ハイブリット計測による配管ヘルスモニタリング法
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カテゴリ: 第5回
1. はじめに
定精度の向上も図られる。 原子力発電所では、安全確保を大前提としなが2. 設計・試作 らも、経済性の向上も求められる。そこで、状態 監視保全技術の導入が検討され、さまざまな研究 2.1 設計条件 が行われている「11が、配管等の状態監視技術の確 センサ設計に必要な温度や板厚などの計測条 立には至っていない。本研究は、経済性の観点か 件の設定には、「原子力設備 2次系配管肉厚の管 ら1つのセンサで配管減肉、配管表面温度、内部 理指針(PWR) 3]と関西電力美浜発電所3号機、配管 流体温度のハイブリット計測が可能で、かつ安全 減肉による破断事故の条件を参考とした。 性の観点から運転中でも連続状態監視可能なセ 2.2 測定フロー ンサ開発を実施したものである。本技術の確立に 高温用 EMAT センサにより測定を行う場合、温 より、科学的合理的保全を経済性、安全性ともに 度補正のために別途温度計を取り付けることが * 原子力発電所では、安全確保を大前提としなが らも、経済性の向上も求められる。そこで、状態 監視保全技術の導入が検討され、さまざまな研究 が行われているが、配管等の状態監視技術の確 立には至っていない。本研究は、経済性の観点か ら1つのセンサで配管減肉、配管表面温度、内部 流体温度のハイブリット計測が可能で、かつ安全 性の観点から運転中でも連続状態監視可能なセ ンサ開発を実施したものである。本技術の確立に より、科学的合理的保全を経済性、安全性ともに 向上できる。開発した超音波センサは、電磁超音 波探触子(以下、EMAT)を採用した。EMAT を用い たモニタリングセンサの開発は行われている[2] が、ハイブリット計測を可能とする研究はなされ ていない。EMAT は、コイルで誘導した渦電流と永 久磁石による磁場との相互作用や磁歪効果によ り超音波を発生させるため、接触媒質が不要であ り高温でも利用できる。 * 本研究の EMAT は、縦波、横波を1つのセンサ で送受信することで、縦波により流体温度、横波 により配管板厚、コイルの直流抵抗により配管温 度の測定を行うことができる。このように、異な る物理量を同時かつ同一条件で検出し、それぞれ が、ハイブリッ ていない。EMAT 久磁石による感 り超音波を発生 り高温でも利用 滋歪効果によ 水系配管が対象であるため、内部流体は、水とし 質が不要であた。測定フローを図1に示す。温度計、板厚計、水温計が同位置に存在するこ 1つのセンサ とで、場所による誤差がなくなる。そのため、測 体温度、横波定精度は高くなる。
2.1設計条件コイル直流抵抗温度TIC] 温度補正音速:VTパルスエコー共振周波数板厚板厚板厚補正水中での伝播時間水温図1 測定フロー振周波数地図で場所を広強する限り同阪外は、 鋼材板厚により波の重なる周期(共鳴周波 数)が変化することを利用する。板厚は、 (2) 式の通り計算できる。板厚T = 7 - - ) 2)12正n: Number of resonance, f: Frequency (Hz) 3水温測定液体中の超音波音速は、温度に依存し変化することを利用する。 3.試験 3.1 試験条件 1コイル直流抵抗測定試験ロー図2のような配置と 12.3 センサ試作センサ配置を考えた場合、図2のような配置と なる。保温材EMAT図2 計測系概念 このとき、2個の EMAT を配管外面に対面とな るように取り付ける。それぞれのセンサから得た 信号を図1のフローに従って測定する。そこで、それらを同時に計測できるセンサを試 作した。 2.4 測定原理」 1コイル直流抵抗測定金属などの導体は温度によって抵抗値が 変化することを利用する。 2板厚測定 a) パルスエコー法超音波が鋼材中を伝播し、多重反射する 時間差を利用する。板厚は、(1)式の通り計 算できる。T: Thickness (mm)、t : Time (us)v : Velocity (mm/s) b)電磁超音波共鳴法超音波が鋼材中を伝播する際の周波数は、 鋼材板厚により波の重なる周期(共鳴周波 数)が変化することを利用する。板厚は、 (2) 式の通り計算できる。 - nA ( v )2-426 ) (2)n: Number of resonance, f: Frequency (Hz) 3水温測定液体中の超音波音速は、温度に依存し変化 することを利用する。・試験 3.1 試験条件 1コイル直流抵抗測定試験EMAT と温度確認用温度計を配置し、試験体を * ヒータで常温から 200°Cまで加熱し、デジタルマルチメータにより直流抵抗値を測定する。 2板厚測定試験EMAT と温度確認用温度計を配置し、試験体を ヒータで常温から 200°Cまで加熱し、パルスエ コー法と電磁超音波共鳴法を用いて板厚を測 定する。 3水温測定試験図2のように温度確認用温度計を配置し、常 温から90°C程度までの水温を測定する。更なる 高温での測定には水を加圧する必要があるが、 本報告では、加圧は実施していない。 3.2 試験結果 1コイル直流抵抗測定試験計測は4回実施し、最小二乗法を用いて評価 した。また、総変動に対する予測値による変動 の比を決定係数 R とした場合。 (3) 式より 99.93%の差で一致していたため、再現性も十 分確保できたと考える。pp_266-) (3)20, -y:測定値 :推定値):平均値 471 2板厚測定試験板厚 10mm、常温(20°C)~高温(200°C) での板厚測定を実施。高温では、約 70~80% の感度低下があるものの、測定には十分な感 度を得ることができた。しかし、ノイズが高 くなり、周波数の分解能も常温に比べて悪い。 これは、高温では磁石からの反射感度が相対 的に上がることが起因していることが考え られるが、具体的対策や最適化は、今後の課 題である。 3水温測定試験、EMAT で測定した水中音速と文献値を比 較した。その結果、測定値と文献値は非常に よく一致した。よく一致した。 4. まとめEMAT を用いた、ハイブリット計測セ EMAT を用いた、ハイブリット計測センサの試 作を実施した。本センサを用いて配管表面温度、 配管板厚、水温の測定が可能である。 5. 参考文献[1] 例えば、原子力 eye vol.54 No.4, 2008 [2] Akihiro TAGAWA, Kazunari FUJIKI, Takuya YAMASHITA, Investigation of the on-line monitoring high accuracy sensor for a pipe wall thinning, Short paper proceedings of 13th International Symposium on Applied [1] 例えば、原子力 eye vol.54 No.4, 2008 [2] Akihiro TAGAWA, Kazunari FUJIKI, Takuya YAMASHITA, Investigation of the on-line monitoring high accuracy sensor for a pipe wall thinning, Short paper proceedings of 13th International Symposium on Applied Electromagnetics and Mechanics pp.243-244 [3] 美浜発電所3号機事故の概要と原因(http://www.kepco.co.jp/notice/mihama/jiko_img/gaiyo u.pdf) [4] 「原子力設備 2次系配管肉厚の管理指針(PWR) [5] 超音波技術便覧(新訂版) 1991年6月25日 新 訂8刷発行- 472 -“ “ハイブリット計測による配管ヘルスモニタリング法“ “田川 明広,Akihiro TAGAWA,上田 雅司,Masashi UEDA,宮原 信哉,Shinya MIYAHARA,山下 卓哉,Takuya YAMASHITA
定精度の向上も図られる。 原子力発電所では、安全確保を大前提としなが2. 設計・試作 らも、経済性の向上も求められる。そこで、状態 監視保全技術の導入が検討され、さまざまな研究 2.1 設計条件 が行われている「11が、配管等の状態監視技術の確 センサ設計に必要な温度や板厚などの計測条 立には至っていない。本研究は、経済性の観点か 件の設定には、「原子力設備 2次系配管肉厚の管 ら1つのセンサで配管減肉、配管表面温度、内部 理指針(PWR) 3]と関西電力美浜発電所3号機、配管 流体温度のハイブリット計測が可能で、かつ安全 減肉による破断事故の条件を参考とした。 性の観点から運転中でも連続状態監視可能なセ 2.2 測定フロー ンサ開発を実施したものである。本技術の確立に 高温用 EMAT センサにより測定を行う場合、温 より、科学的合理的保全を経済性、安全性ともに 度補正のために別途温度計を取り付けることが * 原子力発電所では、安全確保を大前提としなが らも、経済性の向上も求められる。そこで、状態 監視保全技術の導入が検討され、さまざまな研究 が行われているが、配管等の状態監視技術の確 立には至っていない。本研究は、経済性の観点か ら1つのセンサで配管減肉、配管表面温度、内部 流体温度のハイブリット計測が可能で、かつ安全 性の観点から運転中でも連続状態監視可能なセ ンサ開発を実施したものである。本技術の確立に より、科学的合理的保全を経済性、安全性ともに 向上できる。開発した超音波センサは、電磁超音 波探触子(以下、EMAT)を採用した。EMAT を用い たモニタリングセンサの開発は行われている[2] が、ハイブリット計測を可能とする研究はなされ ていない。EMAT は、コイルで誘導した渦電流と永 久磁石による磁場との相互作用や磁歪効果によ り超音波を発生させるため、接触媒質が不要であ り高温でも利用できる。 * 本研究の EMAT は、縦波、横波を1つのセンサ で送受信することで、縦波により流体温度、横波 により配管板厚、コイルの直流抵抗により配管温 度の測定を行うことができる。このように、異な る物理量を同時かつ同一条件で検出し、それぞれ が、ハイブリッ ていない。EMAT 久磁石による感 り超音波を発生 り高温でも利用 滋歪効果によ 水系配管が対象であるため、内部流体は、水とし 質が不要であた。測定フローを図1に示す。温度計、板厚計、水温計が同位置に存在するこ 1つのセンサ とで、場所による誤差がなくなる。そのため、測 体温度、横波定精度は高くなる。
2.1設計条件コイル直流抵抗温度TIC] 温度補正音速:VTパルスエコー共振周波数板厚板厚板厚補正水中での伝播時間水温図1 測定フロー振周波数地図で場所を広強する限り同阪外は、 鋼材板厚により波の重なる周期(共鳴周波 数)が変化することを利用する。板厚は、 (2) 式の通り計算できる。板厚T = 7 - - ) 2)12正n: Number of resonance, f: Frequency (Hz) 3水温測定液体中の超音波音速は、温度に依存し変化することを利用する。 3.試験 3.1 試験条件 1コイル直流抵抗測定試験ロー図2のような配置と 12.3 センサ試作センサ配置を考えた場合、図2のような配置と なる。保温材EMAT図2 計測系概念 このとき、2個の EMAT を配管外面に対面とな るように取り付ける。それぞれのセンサから得た 信号を図1のフローに従って測定する。そこで、それらを同時に計測できるセンサを試 作した。 2.4 測定原理」 1コイル直流抵抗測定金属などの導体は温度によって抵抗値が 変化することを利用する。 2板厚測定 a) パルスエコー法超音波が鋼材中を伝播し、多重反射する 時間差を利用する。板厚は、(1)式の通り計 算できる。T: Thickness (mm)、t : Time (us)v : Velocity (mm/s) b)電磁超音波共鳴法超音波が鋼材中を伝播する際の周波数は、 鋼材板厚により波の重なる周期(共鳴周波 数)が変化することを利用する。板厚は、 (2) 式の通り計算できる。 - nA ( v )2-426 ) (2)n: Number of resonance, f: Frequency (Hz) 3水温測定液体中の超音波音速は、温度に依存し変化 することを利用する。・試験 3.1 試験条件 1コイル直流抵抗測定試験EMAT と温度確認用温度計を配置し、試験体を * ヒータで常温から 200°Cまで加熱し、デジタルマルチメータにより直流抵抗値を測定する。 2板厚測定試験EMAT と温度確認用温度計を配置し、試験体を ヒータで常温から 200°Cまで加熱し、パルスエ コー法と電磁超音波共鳴法を用いて板厚を測 定する。 3水温測定試験図2のように温度確認用温度計を配置し、常 温から90°C程度までの水温を測定する。更なる 高温での測定には水を加圧する必要があるが、 本報告では、加圧は実施していない。 3.2 試験結果 1コイル直流抵抗測定試験計測は4回実施し、最小二乗法を用いて評価 した。また、総変動に対する予測値による変動 の比を決定係数 R とした場合。 (3) 式より 99.93%の差で一致していたため、再現性も十 分確保できたと考える。pp_266-) (3)20, -y:測定値 :推定値):平均値 471 2板厚測定試験板厚 10mm、常温(20°C)~高温(200°C) での板厚測定を実施。高温では、約 70~80% の感度低下があるものの、測定には十分な感 度を得ることができた。しかし、ノイズが高 くなり、周波数の分解能も常温に比べて悪い。 これは、高温では磁石からの反射感度が相対 的に上がることが起因していることが考え られるが、具体的対策や最適化は、今後の課 題である。 3水温測定試験、EMAT で測定した水中音速と文献値を比 較した。その結果、測定値と文献値は非常に よく一致した。よく一致した。 4. まとめEMAT を用いた、ハイブリット計測セ EMAT を用いた、ハイブリット計測センサの試 作を実施した。本センサを用いて配管表面温度、 配管板厚、水温の測定が可能である。 5. 参考文献[1] 例えば、原子力 eye vol.54 No.4, 2008 [2] Akihiro TAGAWA, Kazunari FUJIKI, Takuya YAMASHITA, Investigation of the on-line monitoring high accuracy sensor for a pipe wall thinning, Short paper proceedings of 13th International Symposium on Applied [1] 例えば、原子力 eye vol.54 No.4, 2008 [2] Akihiro TAGAWA, Kazunari FUJIKI, Takuya YAMASHITA, Investigation of the on-line monitoring high accuracy sensor for a pipe wall thinning, Short paper proceedings of 13th International Symposium on Applied Electromagnetics and Mechanics pp.243-244 [3] 美浜発電所3号機事故の概要と原因(http://www.kepco.co.jp/notice/mihama/jiko_img/gaiyo u.pdf) [4] 「原子力設備 2次系配管肉厚の管理指針(PWR) [5] 超音波技術便覧(新訂版) 1991年6月25日 新 訂8刷発行- 472 -“ “ハイブリット計測による配管ヘルスモニタリング法“ “田川 明広,Akihiro TAGAWA,上田 雅司,Masashi UEDA,宮原 信哉,Shinya MIYAHARA,山下 卓哉,Takuya YAMASHITA