency EMAT forResonant Measurement”, Proc IEEE Ultrasonic Symp,Vol. 1994, No. 2, pp.1111-1119, 1994 [8] PARK Ik-Keun, KIM Yong-Kwon, KIM Tae-Hyung,CHO Yong-Sang, “A Non-Contact Guided Wave Technique for Defect Thining Monitoring”, Key EngMater, Vol.326/328 No.Pt.1 pp.681-684, 2006 [9] CHEONG Yong-Mo, JUNG Hyun-Kyu, KIMYoung-Suk, “Comparison of an Aray of EMATS Technique and a Magnetostrictive Sensor Technique for a Guided Wave I nspection of a Pipe”, Key Eng Mater, Vol.321/323 No.Pt.1 pp.780-783,2006469“ “?電磁超音波法による減肉の定量評価“ “小坂 大吾,Daigo KOSAKA,小島 史男,Fumio KOJIMA
タンクや配管などの構造物の減肉管理技術は、高経 年化するプラントの保全に欠かせないものである。減 肉管理には状態監視保全の観点から、常時監視、定量 的な評価などが求められている。これらの用途には圧 電素子を用いた超音波探傷技術が用いられている。こ の手法は学問的に体系づけられており、十分な信号強 度を持つことから減肉管理において広く用いられてい る。しかし状態監視の観点において、センサと被測定 物とを接触させる必要があり、また運転中高温になる 構造物の検査にはセンサの特性上、圧電素子を用いる ことができないため、圧電素子に代わる高温環境に適 用可能な技術が求められている。そこで注目されているのが電磁超音波探触子 (Electro Magnetic Acoustic Transducer : EMAT)である [1~9]。 EMAT は静磁場を作る磁石と、超音波の送受信 に用いるコイルから構成されている。圧電素子と比較 して高温環境に強く、非接触で計測が可能であり、コ イルに流す電流を制御することが容易であることから より定量的な減肉管理技術として期待されている。一 一方で、EMAT は電磁場と超音波の変換を送信、受信時 に行うこと、圧電素子と比較して信号強度が低く、ま たセンサの面積が大きいことから、減肉形状の測定において分解能が十分ではない。よって逆問題的手法な どを用いた減肉形状測定技術の開発が求められている。そこで、ステンレスの平板の裏面に加工した半楕円 形状の模擬減肉を対象に、逆問題的手法を用いた減肉 形状診断を視野に入れ、これに必要となる電磁場解析 と振動解析を組み合わせたシミュレータの構築を行っ た。本稿では最初に、シミュレータによる数値実験結 果と実際の測定である研究室実験結果との比較をし、 作成した検査シミュレータの性能を評価する。次に減 肉形状の推定結果と、センサの大きさの関係について 議論する。
2. シミュレータの性能評価
2.1 試験体およびセンサ形状検査対象とする減肉試験体を Fig. 1 に示す。厚さ 15mm の SUS304 にワイヤ放電により半楕円形状の模 擬減肉を加工している。長径(減肉半径)、短径(減肉高 さ)をパラメータとした試験体を作成し、そのアスペク ト比(長径/短径)による信号の波形の変化を計測した。 シミュレーション実験および研究室実験に用いたセン サの形状を Fig. 2 に示す。100200Corrosion height100Corrosion radius200100Corrosion radius Fig. 1 Test Sample466EMATmagnetcoil30mm2mm 22mmSensor positionTest sampleHeight20mmRadiusFig. 2 Dimensions of EMATFig. 3 Experimental Method0.04 0.020.04 , 0.02amplitude10amplitude-0.02 -0.04-0.02 -0.040_10_ 20time (Jus)303 010_ 20time (Jus) (c) Sensor position 16mm(d) Sensor position 30mm.0.04 0.020.04 0.02.tudeamplitude10mmmmanne-0.02 -0.04-0.04-----------------EMATmagnetcoil30mm52mm 22mmSensor positionTest sampleHeight20mmRadiusFig. 2 Dimensions of EMATFig. 3 Experimental Method0.040.040.020.02amplitudeamplitude[ -0.02 -0.04 1102030time (pls) (d) Sensor position 30mm 0.04 0.0210 -0.02 -0.04 1102030time (us)(c) Sensor position 16mm0.04 0.02amplitudeamplitude言 -0.02-0.02-0.04 -------------- -n akan men noen . 1102030tine (Jus)-0.0410_10_ 20 30time (118)(b) Sensor position 10mm.(a) Sensor position 0mmFig. 4 Numerical simulation results15x102×2×19.33x10-3 - 3215[m/s]2.2 シミュレーション実験結果 * 本シミュレーションでは Fig. 3 に示すように、セン サを減肉面と反対側の試験体表面上で減肉に対して水 平に移動させ、減肉とセンサの位置を変化させながら 測定した。減肉とセンサ、それぞれの中心が重なった。 位置を 0[mm]として減肉中心とセンサ中心の距離をセ ンサ位置としている。励磁パルスは 2[MHz]、2 パルス とした。 1 構築したシミュレータの測定結果を Fig. 4 に示す。 センサが減肉と重なると急激にエコー高さが小さくな っていることが確認できる。 * エコー間隔(Time of Flight : TOF)は 9.3[us] であり、 これより超音波の伝播速度を求めると以下のようにな る。一方、理論上の超音波の伝播する速度は 3196[m/s]であ り、シミュレーション結果は音速の観点からは十分な 精度を持っていることが確認できる。これにより Fig. 4(a)のセンサ位置 30[mm]の測定結果からは9.5[us]付近 にエコーが確認でき、Fig. 4(d)のセンサ位置 [mm]の 7.5[us]付近に最初のエコーが確認できることから、求 めた音速を考慮すると本シミュレータは板厚 15[mm] に対する減肉高さ 5[mm]を評価しているといえる。し かし、センサ位置が減肉中心付近にない時、その位置 における減肉高さを評価できるほど TOF の変化を確 認することができず、現時点では減肉半径 15[mm]、減 肉高さ 5[mm]の試験体において、TOF の変化から減肉- 467 - * 本シミュレーションでは Fig. 3 に示すように、セン サを減肉面と反対側の試験体表面上で減肉に対して水 平に移動させ、減肉とセンサの位置を変化させながらEMATSensor positionTest sampleHeightRadius 理論上の超音波の伝播する速度は 3196[m/s]であ シミュレーション結果は音速の観点からは十分な 精度を持っていることが確認できる。これにより Fig. 4(a)のセンサ位置30[mm]の測定結果からは9.5[us]付近 にエコーが確認でき、Fig. 4(d)のセンサ位置 0[mm]の 7.5[us]付近に最初のエコーが確認できることから、求 めた音速を考慮すると本シミュレータは板厚 15[mm] に対する減肉高さ 5[mm]を評価しているといえる。し めた音速を考慮すると本シミュレータは板厚 15[mm] に対する減肉高さ 5[mm]を評価しているといえる。し かし、センサ位置が減肉中心付近にない時、その位置 における減肉高さを評価できるほど TOF の変化を確 - 467 -OscillscopeRPR-400000o0g0oooo0000Auto stageEMATSample AFig. 5 Experimental setup10modeamplitude(v310_1020 30time (ils)4050-- ----------------...1 110_20304050time (Jus)(d) Sensor position 30mm(c) Sensor position 16mmamplitude(17)TE-500_10 20 30 40 5010_ 10 20 30 40 time (lls)time (ils) (b) Sensor position 10mm(a) Sensor position Omm Fig. 6 Experimental results (Corrosion radius is 15mm)-SimulationEx|を測定することは、困難であることがシミュレーDas Tatz ことがシミュレー- Simulation 0.06???Ex0.05はシミュレーショ - 研究室実験シス 同様に、パルス電voltage (Vpp)形状を測定することは、困難であることがシミュレー ションから確認できる。2.3 研究室実験結果との比較 1 研究室実験に用いたセンサの形状はシミュレーショ ン実験に用いた Fig. 2 と同じである。研究室実験シス テムを Fig. 5に示す。励磁パルスも同様に、パルス電 源発生装置によってセンサのコイルに 800[Vpp]、 2[MHz]、2 パルスを印加している。センサの移動は自 動テーブルを用いて位置ずれによる誤差の混入を軽減 した。測定結果を Fig.6に示す。 15[us]付近まで、コイルに 印加しているバースト波の影響と思われる直流成分が 存在するため、最初の底面エコーを確認することがで きない。またシミュレーション結果と比較してエコー 幅が大きく、現時点で TOF から減肉高さを測定するこ とは困難である。 シミュレーション結果と研究室実験結果の 20[us]amplitude(1)amplitude(1)unurationvoltage (Vpp)1 0 _ 5_ 10 15 20 25 30sensor position (mm) Fig. 7 Comparison between experimental result andnumerical simulation result付近のエコー高さに着目し、まとめた結果を Fig. 7に 示す。センサが減肉に近づくにつれ、エコー高さが同 様に減少していることが確認できる。468time of fright (us)echo (p-p)12corrosion height (mm) Fig. 8 Tendency of TOF (Corrosion radius is 15mm)246corrosion height (mm) Fig. 9 Tendency of echo (Corrosion radius is 15mm)24corrosion height (mm) Fig. 8 Tendency of TOF (Corrosion radius is 15mm)3. 減肉形状の推定減肉中央においては減肉高さに応じたエコーを確認 できることから、センサ位置を O[mm]、減肉半径を 15[mm]で固定して、減肉高さの異なる(1~10[mm])シ ミュレーションを実施した。減肉高さごとに TOF をま とめた結果を Fig. 8に示す。減肉高さに応じてほぼ比 例して TOF が変化していることが確認できる。なお、 6[mm]以上はエコーを確認できなかった。 - Fig.9に示すように、減肉のアスペクト比 (減肉高さ 「減肉半径)が大きいほどエコー高さが小さくなるこ とから、アスペクト比が大きいほど減肉高さの評価が 難しくなる。センサの性能向上要件の一つとして、減 肉高さを測定可能なアスペクト比の向上は重要である。4結構築したシミュレータは研究室実験と同様の傾向 を示したことから、有用性の確認ができた。一方で研 究室実験の分解能が十分ではなく、改良の余地がある。 - シミュレーション実験から、減肉高さの測定を試み たが、測定できる範囲が減肉のアスペクト比に支配さ れることが確認できた。EMAT のコイル径の影響も考 えられることから、今後は研究室実験の分解能を向上 させるとともに、構築したシミュレータを用いて、逆 問題的手法を取り入れた減肉形状診断手法について検 討を行う。謝辞本研究は「平成 19年度高経年化対策強化基盤整備事 業」において実施した研究である。参考文献[1] R. Thompson, “Physical Principles of Measurementswith EMAT Transducers”, W.P. Mason, (ed.), Physical Acoustics, Vol.19, Academic Press, New York, pp.157-200, 1990 [2] Allen, D.R. and Martin, R., “Measuring boiler tubewall thickness in thermal power plants using electromagnetic acoustic transducers (EMATS)” AEREReport 11653, 1985 [3] Smith, B.J., Martin, R. and Holt, R.P., “The use ofEMATs for wall thickness measurements on corroded pipes” Proc 6th Int Conf on NDT Methods, Strasbourg,p. 49, 1986 [4] BOETTGER W, SCHNEIDER H, WEINGARTEN W,“Prototype EMAT system for tube inspection with guided ultrasonic waves““, Nucl Eng Des, Vol.102, No.3,pp.369-376, 1987 [5] HU J K, ZHANG Q L, HUTCHINS D A, “Directionalcharacteristics of electromagnetic acoustic transducers”,Ultrasonics, Vol.26 No.1 pp.5-13, 1988 [6] COAKLEY K J, CLARK A V, HEHMAN CS,“Empirical Modeling of Electromagnetic AccousticTransducer Data”, PB Rep, p.24, ,1999.08 [7] KAWASHIMA K, “Very High Frequency EMAT forResonant Measurement”, Proc IEEE Ultrasonic Symp,Vol. 1994, No. 2, pp.1111-1119, 1994 [8] PARK Ik-Keun, KIM Yong-Kwon, KIM Tae-Hyung,CHO Yong-Sang, “A Non-Contact Guided Wave Technique for Defect Thining Monitoring”, Key EngMater, Vol.326/328 No.Pt.1 pp.681-684, 2006 [9] CHEONG Yong-Mo, JUNG Hyun-Kyu, KIMYoung-Suk, “Comparison of an Aray of EMATS Technique and a Magnetostrictive Sensor Technique for a Guided Wave I nspection of a Pipe”, Key Eng Mater, Vol.321/323 No.Pt.1 pp.780-783,2006469“ “?電磁超音波法による減肉の定量評価“ “小坂 大吾,Daigo KOSAKA,小島 史男,Fumio KOJIMA